#687 へーパイストスクエストとエクスマキナの新武装
ブラックアウトした俺は夕飯を作っていると佳代姉たちからメールが来た。報酬についてだ。俺は隠さず伝えて、レオナルドの手稿についてはまだ見ていないから見てから判断することを伝えた。
ギルドでは正式にエクスマキナの武器を参考に作られた装備が贈られ、みんな大興奮しているらしい。更にみんな共通で魔神結晶というアイテムを貰ったそうだ。ギルドにお金も入り、ルインさんも上機嫌になるだろう。
魔神結晶はクロウさんたちの話では結晶なら魔剣や妖刀の素材ではないかという話だ。魔神の力が宿る剣ならそこらの伝説の魔剣は超えてきそうな気がするな。ただ作る本人たちは呪われそうで怖いとのこと。気持ちはわからないでもない。
俺は報酬を渡すために夕飯を食べ終わった後、ログインする。その後、サバ缶さんをうちに呼び、報酬を渡す。
「なんかすみません。完全にタクトさんたちに旨みがないイベントをさせてしまって」
「レベルが上がりましたし、元々は俺が望んだイベントですよ。それにバトルシップが簡単には使えなくなりましたから、レオナルドが作ったロボットより凄いのをお願いします」
最後のレオナルドの様子はそれを望んでいるような感じだったからな。流石にあんな無敵ロボを作るのは困難だろうが俺たちには日本ロボアニメを見てきた経験がある。負けないくらいのロボは作れると思う。それはサバ缶さんも同じようだ。
「はは…プレッシャーですね。でもギルドのみんなが頑張って手に入れてくれた物です。最高のロボットを作って見せますよ」
気合十分だな。あ、そうだ。重要なことを忘れていた。
「与一さんたちに渡したアサルトライフル、俺が解体したものなんですけど、返してもらえるように言ってくれます?」
「与一さんも新しいアサルトライフルやスナイパーライフルが手に入ったみたいですから大丈夫だと思いますが、アサルトライフルまで使うつもりですか?」
「俺も使いたいですが、それよりもビームシールドと一緒にユウェルにあげようかと」
「タクトさんは体から大砲やアサルトライフルを撃ちまくるドラゴンを作るつもりですか…」
考えてみると凄いドラゴンだな。だが、あえて言おう。それはそれで有りだ。
「あ、それとルインさんからタクトさんに贈り物がありますよ」
はて?なんだろう?サバ缶さんが取り出したものを鑑定する。
蜜山羊の皮:レア度8 素材 品質A
ヘイズルーンの皮。非常に肌触りがよく丈夫な皮。主にガントレットの内側に仕込むことで殴った時の衝撃緩和などの手に寄る衝撃を緩和させる素材として人気がある。そのため剣士から弓使いまでまば広い需要が有る素材。
ヘイズルーンは俺はまだ出会っていないけど…。
「どうしてこれを俺に?」
「トリスタンさんからルインさんにタクトさんが鹿皮を探していることを伝えられたんですよ」
なるほど…それでピンポイントで届けられたのか。
「お金はいくらですか?」
「贈り物と言いましたよ? 無料だそうです」
何いぃ!?
「いやいや! これ、高かったでしょう!」
「らしいですね。ウィザードオーブの森の奥で出現したとのことですが、かなり強かったらしいです」
そういえば俺がブリュンヒルデさんに会いに行っている間に別のワルキューレチームが森を攻略していたんだったな。奥に進むとヘイズルーンが出てくるんだ。覚えておこう。
「それなら尚の事」
「いいんですよ。タクトさんはもっと自分がどれだけ利益を生んでいるか覚えるべきですよ? イベントの報酬だけでなく、島も元々はタクトさんが交換したものです。私たち生産職がどれだけ助けられていることか…なのでこれは日頃お世話になっているギルマスにほんの少しのお礼の気持ちなんだそうです」
「…そんなことを言われたら、受け取るしかないじゃないですか…ルインさんやみんなにお礼を言っておいてください」
「はい」
これで和狐にセチアの弓懸を依頼ができる。後でしておこう。
それからサバ缶さんと少し雑談をする。どうやらジャンヌたちはもうゴネスに向かったらしい。あんなことがあったから、急いで向かいたい気持ちはわかる。
「タクトさんによろしく伝えといて下さいと言ってましたよ」
律儀だね。俺たちの別れの挨拶はもう済ませてあるというのに…サバ缶さんが帰った後、みんなでご飯を食べながら今回の事を話しているとへーパイストスが珍しく魔導機神ウィトルウィウスに興味を示した。
「意外だな。武器以外に興味を持つなんて」
「あ、いえ。そういうのではなく。タクトさんたちの話を聞いていると魔導機神ウィトルウィウスには少なからず意志を感じられるんです。レオナルドという人が乗っていなかったわけですから」
「そういえば乗っていないのに動いていたな…レオナルドも自分が倒されても最早止められないとか言ってたし…それが気になるのか?」
「はい。恐らく神核アニマスフィアと魔神核デモンスフィアには意思が存在しています。ならば、限りなく神に近い存在を作り出すことが可能なんじゃないかと思うんです」
