#617 ゴネス潜入とワルキューレ救出クエスト
時間を少し巻き戻す。ここはジャンヌが生まれた村。そこに三人のくノ一の姿があった。銀と霰と暁だ。
最初は二人でゴネスの都に侵入するはずだったのだが銀が予選で敗退した結果、二人に合流したのだ。その結果、侵入作戦が変わり、今まさに作戦開始をしようとするところだった。
『あまり気ノリしないけど…いくよん!』
ゴネスの都の近くで大爆発が起きる。
「な、なんだ!?」
「ほ、報告します! フリーティアの襲撃です!」
「何!? 奴らめ! 休戦中だと言うのによくも抜け抜けと! 異教徒どもを殲滅するぞ!」
『はっ!』
配置されていた騎士たちが爆発に向かう。
『ふぅ…作戦第一段階クリア』
フリーティアの襲撃と報告したのはゴネスの騎士の鎧に声真似スキルを使った暁だ。爆発を起こして、ゴネスの騎士たちに追われているのは銀、そして霰はテウメソスの靴とテウメソスのロープの効果で都の壁を飛び越えていた。
タクトでは魔法を使わないと出来ない芸当だが、跳躍スキルと忍者オリジナルの称号があってこそ出来ることだ。
『…凄い効果。こちら、霰。侵入成功』
『こっちも成功。それじゃあ、予定通りここからは個人行動だね』
『…うん』
霰は敵の本拠地である大聖堂に向かい、暁は教会を見て回ることにした。
霰と暁は移動中見たのはたくさんいるゴネスの国民だった。その光景はまるでミサをするかのような光景で二人はその中を進んでいく。
そして霰は大聖堂の中に侵入すると司教たちの話を聞いた。
「全くピエール様はどこにおられるのか…」
「我らが神から神託を貰えるというのは本当なのだろうか?」
「ピエール様がそういうからには本当なのだろう。我々は我々の仕事をしようではないか…集まった国民に色々説明せねばな」
そう言った司教は外には出ずに大聖堂の中に進んでいく。怪しんだ霰はその司教の影に潜る。
すると霰の感が当たり、司教は隠し扉を開けるとそこには地下に続く、階段があった。そして降りていくと今度は広い道を進んでいく。
すると突如司教が爪に貫かれた。
「ッ!?」
霰は影から飛び出し、敵を見るとそこには妖艶な女がいた。
「ここまでよく忍び込めたものね。褒めてあげるわ!」
女の爪が霰に迫ると霰はクナイでガードするが吹っ飛ばされる。
「…く」
「いい反応ね。ふふ…ペットにしたくなっちゃうわ」
すると霰の後ろの壁からいきなり手が現れ、首を絞めようとした。しかし霰は変わり身の術を使い、回避する。
「ほぅ…いい判断だ。逃げなきゃ首が折れて死んでたぜ」
壁から現れたのは聖職者とは思えない屈強な肉体を持った大男だった。霰はあんなところで首を折られそうになった事実にゾッとしているとその男の額に目が現れた。
「(…第三の目!? マズイ!)』
霰は魔法阻害煙幕を使うと男の額の目から真っ赤な光線が放たれるが煙幕の効果で霰から外れた。
「ち…ん?」
霰は更に手榴弾を転がし、その場を脱出する。そして後方で爆発が発生する。しかし二人は無傷であった。
「あぶねあぶね。危うく死ぬところだった」
「無傷で言う言葉じゃないわよ。それよりもあなたのせいで埃がついちゃったじゃない」
「そんなの払えばいいだけだろ。それよりあいつはどうするんだ?」
「ほっといて問題はないわ。重要なのはこの扉の向こうだもの」
そう言うと幻術が解けて、巨大な扉が姿を見せた。残念ながら霞はそれを確認することが出来なかった。
一方暁は教会を見て回っていた。そして粛正騎士が異常に集まる協会を見つけた。
「(あたしの感がこの教会は怪しいと言っている!)」
問題はどのように侵入するかだ…暁がタクトを思い出し、考えた作戦を実行する。
「ん? おい。なんだあれ?」
「何ってなんだよ」
そこには誰も着ていないゴネスの鎧がなぜかス〇ラーを踊っていた。
「ゆ、幽霊か!」
「セイント!」
しかし踊り続ける鎧。これは暁が土潜伏で地面に潜り、操り糸で鎧を操作しているのだ。当然セイントの効果など効くはずがない。
騒ぎを聞きつけた粛正騎士が集まり、ずっと意味なく踊り続ける不思議な鎧を槍で貫くと動かなくなる。
「(潜入成功! ギルマスがいつも変な作戦を考えている時にNPCたちはみんな熱心に聞いているから変なことをすれば気を引けるんじゃないか作戦大成功!)」
