#566 舞踏会と騎士王
舞踏会が始まった俺はみんなと踊り、大変だった。最初にファリーダと踊ったのだが、完全に振り回された。
ファリーダの採点は20点だった。
「タクトはステップを合わしてくれたから失敗はないと思うけど、男なら女性をリードしないとダメよ」
ぐうの音も出ない。因みにオート機能を使っている人のファリーダの採点は10点。見ていて気持ち悪いとのこと。人間らしさがないと言うと意味だろう。
その後は失敗の連続…リリーたちは慣れないヒールを履いているんだから仕方無い。助けに行くと何故かヒールで踏まれてばかりだったが最後までやりきったことを誉めてほしい。犠牲になったのは右足だ。
舞踏会が終わると立食会が開かれた。色とりどりの美味しそうな料理が机に並べられている。
「料理が~…そこに~…あるのに~…」
机まで行けないリリーたち。飛べばいいと思ったがファリーダに禁止されているらしい。
「歩き方も教えたでしょう? 頑張りなさい。タクトは手を出しちゃダメよ。これはリリーたちの問題なんだから」
『そんな!?』
ファリーダはスパルタだな。まぁ、手を出すのがダメなら俺は一人でのんびり食べて過ごそう。
「タクトの影に逃げ込むのもダメよ」
「…無念」
ノワすら逃げ出せないならファリーダのスパルタ教育から逃げられそうにないな。するとシルフィ姫様たちが来た。
「楽しそうでしたね。タクト様」
「皆さん、笑っていたでしょう…俺が踏まれる度に」
「気のせいですよ。ちょっとお時間を頂いても良いですか? 是非紹介して欲しいと言う人がたくさんいますので」
「えぇ~」
俺が嫌そうな声を出すとランスロットさんと王冠を被った金髪のイケメンが来た。
「姫様相手にそこまでの態度を取る人間がいるとはな。中々愉快な人間のようだ」
「アーサー様」
アーサーはパラディンロードの王様だ。国際会議の時にルインさんたちが出会っているから知っている。これを知ったとき、トリスタンさんが頭を抱えたのは言うまでもない。
「初めてお会い致します。ギルド『リープリング』のギルドマスターをしております。召喚師のタクトと申します」
「パラディンロードの王をしているアーサーだ。ランスロットが世話になったようだね。王として感謝する」
「いえ、ランスロット様には我々も助けていただきました。改めて感謝致します」
「ふふ、ランスロットに聞いた話とは少し違うようだな…ふむ」
アーサー王から殺気が飛ばされる。俺は意に介さない。
「ほぅ…」
「アーサー王!?」
「アーサー様!?」
驚くランスロットさんとサラ姫様。俺は手を制する。
「あぁ…いいですよ。俺を試したんですよね?」
「すまないな。これでも英雄たちの国の王様なもんでね。操られていたとはいえランスロットを負かした男がどれ程のものか知りたかったのだ。無礼を謝罪しよう」
「余りタクト様をいじめないで下さいね? アーサー様。彼とは私が先に戦う約束をしているんです!」
「シルフィ姫様と戦うつもりなのかい? それは凄いな。私でも彼女はちょっと怖いぞ?」
アーサー王が怖がるほどの実力って、シルフィ姫様はどれだけやばいんだ。
「俺はサラ姫様にばっさり斬られたトラウマがあるので、まだまだ先の話ですよ」
「えぇ~」
さっきのお返しだ!
「ほぅ! サラ姫様は彼と戦ったことがあるのかい?」
「はい。騎士訓練の一環で…まだ彼が弱い時代の話ですから今では恐らく勝てませんね。もちろん挑まれたら、負けるつもりはありませんが」
サラ姫様も負けず嫌いだな。俺も人のことを言えないが。
「…よし。ランスロットが世話になった礼もある。パラディンロードに来てみないかい?」
お!パラディンロードに行けるなら行ってみたいな。しかもお礼を貰えるなら行くしかない。
「はい!」
するとそれを察したメルたちが来た。
「それはギルド全体ですか? アーサー王様」
「いや、今回は彼だけだ」
俺を恨みがましい目で見るなよ。ランスロットと戦ったのは俺なんだから仕方無いじゃん。しかし今回はと言ったか?
