#628 落ちる凶星
俺たちが絶句しているとピエールは笑い、アンラ・マンユを称える。
『ふふ…あーはっはっはっはっは! 見よ! これこそが我らが神の姿だ!』
神興国で崇めていた神がこれでいいのか?こいつは苦しんで死んでいった人たちの姿を見てなかったのかよ!
『さぁ! 我らが神よ! その力を世界に示したまえ!』
魔神アンラ・マンユの目が光る。次の瞬間、俺たち全員に寒気が走った。そして全員が倒れこむ。
「シグルド!? 皆さん!? く…遮断結界!」
ブリュンヒルデさんだけが無事で遮断結界を貼ってもらうと俺たちは恐怖の状態異常から回復し、俺、シグルドさん、ファリーダは起き上がる。
「助かりました…ブリュンヒルデさん」
「いえいえ。これぐらいならまだなんとか出来ます」
「しかしなんという力だ。まさかこの力、世界中に発動しているのか?」
「あのレベルの魔神ならそれぐらい余裕でしょうね。並みの人ならこうなるわ」
ファリーダがそういうとリリーたちはまだ震えて立ち上がれないでいた。
「正真正銘の魔神からのダイレクトな力を浴びたからね。こうなるのは当然よ」
「俺はなっていないが?」
「私たちの加護があるからよ。あたしも元魔神だから抵抗は出来るわ。一度よく似た経験をしているからね」
してるんだ。そういえば以前そんな話を聞いたな。
『見よ! 恐れおののけ! そしてひれ伏すがいい! これが我々の神の力だ!』
いちいちピエールが雑魚に見える。こいつは何をしたんだろう?せいぜい生贄を集めたぐらいだろうに…。俺にはそれすらしていないように見えるけどな。
『さて、これだけではまだ足らんな。どれ…まずは一国消えてもらうとするか。どの国がいいかな?』
わざとらしい。どうせ狙うのはここだろう。まぁ、おかげで準備の時間ができた。俺は黄龍の杖に語りかける。
『黄龍、みんなを守るために力を貸してくれ』
『任せよ』
『やはり不遜にも我が国に攻め入った愚か者どもがいる国に消えてもらうとしよう! フリーティアを消し飛ばせ! 我が神よ!』
我々だったり、我だったり、こいつは危ない薬でもしているのだろうか?そんなことを考えている場合じゃないか。魔神アンラ・マンユが杖を掲げる。なんだ?
すると俺たちの周囲が赤褐色に照らされる。これは…俺たちは空を見る。はは…嘘だろう。運営。ブリュンヒルデさんが言う。
「なんて禍々しく大きな魔力…」
あれは魔力の塊なのか…空にはまるで太陽のような球体が落ちてきていた。圧倒的な絶望…だが抗わないわけにはいかないんだよ!
「封印石召喚! こい! 黄龍!」
フリーティアの上空に黄龍が出現する。黄龍の光を浴びたことで国民全員の恐怖は解除され、全員が立ち上がった。
『タクト(さん、様、お兄ちゃん)!』
「全員切り札を全投入! あれを潰すぞ!」
『わかった(はい)!』
全員が切り札を切り、リリーがドラゴンの魔方陣を展開する。
『竜魔法! ドラゴニックブレッシング!』
リリーのバフの発生により、他のバフ魔法が飛び交い、リリーたちは攻撃を開始した。それを見た全員が動く。お城ではサラ姫様が叫ぶ。
「フリーティアの騎士よ! フリーティアの英雄に続け! あれを消し去るのだ!」
『お…おぉ!!』
ギルドではメルが指示を出す。
「みんな切り札を全投入! 押し返すよ!」
『おっしゃあああ! 死んでたまるか! クソ運営!!』
みんな必殺技を使っては運営に対して罵詈雑言の嵐である。獣魔ギルドではカインさんが指示を出す。
「戦える者は全員即座に召喚しろ! 全員のシンクロバーストであれを潰す!」
『はい! ギルマス! レギオン召喚!』
「というか。禁呪でなんとかならないんですか?」
「ボクの禁呪じゃあれは無理だって。そもそもフリーティアで使えるわけないでしょうが! ほら、行くよ!」
全員が最大限の攻撃をするがビクともしない。そして黄龍が叫び、黄金障壁が展開されると魔力の塊とぶつかり、落下を止める。
みんなが歓声を上げるがこれは止めているだけだ。いずれ黄龍は消えてしまう。それまでになんとかしないと。こうなると全火力を同時に浴びせて、破壊するしかない!