俺は話の流れを理解した。へーパイストは神話で一人の女性を作り出している。その名はパンドラ。ギリシャ神話ではパンドラの箱で有名な人類に災厄をもたらすために神々の手で作られた最初の人間の女性と言われている。話によっては女神と扱われていたりするな。
そしてこの俺の予想が的中する。
「タクトさん…僕に新たな生命を作らせてくれませんか?」
インフォが来る。
『特殊イベント『パンドラの素材を集めよ』が発生しました』
特殊イベント『パンドラの素材を集めよ』:難易度SSS
へーパイストスに神核アニマスフィアか魔神核デモンスフィアどちらか選択し、素材を集めよ。
さて、どうするよ。これ…許可していいものか。多分選んだ神核次第でパンドラがどうなるか決まる感じだとは思うが…。
「理由を聞いてもいいか?」
「これは鍛冶師の領分を逸脱していることだと僕も理解しています。でも僕は…これを作らないといけない気がしているんです」
うーん…困った。神核アニマスフィアなら問題無いように思える。人類に災厄をもたらしたのは正確にはパンドラではなく、パンドラが神々に持たされたパンドラの箱だ。
パンドラの箱には様々な災いが入っており、それを彼女と結婚したエピメーテウスが箱を開けてしまい、人類に災厄をもたらした。しかしこのパンドラの箱には希望も詰まっているとされている。
それをこのゲームではどう解釈しているかだな。へーパイストスの真剣な様子から見るとパンドラ自身が希望と位置づけられている気がする。この選択は結構やばい選択臭がするから俺だけでは決めれないな。
「悪いがこれは俺だけでは決められない。みんなと協議させてくれ」
「そうですよね…わかりました」
俺はみんなにこの事を伝える。その後、暫くすると協議結果の連絡がルインさんから来た。
『男連中のほとんどが賛成に回って一応神核アニマスフィアでなら作っていいという結論となったわ』
パンドラは美の女神アプロディーテーから男を苦悩させる魅力を与えられたと言われている女性だ。つまり美人ということで男のみんなは賛成に回ったんだろう。
『凄く不安になるんですが』
『気持ちはわかるわ。神話の流れでは確実にアウトの流れだからね。でも、そもそも神々がパンドラを作るきっかけとなったプロメーテウスが人にもたらした火は既にこの世界には普通にあるものだし、パンドラの箱も存在していないなら危険性はないという結論になったわ』
『ということはこのゲームでのパンドラの箱はパンドラ自身という解釈ってことですか?』
『そう思えるわね。神核アニマスフィアでパンドラを作れば希望に魔神核デモンスフィアを使えば災いになるってことじゃないかしら? もちろんやってみないとわからないことだけど、少なくとも神核アニマスフィアでならハズレということにはならないというのが全員の意見よ』
全員の意見がそういうことならパンドラが希望であることを祈って、へーパイストスに作っていいことを伝えた。これで後には引けなくなった。
「本当ですか!? ありがとうございます! タクトさん!」
「喜ぶのは早いぞ。一応条件として神核アニマスフィアを使うこと。後、作ったへーパイストスが責任を持つこと。いいな?」
「は、はい! わかりました!」
「それで素材は何が必要なんだ?」
へーパイストスに要求されたのはざっとメックルカルヴィ四体分から取れる魔法の粘土だった。とんでもない巨人の女性を作る気なのかちょっと怖い。
パンドラは泥から作られ、メックルカルヴィは粘土から作られた。恐らく作られた者同士ということで素材に選ばれたんだろうな。
その後、全員を部屋に集めて、ユウェルが作る武器協議をする。最初に候補が上がったのはファリーダだったがミスリルの斧では本人曰く軽すぎて調子が狂いそうだと言うのだ。気持ちはわからなくもない。
案に出ていた鉄扇もへーパイストスがいないと不安がある。だとするとやはり候補は鎧か槍ということになる。
「私は和狐さんに新しい弓懸を作って頂きますし、弓と矢も作って頂きましたから槍でいいのではないでしょうか?」
「そうだな」
「では私より先にリアンの槍をお願いします。私は盾を作って頂きましたから」
ということでリアンの槍をユウェルに注文する。属性は比較的水のモンスターに強い雷だ。
予定が決まったけど今日は何も出来ないため、残りの時間をリリーたちのために使うことにした。まずはサフィに乗り、今回の失敗について、グレイたちにも聞いてみると気にしていない様子だ。
「わざわざ聞かなくてもいいのに…全くタクト様は…」
「ずっと抱え込んでいても解決しないだろう?」
「そうですね。でも今まで以上に頑張ることは変えませんから」
頑固だな。まぁ、頑張りすぎないように調整するとしよう。今度はサフィに乗って、地下の訓練場で恋火の炎訓練を見学することにした。
「行きます! 聖火! 紅炎! で、出来まし…あ!?」
一瞬成功したが消えてしまった。
「異なる二つの炎を操るのが難しいみたいどす。恋火、火炎操作を使ってみてみ」
「はい! 聖火! 紅炎! 火炎操作!」
おぉ!和狐のアドバイス通りしたら出来た!ん?
