#594 星核竜の試練
恐らく一番乗りで予選を突破した俺は近衛家で夕飯を呑気に作っていた。しなくていいとは言われたけど、こういう機会でもないとバイトで教わった腕を振るうチャンスはないからね。
「これは…凄いな…」
「…お料理の勉強をし直したほうがいいかしら?」
「ダメだよ! 兄ちゃん! 本気を出したら!」
「お母さん、大丈夫だよ! せい君は…ほら、異常だから!」
異常って…酷くない?
「…それよりもご飯冷めたら、勿体無い」
「そうだな。では、みんな」
『いただきます!』
その後、こっそりゲーム結果を聞かれたら、俺は正直に話すと三人がやっぱりかというリアクション。三人の状況を聞くと好調らしいが俺たちと違い、戦闘を繰り返している。
「お互いに最小限の戦闘を繰り返しているから、大変なんだよね…」
「探ってばかりいるとそういう戦闘になるだろうな」
下手に切り札を切れないだろうから大変だ。俺はそういう労力とか無縁だったから、ある意味かなり楽した形だが、俺の編成はすでにバレている。
「ユウェルちゃんを選んだのは、びっくりしたよ」
「…兄様らしい」
「というかドラゴニュートばかり固めるってどうかと思うよ」
なんとでも言ってくれ。ユウェルの存在は誰しも警戒するだろう。何せ情報がないからな。実際に情報を集めようとしたプレイヤーも何組かいたが、リリー、イオン、恋火の前衛を突破して、ユウェルに挑まないといけない。
この三人を突破するには手抜きでは厳しい。しかし全力戦闘すると俺に情報を渡す事になる。こちらはユウェル以外の情報は漏れているから手加減するはずがない。結果、ユウェルの情報は誰も知らないままだ。
佳代姉たちがしつこく聞いてくるから俺はゲームに避難することにした。
そして俺はユウェルのレベル上げをする。メンバーは狐子、コーラル、ハーベラス、ジーク、ユウェルを選び、因幡の白兎を狩る。二回倒したところでインフォが来る。
『ユウェルのレベルが30に到達しました。特殊イベント『星核竜の試練』が発生しました』
俺は緑の光に包まれると転移する。
転移した場所は非常に大きな洞窟だった。ただの洞窟ではなく、洞窟を形成する土や鉱石がキラキラ輝きまるで星空の中にいるような錯覚に陥るほどの美しい洞窟だった。
『気に入ったようだな』
「はい…俺はここで戦えることを誇りに思いますよ」
俺が声をしたほうを見ると命農龍王ライフドラゴンの姿があった。
『話が早いな…試練の内容は他の試練と変わらん。お主のみで進化しドラゴンとなったユウェルに勝利して見せよ』
俺は準備を整える。
「いつでもどうぞ」
「では、試練を始める!」
すると地面から巨大な岩のドラゴンが姿を見せた。これがユウェルのドラゴンか。
フォーメーションドラゴン?
? ? ?
すると早速初見の能力を披露してきた。手が突如、巨大な大砲に変化した。うそ!?
突然の大砲の攻撃を俺は縮地で回避し、間合いを詰める。貰ったと思った瞬間、俺は横っ飛びし、そのまま転がる。
一瞬体に負荷が掛かり、咄嗟に逃げたのが良かった。重力が掛かり、地面の石が砕かれている。あれを食らうわけにはいかないな。
すると今度は肩の部分が巨大な槍になり、打ち出して来た。このドラゴン…どうやら全身武器に変えることが出来るみたいだな。フォーメーションドラゴン…形成のドラゴンとはよく言ったものだな。しかし武器だけならなんとかなる!
俺が飛び込もうとすると灰色の波動が俺に放たれる。それは甘いぞ!ユウェル!
俺は迅雷を抜刀し、波動を斬り裂く。石化は俺には通用しない!
