#700 お月見イベントと平安の都
早めにお昼を食べてからログインする。イベント開始のインフォが来て、リリー、イオン、セチア、恋火、イクスを選んでイベントを開始する。
転移した俺たちの目の前に広がったのは大昔の日本の光景。寝殿造りと思われる家と歩く人は百人一首で登場するような服を着た人たちが歩いていた。
周囲を確認するとなんと富士山と思われる山があった。するとイオンが言う。
「私たち、浮いてませんか?」
「服装が違うから、仕方無いさ。それよりもまずは町を歩いて話を聞いてみよう」
『はーい!』
俺たちは町人への聞き込みからスタートする。その間、何故かリリーたちがニコニコしている。
「どうしたんだ? ずっと笑顔で」
「だって、久しぶりにリリーたちだけの旅なんだもん」
「みんなで協力するのも良いですが、やっぱりタクトさんとの旅は特別ですから」
「あたしもそう思います!」
確かに最近は何かとギルドと関わることが多かったからな。一応情報はギルドで共有することにしているが基本は一人でしないといけないから大変だけど、リリーたちの様子を見るとこれで良かったと思う。
情報を集めているとどうやらこの町にはとんでもない美人がいるらしい。それを聞いたリリーたちは不機嫌になった。
後、もうすぐ満月で祝儀の準備で大忙しらしい。やはりこのイベントはお月見イベントで間違い無さそうだ。お月見について情報を集めているとお寺でクエストが発見した。それがこちら。
依頼クエスト『月見山奉納祭』:難易度D
報酬:奉納した数により、報酬が増加。
月見山の山頂にある社に秋の七草と月見団子を奉納せよ。
月見山は俺が最初に富士山と思った山がそういう名前らしい。これは恐らく生産職用のクエストだけど俺でも受けることが出来た。これで必要なのは秋の七草と月見団子。月見団子の材料である団子粉は秋の七草と交換してもらえるらしい。
取り敢えずクエストを見つけたから俺たちは宿選びをすることにした。出来れば調理場が使える宿がいい。そうしないと団子作りは苦戦しそうだし、他の料理をするにしても調味料がなければやはりきついものがある。最悪お店で買えばいいとは思うけどね。
「なんかリリーと最初に宿探しをしたことを思い出すな」
「リリーもそう思った!」
だよな。するとイオンたちは聞いてくる。
「タクトさんたちは最初はこんなことをしていたんですか?」
「あぁ。宿を探し回って、モッチさんの宿を見つけたんだよ」
「今回は美味しい料理が出る宿を見つけてみせるよ! タクト」
モッチさんの最初の料理は悲惨だったもんな。猫じゃらしが浮かんだ汁の衝撃は今でも忘れない。
リリーたちが鼻をきかせ、宿を選ぶ。必然のように高そうな宿になった。まぁ、ご飯が美味しいお店なら文句はない。俺たちは宿に入る。
「いらっしゃいませ、ご予約頂いたお客様ですか?」
「いえ。ここには初めて来た者なのですが…予約がないとダメですか?」
「少々お待ちください」
なんかしっかりしたやり取りをされると高そうな気がして怖いな。モッチさんを思い出したせいだろうか?
「空いていました。大部屋一つでよろしいでしょうか?」
『はい!』
リリーたちが即答する。部屋を分ける選択肢があったんじゃないのか?
「すみません。この五人だけじゃないかも知れないんですが」
「人数だけなら温泉は大きいですし、大部屋なので大丈夫ですよ。ただお料理と布団は六人分しか出せません」
温泉を許可して貰えるだけでありがたい。料理は最悪俺が用意すればいいだろう。あ、重要なことを聞かないとな。
「宿の調理場とか使わせて貰えますか?」
「お団子作りですね? 大丈夫ですよ」
「そうですか。では三日分、お願いします」
「ありがとうございます」
やはり高かったが色々な要求を呑んで貰ったから納得が行く値段だと思った。その後、部屋に案内される。なんか旅館のような部屋に入るとリリーたちと修学旅行に来た錯覚を感じてしまう。
「リリーが一番~!」
「あぁ~!? ずるいです! リリーお姉ちゃん!」
二人がはしゃいで転がりだす。すると腰に手を当てているイオンにぶつかる。
「二人とも」
「「ご、ごめんなさい」」
イオンが怒ってくれるから助かる。俺たちは女将さんから温泉などの話を聞いていると女将さんが質問してくる。
「皆さんは他国の冒険者様でよろしいでしょうか?」
「はい。そうですけど…どうかしましたか?」
「実はこの町の領主様が腕に覚えがある者に依頼を出しているんです」
おっと。これはお月見とは別のクエストみたいだな。
「どのような依頼かわかりますか?」
「確か五つの宝を見つけて、ここから見えるあの大きな山の山頂にある社にお供えするという話だったと思います。詳しくは領主様に聞いてみてください」
何となく美人さんが出てきたから予想はついていたけど、五つの宝で確信した。これは竹取物語だな。
「わかりました。領主様の家はどこでしょうか?」
「ご案内いたしましょうか?」
「お願いします」
俺たちは女将さんに案内して貰うと一目でこれはわかる。滅茶苦茶大きいお屋敷だ。俺たちはクエストの詳細をご領主様から聞くことが出来た。