「ブリュンヒルデさん、あれを止めることは出来ますか?」
「私とヘリヤの力だけではとても」
「…主、天昇を使います!」
俺はブランを見る。
「行けるのか?」
「一応最初の頃より強くはなっていますから大丈夫です。それに主がそんな姿を見せているのにここで足踏みするわけ行きません」
「そうじゃな。妾も付き合うぞ。ブラン」
二人は覚悟を決めたんだな。俺はみんなに通信を繋ぎ、指示を出す。
『全火力の同時攻撃に賭けよう! 盾を持っている人は指示と同時にあれに必殺技を使ってください!』
『それだけで止めれますか?』
『その心配はいりません。私がなんとかしましょう』
シルフィ姫様!?
『私の召喚獣たちとタクト様の黄龍と双璧を成す召喚獣を召喚します。ですから安心して全力を使ってください』
それって、まさか…しかしそれなら俺も全力を出せる。
『わかりました』
『では、行きますよ。久々に全力を見せちゃいます! レギオン召喚! 封印石召喚!』
フリーティア城が一瞬で伝説の魔獣たちの巣窟になった。シルフィ姫様が召喚したのはどれも名前すら識別できなかったが、見なくても大体わかる。
燃える巨剣を持つ炎の巨人とか殺気増し増しの銀狼、金ピカのゴーレム、月輝夜を遥かに超える大きさのオーガ、まるでエルフのような妖精、サフィを超えるドラゴンのような魚、六種類のドラゴン、刀を持っている銀髪の鬼の角があるイケメン、銀毛の九尾の狐、星のような輝きを放つペガサス、百首のドラゴンなど。
敢えて言おう。ネタバレラッシュじゃねーか!識別では全部見えないけど、大体わかるわ!そしてこんな化物軍団に勝てるわけないでしょうが!決闘しなくて本当に良かった。
そして黄龍の隣に同じ黄金の輝きを放つ鹿のような神獣が現れた。鹿と言っても顔や体はドラゴンで四足の足には黄金の馬の蹄がある。こいつこそ黄龍と共に語られる中国の四神の中心的存在として知られている存在。
麒麟?
? ? ?
その二体がこうして並ぶ様は状況が状況で無ければゆっくり見たいものだ。
『こうして並び立つのは幾年ぶりかな? 黄龍よ』
『そんなこと覚えとらんわ。そんなことより麒麟よ。手を貸せ。こいつは想像以上にやばいぞ』
『言われるまでもない! ここは我が守護せし国だからな!』
麒麟からも黄金結界が張られ、更に障壁が何重も重ねられる。シルフィ姫様たちの召喚獣だ。更に獣魔ギルドからも封印石召喚が使われる。ネフィさんとカインさんだ。
「封印石召喚! 力を貸してください! ウリエル!」
「封印石召喚! 僕ら猫の守護神よ! その力、僕らに貸してくれ! スフィンクス」
ウリエル?
? ? ?
スフィンクス?
? ? ?
美しい紅蓮の六枚の翼を持つ天使と以前ケットシーの村で出会ったアブル・ホールとは別と思われるスフィンクスが召喚された。
ウリエルはミカエル、ガブリエル、ラファエルと共に神の御前に立つ四人の天使と言われている。天使の中でも最強クラスの天使だ。その名前の意味は神の光、神の炎を意味する。
召喚されたウリエルは太陽のように輝くと両手の双剣を振るう。飛ばれた斬撃は魔力の塊に接触すると大爆発を起こした。同じくスフィンクスも太陽のように輝き、強烈な太陽のブレスを放った。
しかしそんなメンツが総がかりで攻撃しても魔力の塊はビクともしない。これはこれでおかしい。
「本来ならもうとっくに消し飛ばしているはずよ。だけどこっちは封印されている状態での限定的な力の行使。対して向こうはゴネスの国民の命を恐らく全て使った本物の降臨術式。差が出るのは当然よ。それでタクト? やるのよね」
「あぁ…やるぞ! シグルドさん! これを!」
俺は聖剣グラムをシグルドさんに貸す。ここ重要!