「むむむ~…もうダメです」
火炎操作に集中しすぎて、動けていない。あれでは刀で斬りかかるのは厳しそうだな。
「火炎操作がもう少し出来るようになると出来るようになると思います」
「うぅ…頑張ります」
その後、俺はサフィに乗って、マザーシップでイクスの解放された武器と施設を確認する。
武器
メーサーガン 素材:金剛石10、プラズマタイト25、エーテル大結晶50
メーサーキャノン 素材:金剛石30、プラズマタイト50、エーテル大結晶100
テイルメーサーガン 素材:金剛石10、鋼索100、プラズマタイト25、エーテル大結晶50
ソニックインパクトキャノン 素材:チタン鉱石150、空性石50、エーテル大結晶100
グラビティブレード 素材:メテオライト50、星核5、グラビティサイト50
グラビティハンマー 素材:メテオライト50、星核5、グラビティサイト50
グラビティランス 素材:メテオライト50、星核5、グラビティサイト50
グラビティアックス 素材:メテオライト50、星核5、グラビティサイト50
グラビティナックル 素材:メテオライト50、星核5、グラビティサイト50
肩
ツインバスターキャノン 素材:メテオライト200、コロナサイト20、星核10、マナクリスタル200
ウェザーフライヤー 素材:浮遊石20、ミスリル100、空性石
ツインホーミングレーザー 素材:金剛石20、フローライト200、マナクリスタル200
手
次元アンカー 素材:空鉱石100、メテオライト150
身体
エネルギー受信装置 素材:チタン鉱石100、マナクリスタル200
魔力吸収装甲 素材:メテオライト300、エーテル大結晶250
ここに来て普通のガンが気になるな。見ていこう。
メーサーガン:パラボラアンテナ型の銃口から青白い光線と稲妻が放たれる銃。通常のエネルギーガンより広範囲、高火力みたいだ。最大の特徴はエネルギーガンは単発だったがこの銃はずっと光線を照射し続けるみたいだ。完全にエネルギーガンの上位装備だな。
テイルメーサーガン:尻尾から放つメーサーガン。威力はメーサーガンと同じ。テイルエネルギーガンの上位装備だな。
メーサーキャノン:メーサーガンを大型にしたもの。映像から見る限り、かなり重そう。イクスに装備されるのはかなりきつそう。それさえクリアされればエネルギーキャノンを超える兵器だ。
ソニックインパクトキャノン:音速の衝撃波を集束させて放つ兵器。魔法のソニックブームとの違いは火力と速度。そりゃあ、銃口から集束されて放たれるのだ。火力が違うのは当然といえる。後、シュミレーションでは防御無効か貫通能力があるように見える。これは魔法のソニックムーブにはなかった能力のはずだ。弱点はエネルギーキャノンと全く同じ。エネルギーキャノンより上に来たのは恐らく回避が非常に困難だからだろうな。
グラビティブレード :ハンマー、ランス、ナックル全て同一の重力を利用した武器。相手に触れると重力が発生し、敵を押しつぶしている。
ツインバスターキャノン :両肩に装備したエネルギーバスターキャノン。同時に放たれるため、エネルギー消費は過去最大。
ツインホーミングレーザー:両肩に装備されたホーミングレーザー。最大八つのレーザーを放つことができるようになった。
ウェザーフライヤー:一言で言うと気象兵器。飛ばしたフライヤーが指定した場所の天気を操る兵器。シュミレーションでは巨大竜巻を発生させている。
テイルメーサーガン:テイルエネルギーガンのメーサーバーション。火力はメーサーガンと同じみたいだ。
次元アンカー:手首から放たれる空間跳躍するアンカー。シュミレーションではいきなり敵がアンカーに体を貫かれ、エクスマキナの元に引き寄せられる映像が流れていた。
エネルギー受信装置:マザーシップから魔力の供給を可能にする装置。これがあるとエクスマキナ最大の弱点である魔力の枯渇から解放されるだろう。ただイクスからマスターが魔力供給をしなくて済む
魔力吸収装甲:魔法が体に当たるとその魔法を吸収して魔力を回復できる装甲パーツらしい。ただしダメージは多少くらうようだ。これは魅力的に感じたがマジックキャンセラーやエネルギー受信装置があったら、いらないかな。
どれも中々なものだ。すぐに作れそうなメーサーガンも金剛石10はきつい。
その後、解放されたマザーシップを部屋を見に行くと解放されたのは機関室。
「エンジンの大きさはまるで違うな~」
「この船は永続的に宇宙を航行する船ですから。これぐらいは当然です」
「なるほどね。それでエネルギーはどのくらいいるんだ?」
「コロナタイト600あれば行けると思われます」
エーテル結晶では満足しませんか…俺の部屋に帰るとリリーたちとゴロゴロ過ごして現実逃避した。




