#648 借金の肩代わりとジン参戦
結局俺は早めの夕飯を食べて、ゲームにログインした。俺は自分が思いついた策を諸葛亮さんと周瑜さんに話す。
「なるほど。魔神には魔神をぶつけますか…しかしその魔神は戦ってくれますか?」
「話が出来ますし、交渉で有利な状況も作るので、いけると思います」
「いずれにしても俺たちでは策がないことは事実だ。策があるならそれに越したことはない。その策はお前に任せる。俺たちはこれからライヒの魔王の迎撃に向かう。例の策にも時間制限があることを忘れるな」
「はい。ではご武運を」
俺は蜀と呉の軍を見送り、俺たちはパラディンロードでの作戦の詳細を決める。その結果、ルークたちはエルフの森へ。俺はサンドウォール砂漠に向かうことになった。
今回、シルフィ姫はエリクサーラピスに向かうことになった。たぶんこれで決着が着くだろう。本人は非常に不服としていたがカインさんたちからのお願いとあっては、聞かないわけにはいかないだろう。更に召喚師プレイヤーの有志も参加することになった。
まぁ、パラディンロードには戦力が集まっているからあまりお得感がない。それならエリクサーラピスに向かったほうが経験値的には美味しいのだろう。
俺はまずネフェルの町に向かい、ファリーダと共にこの町の代表と面会する。
「お前か? アラジンの魔法のランプが欲しいというのは?」
「はい。彼とは友人でして、事情は聞きました。なんでも豪遊した借金の代わりにそれを没収したとか」
「その通りだ。アラジンの友人というなら今すぐ奴の所在を教えてもらおう。まだ返済できてはおらんからな」
兵士が武器を構える。礼儀がなってないな。
「彼を追う必要はありません。魔法のランプのお金も含めて、私が代わりに支払いましょう。それで彼の借金の総額はいくらですか?」
「ふん…そうだな~。一億だ」
絶対に嘘だな。まぁ、いいや。一億で魔法のランプを貰えるとか安すぎる。
『全くだわ。あいつの価値が一億…いえそれ以下とか笑えるわ』
魔法のランプと残りの借金込の値段だからそうなるよな。俺は一億をあっさり出すと全員がざわつく。
「一億ある。さぁ、その魔法のランプを渡してもらおうか」
「な…ま、待て! 今のは間違いで」
ファリーダが巨大な石柱を殴って砕く。
「間違い? 一億って言ったわよね?」
『は…はい…』
「すみません。石柱代は弁償しますよ」
こうして俺は魔法のランプを手に入れて、アラジンがいる神殿に向かった。
俺たちが探しているとそこにはボロ布に包まれたミイラ寸前のアラジンとやせ細っているジンの姿があった。
『無様ね』
『言ってやるなよ』
俺はとりあえず水と食糧を出して、二人を復活させる。
「生き返ったぞーーー!」
「水や食糧のありがたみを知ったのは初体験だ…それで? お前たちは何しに来たんだ? 神殿への挑戦か?」
「あら? 随分察しが悪くなったわね。ジン。タクトが何を持っているかわからないのかしら?」
「何? ん? お前まさか俺のランプを持っているのか?」
俺は魔法のランプを取り出す。
「あぁああ! ボクの魔法のランプ~」
飛びついてきたアラジンを躱す。
「俺はお前の借金を支払ってこいつを手に入れた。つまりお前の借金を肩代わりしたわけだ。この意味はわかるよな? ジン」
「…何が望みだ?」
「今、ある魔神が外で暴れている。そいつと全力で戦って欲しい。この条件を飲むなら魔法のランプは今すぐアラジンに返そう」
「戦うのは別にいいが、俺が外には出れないことを忘れてないか?」
するとファリーダが説明する。
「それなら手があるから大丈夫よ」
「え!? 外の世界に行けるの!? しかも魔法のランプを返してもらって!? 行く! 絶対行く!」
「決まりだな」
俺はアラジンに魔法のランプを返し、バトルシップでサンドウォール砂漠の境界の砂嵐を強行突破した。
「…まさか本当に突破するとはな。流石俺様と同じ上級種ってところか」
「ここが砂漠の外の世界! 夢にまで見た新世界だ!」
良かったね。ただ観光としたら、最悪の時期だけど。ジンは状況を察して俺たちを見る。
「…おい。まさか俺が戦うのはあいつか?」
「そうよ」
「主神クラスの肉体を得た魔神が相手とは聞いてねーぞ!」
「言ってないもの。聞かなかったそっちが悪いんでしょう? それとも戦うと言った言葉を敵を前にして撤回するのかしら?」
ジンがファリーダの言葉に苦い顔をする。訳が分からない様子のアラジンだが流石に何かを察した。
「え? え? 何?」
「アラジン、諦めろ。ほら、行くぞ」
「う、うん。でもジン、なんかいつもより厳しい顔をしてない?」
「そうだな。はっきり言っておくぞ。アラジン。俺たちが今から戦う敵は神殿の頂点にいる奴と同じくらいの強さがある化物だ。しかも神殿と違って命懸けの死闘になる。間違いなく言えることは楽しい観光の旅にはならないってことだ」
絶句するアラジンをジンは掴むと俺たちに言う。
「お前ら、絶対ろくな死に方しねーぞ」
「あぁ。知っている」
「えぇ。知っているわ」
「はぁ~」
ため息をついてジンはアラジンと共にアンラ・マンユに向かった。
「ちょ、ま!? 嫌だぁあああああ!!」
叫ぶことしか出来ないアラジンにこの言葉を贈ろう。グッドラック!
俺は諸葛亮さんと周瑜さんに連絡を入れる。
『策は成功しました。俺はこれから召喚師たちと共にパラディンロードの魔王討伐に向かいます』
バトルシップでエルフの森に向かい、ルークたちと合流する。するとエルサリオンさんが呟く。
「かつては恐怖の象徴だった船がまさか味方になるとはのぅ…わからないものじゃ」
「あぁ~…やっぱり知っているんですね」
「お前さんも知っておったんじゃな。安心するといい。わしらも戦争を何度も起こしてきた。今は味方をしてくれておるエクスマキナを非難はせん」
「ありがとうございます」
俺はイクスを見るとプレイヤーたちに群がられていた。せめてバトルシップの甲板に乗せて欲しいという催促だ。なぜかクーフーリンも参加している。
「決定権はマスターにあります。わたしに言わないでください」
全員がこちらを見る。
「甲板ならいいじゃないか? ただ兵器の上とかには乗るなよ」
何人か残念そうな顔をする。絶対やるやつがいると思ったよ!俺がそっち側ならやるからな!
『じゃあ、中も』
「それはダメです」
そこだけはイクスは譲らないよな。因みにリリーたちがブリッジなどの椅子に座ろうとしたときのイクスは怖かった。
「もしボタンなどに触ったら、お尻電気ショックで二度とマスターの前には立てないお尻となるので、注意してください」
リリーたちは完全にビビり、椅子には座らなくなった。俺の椅子にもその装置があるかと思うと結構怖い思いをしながら座っている。
全員で食事を済まし、時間を迎える。
「バトルシップ、発進!」
「バトルシップ、発進します!」
俺たちはパラディンロードに出発した。




