#653 アンラ・マンユVS連合国軍
夜二十時。アンラ・マンユはライヒの国境に迫る。国境にはウィザードオーブ除く全ての国の部隊にエルフの部隊が集結していた。
全体の指揮を取るのは周瑜。それぞれの国の部隊はそれぞれの国のリーダーが取るべきだが、周瑜は彼らに指示を出して、連合軍を連携させる役目となる。
『作戦開始! フリーティア飛行部隊!』
『突撃します!』
エアティスさん率いるホークマン部隊とサラ姫様が指揮を取るフリーティアのグリフォン部隊、シルフィ姫様率いるドラゴン、ペガサス部隊、獣魔ギルドの部隊が四方から襲いかかる。
するとアンラ・マンユの体中の蛇が反応し、目が光る。
『『『『全軍緊急回避!』』』』
全員が上昇すると自分たちがいた所に横一閃に光線が走る。
「食い付いたな…」
『全騎兵部隊突撃!』
『『『『おぉ!』』』』
アンラ・マンユの正面からライヒ部隊が引き受け、左右背後からそれぞれの国が突撃する。フリーティアの部隊は援護するようにアンラ・マンユに攻撃を開始する。
しかしアンラ・マンユは障壁で守られている。周瑜が指示を出す。
『タスラム発射』
『了解! タスラム発射します!』
与一さんがタスラムを使うとアンラ・マンユの障壁に着弾し、超爆発する。その結果、アンラ・マンユの障壁は消えて、アンラ・マンユにダメージを与えた。
それを確認した全軍は攻撃を開始した。全員が攻撃が止まる前に周瑜は指示を出す。
『砲撃支援開始! 第二魔法使い部隊、詠唱開始!』
『『おぉ!』』
全方向の地面からカルバリン砲が現れ、ライヒの部隊とプレイヤーたちが全員攻撃が終わったと同時に大砲を放つ。
『第一魔法使い部隊! 遅延魔法解放!』
『リリース!』
大砲が終わったと同時に魔法が一斉に放たれ、更に第二部隊魔法使い部隊の魔法が放たれる。
これでフリーティアの部隊がアンラ・マンユに接近戦を挑む。
「おらぁあああ! 竜技! ドラゴンクロー!」
「はぁあああ! スクリューランサー! 紫電!」
「連携行くよ! 皆! やぁあああ!」
エンゲージバーストを使ったみんなが襲いかかる。チロルたちはオリンピクスとビーストバーストを使っている。
地上では英雄たちが必殺技を切る。まずは盾に乗り、空を飛んでいるアーサー王。武器は俺と最初戦った時と同じだ。
「カレドヴールフ! 伝説解放! 剣技! ペネトレイトセイバー!」
アーサー王がカレドヴールフを突きを放つとカレドヴールフは猛回転しながら刀身が伸び、アンラ・マンユの体に当たる。
これに続くように趙雲、関羽、馬超、劉備が武器を構える。
「風竜よ! 旋風と成りて、敵を貫け! 風竜解放!」
「水竜よ! 敵を喰らい尽くせ! 水竜解放!」
「神馬よ! 我と一体と成りて、この一撃を放つ! 神馬解放!」
「我らが領地を破壊した報いを受けてもらうぞ! 雌雄一対の剣よ! 大蛇を斬り裂け!」
竜巻のドラゴンと成り、アンラ・マンユの右手に命中し、水のドラゴンが右足に噛みつき、動きを封じる。
馬超は乗っている馬が黄金に輝くと光速でアンラ・マンユの大蛇に槍の一撃を放つ。更に劉備の二刀流の風の斬撃が大蛇をバツ字に斬り裂く。
左側から桜花の部隊から上杉謙信、伊達政宗、真田幸村に加え、源義経、源頼光が迫る。
「速く! もっと速く! 今剣!」
「斬り裂け! 童子切安綱!」
二人の剣がアンラ・マンユの大蛇を見事に斬り裂く。
しかしアンラ・マンユの大蛇はすぐに再生し、体のダメージもすぐに回復してしまう。それでも攻撃を続けるしかない。
スカアハ師匠はクーフーリンが槍を構える。
「「ゲイ・ボルグ!」」
投げだゲイ・ボルグが三十の鏃となり、アンラ・マンユに命中するとアンラ・マンユの杖が光出す。
『攻撃をさせるな! 集中攻撃だ』
周瑜の指示でみんなが必殺技を使うがびくともしない。そんな中、一人の大男が巨大な弓を構えると覇気が鏃に集束する。
「源氏は弓において、最強! 轟覇閃!」
放たれた矢が破壊の閃光となってアンラ・マンユに命中するとアンラ・マンユはぐらつく。弓を放ったのは源為朝。日本において最強の弓使いと言われている武将だ。
何せこの人、弓矢で船一隻を沈めた伝説があるんだ。命中率なら那須与一なんだろうけど、破壊力では間違いなくこの人が日本一の弓使いだと思う。
この一撃にムキになる人がいる、トリスタンだ。
「東には恐ろしい弓使いがいますね…しかし美しくない。フェイルノート、伝説解放! プレイマサカ!」
トリスタンが弓の弦を手で弾く度にアンラ・マンユが斬られる。これは弓なのだろうか?