「今回はということはみんなをいつか招待するということですか?」
「あぁ。大陸中にレベルが高い冒険者が増えてきたみたいだからね。近いうちに我が国で決闘大会を開く予定だよ」
全員の目が光った。これは次のイベントの予告だよな。決闘イベントか…憂鬱だ。しかし停戦状態でのんびり決闘していていいんだろうか?とにかく俺はパラディンロードに向かうことが決まった。
その後、俺はリーゼのお父さんであるハンズさんに連れられて挨拶周りをした。葛葉やエルフィーナ、早太郎たちに感謝の言葉をかけ、後日お礼の品を送ることを約束した。するとエアティスさんに声をかけられた。
「村長とオプスからホークマンの村を守ってくれたお礼を預かっています。どうぞ受け取って下さい」
どうやらギルド全員にあるようだ。
勇者の羽:レア度7 素材 品質B+
ホークマンの羽。光と風の効果がある羽で持ち主に勇気を与えると言われている。
暗殺者の羽:レア度7 素材 品質B+
レイブンの羽。闇と雷の効果がある羽で猛毒と麻痺の効果もある。
なんとなく勇者の羽は防具寄りのアイテムで暗殺者の羽は武器寄りのアイテムだな。しかし羽と聞くとペンのイメージがあるからそちらも検討したほうがいいかも知れない。
「ありがとうございます。オプスは来なかったんですね」
「あいつはこういうのが苦手なので」
「俺も苦手です」
「そこはギルドマスターですから慣れてください」
酷い!慣れろと言われて慣れれたら苦労しない!そしてジャンヌとレギンたちが来た。
「三人はまたうちのお店で働くんだってな」
「はい…私の国のことがありますから悩みましたが、ベルトランおじ様に止められました」
「私たちはわがままだとは思いますが、やっぱり普通にお店で人と接していたほうが楽しいと思いました」
「いいんじゃないか? それで。俺も戦っている一方で色んなことをしているからな」
三人に笑われた。なぜ笑う。
「「「知っています」」」
シンクロされた。仲良いよな。この三人。
そんなことがあった舞踏会が終わり、ランスロットはアーサー王と共に帰っていき、俺はホームに帰ってきたのだが、リリーたちからお腹の虫がなる。
『お腹、減った…』
リリーたちが机にたどり着いた時には料理は無くなってしまっていたらしい。ファリーダの話では這いずってでも机に行こうとしたらしく、本気で怒ったそうだ。
俺はリリーたちの暴走を止めてくれたファリーダに感謝した。ドレス姿でそれはやばい。
「シルフィ姫様に許可を貰って、取ってあるから大丈夫だぞ」
『やった~!』
リリーたちとグレイたちにホームで料理を食べさせてる間に、俺はギルドでアイテムじゃんけん大会を見守る。
するとブリーシンガメンは雫ちゃんが手に入れることになった。
「…なぜ水、氷メインの子が?」
「お前がじゃんけん負けたせいだろう? 欲しかったら、交渉するんだな」
女神のネックレスだからそう簡単ではないだろうけどな。次は魔剣ティルヴィング。これはフリーティアの勇者パーティーのリーダーが勝ち取った。
「よっしゃぁあああ!」
「…俺が体を張ったんだから俺が貰っていいと思わないか? タクト」
「みんなで決めたことなんだから仕方無いだろう? そもそも勇者で魔剣装備するのは苦労するぞ」
「ッ!?」
手に入れた人が俺を見る。だって、闇属性じゃないと装備出来ないから装備するなら闇属性の防具を集めないといけない。まぁ、それをする価値がある武器なわけだが、勇者を名乗るには問題がある気する。そこは個人の意見だけどね。
そんなことを思っていると出血の剣がアーレイの手に渡る。こいつは一体何に呪われているんだ?とりあえず当たって良かったなと言っておいた。
