#668 ノイシュの訪問
翌日、学校が終わり、ゲームにログインする。するとナオさんから連絡が来る。
『リアンちゃんの指輪が完成しました』
受け取りに行かないとね。
俺が部屋を出るとキキがお客様が来ていると言う。誰だろう?特に何もフラグは踏んでいないと思うんだが…俺はチロルたちに遅れるかもしれないとメールを送り、客間に入ると予想外のお客様がいた。
「久しぶりだな」
「あなたは…ノイシュ…先輩?」
「はは。一応は兄弟子ということになるが、私は君に負けている。呼び捨てで構わないよ」
そう。スカアハ師匠のところで一度戦ったノイシュがいたのだ。
「随分いいところに住んでいるんだな。驚いたぞ」
「貰い物ですけどね…それで今日は何用ですか?」
「あぁ。実は君…いやタクトにお願いがあって、ここに来た」
すごーく嫌な予感。ノイシュが歯切れが悪そうに話す。
「実はその…ウィザードオーブの姫にディアドラ姫という姫様がいてな。その…なんだ? 内密にして貰いたいのだが私と恋仲となってしまってな」
あぁ…こうなるよな。これがクエストならもう大体わかる。
「これは国王様たちも知らないことだ。というより、ディアドラ姫とは不仲でな。現在ディアドラ姫はお城の別塔に幽閉状態なのだ。私はそこの護衛任務をしていてな」
「で、護衛している間に恋仲になったと?」
「あ…あぁ」
やはりこういう話をすると言うのは恥ずかしいものだよな。凄く気持ちはわかる。
「それで俺にお願いというのは?」
「あぁ。どうやら国王様たちに仲を察知されてな。私は護衛任務を外されてどうするべきか悩んでいるとディアドラ姫から手紙が届いたのだ。そこには先日お城で国王様と派手に喧嘩した者のことが書かれていてな。もしかしたら、我々の力になってくれるかも知れないとスカアハ師匠のところで話を聞くとタクトのことだと聞いて、ここに来たのだ」
なるほど。あの喧嘩がフラグを踏んでいたのか。すると部屋の扉が開くとシルフィ姫様が登場する。
「話は聞かせて貰いました!」
また凄いタイミングで登場するな。絶対このホーム、盗聴されているよ。
「つまりお姫様を連れ出して、国外に逃げ出したいんですよね?」
「あ…あぁ。タ、タクト? この方は誰だ?」
「フリーティアの第一王女様です」
固まるノイシュ。変だな…昨日のアーレイとリアクションが被っている。
「フリーティアの第一王女様!? し、失礼を!」
「全然失礼ではありませんよ。お姫様と逃げ出したいなら私が手を貸しましょう!」
「ダメに決まっているだろう!」
サラ姫様までなんでいるの?
「他国の姫の駆け落ちを他国の姫が手助けしてどうする! 下手をしたら、戦争になるぞ!」
「バレなければ問題ないですよ」
「そういう問題ではない! いいか? 絶対許さないからな!」
「あぁ…サラ姫様? その辺でノイシュが凄い複雑な顔をしていますから」
サラ姫様がノイシュを見ると謝罪する。
「済まない。別に貴殿の恋を否定しているわけではない。むしろ姫との恋を実らそうという思いは応援したく思う」
「なら」
「だが! 我が国が関わることは出来ない」
「えー」
シルフィ姫様が乱入してごちゃごちゃになってしまったな。話を戻そう。
「そもそもフリーティアにではなく、俺へのお願いでしたよね?」
「あぁ。タクトは確か冒険者だったはずだな?」
「今ではギルドのマスターをしていますけど、国に所属しているわけではないですね」
「それなら国同士の衝突にはならないはずだ。ただもしばれればただでは済まないと思う。卑怯ではあるが決めてくれ」
インフォが来る。
『依頼クエスト『ノイシュの駆け落ち』が発生しました』
依頼クエスト『ノイシュの駆け落ち』:難易度B+
報酬:結果により、変動
騎士ノイシュとウィザードオーブのディアドラ姫を駆け落ちさせよ。
俺の答えは決まっている。
「わかりました。お手伝いします」
「済まない。感謝する」
「タクト様ならそう言うと思いました」
「あぁ。しかし一国に侵入し、姫を連れ去るのは容易ではないぞ」
サラ姫様のご指摘はごもっとも。しかし個人的にあの王様にはもっと直接的な嫌がらせをしたいと思っていたところだったのだ。それができるなら俺は全力を出す。
「分かっています。出来ればバレずに行動をしたいと思いますので、色々お話を聞かせていただけますか?」
「もちろんだ」
ウィザードオーブの王都は本来なら結界で守られており、更に不審者を見つけるための鉄壁のシステムを作っているそうだ。
「一人一人の人の動きを監視する魔導アイテムと許可をしていない他国の者を察知する結界がある。これでウィザードオーブは徹底した監視体制を引いているのだ」
その話、変だね。
「その話が事実ならウィザードオーブの王都でどこの国にも所属していない不審者がいたら、察知しているということになりませんか?」
「もし王都の中でそういう輩がいたというなら察知していたということだな」
はい。これでウィザードオーブは真っ黒であることが証明されました。あの国はブラッディウォーズと間違いなく繋がっているということだろう。この分だとウィザードオーブに本拠地とかありそうだ。
まぁ、今はノイシュの話だ。
「その結界の精度はどの程度のものなんですか?」
「少なくともアイテムやスキルによる遮断効果は察知される。国民に化けるのも騎士の服装を着てもアウトだ」
むぅ…そう簡単にはいかないか。しかし侵入する手がないわけではない。魔王タルウィが実際に侵入しているからな。
「侵入と脱出をするなら地下ですかね?」
「私も同じ考えだ。ただ今は魔王の一件で警戒している」
それもそうか…そういえば昨日サバ缶さんが言っていたな。
「昨日のことなんですが、ウィザードオーブで巨大な植物が出たとかなんとか報告を受けたんですが」
「それならもうウィザードオーブが解決したぞ」
ダメか…恐らくウィザードオーブにはケルトの英雄たちがいるからな。こうなるとどさくさ紛れは出来ないということになる。こうなると重要なところがある。
「その結界と魔導アイテムのことなんですが、結界は魔法ですか?」
「あぁ。どちらも魔法の技術が使われている」
ならなんとか作戦は建てられそうだな。俺はノイシュさんにあるアイテムを渡し、作戦を説明する。かなり危険な作戦だが、ノイシュは理解を示してくれた。
俺は嘘の作戦計画書とキーアイテムをノイシュに渡し、ノイシュにはウィザードオーブに帰って貰った。クエスト開始は明日の夜だ。
「わくわくしますね! サラ」
「あのな…」
サラ姫様はかなり大変のようだ。本来ならガルーさんたちを振り回す姫様なんだけどな。
「自分は今からギルドメンバーと用事なので」
「じゃあ、私も」
「ダメだ! お父様が本調子ではないんだぞ? ほら、帰るぞ!」
頬を膨らませて、シルフィ姫様は引きずられていく。さて、約束の時間をやはり過ぎてしまっている。俺は急いでナオさんの所に向かい、指輪を受け取ると海に向かった。




