#59 悔しさは成長の第一歩
さて、学校が終わり、帰宅。ゲームにログインするわけだが、憂鬱なんだよね。結局昨日はあの後、リリー達の再召喚もセチア達の召喚もしなかったからな。リリー達にかける言葉をいろいろ考えはしたが実際あって声を掛けないと始まらないんだよね。
というわけでログインして、最初にステータスを確認する。レベルは3上がり。戦闘系スキルが急上昇していた。
昨日俺がどれだけ暴れまわったか分かると思う。そして素手スキルが格闘スキルに進化していた。これは素手Lv5だったものがLv10になった時にインフォが流れたのだ。
『素手スキルがLv10に到達しました。素手スキルが格闘スキルに進化しました』
最初に昨日得た称号を確認してみる。
称号『PKK』
効果:PKに対して、特攻。
一定のPKを倒すと獲得出来る称号。
称号『無傷の覇者』
効果:決闘において、特攻。
決闘でプレイヤーを数人無傷で倒すと獲得出来る称号。
そして新しい魔法や武技なども解放されている。確認してみるとこちら。
格闘 【ストレート】、【ジャブ】
蹴り技 【回し蹴り】、【飛び蹴り】
杖 【マジックサークル】、【エントラスト】
風魔法 【フウァールウインド】、【アトモスフィア】
火魔法 【ファイヤーシャワー】、【バースト】
土魔法 【トレマー】、【アースウォール】
水魔法 【ウォーターカッター】、【スプラッシュ】
闇魔法 【スリープ】、【イリュージョン】
光魔法 【レーザー】、【クリア】
雷魔法 【ショックボルト】、【サンダーブランチ】
爆魔法 【レイブロート】、【レッドレイ】
木魔法 【ポイズン】、【バインバインド】
氷魔法 【フリーズ】、【アイシクルアロー】
時空魔法 【コミュニケーション】、【アポーズ】
それを確認して思わず舌打ち、昨日の奴らで試せばよかった。ポイズンとかポイズンとか。
所持金も凄いことになっている。10万Gを超えている。どれだけ倒したんだ?
さて、確認終了したからリリー達を再召喚しましょう。俺が再召喚するとリリーとイオンが現れる。分かってはいたことだが、それでもその姿を見て、安心する。
召喚されたリリー達の最初の行動は…リリーが俺に泣きながら飛びついてくる。
「タクトー!!」
だがリリーよりスピードが速いイオンが横から乱入し、リリーは壁に激突した。おーい、リリー、大丈夫か?っと、イオンが俺に抱きついて来る。
「タクトさん、大丈夫ですか!? 怪我とかしてないですか? ごめんなさい、私」
俺はイオンの頭を撫でるとされるがままになる。そして壁に激突したリリーもこちらに来る。
「ひたひよ…イオンちゃん」
顔面からぶつかったので、相当痛かったらしい。とりあえず近づいてきたリリーの頭も撫でてあげる。気持ちよさそうに笑顔を浮かべるリリー。さて、落ち着いたところだし、昨日の話をしようかな。
「とりあえず昨日はありがとうな。二人とも。俺のために戦ってくれて」
「え!? い、いえ。むしろ何もできず」
俺はイオンの言葉を頭を撫でて止める。
「結果がどうあれ、感謝の言葉を言わせてくれ」
「タクトさん…」
「タクト…」
「それとあの場にいた人たちは俺が一人で倒したから俺は無事だよ」
「「えっ!?」」
あー、自然な流れで言ったつもりだったんだが、ダメだったか…まぁ、普通に無理か。
「ど、どういうことですか!?」
イオンが聞いてくる。さて、どうしたものか…お前たちが倒される姿を見て、ブチキレたって話なんだが…とりあえず、オブラートに包んで話すことにした。
「タクトさんって、そんなに強かったんですか…」
「本気のタクト、見たかった!」
リリーよ。あんな姿をお前たちに見せる日は来ないと思うぞ。俺の戦闘スタイルをリリーの筋力でやったら、俺より殺伐とした光景になることだろう。まぁ、殺気とは無縁だから満面の笑顔で…うん、それはそれで怖いな。考えるのをやめよう。
「事情は把握しました。でも、やっぱり悔しいですね」
「リリーも悔しい~!」
悔しい気持ちは痛いほどわかるがベッドの上で足をバタバタするのはやめなさい。スカートの中、見えるから!セキュリティーで見えないけど!