覇王悪魔の大剣はクロウさんたちに上げることにした。名目は協力してくれたお礼。実際は使えるのが俺の月輝夜ぐらいしかいないから。なら貰えばいいわけだが、月輝夜の持つべき武器はこれじゃないという俺の勝手な意見。
この大剣からならかなりの量の武器が作れるだろう。どんな武器になるのかわからないが楽しみにしておこう。
竜魔将の鎧は雷電さんにイレイザーグレートソードはルークになった。この二人なら合っている武器だ。問題は次の魔王結晶なんだが、シフォンのものになった。
「シフォン…あなたフェアリープリンセスと呼ばれるのが嫌だから闇落ちするのはどうかと思うわよ?」
「わぁ~! それは言っちゃダメ~!」
「フェアリープリンセス?」
「繰り返さないで~!」
どうやら切り札の精霊武装の姿から掲示板でそう言われているらしい。他にもみんな今回の戦いで掲示板に名前がついていた。例えばアーレイは黒ひげのアーレイとか、ミライは聖女のミライとか呼ばれているらしい。
他にはメルが軍隊長のメル。サバ缶さんがロボ提督のサバ缶、太陽槍のレイジなどある。みんなそれぞれ言いたいことがあるみたいだな。因みに俺は作戦指示で色々評価されたみたいだが、今までの言葉があるから新たに生まれることはなかった。
最後に破戒僧の錫杖は俺のものとなった。これはみんな満場一致で俺が倒した人だから貰うべきという話だ。ミライにとも一瞬思ったが、あんな奴の武器はいらないだろう。錫杖といえば千影だが、使わせたくないな。保留にしておこう。
俺はみんなにホークマンたちのお礼を渡して、みんなそれぞれ注文を出している。俺はユグさんにペンとナオさんにブラックダイヤモンドの指輪を注文した。
その後、帰るとそこにはお腹いっぱいのリリーたちがいた。
『満足』
凄い光沢の笑みだ。グレイたちも大満足のご様子だ。舞踏会のドレス姿も可愛かったが、やっぱりこういう姿が俺は好きなんだろうなと思った。
少し時間があるからセチアの新しい能力である阻害無効を見てみよう。
セチアとリビナが決闘で向き合う。
「それじゃあ、行きますよ。リビナ」
「いつでもいいよ~」
「ブロッサムストリーム!」
まさかの大技だ。
「魔法阻害!」
本来ならこれで魔方陣が消えるはずだが、消えずにブロッサムストリームがリビナに放たれる。
「障壁!」
リビナが障壁でカードした。
「こんな感じでしょうか」
「この阻害の範囲はどの程度なんだろうな?」
結果はファリーダの魔力妨害は有効。封印や呪いの状態異常による魔法封じは無効に出来なかった。これからマングローブの森のようなフィールドが増えてくるなら必要不可欠なものだが、今の状態ではまだ取る必要は無さそうなイメージだな。
魔法阻害は結構必要な気がする。少なくとも対人戦では結構有効なスキルだろう。決闘イベントの告知もされてしまったしな…ここは保留にしておこう。イベントの正式な発表があってからでもいいだろう。
それから俺は和狐にドラゴングローブの注文をして、セチアにはアレキサンドライトを見せる。
「これは…魔法剣ですね?」
「あぁ。俺のを頼めるか?」
「もちろんです! ただこれだけの素材ならば最高の魔法剣を作りたいと思いますからかなりの時間を頂いてもいいですか?」
まぁ、それは仕方無いだろうな。
「大丈夫だ。時間はあるし、二人とも無理しないようにな」
「「はい!」」
これでよし。最後に俺が新しい国に行くことになったことを話すとリリーたちのじゃんけん大会が始まったので、ログアウトすることにした。明日には決着がついているだろう。




