#62 スライム事件と新魔法
トリスタンさんと別れた俺達はやり残したことを終わらせるために若木の森の湖に向かった。そして道中、俺達は未知の存在の奇襲を受けた。
「きゃ!? な、何!? これ!?」
襲われたのはイオン。そしてイオンにくっつく液状の存在。そうスライムだ。ルークの召喚獣で見たことはあるが敵としては初めてだな。
「あっ!? ちょ…っと。どこ触って…」
イオンを這いずり回るスライム…ごくり、けしからん光景だな。
「いい加減にして!」
イオンがスライムに短剣で攻撃するがダメージがない。え?物理攻撃効かないの?こいつ?強くね?
俺が分析していると打つ手がないイオンが叫ぶ。
「見てないで助けて下さい! リリー! セチア!」
「まったく仕方ないな~イオンちゃんは」
リリーがドヤ顔で助けに向かう。あ、なんかデジャヴ。このあとの光景が予想出来るな。セチアもそうなのか避難してます。
そしてイオンに近づいたリリーはスライムに捕縛されるがリリーも持ち前のパワーを見せる。
「甘いよ! でやー!」
スライムを引き千切り、投げた。そしてそのスライムがセチアに直撃。訪れる静寂の時間。
「あ…」
「…何か言い残す事はありますか? リリーお姉様?」
「ちょ、ちょっと待て! 今のは事故で! きゃ!?」
慌てて、言い訳をするリリーだがスライムはまだイオンに残っていることに気が付いていない。どうやらこのスライム、ちぎったりしても分裂するだけみたいだな。
隙だらけのリリーは足を引っ掛けられ、呆気なく転ばされる。そして上からスライムの塊がリリーを襲う。
「きゃー!?」
あっという間に体中スライムだらけに…眼福です。
「うぅ…ベトベト…って、あはは! く、くすぐったい…あははは!! やめて~」
くすぐられているのか?リリーが転がっている。完全にスカートの中見えてるんだがセキュリティは健在だ。スライムさん、セキュリティなんとかできないかな?
そしてスライムを投げられたセチアだが、必死に魔法を使おうとしているが、体にへばりついたスライムは何かのスキルかあるいは攻撃判定のある攻撃で魔法の詠唱を妨害している。
「あ!? 何、服の中に入って…きゃ!? そこはダメです」
セチアの服のどこに入りやがった!スライムさん!教えてください。マジお願いします!
しかしうちの三強をこうもあっさり戦闘不能に追い込むのか。スライム恐るべしだな。
「「「見てないで助けて(よ、ください)!タクト(さん、様)!」」」
怒られました。あまりに素晴らしい光景を前に我を忘れていた。というわけで助け…る前に識別しないとね。それから魔法で攻撃したら、呆気なく倒せました。三人がスライム嫌いになったのは言うまでもない。召喚したいんだが、大反対されそうだな。
魔石召喚で当てるしかないか…
スライム事件の後、湖に到着。とりあえずヤマメを釣りたいのだ。というわけで釣りを開始して3時間、なんとヤマメが3匹も釣れちゃいました。釣りスキルが上がってきた成果かな?
早速料理したいが釣りに夢中で夕飯の時間となっている。リターンで戻ってから、宿屋で美味しく食べるとしよう。
夕飯を食べ終え、イオン達にしっかりヤマメをご馳走した。そしていつも通り夜の狩りに出かけるわけだが、森まではリリー達で行くことにした。
そして俺は魔法を順番に試していこう。その前に杖の武技からだ。
マジックサークルは自分の下に魔法陣が出来上がってその上だと魔力が徐々に回復するみたい。ただし効果時間が短いからあまり回復しない。回復量が増えれば恐ろしい技だが現状微妙だね。
エントラストは魔力を譲渡する技だね。セチアと相性が良さそうです。樹魔法の欠点を補えるかも知れないからな。ただし俺の魔力が減るので諸刃の剣だな。
次に魔法行ってみよう。
フウァールウインド。旋風を起こして敵にダメージを与える初の範囲魔法でした。範囲魔法はターゲットを選ぶのではなく、それぞれの魔法にタイプがあるみたいだ。フウァールウインドの場合は魔法陣を設置してその魔法陣の上で魔法が発動する仕組みみたいだ。ちなみに風でリリー達のスカートがめくれるが鉄壁のセキュリティには勝てませんでした。ガッデ厶。
アトモスフィア。大気の塊を相手にぶつけてダメージを与える魔法でした。イメージは大玉転がしの大玉をぶつける感じ。当然大きいので複数巻き込むことが出来る。ダメージも中々で便利だ。
ファイアーシャワー。火の粉が降ってきて、敵が燃えます。これは範囲が決まってる魔法だな。範囲は広いがダメージは弱い感じみたいです。
バースト。指定した相手が燃えます。いきなり自然発火しているように見えるね。普通に怖いです。ダメージ+状態異常燃焼がつくことがあるみたい。俺が見たのはまさにこれでした。
