#569 アーサー王の抜き打ち調査
俺はアーサー王の話を聞く。
「この姿はウィネブル・グルスヴッヘルという盾の効果でなることが出来るアーサー王のもうひとつの姿さ。名前はアルスルと呼んでくれ」
ウィネブル・グルスヴッヘルは効果不明の盾だ。夕べの顔という意味ということだけ判明している。このゲームでの能力は性転換じゃないか…年齢まで変わっているから変身能力といったほうがいいか。
アーサー王は男だけど実は女性だった説が根強くあるんだよね。伝説では間違いなく男として書かれているんだが、男と偽って生活していたとか色々ある。
このゲームではまさかの男であり、女の子に変身することが出来た説だ。俺は聞いたことがない。たぶんオリジナルだ。アルスルの名前はウェールズの伝説であるマビノギオンで出てくるね。
するとイオンが衝撃のことを話す。
「それはタクトさんを女の子に出来たりするんでしょうか?」
「出来るよ~。男の子も出来る」
「何言って」
「…にぃ。確保」
行動速すぎるだろう!絶対しない!ゲームでオカマにされてたまるか!
「子供のタクトが見たいな~タクト」
「逃げ場はありませんよ! タクトさん! 観念してください!」
してたまるか!するとアルスルが話す。
「あはは! 私も見たいが残念ながら一日一人しか変えれないんだ」
「「「えぇ~」」」
助かった。というアーサー王、分かってて黙ってたな。さっきの仕返しかよ。
「それで自慢しに来たんですか?」
「いや、せっかくだからこの姿でパラディンロードを案内してあげようと思ってね。王様の姿だと目立っちゃって大変だからさ」
そういうことはもっと早めに教えてくれ。
というわけでアルスルと街に向かう。アルスルが自分はドラゴニュート宣言には驚いた。
その後、アルスルにオススメのお店に案内してもらった。そこにはアダマンタイトの武器や防具、装飾品があったのだが、問題がある。
「値段…可笑しくないか?」
「君なら買えるだろう?」
そうだね。今回のギルド報償金を全部使えば普通の剣がかろうじて買えるね!可笑しいだろう!
「やはりいい武器は値段が張るものさ」
まぁ、効果が高いのは認める。普通にスカーレットリングたちを越えてきたからな。迅雷は流石に越えてない。
「アダマンタイトはこの辺りで手に入るのか?」
「そうだよ。近くに鉱山があってね。その奥のほうで取れる。ただ行くのはオススメしないな。私たち総掛かりでなんとか取れるぐらいのレベルだ。時々逃げないといけないモンスターも出てくるよ」
俺の野望潰える。円卓メンバーでそれって、死の鉱山じゃん。因みにフィールドに出るだけで命懸けらしい。やはりこの国のフィールドが一番難易度が高いみたいだ。
その後、町を回る。するとパラディンロードの抱えている問題が見れた。城から離れるにつれて、貧困が酷くなるのだ。
「アグラヴァインは報告しないが私はこの姿で時々見に来ていてね。お城の食料を教会に運んでいるんだけど、中々改善しなくてね」
「なぜ俺にその話を?」
「王の情報能力を舐めてはいけないよ? 君がフリーティアに来てからフリーティアは驚くべき活気に満ちている。実際に見て驚いたものさ…見たことがない美味しそうな料理が並ぶ町並みにそこには人々の笑顔が溢れていた。ここは悪魔や凶悪なモンスターが蔓延る地でそういうのとは無縁だとは思っているがやはり国民にはああいう生活をして欲しいと望んでしまうんだよ」
かなり土地的にきつい側面があるみたいだな。それにしてもアーサー王が食料を届けているのにこの貧困はちょっとおかしい。まるで食料の配給がされていないみたいだ。
するとアーサー王にぼろ布で顔を隠している子供が一人ぶつかる。
「おっと。大丈夫かい?」
「…ごめんなさい」
俺はその子の手を掴む。
「それはぶつかったことに対して謝っているのか? それとも盗んだことに対してか?」
「く…離せ!」
ぼろ布がめくれると真っ赤な髪の女の子の顔が現れた。俺は凄い睨んでおり、噛み付こうとしてきたので、離すとその場から逃げ出した。
「…どうします?」
「取られたものは大したものじゃ…王のメダルがない」
どうやら王様を証明するメダルを取られたみたいだ。
「君! それはダメだ!」
「俺、知~らない」
「いや、助けてくれよ! 待て~!」
俺たちが女の子を追って、たどり着いたのは教会だった。
「…変じゃないですか?」
「孤児院があるから子供がいることに不思議は無いが…盗みをした子がここに真っ先に来るのは変な気がするね…ちょっと様子を見ようか」
するとさっきの女の子が教会の扉を破って飛んできた。
「全く…使えないガキだな。厄介な物を持ってきやがって…アーサー王に目を付けられたら、どうしてくれるんだ!」
「やめてください! 神父! スクルドはまだ子供なんですよ!」
「うるさい! エイル ! こいつのせいで食料が貰えなくなったら、どうするつもりだ! 商売が成り立たなくなるだろうが! お前の薬や聖水を作る材料もこいつのせいで貰えなくなるかも知れないんだぞ! それともお前の愛はそんなものか?」
「いえ、そんなことは…ありません」
おーおー。ペラペラ話す神父だな。そんな神父を放置して、盗人の女の子をスクルド、修道女の格好をしているお姉さんをエイルと呼んだな。二人とも、ワルキューレの名前だ。スクルドに至っては女神としても知られている。
するとアルスルの姿が完全武装したアーサー王になると隠れているところから姿を見せる。
「…その話、詳しく聞かせてくれないか?」
「あぁん? 誰…」
「私のことは知っているな? 神父。さて、先程の話の続きを教えてくれ。具体的には私が貧しい国民のために支給した食料で商売をしていたという辺りだ」
「そ…それは…」
詰んだな。しかしこれがクエストだとするとこの後の展開が予想出来る。さっきのエイルの姿も変だった。恐らく操られている。ここは騎士の国で愛に対する操作ならこいつの正体は大体予想出来る。準備をしておこう。
「くそ!」
神父が騎士姿の悪魔になる。同時にインフォが来る。
『緊急クエスト『悪魔エリゴス』が発生しました』
エリゴス?
