#632 九尾VSアジ・ダハーカ
アジ・ダハーカは九尾を見て興味無さそうに話す。
『ふん。化け狐の親玉か…』
『そういうてめぇはトカゲの親玉か? トカゲが狐に勝てると思っているのか?』
『くだらん。実力の差もわからん奴と話すほど暇ではない。失せよ。今なら見逃してやる。我らの目的はこの国の壊滅だからな』
ご丁寧に目的を宣言してくれてどーも。俺たちは今のうちにこいつの対策を考えないといけない。九尾が勝つことに越したことはないがせめて弱点か何かを見つけないと。
『この国がどうなろうと俺様の知ったことじゃないが俺様の領域に勝手に侵入した挙句、住処まで滅茶苦茶にしておいて、黙っていられるわけ』
九尾の姿が消えるとアジ・ダハーカの心臓目掛けて渾身の爪を放つ。
『ねーだろうが!!』
九尾の爪がアジ・ダハーカの心臓に突き刺さる。しかしアジ・ダハーカは全く意に介さず、九尾を見る。
『くだらんな…』
心臓を貫いた爪に蛇が巻き付き、手に噛み付こうとする。
『そうかよ! 獄炎!』
九尾の爪から地獄の炎が発生し、アジ・ダハーカを燃やすがやはり効いていない。
『その程度の炎しか出せんのか?』
『ッ! てめぇ…絶対ぶっ殺す!!』
アジ・ダハーカの態度が九尾の癇に障り、九尾は距離を取ると九つの尻尾が鋭くアジ・ダハーカに迫ると障壁に阻まれる。それを見た九尾は息を吸い、正面に陰陽を表す太極図が描かれ、渾身のブレスを放つ。
『消し飛びやがれぇええ! 太極ブレス!』
まるで宇宙のようなブレスが放たれる。しかしアジ・ダハーカの障壁はビクともしていない。
『陰と陽の気を合わせ宇宙の根源の力を集めたブレスか…中々だが、我らには効かん』
流石の九尾もこれには驚いた。
『(化物だと理解していたが、まさかこれを簡単に防げれるとは思ってなかった。並みの修羅神仏なら消し飛ばしているブレスなんだがな…)』
しかし九尾は気持ちを切り替え、気を高める。そしてかつてディザスター・キマイラをボロボロにした必殺技を使用する。
『天変地異!』
特大の黒雷と嵐と巨大竜巻がアジ・ダハーカを襲し、最後に巨大隕石が落下すると山頂を消し飛ばした。しかしアジ・ダハーカは無傷で佇んでいた。
『終わりか?』
『嫌味たらしい野郎だぜ…いいぜ。これで終わりだ』
九尾が手を合わせ、唱える。
『因果の法よ。我が力に屈せよ! 因果消滅!』
「出ました! 九尾様の切り札!」
「因果律に干渉し、敵が存在する原因をこの世から消し去ることで敵が存在する歴史そのものを消滅させる大技です!」
因果律まで操るのか…滅茶苦茶だな。
因果律とは原因と結果の間には一定の関係が存在するという原理のこと。恐らく九尾はアジ・ダハーカが生まれる原因を消し去ることで生まれた結果を無くすことが出来るのだろう。
よくタイムマシンで過去の歴史に関わったせいで未来が変化する理屈と一緒だ。九尾の場合はこの場で歴史の一部を消滅させ、現在の歴史を書き換えるというとんでもないことをしてみせた。
これによりアジ・ダハーカは消滅した。九尾の勝ち?え?でも…イベントの流れが変だ。戦うんじゃなかったのか?
『ははは! ざまーみろ! 余裕ぶっこいているからだ! バーカ!』
『ふん。この程度で我らを消せると本気で思っているのか?』
消滅したアジ・ダハーカが再び現れた。嘘だろう。
『な…てめぇ…なんで』
『ふん。我らはこの世界の悪そのもの。我らの存在そのものが必然なのだ。因果律を使って我らを消したければこの世全ての悪を消し去ることだ。最もそんなことが出来ればの話だがな』
ははは…そりゃあ、無理だ。この世界はそんな風に出来てはいない。全て善行の世界は俺は存在しないと思っている。
究極的な話だが俺たちは生きているだけで酸素を吸い、二酸化炭素を出している。これを善か悪かと聞かれたら、俺は悪だと思う。俺たち人はこの悪に対して生きるために仕方が無い行為だと理屈を付けて、目をそらしている。
それじゃなくても善か悪かは見方で変化する。例えば恋人を殺した奴を殺すことは善と取るか悪と取るかは人それぞれだろう。その復讐は正義だと思う人、人殺しは人殺しだと悪と考える人もいる。
よって、こいつを倒す方法はこの世界から全ての命…いやひょっとしたら、物質全てを消し去るしかないということになるかもしれない。運営さん、クリアなんて出来ません。
『理解したか? この世界の存在では我らには勝てぬ』
『…へ。ならこれならどうだ! 顕現せよ! 大焦熱地獄!』
九尾とアジ・ダハーカの姿が消える。
彼らは極熱の地獄にいた。そして互いの体が熱で焼けていく…はずであったがアジ・ダハーカはやはり涼しげだった。
『冥界に落とせば我らを倒せるとでも思ったのか? 言ったはずだぞ? 我らは悪そのものだと。寧ろ冥界こそ我らの力が高まる場所だ。そこに落とすとは愚かとしか言えんな』
大焦熱地獄の全域に無数の魔方陣が展開させる。
『くそ!』
『消えよ』
大焦熱地獄はそれを遥かに凌駕する力に包まれた。そして消えた空間からボロボロになった九尾が現れ、落下すると人の姿になる。そしてアジ・ダハーカも山頂に現れ、九尾を見下ろす。
あの九尾を結局、あの場所から動かず倒したように見える。これがゾロアスター教最強の悪龍アジ・ダハーカの強さか。
俺は深呼吸し、腹に力を溜めるとアジ・ダハーカを睨む。
「みんな、回復したな?」
『うん(はい)!』
「え!? ちょっと待って! タクト君、あれと戦う気なの!? 無理ゲーだよ」
メルが言うことはわかっている。それでも誰かがいかないといけない。
「九尾はまだ生きている。あいつにはそれなりの恩義はあるし、ここで死なせてはいけない奴だと思うんだ」
「なら私たちも!」
「ダメだ」
「なんで!」
俺はみんなに話す。
「あいつに勝つためには弱点を見つけて、作戦を立てるしかない。そのためには当然時間はかかるし、迎撃準備を整える時間もいる。国の被害を最小限に抑えるためには波状攻撃で足止めするのがベストなんだ」
「それは…そうかも知れないけど」
「メル、言っても無駄だ。指揮のこととか諸々任せて、お前らはいけ」
「あぁ、悪い」
するとセチア、リビナ、リアン、ファリーダがやってきた。
「タクト様、私たちも行けます」
「そっか。悪いが力を貸してくれ」
『はい!』
更に葛葉と九尾の側近の子たちがお願いをしてきた。
「あ、あの!」
「我々も行きます!」
「九尾様の面倒を見るのは私たちの努めですから」
「わかりました。九尾様の救出はお任せします」
俺たちは雪山のもう姿形が無くなってしまっている村に転移し、アジ・ダハーカと対峙した。