トリスタンの他にも各々が動く。まずはアーサー王が空からエクスカリバーの必殺技を放ち、ガウェインと曹操とローランが剣を構える。
「ガラティン、聖剣解放! 太陽よ! ここにあり! サンライトカリバー!」
「倚天剣、伝説解放! 天を貫け…天元覇擊!」
「デュランダル、聖剣解放! 聖剣技! ラ・ラム・イモルテル!」
それぞれの光の斬擊をアンラ・マンユは受ける。更にサルワを死に追いやった禁呪ラッシュが決まる。
『やったか…』
『『『『それは言ったら、ダメな言葉!』』』』
プレイヤー全員から責められる周瑜である。そして全員の危惧が当たる。スーパーノヴァで発生した爆煙が風で晴れていくと無傷のアンラ・マンユが現れる。
『く…攻撃続』
続行を指示しようとしたときだ。アンラ・マンユの大蛇たちが目が光ると全方位に光線が放たれる。
『英雄障壁!』
英雄たちが障壁を展開するがそんなもので防げる攻撃じゃなかった。全軍が光線を浴びて大爆発し、全滅する。
しかし全員が蘇生する。
『料理の力で助かるとはわからないものだ…全軍攻撃続行! もう蘇生はない! 生きたければ、攻撃をし続けろ!』
『おぉ~!』
全員に俺のカレーライスやクリームシチューを初め、コックやエルフたちがチロルたちが提供しているバターやチーズを使った料理でバフが発生しており、蘇生したのだ。
『大精霊召喚!』
エルフたちが風、火、土、水、光、闇の大精霊を召喚する。
シルフ?
? ? ?
ヴルカン?
? ? ?
ノーム?
? ? ?
ウンディーネ?
? ? ?
アルフ?
? ? ?
スヴァルト?
? ? ?
アンラ・マンユが巨大過ぎて小さく見えるが十分大きい精霊たちだ。
そして精霊たちの攻撃が始まる。それは自然の猛威そのものだった。巨大竜巻や同じ規模の火炎旋風、砂嵐、シースパウドが襲い掛かり、天から白と紫の光がアンラ・マンユに直撃する。しかし無傷だ。
「やはり主神クラスでは厳しいのぅ…」
精霊と神の関係は完全に上下関係にある。それでも下の神なら上位精霊は勝てる強さを持っている。だが、流石にアンラ・マンユ相手では荷が重過ぎた。
攻撃を続けてくれていた精霊たちがアンラ・マンユの衝撃波を受けて、消えてしまう。更にアンラ・マンユの目が光ると全員が動けなくなる。そして杖を構える。
「な…めんじゃねぇ~!」
「く…はぁああ! やらせない!」
「俺は…ライヒの騎士団長だ!」
クーフーリン、アーサー、ローランは気合いで解除する。フリーティアではシルフィ姫様が切り札を切る。
「神召喚!」
まさかの神の召喚に全員が驚く。天から現れたのは黄金の剣を持つ美男子の神。
フレイ?
? ? ?
フレイは北欧神話の豊穣の神様。勝利の剣を持っている神と言われる。
フレイが剣をアンラ・マンユに向けると黄金の光がアンラ・マンユを貫き、姿が消える。一撃限定の召喚だったらしい。しかしアンラ・マンユは空いた穴を治すと遂にぶち切れる。
『アァアアアアアアアアアア!!』
アンラ・マンユが絶叫すると漆黒の霧が体中から噴出する。それを見た英雄たちとプレイヤーたちは距離を取る。
『あれに触れるな! あれに触れれば命はないぞ』
周瑜は直感で警告する。それはもちろん当たっていた。それはシルフィ姫様を苦しめた魔素の上位に君臨する魔源素という魔神の源である魔素だった。その魔源素が全軍に迫る。
『誰かあれを閉じ込められるか?』
『俺が山で』
『普通の山ではあれは無理だ! 私がやる! しかしあの霧を集めなければ封じ込めないぞ』
『それならば私がしましょう。しかしチャンスは一瞬です』
諸葛亮がなんとか立ち上がり、愛用の羽扇を振るう。
「祈祷!」
すると全方位の風の流れが不自然にアンラ・マンユの集まるように変化する。結果アンラ・マンユに上昇気流が発生してしまう。しかしスカアハ師匠は魔神素が集まる瞬間を見逃すはずがなかった。
「氷のルーン!」
アンラ・マンユを閉じ込めるように魔氷の城が作り出される。しかし怒れるアンラ・マンユはその城を一撃で破壊し、目が光る。今度は空に突如黒雲が発生し、地上が夜になる。
そしてアーサー王に黒雷が落ちる。アーサー王はエクスカリバーで斬り裂こうとしたが斬り裂けず、感電する。それは序章に過ぎず、フィールド全体に黒雷が降り注ぎ、無事な人間は麻痺になる。
アンラ・マンユは杖を空に掲げると黒雲から紫の光芒が地上を照らす。それは神秘的な光景だったが、光芒に照らされた者は紫の光となって、消滅する。それを見た全員が戦慄する。
次々、光芒によって地上が照らされ、照らされた者が次々消えていく。それは歴戦の英雄たちでも例外ではなかった。
やがて光芒による殺戮が終わったと思ったら、夜闇が真っ赤に染まる。それは知っている光景だ。黒雲から真っ赤な魔力の塊が落下して来ていた。
全員が絶望する。何せ本気になったアンラ・マンユに一方的にやられるしか無かったのだから。するとアンラ・マンユが何かを察知して、ゴネスの方向を向くとその場から転移していなくなった。
この場にいる者ならこの魔力の塊で十分だと思ったのかも知れないがアンラ・マンユはこの場にいない者を計算に入れていなかった。マーリンが転移して現れたのだ。
「遅いぞ。マーリン。早くあの魔力の塊と死んだものを頼む」
「任せてくれ。ほい」
マーリンが杖を振るうと魔力の塊が消える。正確には転移された。何も存在しないマーリンが作った世界に。そしてみんなを蘇生させる。しかし死んだ者は動けない。
「ダイレクトにあの魔神の力を浴びたからね。でも安心していいと思うよ」
そう言うとマーリンはゴネスの方向を見た。