「これはグラム? この力はまさか父が使っていた頃の」
「使えますよね?」
「ふ…あぁ! 遠慮なく使わせてもらう! 伝説解放!」
グラムの聖なるオーラが爆発する。
聖剣グラム(伝説解放):レア度10 剣 品質S
重さ:150 耐久値:2000 攻撃力:2500
聖剣効果:聖剣技【シュトルムヴォータン】、悪魔特攻(究)、神聖属性ダメージ(究)、時空切断、女神の加護
魔剣効果:吸収、多乱刃、竜特攻(究)、人特攻(究)
魔剣グラム本来の姿。神聖属性の剣でファフニールの力と運命の女神の加護を宿している伝説を超える聖なる剣。その力は神々の武器にも引けを取らないほどの力を有している。
更にブランとセフォネが切り札を使おうとするがやはり怖いようだ。
「タクト…情けないが血を吸わせて欲しいのじゃ」
「…いいぞ。ブランはどうする?」
「では主‥頭に手を乗せてください」
俺はセフォネに血を吸わせるとセフォネの目に強い光が宿った。
「これで元気百倍なのじゃ! ゆくぞ! 血醒!」
セフォネから凄まじい魔力が発生し、目が真っ赤になる。
名前 セフォネ ヴァンパイアクイーン(血醒)Lv10
生命力 170→210
魔力 250→300
筋力 148→198
防御力 110→160
俊敏性 142→192
器用値 200→250
スキル
鎌Lv18 影翼Lv18 吸血Lv25 暗視Lv32 吸血爪Lv10
影潜伏Lv22 影操作Lv12 影召喚Lv30 影移動Lv7 隠密Lv20
暗黒魔法Lv10 氷魔法Lv17 時空魔法Lv15 引力操作Lv4 夢幻Lv2
譲渡Lv5 蘇生Lv20 不死Lv26 血流操作Lv22 出血弾Lv18→消滅弾Lv18
血竜Lv6 金縛Lv6 障壁Lv7 血晶Lv13 斥力操作Lv1
重力操作Lv1 死滅光線Lv1 瘴気Lv1 黒霧Lv1 宇宙魔法Lv1
魔法侵食Lv1 魔素解放Lv4 呪滅封印Lv26 暗黒波動Lv16 生物創造Lv1
吸血鬼技Lv1 吸血鬼魔法Lv1 吸血鬼の加護Lv10
なんか凄いぞ!
「ゆくぞ! 魔王セフォネの名の元にいでよ! 我が家来たちよ! 生物創造!」
そう言うとセフォネの足から血が広がり、その血の中からエーテルビースト、ウッドドラゴンが現れた。これはセフォネが戦闘に参加して倒したモンスターを召喚、いや創り出すスキルか!
「汝らの王の命じゃ! あの魔力の塊に攻撃せよ!」
セフォネの命令を受けて、二匹は攻撃する。ヴァンパイアが上位種なわけだよ。更にセフォネが天に手を向ける。
「ここは妾たちの大切な場所じゃ! お主如きが壊していいところではないのじゃ! 吸血鬼技! ブラッディクリエーション!」
セフォネの足元の血から次々、セフォネが現れる。これは分身?いや、気配が明確にある。
「「「「「離れるがいい! 斥力操作!」」」」」
増えたセフォネ全員が斥力操作を使い、魔力の塊が黄金障壁にぶつかる力が弱まる。
「「「「「ぬう! ぁぁぁああああ! 今のうちじゃ! タクト! ブラン!」」」」」
ブランが膝を付き、俺は頭を撫でいる。
「ふふ…行きます! 天昇!」
光の柱が発生し、天使の翼が舞う。そしてブランの翼が二枚増え、天使最高位の姿となる。
名前 ブラン ドミニオンLv10→セラフィムLv1
生命力 146→196
魔力 242→292
筋力 176→226
防御力 190→240
俊敏性 169→219
器用値 160→210
スキル
飛翔Lv35 光盾Lv36 槍Lv38 強制Lv29→強行Lv29 光魔法Lv18
浄化Lv5 聖櫃Lv5 障壁Lv7→神障壁Lv7 魔法妨害Lv2→魔法無効Lv2 防風壁Lv3
羽投擲Lv7 神気Lv21 封印魔術Lv10 疾魔法Lv20 炎魔法Lv20
神聖魔法Lv20 爆魔法Lv35 氷魔法Lv35 時空魔法Lv35 聖波動Lv9→神波動Lv9
光輝Lv6 集束Lv3 光雨Lv10 光輪Lv31 蒼雷Lv1→神雷Lv1
雷霆Lv1 天鎖Lv1 光芒Lv1 聖弾Lv25→神弾Lv25 聖療Lv5
聖域Lv7→神域Lv7 守護結界Lv17 遮断結界Lv1 神罰Lv14→神撃Lv14 魔力操作Lv16
同時詠唱Lv10 連続詠唱Lv10 天使技Lv1 天使魔法Lv1 多連撃Lv24