まんまと潜入に成功した暁は罠察知で地下に続く扉を見つけると地下には鎖で繋がれた女性が三人いた。そしてその一人には見覚えがあった。忘れるはずがない。そこにいたのは休戦のワルキューレ、ラーズグリーズだった。
「…そこに誰かいるのですか?」
「…はい。私はフリーティアの者です。レギンレイヴさんたちの依頼であなたたちを助けに来ました」
「そう。それならあの子…スルーズを連れ出してください」
「え? あなたたちは?」
暁はてっきり三人とも救い出すものとばかり思っていた。
「私は二人を助けてくれるというピエールの言葉に乗り、あなたたちの邪魔をしてしまいました。結果はこの通りです。罪は償わなければいけません」
「そんな…それなら一緒にフリーティアで」
「それではダメなのです。私たちの愛すべき姉妹たちに伝えてください。私とカーラは使命を果たします。ですからみんなも使命を果たしてくださいと」
「…わかりました」
暁は牢屋の鍵を開け、スルーズの手足に付けられた鎖も開錠すると足音が聞こえてきた。更に霰から連絡が入る。
『…ごめん。見つかった』
『こっちはワルキューレ一人を救出したけど、大ピンチ。もう忍んでる余裕は無さそう』
『…了解。どうやら外に出ないと逃げられないみたいだから私は暴れるね』
『助かるよ。霰』
すると暁の目の前に粛正騎士たちがなだれ込んで来た。
「なんだ貴様は!」
「フリーティアのスパイか!」
「ハルさん特性! 爆睡爆弾!」
謎の爆弾を投げた暁は急いでマスクを装備するとその瞬間、煙が教会全体を包み込み、粛正騎士たちは全員眠り、脱出を図る。
「異教徒だ!」
「粛正しろ!」
「あぁもう! まさかこんな大勢の人に石や物を投げる日が来るなんて! ゲームにしても酷すぎる!」
文句を言いながら建物の屋根を飛びながら逃げる暁は壁の近くまで来たところで周囲に誰もいないことに気がついた。嫌な予感を感じた時には遅かった。地面から二人の司教姿の男が二人現れた。
「ここまでよく逃げれたね。拍手拍手」
「馬鹿なことをしてないでさっさと殺すぞ」
「ッ!」
暁は爆睡爆弾を咄嗟に投げる。しかし不発する。
「残念。僕に植物系の攻撃は通用しないだよ」
「やれやれ。こんな毒草しか知らないのか? 毒草っていうのはこういう物のことを言うんだよ!」
そう言って召喚されたのはこの世のものとは思えない紫の粘液がついた触手のような植物だった。
「(これはやばいんじゃないかな! 私、そういうプレイはお断りなんですけど!)」
しかし暁の願いは届かなかった。
「やれ」
触手植物が迫ると上から誰かが現れ、触手植物を斬り裂いた。銀だった。
「お銀、見ざ」
「銀ちゃぁあああん!」
「わわ! 暁ちゃーーはっ!」
迫ってきた植物植物を斬り裂く。
「話している余裕はないみたい…暁ちゃん、行って」
「…わ、わかった!」
暁は大ジャンプでゴネスから脱出に成功した。
「わぉ。凄いジャンプ」
「見てないで追えよ」
「いなくなった後で言われてもね」
「ったく。まぁ、あいつらも逃がしているし、文句はねーだろ。それにこっちには一人残っているからな」
銀は小太刀を構えて、宣言する。
「絶対触手で死んであげないよん!」
結果、銀は謎の魔法で干からびて死に戻り、霰も粛正騎士に追い詰められて死に戻ってしまった。
決闘イベント後、ゴネスでは事態は着実に進んでいた。
「もうすぐだ…もうすぐで我々の神が誕生する! そしてこの世界は全て私の物だ!」
発狂するピエール枢機卿の下には巨大な魔方陣があった。その魔方陣の中央には鎖に繋がれた二人の女性ラーズグリーズとカーラがいた。
「ごめんなさい。ラーズグリーズお姉様…私たちのせいで」
「いいんですよ。カーラ。これは私が決めたことですから。それよりあなたには辛い決断をさせてしまって…私の方こそごめんなさい」
すると魔方陣が怪しく光ると彼女たちの姿が消えていく。
「いいんです。ずっと囚われていた私がこの世界の希望となるなら本望です」
「そう…後は信じましょう。私たちの愛すべき姉妹たちと人間の可能性を」
「はい」
そう言うと二人は消えて、鎖だけが残された。そして魔方陣はより一層の輝きを放つ。女神アテナが警告した災厄の日は確実に迫っていた。




