#669 太陽のコンパス起動とリアンの告白
俺は黒ひげの隠し財宝があった島に向かい、みんなに事情を説明する。
「面白そう」
「ダメだよ。チロル」
「分かっているよ。でも、あの王様ムカつくんだもん! 助けてあげたのに牢屋に入れられたんだよ? そりゃあ、兵器は壊したけどさ。そもそも魔王に兵器使われるって、そっちの管理責任じゃん!」
チロルが言うことは実に正しいと思う。しかしこのクエストは数がいると不利になる。失敗すると戦争、しかもノイシュとディアドラは物語通りなら駆け落ちに失敗して、お互い死ぬという結末になる。
俺はそれは阻止したい。こういう物語は悲劇で終わり、伝説が纏まりついていい感じに終わるのだが、本人たちにとっては駆け落ちに成功して、幸せに暮らすことが一番いいはずだ。ゲームの中でぐらいなら、そういう話は悲劇ではなく喜劇にしてもいいじゃないかと思う。
話が一段落したので、俺たちはスクナビコナで出発する。結局みんなスクナビコナが好きなんだよね。するとシャローさんが質問してくる。
「そういえばあの太陽のコンパスはどうなったんですか?」
「それが全然反応しないんですよね」
部屋で見ても全く反応を示さなかったんだよね。俺が取り出すと太陽のコンパスが反応する。
「これは夕日の光?」
「みたいですね。普通の光では反応しましたか?」
「いえ、部屋でも昼の外でも確認しましたが反応無かったです」
夕日に反応するなら夕日のコンパスと書けよ。運営。それにしても条件は夕日だけなんだろうか?
「船に乗っているからか。時間帯が条件なのかわかりませんね。わかることは」
俺たちは太陽のコンパスを見る。そこには確かにある方位を示していた。
「この指針が示す方向に何かあるということですね。どうします?」
「流石にいけないですよ。一応進路をメモしておいてくれますか?」
「任せてください」
その後、俺たちは海を進んでいくとそろそろモンスターが出る海域に入ることを教えてもらい、俺は海に入る。メンバーはイオン、リアン、サフィ、ディアン、クリュスのガチメンバー。
するとまるで俺たちが甲板からいなくなったことを見計らうように奇襲が来た。
『空からの奇襲です!』
『エーテルシールドで攻撃を防御! しかしこれは』
『どうしたんですか?』
『大量の糞を落とされました。エーテルシールドが糞だらけです』
ほほう…俺たちのスクナビコナに糞を落としたと…どこのどいつだ!ぶっ殺してやる!
俺たちが海上に出ようとすると糞の雨が降ってきた。完全に嫌がらせモンスターだな。だが識別には成功した。
ディスチャージアルバトロスLv32
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
アルバトロスはアホウドリの英語名。代表的な海鳥だ。日本語と違って英語はかっこよく聞こえることで有名だ。ディスチャージは流出や発射という意味。恐らく糞を落としてくる点から発射だろうな。
するとスクナビコナから文句の通信が来る
『アホーアホーうるさいな! こいつら!』
『アホウドリはアホーとは鳴かないだろうが!』
『しかしアホウドリを名付けたのは私たちですからね。文句は言えませんよ』
シャローさん、大人~。因みにアホウドリは諸説あるが簡単に捕まえられることから名付けられたとされる。そして簡単に捕まえられる上に住処には糞から出来た大量のリンが人間に狙われ、絶滅危惧となった可哀想な鳥だ。
そこで俺は嫌な予感を感じた。
「リアン! 水をスクナビコナにかけてくれ!」
「え? いきなりどうしたんですか? タクトさん?」
「いいから! このままだとシャローさんたちが危ない気がする!」
「わかりました! 水流操作!」
アホウドリの糞がリンとなるならそれに関連付けて来る可能性は十分にある。
突然の水でシャローさんたちは驚くが俺が事情を話すと納得する。
『彼らの糞は目潰しだと思っていたんですけどね…』
『警戒はするべきだと思います。糞の対処は俺たちが』
『ディスチャージアルバトロス! 海に急降下体勢!』
「ッ!? 来るぞ!」
ディスチャージアルバトロスが勢いよく水中に潜ってきた。しかもこいつら、リアンを狙ってやがる。しかし、速度でリアンに勝てるはずがなかった。
するとディスチャージアルバトロスは口から謎の石を撃ち出す。その石がリアンに当たる直前で青白く発光すると爆発する。しかしリアンは速度を上げて、見事に回避した。
そこに王冠を被り、剣を持ったペンギンがディスチャージアルバトロスに襲いかかった。チロルの進化したキングペンギンだ。更に数匹のペンギンたちがディスチャージアルバトロスに襲い掛かる。
「私たちペンギン艦隊を無視するとはいい度胸だよ! 海での鳥の王者はペンギンだと教えてあげる!」
艦隊ではないだろう。どちらかといえば軍団だ。しかしチロルたちのペンギンたちに襲い掛かられてもリアンを狙い続けている。そんなに糞を流したことが気に入らなかったのかな?