中天使の加護Lv27→大天使のの加護Lv27
天昇が終わったブランがウリエルと並ぶ。
「ウリエル様、私も共に」
「ふふ。いい気迫です。この国の皆に天使の祝福を与えてください。それまでの時間は稼いで見せます」
「はい!」
ブランが槍を掲げる。
「天使技! エンジェリックシンフォニー!」
フリーティアに教会の鐘の音が響き、全員の魔力値が大幅に上がり、技の火力が上がる。そしてブランが槍を構える。
「雷霆!」
雷が魔力の塊に当たってるがまだ足りない。これが全力のセフォネとブランの強さか…俺も負けていられないな。
俺はグランアルブリングを取り出す。相手は魔神の一撃、お前の全力の力使わせてくれ。
「セチア、使わせてもらうぞ!」
「はい! ご存分に!」
「魔力解放! 宝玉全解放!」
全ての宝玉が眩い光を放ち、グランアルブリングは真の姿を見せる。
グランアルヴリング(魔力、全宝玉解放):レア度10 魔法剣 品質S+
重さ:120 耐久値:4000 攻撃力:2000 魔力:1000
魔法剣効果:万物切断、英気、詠唱破棄、大物特攻(究)、英雄障壁、全属性アップ(究)
宝玉効果:先制、集束、荷重操作、衝撃波、透過、魔法再時間短縮(究)、魔法剣技【アルティメットシャリオ】
刻印効果:俊敏値アップ(究)、未来予知
アダマンタイトで作られ、他にペリドット、ルビー、サファイア、エメラルド、シトリン、オニキスを使用した魔法剣。その斬れ味は伝説の武器にも引けをとらず、圧倒的な魔力は伝説の武器を遥かに凌ぐ程の性能を有している。自作する魔法剣の中でもトップクラスの魔法剣。
これが今の俺たちが出せる最大火力だ。
『全員準備はいいか?』
『『『『『はい!』』』』』
『カウント五で撃つ! 五! 四! 三! 二! 一! 今!』
フリーティアの町中から必殺技と召喚獣たちの全力攻撃が空の球体を目指す。俺たちも放つ。
「魔法剣技! アルティメットシャリオ!」
「聖剣技! シュトルムヴォータン! 魔剣技! ドラゴトード!」
「ヴァルハラハイリヒランツェ!」
「ヴァルハラノインリヒト!」
俺の七色の超魔力集束砲と聖剣グラムが放つ聖なる暴風とバルムンクの必殺技、ブリュンヒルデさんの槍から放たれた聖なる波動、レギンの必殺技が合わさり向かう。
『ドラゴンブレス!』
「神撃!」
「「「「「吸血鬼魔法! オリジンストリーム!」」」」」
「EMバースト発動! エネルギーキャノン、狙い撃ちます!」
名前 イクス コマンドエクスマキナ(EMバースト)Lv10
生命力 193→243
魔力 193→243
筋力 193→243
防御力 193→243
俊敏性 193→243
器用値 193→243
スキル
飛行Lv24 多重兵装Lv34 暗視Lv20 望遠Lv26 射撃Lv31
必中Lv15 詳細解析Lv13 演算処理Lv30 指揮Lv5 複数照準Lv9
行動予測Lv27 遠距離索敵Lv32 魔力感知Lv6 反射Lv14 超装甲Lv3
魔力回復Lv11 連射Lv29 加速Lv6 バリアLv4 空間把握Lv9
換装Lv11 並列リンクLv24 支援要請Lv3 連携Lv3 魔力充電Lv19
リミッター解除Lv3 EMバーストLv1
リリーたちの全力攻撃にブランの神の一撃に匹敵する破滅の光の奔流と全てのセフォネから敵を無に還す魔力の奔流、イクスは体から紫のオーラを滾らせ、エネルギーキャノンを放つ。
更にリープリングからタスラム、町中から必殺技が放たれ、シルフィ姫様や獣魔ギルドの召喚獣たちも大技を使い、魔力の塊に激突する。
『『『『いっけぇえええええ~!!』』』』
しかし無常にも魔力の球体は無傷で俺たちの攻撃は出力が落ちていく。
『ははは! 今何かしたのか? ははははは! 愚か! あまりに愚か! 人や獣が束になっても神に叶うものか!』
耳障りな声だな!こいつ、絶対殺してやる!だが、これで無理なんて本当にどうしようもない。
すると歌声が聞こえてきた。これはまさか獣魔ギルドで俺たちが保護したマーメイドたちの歌声か?それはまるで俺たちを励ます応援歌だった。
そうだな。こんなところで諦めるわけにはいかない。これはゲームだ。ゲームである以上、必ず攻略法があるはずなんだ。考えろ…考えるんだ。あれの弱点を!なんとかする方法を!
