#609 決闘イベント本選Cブロック一回戦
少し休憩を挟んで次はCブロック。
第一試合は『騎士王国一番乗り』と『五影連合』の決闘だ。火影さんたちが登場した。相手は…見事な騎士姿のパーティーだな。
勝負は忍術と騎士たちの遠距離攻撃戦となった。何せ忍者にはクラス随一の速さがある。近接戦に持ち込むこと自体が困難なんだ。それを理解しているから火影さんたちの忍術とその後の逃げ道を確保する戦闘を繰り返した。
結果は火影さんたちの勝ち。聖騎士で回復もしていたが結局火影さんたちにダメージを与えることが出来なかったのが敗因だ。相手も最後に逆転を狙いで必殺技の使用に踏み切ったが火影さんたちはそのタイミングで爆弾を使って、勝負ありだった。
第二試合は『クーリー竜騎士団』と『勇者が魔剣使ってもいいじゃん』の決闘だ。フリーティア対決だな。クーリー竜騎士団は雷電さんともう一人ドラゴンテイマーがいて、それぞれ相棒のドラゴントルーパーを連れており、残りの二人はレイジさんともう一人レイジさんといつも一緒にいる人だ。
対する『勇者が魔剣使ってもいいじゃん』は魔剣ティルヴィングを手に入れた勇者、盾持ちの重戦士が二人、魔法使い、狩人、聖職者の典型的なバランスパーティーとなった。
「試合開始!」
まずは雷電さんともう一人のドラゴンテイマーが突っ込み、それに対して、重戦士二人が盾で受けに出るが、いきなり槍使い独特のアクロバティックをレイジさんともう一人の槍使いが披露する。
速さのルーンで加速した彼らはドラゴントルーパーの背を踏み台にして、大ジャンプを決めると空中で槍を構える。狙いは当然聖職者だ。
「「はぁああ!」」
「く…やらせるか!」
勇者が魔剣ティルヴィングと盾でガードする。
「支援魔法を! 早く!」
「は、はい!」
勇者と狩人の人がジャンプで後方に回ったレイジさんたちの迎撃に回った。流石にレベルが高いパーティーだな。雷電さんともう一人のドラゴンテイマーさんの連携攻撃もしっかり重戦士の二人がガードしている。
こうなると鍵は後方…レイジさんたちと魔剣勇者さんたちの勝負が決闘の勝負を決めるな。
レイジさんたちが投げた槍が手元に戻り、槍を構える。それに対して魔剣勇者さんは盾をしまうと普通の剣をたくさん取り出す。なんだ?あれ?
レイジさんたちは魔剣ティルヴィングの能力を知っているから即座に動いたが、狩人の人のサウザンドレインで足止めされ、その間に魔剣勇者さんは普通の剣を次々投げ出した。
それをレイジさんたちは弾くが弾かれた普通の剣が空中で止まると再びレイジさんたちに殺到する。あれが話に聞いた魔剣ティルヴィングの同化スキルか。確かに厄介なスキルだな。
それを見た雷電さんたちはやばさを感じ取り、必殺技を見せる。ドラゴントルーパーが走り出すと徐々に加速していく。真っ赤なドラゴンのオーラとなり、高速で重戦士たちに向かっていく。
「「デスパレーションドラゴンダイブ!」」
「「ロイヤルランパード!」」
捨て身のドラゴンダイブとロイヤルランパードが激突する。結果はロイヤルランパードの壁をひび割れるところまでいったが破壊までには至らなかった。最初に支援魔法をする聖職者を倒せていたならたぶん破っていたな。
「ナパーム!」
雷電さんたちの上空に真っ赤な魔方陣が描かれるとそこから無数の火の玉が降り注ぎ、地面に降ちると起爆し、大炎上する。
雷電さんたちが倒されたことで気が緩み、レイジさんたちに魔剣ティルヴィングの効果が付与された剣たちがレイジさんたちを貫いた。
「勝者! 『勇者が魔剣使ってもいいじゃん』!」
いい勝負だったな。これはどっちが勝ってもおかしくはなかった。欲を言えば、レイジさんたちの必殺技を見てみたかったがここで使うと先に進めないから温存するしか無かったんだろうな。残念。
第三試合は『吉と出るか凶と出るか』と『パラディン騎士団』だ。『吉と出るか凶と出るか』にはノストラさんがいた。名前から思っていたが占い師パーティーだ。これは恐怖のパーティーだな。というかどれだけ占い師たちの犠牲になったんだろうね。
対する『パラディン騎士団』はパラディンなのに勇者パーティーだ。裏切ったつもりだろうか?あまり意味ない気がするんだが…。
これはもう占い結果次第だ。六人の内、死神のカードがあれば一枚でもあれば…あれ?全滅じゃないか?どうやって勝ち残ったんだ?このチーム。
「試合開始!」
『突っ込め~!!』
『ドロー!!』
ダッシュで距離を詰めるのとカードを引くだけ。これを止めるのは至難の技だろう。さて、結果はどうなった?