「この町にいる一番の美女がもうすぐ月に連れていかれることになる。それを阻止するためには『仏の御石の鉢』、『蓬莱の玉の枝』、『火鼠の皮衣』、『龍の首の玉』、『燕の子安貝』という宝をここで一番高い山の山頂にある社に奉納さねばならんのだ。頼めないか?」
インフォが来る。
『運営イベント『五つの宝を奉納せよ』が発生しました』
運営イベント『五つの宝を奉納せよ』:E~C
報酬:奉納したアイテムの種類、数により変動。
時間制限:イベント終了まで
『仏の御石の鉢』、『蓬莱の玉の枝』、『火鼠の皮衣』、『龍の首の玉』、『燕の子安貝』を山頂の社に奉納せよ。
これってかなりの無茶ぶりのお願いなんだよな。この五つの宝は確かそれぞれ仏、仙人、妖怪、ドラゴン、燕が関係している。難易度的には恐らく燕、妖怪が低く、仏、仙人、ドラゴンが難易度高いだろう。
しかも宿探しで町の中を歩いている時にこれらの宝に似せた物を売っているお店がたくさんあった。これらを買うのは間違いなくアウト。このクエストでは本物を見つけることが恐らく必須条件となっている。それは竹取物語が証明している。
「どこまで出来るかわかりませんがお受けいたします」
「そうか! よろしく頼む! もし彼女が月に行くのを阻止出来たら、とびっきりの報酬を出すことを約束しよう」
自分からハードルを上げたな。この人。受けたはいいが、問題はどこにあるかもわからないってことだな。
俺たちが屋敷から出ると俺は嫌な視線を感じ、そちらを見ると数人の男が慌てて、その場から離れて行った。このクエスト…もしかしたら宝を集めてお供えして終わりとはならないかも知れないな。ちょっとメルたちに話しておこう。
俺たちはダメ元でかぐや姫がいるという屋敷に向かったが追い返されてしまった。一応町人に宝のことを聞くと売っているお店を教えられるだけだった。
「どうするんですか? タクト様?」
「じっとしてても仕方ないしな。秋の七草と月見団子をお供えする話もあるから。まずはそれを探しつつ、お宝探しと行くか」
『はーい!』
俺たちは気になる富士山を目指していると早速秋の七草を見つけた。
女郎花:イベントアイテム
秋の七草の一つ。黄色い花が特徴的で古くから桜花の地で親しまれている。他の秋の七草と共にお粥を作ると病気を防ぐ料理を作ることができる。
藤袴:イベントアイテム
秋の七草の一つ。花の色が藤色で、花弁の形が袴のように見えることから名付けられた。他の秋の七草と共にお粥を作ると病気を防ぐ料理を作ることができる。
あくまでイベントアイテムなんだな。すると湖に出る。湖には綺麗な逆さ富士が映っていた。やるな、運営。その景色に見とれているとリリーが騒ぐ。
「タクトタクト! 鳥がいるよ!」
この景色より鳥か…リリーらしい。
「どこだ?」
「あそこ!」
確かにいた。識別する。
鴨Lv10
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
お!鴨じゃん!鴨はネギと串焼きにしたり、鴨鍋もいいよね~。
「リリー」
「うん! 行ってくる!」
リリーが襲い掛かると鴨は湖に潜り、逃げられる。
「あぁ~!? イオンちゃ~ん」
「やれやれ。仕方無いですね」
イオンが湖に飛び込むが見付からなかった。
「お肉が逃げた~」
「「「いつもの光景ですね」」」
「あはは…」
全くだ。
「ほら、行くぞ。リリー。歩いていたら、きっと現れるから」
「うん…」
その後、鴨は見つけることが出来なかった。結構レアなモンスターだったらしい。リリーが落ち込む一方で七草集めは順調だ。新しく見つけたのはこちら。
萩:イベントアイテム
秋の七草の一つ。痩せた土地でも良く育つ特性を持っている。他の秋の七草と共にお粥を作ると病気を防ぐ料理を作ることができる。
桔梗:イベントアイテム
秋の七草の一つ。風船のような蕾で知られている。他の秋の七草と共にお粥を作ると病気を防ぐ料理を作ることができる。
結構探したが今まで見つけた四つ秋の七草ばかりだ。残りは別の所にあるんだろう。一度宿に帰り、ご飯を食べる。出てきた料理に鴨肉があり、リリーはご満悦になるのだがここで問題発生。ここは恐らく平安時代がモデル。当然出て来る料理はいつもと味付けが薄く量が全然違う。
食べ終わってログアウトするまでリリーたちのお腹の虫の大合唱を聞くことになった。因みに満腹度は満タンだった。なぜそれでお腹の虫が鳴るのか謎を抱えたまま、ログアウトした。
名前 セチア ホーリーエルフLv20
生命力 182
魔力 396
筋力 168
防御力 113
俊敏性 154
器用値 333
スキル
杖Lv25 魔法弓Lv44 鷹の目Lv35 射撃Lv35 木工Lv32
採取Lv38→Lv39 調薬Lv20 刻印Lv16 宝石魔術Lv12 宝石細工Lv12
封印魔術Lv10 ルーン魔術Lv10 連続詠唱Lv24 同時詠唱Lv24 魔力操作Lv13
風魔法Lv22 炎魔法Lv1 海魔法Lv1 土魔法Lv23 闇魔法Lv15
神聖魔法Lv11 雷魔法Lv24 爆魔法Lv24 木魔法Lv27 氷魔法Lv20
樹魔法Lv28 罠設置Lv5 魔法阻害Lv2 阻害無効Lv1 森林操作Lv12
自然波動Lv1 ホーリーエルフの知識Lv32 精霊召喚Lv11 精霊結界Lv13 精霊魔法Lv3
列石結界Lv7 使役Lv16 料理Lv25