これで破壊出来なかった以上、最早破壊は不可能だ。ならばあれをなんとかするためには落下場所を変えるしかない。
問題はその方法だ。俺はブリュンヒルデさんに聞くとあれを転移させるほどの巨大な魔方陣を作る時間がまるで足りないとのこと。そうだよな。ならどうする?
すると上空で黄金障壁が次々壊れていく。街中から悲鳴が聞こえてくる。
壊れる?つまりあの魔力の塊は一瞬ではあるが触れているということか?なら攻略法はこれか!
『みんな! あれをなんとかする方法を思いついた! もう少しだけ時間を稼いでくれ!』
『任せて! タクト!』
『タクトさんがそういうならそれに答えるのが私たちです!』
「ミール! 私に魔力を! 精霊結界! 時間稼ぎならエルフの十八番です! 任せてください!」
俺の声に他のみんなの声が聞こえてくる。
『その言葉を待っていました! 任せてください! みんな、もうひと頑張りです!』
『聞きましたか! フリーティアの騎士よ! まだ希望はあります! 攻撃を続行せよ! 諦めない気持ちこそ奇跡を起こすのだ!』
『シルフィお姉様たちを支援しますよ! 時間を稼ぐのです!』
『『『『は!』』』』
そしてリープリングからも声がする。
「聞こえたね! みんな! 無駄でもいい! ありったけのスキルをぶつけるよ!」
「はい!」
「ギルマスの指示や! やるで! みんな!」
『『『『おぉおおおおお!!』』』』
俺は準備に入る。
「黒鉄! アラネア! ブラン! お前たちの力が必要だ。手を貸してくれ」
「はい!」
俺たちの行動を見ていたシグルドとブリュンヒルデは笑む。
「ここはいい国だな」
「そうですね。私たちもタクトさんの時間を稼ぎましょう!」
「もちろんだ!」
「「はい! お姉様!」」
みんなが頑張ってくれるが正直上手くいく保証なんてない。それでも自分の考えを信じて進むしかないんだ。俺は準備を終えて、国を守っていた結界を消して貰った。チャンスは一度っきり!黒鉄がレールガンロケットパンチを放つ。
『ははは! そんなもので何が出来る? 消えろ! 跡形もなく消えてしまえ! フリーティアーーー!!』
レールガンロケットパンチが魔力の球体にぶつかる。今!
『テレポーテーション』
フリーティアの空から魔力の塊が消えた。
『え?』
「消え…た?」
「消えた。消えたぞ!」
「すげー! やったぞ!」
町中から歓喜の歓声が響く。
「でもなんで? どこに消えたの?」
俺は迅雷とファミーユを持った状態で黒鉄のレールガンロケットパンチの後方にアラネアの鋼線で体を固定して貰い、撃ってもらった。転移魔法テレポーテーションは直接か間接的に接触している人と物を転移させる魔法だ。
俺が最初にエルフィーナに使われた時がそうだった。そして俺の装備なども転移されているからこう定義出来る。
つまり俺と黒鉄のレールガンロケットパンチ、魔力の球体が接触しているタイミングなら魔力の球体は転移が可能と踏んだんだ。
敢えていうなら二度とこんな自殺行為なことはしたくない。滅茶苦茶ギリギリだった。ブランがレールガンロケットパンチに遮断結界を使っていなかったら、俺は時間がかかることなく消し飛んでいただろうからな。
さて、俺が転移した先はと言うと俺たちが一度行ったことがある場所に限られる。そこはどこか。
「は?」
ピエールの目の前に魔力の塊が現れた。俺たちはゴネスの王都の城壁まで攻め込んでいる。つまりそこへの転移が可能だ。敢えてピエールに告げよう。
「死ね」
ピエールと魔神アンラ・マンユは魔力の塊に超爆発に巻き込まれた。
『タクトーーーーーー!』
画面でそれを見ていたリリーたちの悲鳴がフリーティアに響くのだった。