トレマー。地面が揺れます。その間、ダメージを与え続けるみたいです。体感震度2ぐらいかな?ダメージは微妙で自分たちも揺れを感じるので、イオンのようなスピードタイプにはキツそうです。
アースウォール。土の壁を作ります。初の壁呪文だね。指定した場所に壁を作れるので超便利な気がします。ただし何度も攻撃を防げるものじゃないみたいだ。カマキラーの攻撃一回で壊れちゃいました。土の壁だからね。でも一回防げるって重要だと思う。
ウォーターカッター。ウインドカッターとかと違ってこれは高圧の水鉄砲な感じです。水鉄砲が直撃すると相手が切れます。うん。普通に怖い攻撃だね。因みに現実のウォーターカッターは鉄をすんなり切断出来たりします。
スプラッシュ。杖を構えた前方にたくさんの小さなアクアボールを放ちます。一つ一つはダメージが少ないがたくさん当たると結構なダメージになりそう。イオンみたいな動き回る人には天敵の魔法かな。
スリープ。高確率で敵を眠らせます。ただし何かダメージを与えると起きるみたい。
イリュージョン。自分の幻影を作り出します。しかもどうやら敵は優先してそちらを狙うみたいです。便利な気がします。味方には効果がないみたいです。リリーたちにはあっさりバレました。
レーザー。ビームです。それ以外の何ものでもありません。光魔法初の攻撃魔法だな。
クリア。状態異常回復魔法。とりあえずデバフ、睡眠、麻痺、毒は回復出来ました。これから色々お世話になりそうです。
アポーズ。小物アイテムを自分の手元に戻します。色々、試してみた。手元に戻せたのは石ころ、イオンの短剣、ポーションだ。リリーの剣や大剣、俺とセチアの杖は無理だった。大きさとかの制限があるみたいだね。でも投げた装備が戻って来るのは有難い気がする。
コミュニケーション。フレンドと通信出来るみたいです。インフォで流れたから間違いないみたい。使ってみたいね。超便利な気がする。
するとここでタイミングよくルークからメールが来た。読んでみるとどうやら昨日の一件の話だな。ちょうどいいので、コミュニケーションの実験になってもらおう。
「あー…もしもし。おれおれ」
『なんでオレオレ詐欺なんですか…というかインフォでタクトさんからの通信ってバレバレですよ』
あー、そうなのか…つまらない。いやオレオレ詐欺ができたら問題か。
「新しい時空魔法を覚えてね。話があるみたいだからちょっと試してみた。今大丈夫か?」
『大丈夫です。便利な魔法ですね。あ、昨日はその…大変だったみたいで、すみません』
突然謝られた。なんでだ?
「どうしてルークが謝るんだ?」
『俺たちを狙ったテイマー達も関わってましたよね?』
なるほどね。意外に責任感があるんだな。
「あぁ。それでわざわざ謝罪したのか?」
『はい。それと…動画見ました』
「ん? 動画? なんの動画だ?」
『昨日の一部始終の動画です。リリーちゃん達の決闘やタクトさんの戦闘の動画です』
あー…海斗のやつがそんなこと言っていたな。
「そんなもの見たんだな。気持ちがいいものじゃないだろうに」
『ごめんなさい。気になってしまって。それとこの動画は既に削除されました』
うん。海斗の奴も言っていたが結構見られているもんなんだな。
『それでですね…昨日の今日でお願いするのもどうかと思うのですがちょっと聞いてもらっていいですか?』
「ん?お願い?」
『はい…実はネットで現在、召喚師達が集まって情報交換の場を設けようって話がありまして、リリーちゃんたちが泣かされた姿を見て、急遽集まろうって話になったわけです』
リリーたちを心配してくれるのはありがたいがなんか色々な思惑が見え隠れしているな。
「その言い方だとまさか今日なのか?」
『…はい。とはいえ事情が事情なのでタクトさんの都合に合わせようかと』
さて、どうするか…別段狩りに拘るわけじゃないが折角森まで来たなら狩りをしたい。だがリリー達の事を考えるとプレイヤーとの交流は持ったほうがいいと思う。トリスタンさんとの交流で余計にそう思う。
「悪いが今日は狩りをしていてな。明日なら参加出来るぞ」
『えぇ!? 参加してくれるんですか!?』
「あぁ。リリーたちは昨日初めてプレイヤーの悪意を見たからな。俺たちの中にはいい人もいると知ってもらいたいと思うよ」
『それは確かにそうですね。わかりました。事情は話しておきます。時間は何時からがいいですか?』
「そうだな…夕飯のことを考えて、20時からでどうだ?」
『大丈夫だと思います。変更があればメールでお知らせします』
「わかった。じゃあ。また明日な」
『はい』
コミュニケーションを切る。さて、夜の狩りを続けるとしよう。
スライム強すぎな件。ダメージは殆ど与えてないですけどね。スライムってモンスターの中で最強クラスだと思っているんです。それと同時にこういうのは外せないとも思ってます。
次回は緊急クエストが発生します。お楽しみにです。