『リアン。俺のほうに誘導してくれ。一気に仕留める』
『はい!』
リアンが俺のほうに来るとディスチャージアルバトロスをマグネットサークルで根こそぎ拘束し全員の攻撃で全滅する。解体すると予想通りの結果だ。
白リン:レア度7 素材 品質B
自然発火しやすいリンで強い毒性を持っている。発火すると青白く発光することが特徴で爆弾などに使用される。
これは島送りかな。リン鉱石は大量に作っているけど、数を減らすことも検討しないとな。まぁ、その辺はサバ缶さんの管轄だ。
その後も進んでいくと俺たちは島を発見する。
『早くないですか?』
『はい。というか昨日来たときにはあんな島無かったはずです』
『進路は合ってるよな?』
『間違いねーよ。出発地点からまっすぐコンパスの通りに進んで来たんだからな』
ということはだ。あれは島じゃない可能性が出てきた。するとマヤさんが話してくれた。
「それなら多分カメだよ。カメの召喚獣は物凄く大きくなるから甲羅が島と間違えられても仕方ないと思う」
俺は玄武を思い出した。確かにあれが甲羅だけ海に出ていたら、ちょっとした島になるだろう。
俺たちが先行し、確認するとどうやらマヤさんの推理は正解だったらしい。
アイランドタートル?
? ? ?
でけー。すると巨大な目が俺たちを見る。俺たちが警戒するとマヤさんが止めた。
「待って! 攻撃したらダメ! カメのモンスターは結構温厚なの。でもこちらが攻撃すると容赦が無くなるからここは引こう。みんな」
俺たちはゆっくり後退するとアイランドタートルは結局何もしないまま、泳いで行った。
『ふぅ~』
かなり焦った。すると改めてマヤさんからカメの召喚獣について説明を受ける。
「カメの召喚獣はのんびり屋が多くてね。でも怒らすともの凄く強いの。一言で言うと動く要塞って感じで多分竜化したドラゴニュートでも止められないかな」
「あれ? でも戦争イベントで使ってましたっけ?」
「大きいから谷では使えないし、広いと的にされちゃうから使えなかったんだよ。敵に狙われやすいみたいでいくら再生と防御力が高くても一国の軍隊相手じゃあとてもじゃないけど使えないんだよ」
それで罠にはめる手もあるが、召喚獣を犠牲にする罠はしたくないから俺は却下していただろうな。
「ギルマスは知らないだろうけど、暗黒大陸の攻略には結構活躍しているんだよ? 固有スキルで宿泊スキルを持っていて、甲羅の上でログアウト出来るからね」
どうやら宿泊スキルを使うと手足を甲羅に引っ込めて、その場に残ってくれるそうだ。しかもその間は無敵となるらしい。ただ欠点でフィールドにずっといるからモンスターが集まって来るそうだ。
それでもテントより安全なため、結構重宝しているそうだ。正しく動く要塞って感じなんだな。覚えておこう。
「それはここでも出来るのか?」
「私のはリクガメだから出来ません。誰かウミガメ持っていたっけ?」
「アーケロンなら私が持っていますけど、四メートルくらいなのでちょっと」
それは無理だな。するとマヤさんがとんでもないことを言い出す。
「あ、それならさっきのカメさんの上でワープポイントを設置しちゃえばいいんじゃない?」
「それは…怒らないか?」
「大丈夫大丈夫。私に任せて」
大丈夫かなぁ…嫌な予感がするんだが…。すると通信が来る。
『出来たよ~』
「嘘だ~」
「これがマヤさんなんだよね」
「タクトさんの嫌な予感もマヤさん相手だと外れるんですね」
何故か凄い負けた気がする!結局俺たちはアイランドタートルの上にお邪魔させてもらって、船旅を終えた。
俺はそこでリアンだけで残すことにした。
「あ、あれ? なんで私だけ…あ!?」
リアンが状況を察して、自分の身だしなみや色々な所をチェックする。準備が出来たみたいなので、俺は魚が描かれている指輪を取り出す。
「本当は夜にしようと思ったんだけどな。綺麗な夕日だからここで渡すことにするよ」
「は、はい!」
緊張しているな。まぁ、大体みんなこんな感じだもんな。
「リアンとはほとんどこの海で一緒に冒険してきたな」
「それですね。まさかポセイドン様の町に行くことになるなんて考えてもみませんでした」
「最初は蛸まみれになっていたりしたのにな」
「過去の失敗を言わないでください! タクト先輩!」
叩かれる中、リアンの頭に手を置く。
「色々自分のことで悩んでいた時期があると思う。今言うのもなんだがリアンの歌声にはいつも助けて貰っていたし、槍を持って戦うリアンにも俺は助けられている。だからこれからも俺を助けてくれるか?」
「…今、それを言うなんてずるいですよ。タクト先輩。もっと早くに言って欲しかったです」
あぁ~やっぱり悩んでいたんだな。海にはイオンがいるからどうしても強さとかで迷ってしまうことがあったんだろう。フォローしなかったのは、俺の落ち度だな。
「悪かったな」
「本当です。でも、ちゃんとタクト先輩の役に立てていて、本当に良かったです。タクト先輩、私に指輪をつけて貰いますか?」
「あぁ」
俺が指輪をつけるとインフォが来る。
『リアンとエンゲージが結ばれました』
リアンは指輪を抱きしめる。
「ここが私の恋のスタートラインです。私の恋と誓い歌…聞いてくれますか? 先輩」
「あぁ。ん? 先輩?」
「え、えーっと…タクト先輩だとよそよそしいかなと思って…このタイミングで変えようと思ってました。い、いつか名前だけで呼べるように頑張ります」
色々葛藤していたんだな。呼び方ぐらいいつでも変えて良かったのに…まぁ、リアンなりの考えを尊重しよう。
「そっか…じゃあ、改めて聞かせてくれるか?」
「はい!」
リアンの新曲を夕日と亀の上で聞き、俺たちはホームに帰った。