? ? ?
やはりソロモンの悪魔になるか…エリゴスは騎士の悪魔で人の愛情を司っている。まぁ、俺の予想、ドンピシャな悪魔だ。というか話の展開がネビロスの時とそっくりだ。
「死ね! アーサー!」
アーサー王に魔弾が打ち込まれようとした瞬間、魔弾は動きを変えて、スクルドに飛んでいく。
「おっと!」
俺が飛び出し、迅雷で魔弾を斬り裂く。準備しといて良かった。それを見たアーサー王はホッとしてから怒りの目をエリゴスに向ける。
「私の前で子供の命を狙うとはいい度胸だな…悪魔よ」
「ヒ!?」
エリゴスは切断される。終わり?よっわ。しかし簡単ではないらしい。エイルさんがなんとエリゴスを蘇生させた。
「ひゃはは! 俺様を倒せると思ったか? アーサー? 俺を倒したかったら、そこの女を殺すことだな! 最も優しいお前には出来ないだろうけどな! それともそこのお供の騎士にやらせるか?」
おや?俺を騎士と思っていらっしゃる?残念ながら召喚師で俺にはこいつの能力を封じる術がある。
「召喚! ブラン!」
「お呼びですか? 我が主」
「な!? 召喚魔術だと!?」
驚いている暇があるのか?天使がお前たちにとって、天敵なのは知っているだろうに…。
「あの悪魔の能力を封じてくれ」
「お任せを。聖櫃!」
聖櫃に囚われたエリゴスは能力が封じられた。するとエイルさんが意識を失ってしまったが悪影響はないだろう。
「どうぞ。アーサー王。この悪魔はあなたが倒すべきでしょう」
「すまないな…」
「ま、待て!」
エリゴスはアーサー王に斬られて死んだ。そしてクエストクリアのインフォが来る。ま、初期のクエストを今受けたら、こんなものだろう。
その後、エイルさんは意識を取り戻したが自分に何が起きていたのか記憶にない様子だ。それからスクルドは盗んだものをアーサー王に返し、俺には助けたお礼を言ってきた。
するとスクルドや他の子供たちのお腹が鳴る。しかし食料はない。アーサー王が俺を見る。はいはい…食料を出せばいいんだね。
「ブラン…俺はちょっと席を外すから子供の世話を頼むな」
「そんな!? 私には無理…そんな羽を触らないで…あぁああ! 天輪もダメ! 主! 助け」
それは無理だ。教会の孤児院のところにリアル天使が現れたら恐ろしい人気になるだろう。それを止める術は俺には料理という手しか思いつかない。
というわけで俺が戻ってくる頃にはボロボロになったブランが恨みがましい目で俺を睨んできていた。残念ながら可愛いだけだ。
俺が運んだ料理がみるみる無くなっていく。リリーたちといい勝負だな。
「すみません。こんな美味しい料理を頂いて…あのお金を」
「アーサー王から頂くので、大丈夫ですよ」
「むぐ!?」
何を驚いているんだか…要求をしてきたのはアーサー王だ。しかも一緒になって、料理を食べているし…そもそもあれだけ伝説の武器を持っているなら、これぐらいのお金、余裕だろう。
「まぁ! そうなんですね! じゃあ、みんな王様にお礼を言いましょうね」
『王様、ありがとう!』
「あ…あぁ。遠慮なく食べてくれ」
そう言うしかないよな。その後、俺はレギンやヘリヤの話をするとやはり知り合いのようだ。無事にフリーティアで生活をしていると聞くと自分のことのように喜ぶエイルさんとスクルドだが、残念ながら彼女たちが仲間になることなかった。
孤児院があるんじゃ仕方無い。因みにエイルさんはブリュンヒルデの次に年上らしい。スクルドは一番年下らしい。
話が終わり、俺たちは教会を調べるとやはり魔方陣があった。マーリンを呼び、魔方陣を破壊する。これでこの教会は安全だろう。
「ところでアーサー王? 一人だけご馳走を食べるのはずるいとは思わないかい?」
「ま、待て! マーリン! 言いたいことはわかる! だが、お金が」
「タクト殿、円卓メンバー全員分の料理をお願い出来ないかな? お代はもちろん太っ腹なアーサー王が払うからさ」
団体様のご予約を貰ってしまった。それじゃあ、フリーティアに帰って、みんなに作ってもらうとしますか。円卓メンバーたちはご満悦な様子な一方でアーサー王は真っ白になっていた。
結構長くいてしまったが、今回はここまでだな。俺は別れを告げて、フリーティアに帰るとログアウトした。