「悔しい気持ちがあるならそれを忘れるんじゃないぞ」
「どういうことですか?」
「成長の一歩は悔しいという気持ちから始まるって俺の師匠が言ってたからな」
「成長の一歩…」
リリーが考え込む。うん、悩んでいいぞ。それもまた成長だからな。
「タクトさんのお師匠様はどんな人だったんですか?」
イオンに聞かれる。まぁ、教えてもいいかな?
「自分に厳しく、他人にも厳しい人だったな」
「タクトの師匠、怖そう」
リリーの感想は実に正しい。あの人ほど怖い人間がいるのか疑問に思えるほどだったからな。異名も現代の土方歳三と呼ばれていたらしいからね。
「確かに怖い人だったけど、その厳しさが優しさでもあってね。なんというか不器用な人だったよ」
リリーとイオンが首を傾げる。まぁ、理解するのが難しい優しさかな。指導者は厳しく教えることで教え子を危険から守っている。厳しく教えることで選手に成長を促す。指導者に進む人達は皆、知っているからだ。中途半端で強い選手になれるほど、現実は優しくないことを。
因みに俺の師匠の教え方はハードでめちゃくちゃだった。一週間素振りと足移動を教えられたら、後はひたすら実戦で学べという無茶振りだった。竹刀を持ち、なんでもありの試合をする。
当時の俺の切り札、石の礫を使ったら、それを見て、反則などと言わず、寧ろ喜んで俺に襲い掛かってきたぐらいの戦闘狂の爺さんだった。いやはや、爺さんに何度ぼこぼこにされたことか…その度に悔しい思いをさせられて、俺の成長を促していたんだろうな。
俺が師匠の動きや技を真似るようになると喜び、さらに応用するともっと喜ぶ。本当に困った爺さんだった。因みにその爺さんは俺の本当の親の親戚で俺にこのゲームのバイトを紹介してくれた人物でもある。
俺のぼこぼこにされた歴史をリリー達に教えて、それを聞いてリリーたちも悔しさは成長の一歩という意味を納得したようだ。
これからの成長はリリー達次第だ。俺は彼女たちの主としてその成長を見守るとしよう。リリー達との会話が終わったので、セチアを召喚。怒っています。昨日からずっと召喚しなかったからね。でも、先にご飯にすると頬を膨らませながら、付いてくるセチアです。
階段を下に降り、いつものバイトをしながら、食事を取る。そして昨日のことをセチアにも説明する。リリーとイオンは嫌そうな顔をしていたが事実を伝えないとね。それから、セチアの言葉攻めに合う二人。正座までさせられている。お説教をしているらしいが、俺は厨房にいるから我関せずで。
というわけにはいかない。さっきまで召喚しなかったからね。お詫びに頭を撫でると許してもらった。
「タクトだけずる~い!」
「それは反則です! タクトさん!」
リリーとイオンはまだ正座しながら、俺に文句を言うのだった。その光景はいつもの光景で俺は密かに救われた気持ちになったのだが、そういうのは言うのが恥ずかしいから秘密にするとしよう。
名前 タクト 召喚師Lv15→Lv18
生命力 24→27
魔力 54→60
筋力 17→20
防御力 10→12
俊敏性 15→18
器用値 32→38
スキル
素手Lv5→格闘Lv1 蹴り技Lv6→Lv12 杖Lv6→Lv10 召喚魔術Lv13 錬金Lv6 採掘Lv6
解体Lv7→Lv8 鑑定Lv7 識別Lv4→Lv8 風魔法Lv5→Lv10 火魔法Lv6→Lv11 土魔法Lv5→Lv10
水魔法Lv5→Lv10 闇魔法Lv5→Lv10 光魔法Lv5→Lv10 雷魔法Lv3→Lv9 爆魔法Lv2→Lv8
木魔法Lv2→Lv8 氷魔法Lv2→Lv8 時空魔法Lv3→Lv8 読書Lv4 料理Lv15 餌付けLv3 釣りLv5
最後のスキル上昇についてですが、これを修正するとこれから先の物語が全て崩壊してしまうので、このままでいきたいと思います。ご了承下さい。
次回はいよいよ新しい国とボスの情報が出ます。お楽しみにです。