「竜穴!」
俺は迅雷で突きを放つとユウェルの体が見たことがある金属に変化し、迅雷の突きを止めた。これはアダマンタイト!?すると再び体に負荷が掛かり、テレポートで離脱する。
見ると全身に重力を掛けて、平気でいる。どうやらユウェルにアダマンタイトなどの金属を見せたことはミスだったみたいだな…恐らくユウェルは体を見たことがある金属を自在に変化させることができるんだろう。
せめて食べたことがあるのが条件だったら、大丈夫だったのに…面倒臭いことになったが、ユウェル相手にそうなることは想定通りだ。俺の考えた攻略に狂いはない。
すると重力を解除したユウェルは口から宝石を飛ばしてきた。俺は逃げ出すと宝石が爆発する。勿体無いがかなりの威力だな。更に岩を連射していくが、俺は全て斬り裂く。他には目から緑のビームを撃ってきたが斬り裂く。
俺が地面に降りると地脈操作や列石封印をしてきたがどれも知っているスキルだ。対処は出来る。もうそろそろネタ切れのはずだ。そろそろ来るか?
しかし惑星魔法や竜魔法を使ってこない。俺の作戦に気がついたかな?いや、単純にこの状況では使えないと判断しているみたいだな。
使っても使わなくても結果は変わらない。悪いが俺の勝ちだ。
ユウェルは俺の迅雷の攻撃を防ぎ続けた。時には体を斬り裂いたがすぐに治った。やはり再生も持っているか。
俺は攻め続けてそして遂にユウェルに限界が来る。魔力切れだ。
土のドラゴンは生命力、筋力、防御力がかなり高い。その反面、魔力、俊敏性、器用値が低くなっている。これが土のドラゴン最大の弱点といえる。最もこれは土のドラゴンの防御を突破出来るほどの武器がある前提の話だけどね。
通常時でガード出来ないなら魔力を使って、ガードするしかない。結果魔力が無くなるともうどうすることも出来なくなる。
「竜穴!」
迅雷の竜穴が決まり、ユウェルは倒れると起死回生で起き上がると最後にドラゴンブレスを使ってきた。
『テレポート』
「ノリが悪くてごめんな…ユウェル」
俺が竜穴を再び使い、ユウェルは元の姿に戻った。完全に伸びている。
『お手本のような戦闘を選んだものだな』
「今までと違い、武器も条件も俺が有利でしたから…ここで逃げるわけにはいかないでしょう」
『くく…今までは逃げていたことは認めるわけだな?』
まぁ、色々屁理屈をしたことは否定はしない。
「はい…ですが誰もそれを反則など言いませんでした。なので俺はこの試練の意味を考えるようになりました」
『ほぅ…答えてみるがいい』
「これは暴走したドラゴンを止めることが出来るのか召喚師を試す試練の一方で進化したドラゴニュートに自分たちの強さが絶対のものではないことを教える試練なのではないですか?」
だからどんなことをしても反則とはしなかった。どんな結果であれ、ドラゴニュートたちが負けたら、そこから自分の強さを学べるからだ。
『ほぅ…面白い推理だな』
「正解かどうかは言わないんですね」
『それを言うと悪知恵を働かせる人間がいるからな』
俺を見ながら言いますか。失礼な。すると命農龍王ライフドラゴンが改めて話す。
『試練は合格だ。盟約に従い、ユウェルを進化させよう!』
ユウェルが緑色に輝き、進化する。
『ユウェルがドラゴニュート・コアに進化しました。鎚が万物武装に進化しました』
『荷重操作、金属装甲、金属壁、宝石投擲、重力、逆鱗、起死回生、竜魔法を獲得しました』
『竜魔法【ペトロイローション】を取得しました』
『竜化のデメリットが一日となりました』
進化したユウェルは身長がリリーたちと同じになり、角が岩から水晶に変化した。そしてユウェルは起き上げる。
「むぅ…タクにおちょくられた気がする!」
「おちょくっている割には命懸けだったぞ」
実際強かったからな。準備が万端じゃ無かったら、もっと苦戦していただろう。すると命農龍王ライフドラゴンが話す。
『汝、ユウェルよ。毎日こそ学びであり、その度に汝は強くなる。我ら土のドラゴンはそうやって強くなっていく。そして我らは星の核の力すらその身に宿す。今日からお主はドラゴニュート・コアと名乗るがいい』
「わ、わかった!」