「「「「「死神のカード」」」」」
「審判のカード」
『嘘だろ~~!?』
まさかのファイブカードだ。全員が倒れる中、一人だけ起き上がる。審判のカードを引いた人だ。審判のカードには復活の効果がある。死神のカードの効果の後に復活したから、勝つことが出来たわけだ。
『勝者! 『吉と出るか凶と出るか』!』
これは偶然か?イカサマ臭いな。そうでもなければ予選突破をするほど、勝てないだろう。まぁ、もし俺たちになるとしても随分後だ。占い結果からじっくり判断しよう。
第四試合は『一刀両断』と『精霊姫』の対戦だ。シフォンのパーティーだ。パーティーメンバーはシフォン、ミランダ、アーレイ、カイ、雫ちゃん、ワイフさんだ。鉄心さんが個人戦に出たからシフォンのパーティーで参加することにしたんだな。
たぶんアーレイとカイが雫ちゃんとワイフさんの守りだろう。アーレイの奴のプレッシャーをひしひし感じる。
対する『一刀両断』は侍パーティー。これはやりづらいだろうな。シフォンとミランダがどんな作戦を考えているか。二人はじっくり作戦を考えるタイプだ。どんな作戦で来るでお手並み拝見だ。
「試合開始!」
侍たちは一斉に縮地で移動する。狙いは雫ちゃんとワイフさんだ。守りに入ったのはミランダ、アーレイ、カイだ。ただし三人でワイフさんのみガードした。雫ちゃんはまさかのフリーだ。
当然三人の侍が雫ちゃんを居合い斬りで斬るが雫ちゃんの姿が水になる。水分身で侍の奇襲を躱すか!
そして三人に守られたワイフさんは当然無傷だ。そしてシフォンから風が巻き上がる。
「精霊武装!」
あれがシフォンの切り札、精霊武装か…観客から精霊姫コールが響く。是非シフォンに聞かせてやりたい。
シフォンたちの次の相手は『吉と出るか凶と出るか』に決まったことでシフォンたちは切り札を遠慮なく切ることが出来たわけだ。
水分身をした雫ちゃんはシフォンの近くにいた。侍たちは再度縮地をするがシフォンが剣を振ると突風が発生し、縮地が止まり、更に風で吹っ飛ばされてしまった。縮地はほぼ瞬間移動に近い。それ故に移動中は地面に触れている感覚が存在していない。つまり地面への踏ん張りが効かないからあぁなるわけだ。
これはカイたちの作戦だろうな。鉄心さんがいるから縮地の弱点を知っていたんだろう。それを見事に付いただけだ。
「精霊剣技シルフィードダンス!」
吹っ飛んだ彼らにシフォンの必殺技が決まり、これで残りは三人だ。
「く!」
「雫のところには行かせねーよ!」
こうなると魔法使いである雫ちゃんを放置出来ない侍たちだが、アーレイたちが当然邪魔をする。そうこうしているうちにシフォンが雫ちゃんのガードに入る。これは決まったな。
シフォンがいる以上、縮地が使えないことは証明されてしまった。奇襲を封じられた侍たちは一人一人倒して行くしかない。そんな時間を掛けていたら、当然魔法が飛んでくる。
「ホワイトミュート!」
世界が真っ白に染まり、侍たちは問答無用で氷結した。俺が使えない氷魔法だ。後はアーレイたちが倒して終わりだ。
「勝者! 『精霊姫』!」
これはシフォンたちの完全な作戦勝ちだ。侍たちは雫ちゃんより、シフォンを狙わないといけなかったな。まぁ、いきなり切り札を投入して、それがここまで自分たちに相性が悪い切り札とは思っていなかっただろうけどね。
続きは夜だ。俺はみんなから色々な話を聞く。
「掲示板ではタクトさんの行動には賛否両論ですよ」
賛成意見は主に面白さとユウェルの可愛さがメインだ。反対意見は聞く価値なし!
「賭けの方は阿鼻叫喚ですね」
「リープリングメンバーは結構人気あったのだけど、負けているからね」
『面目ない…』
謝っているが結局は他のみんなが俺たちの情報をしっかり持っているからこうなるんだよな。どうしても対策はされやすい。それをどう乗り越えるかがポイントになってくるんだよな。
「タクトの次の相手はシリウスさんたちだよな? 俺たちは気楽でいいぜ」
「運勢が全くない黒ひげ君に言われるとは思ってなかった」
「なんだと!」
「そういえばレイジさんたちはどうしてあの装備使わなかったですか?」
あの装備はアーレイ伝説の『黒ひげ危機一髪』のことだ。全員が口を揃えていった。
『あんな装備をするぐらいなら真正面から戦いたかった』
「ッ!?」
まぁ、気持ちはわかる。普通装備したくないよね。ましてやレイジさんたちは身軽が売りだ。『黒ひげ危機一髪』には向かいないだろう。
ショックを受けたアーレイを残し、俺たちはログアウトした。