『召喚師と共に先に進め。その果てに強くなったお主たちと会える日を楽しみにしているとしよう』
そういうと命農龍王ライフドラゴンが緑に輝き、俺たちは島に戻る。早速進化したユウェルを見てよう。
名前 ユウェル ドラゴニュート・プロテクターLv30→ドラゴニュート・コアLv1
生命力 100→150
魔力 60→110
筋力 152→202
防御力 216→266
俊敏性 54→94
器用値 64→104
スキル
格闘Lv2→鉄拳Lv2 鎚Lv2→万物武装Lv2 採掘Lv1 鍛治Lv7 鉄壁Lv3→堅牢Lv3
挑発Lv5→強制Lv5 竜角Lv1 激突Lv1 超感覚Lv1 竜眼Lv1
高速再生Lv1 格納Lv1 練気Lv3 荷重操作Lv1 金属装甲Lv1
金属壁Lv1 宝石投擲Lv1 重力操作Lv1 土魔法Lv5 土潜伏Lv1
集束Lv1 石波動Lv3 逆鱗Lv1 竜魔法Lv2 竜技Lv2
竜化Lv2 ドラゴンブレスLv2 起死回生Lv1 地竜の加護Lv2→星核竜の加護Lv2
これは予想外に強そうだぞ。というか本当に理想的な壁役になったな。注目は壁技の硬さと重力操作だろうな。
そしてユウェルの能力チェックをする。まず万物武装。これは武器制限がないスキルらしい。つまりユウェルはどんな武器でも使えるようになった。ただし武技は使えない模様。
それでもこれはかなり強いことがわかる。何せ相手に応じて武器を自在に変化出来るんだ。一つ一つ武器を使いこさせたら、ユウェルは化けるぞ。
そしてこの能力を支えるのが鍛冶スキルと格納スキルとなるわけだな。こうなるとユウェルにはマニアックな武器とか作らせたくなるな。何せなんでも装備出来るんだ。後で依頼しよう。
後の能力で問題が発生したのは宝石投擲。食べた宝石を使うらしい。つまりユウェルには毎日宝石をあげて、ユウェルが宝石投擲をすると同時に満腹度も減少することが判明した。お互いにあまり使いたくないスキルだな。火力はあるんだけどね。
するとへーパイストスから連絡が来た。遂に魔法剣が完成した!早速取りに行こう。
名前 狐子 妲己Lv8→Lv9
生命力 98
魔力 180→184
筋力 130→132
防御力 78
俊敏性 136→139
器用値 122
スキル
噛み砕くLv27 尾撃Lv10 気配察知Lv26 危険予知Lv21 魔力操作Lv8
火魔法Lv28 闇魔法Lv10 邪気Lv18 妖気Lv18 暗視Lv25
黒炎Lv31 妖術Lv10 幻影Lv15 憑依Lv9 誘惑Lv9
致死毒Lv10 炎の牙Lv19 炎爪Lv21 火炎弾Lv29 病気ブレスLv7
狂戦士化Lv2 魔素解放Lv3
名前 コーラル 朱雀Lv5→Lv7
生命力 162→170
魔力 126→128
筋力 102→104
防御力 58
俊敏性 118→120
器用値 96→98
スキル
奇襲Lv12 飛翔Lv21 激突Lv14 強制Lv7 堅牢Lv10
炎爪Lv7 危険予知Lv9 火雨Lv7 風魔法Lv5 火魔法Lv6
光魔法Lv4 業火Lv13 聖火Lv8 火山弾Lv10 超速再生Lv13
耐寒Lv3 炎ブレスLv7 聖ブレスLv7 蘇生Lv3 陽炎Lv10
炎化Lv3 和魂Lv2
名前 ハーベラス ヘルオルトロスLv5→Lv7
生命力 114→116
魔力 144→150
筋力 198→200
防御力 80
俊敏性 151→154
器用値 102
スキル
噛みつきLv13 気配察知Lv11 暗視Lv8 危険察知Lv10 疾走Lv12
猛毒Lv10 炎の牙Lv12 火炎爪Lv10 恐怖Lv13 灼熱Lv13
火炎弾Lv8 黒炎Lv5 連撃Lv12 咆哮Lv3 火ブレスLv5
闇ブレスLv4 冥府の加護Lv2
名前 ジーク レッサードラゴンLv14→Lv15
生命力 78
魔力 64
筋力 107→110
防御力 66→68
俊敏性 94→96
器用値 62
スキル
飛行Lv8 竜牙Lv11 竜爪Lv14 竜鱗Lv14 竜尾Lv14
突進12 水中行動Lv1 光魔法Lv8 恐怖Lv3 火ブレスLv7
俊足Lv12 竜の加護Lv10
 




