#560 ヴァインリーフ解放戦
少し時間を巻き戻す。メルたちはイジ鉱山のお城を爆破後、ホークマンの村で待機していた。目的は村の防衛とヴェインリーフの解放だ。
「ゴネスはトレントの森に戦力を集めるだろう。俺は召喚師たちと亜人種たち、フリーティアの騎士たちを率いて防衛する。その隙にメルたちは火影さんたち以外のプレイヤーを率いて、手薄になっているヴェインリーフを落としてくれ」
「え? いいの? 普通逆な気がするけど」
「俺の目的はドォルジナスだ。あいつが部隊を率いているなら必ずトレントの森に来るはずだ。ぶっちゃけヴェインリーフには興味がない」
凄いぶっちゃけた!と説明を聞いていたプレイヤーたちが思ったが次のタクトの言葉は予想外のものだった。
「全員この戦争の間にレベルが上がって、何人も第四クラスになっている。ヴェインリーフの守りも恐らく手薄になっているはずだ。ボスは能力はわからないドォルジナスの仲間の悪魔だろうから手強いことは間違いないだろう。それでも切り札の温存にも成功したし、みんななら対処出来るはずだ。ヴェインリーフの解放、頼めないか?」
「ま、まぁ…切り札もあるし、道のりはドワーフたちが保証してくれるからヴェインリーフの解放ぐらい楽勝かな~」
「タクトもようやく俺たちの強さを認めるようになったか! よーし! 任せろ! 魔王ぐらい楽勝だ!」
「まぁ、我々は攻略メインだ。ボス戦なら望むところさ」
メル、アーレイ、鉄心さんの他にもみんなが自慢げになり、俺は心配になったが任せることにしたのだ。そしてイジ鉱山から敵が現れ、敵の全てがトレントの森に向かったのを確認したのち、連絡を入れた。
「タクト君から連絡が来た。みんな! 出陣!」
『おぉ!』
メルたちはドワーフたちの案内で秘密の洞窟を通り、進軍する。
メルたちがヴェインリーフの都に到着したのは、タクトがドォルジナスを見つけた少し前だ。
「ここから色々な穴が町や城に繋がっている」
「じゃあ、部隊を分けようか」
「騎兵は外ですね…城がどんなのかわかりませんが向かないでしょう」
「そうやろな。せやけど、流石にわいらだけではきついで?」
するとまだレベルが低い人たちが外を希望する。
「編成はこれでいいかな?」
「ここからはそれぞれ別れての攻略だなぁ。誰が王の間に一番乗りするか勝負しない?」
『乗った』
何気に勝負事が大好きな皆さんだ。そして全員が同時に外に飛び出す。
『ん?』
外にいたダエーワたちの大群とプレイヤーたちがかち合う。
『敵襲だ!!』
『どこが手薄だぁあああ!』
ヴェインリーフは現在敵の拠点だ。悪魔の数は減っても、防衛に戦力がいるのは当然だった。
町のあちこちで爆発が起きる。この戦いに全ダイナマイトを投入した。
ここさえ落とせば、フリーティアが攻め混まれる危険性はほぼ無くなるからだ。ワントワークから攻め混まれる危険はあるがそれならフリーティアの騎士団で十分だ。
攻め込まれる危険性が無くなればサバ缶さんたちが落としたゴネスの村や町にワープゲートを使い、全員で一気に攻め込める。
故にここの解放のためにほとんどアイテムを投入したんだ。
因みに飛び出した場所はみんなそれぞれ別の場所だ。その中でもボス部屋の近場に出たのはメル率いるレギオン、満月さんと与一さんがいるレギオン、鉄心がいるレギオンだった。
しかし近いからいいとは限らない。まずはメルたち。
「爆掌! あぁ! もう! きりがないよ! お姉ちゃん!」
リサが掌でダエーワに触れるとダエーワが爆発し、ダエーワを倒すと文句を言う。王の間に近いと当然守りが固いのだ。
「星剣! それでもやるしかないの! ユーコ! レッカ君!」
「オッケー! 爆裂衝波!」
強烈な衝撃波でダエーワたちはぶっ飛ばされ、通路の壁にぶつかり、集まるとレッカが杖と魔導書の魔方陣を融合させる。
融合した魔法はヒートレイとシャイニング。
「融合魔法! ヒートレイブラスター!」
特大の熱線がダエーワたちを貫いた。しかし通路からダエーワたちが来る。
「ウォールバリア!」
ケーゴがシールドを構えると通路に光の壁が貼られ、ダエーワたちを足止めする。
『ふぅ…』
「休憩するより攻撃してくれよ!」
メルたちが休憩している一方で満月さんと与一さんも頑張っていた。
「押し込むぞ!」
『おぉ! キャッスルウォール!』
こちらでは光の城壁が貼られ、満月さんたちは槍で刺しながら前進をする。すると壁にぶつかったまま、ダエーワたちを押していく。そして身動き出来なくなったダエーワたちを与一さんや他のメンバーが攻撃していく。
「まるでブルドーザーのように…は!」
「言っておくがブルドーザー満月とか言うなよ!」
『ダメか…』
先回りをする満月さんだった。その頃、鉄心さんはダエーワたちを斬りまくっていた。
「流石にキリがないな…村雨斬り!」
満月さんの刀に水刃が宿り、ダエーワを真っ二つにする。
「後ろからも来たぞ!」
「カイ! 雫! 後ろを頼む!」
「任せとけ! 英雄波動!」
カイの剣から金色の波動が放たれ、ダエーワたちを倒すが生き残ったダエーワがカイを狙うが、ダエーワとカイの間に魔方陣が融合する。
融合した魔法はブリザードとトルネード。
「融合魔法! ブリザードトルネード!」
雪の竜巻がダエーワたちを凍らせ、ぶっ飛ばす。そこにプレイヤーたちが殺到し、倒す。結果鉄心さんにダエーワたちが殺到する。
「倒すのはいいが! こっちにも! 少しは! 残って! くれ!」
「あなた! ファイトですよぉ~」
「く! うぉおお!」
ワイフさんの声援には答えないといけない鉄心さんは頑張っていた。
一方、シフォンたちは王の間から遠くにいた。
「くそ! なんで遠いんだ!」
「あんたのくじ運が悪いからでしょうが!」
「でもモンスターは少ないね」
「私たちより奥で戦っている人もいるから、モンスターたちはボス部屋周辺に集まっているのよ」
しかし当然完全スルーとは行かない。ダエーワが立ちたがる。
「シフォン、任せた!」
「そこは任せろじゃないかな…とにかく行ってくるね」
シフォンはダエーワのパンチを避けたり、ガードしたりしていた。
「うざったいアマだな! デモンパンチ!」
「クロスカウンター! シュトルムエッジ!」
シフォンはダエーワの武技に対してカウンターの武技を見事に決める。更にシュトルムエッジと繋げるがダエーワは倒せない。
「任せろ!」
「巨剣化! どっせい!」
ミランダの剣が巨大な剣になり、それを投げるとアーレイの横を通りダエーワを貫いた。
「…今…かすった…」
「邪魔をするからよ。急ぎましょう」
「うん!」
震えるアーレイを放置して、先に進んだ。
アーレイが言ったゲームの勝敗はドロー。正確には敵に足止めされたメルたちに遠くにいた人たちが結局合流することになったからだ。
「はぁ…はぁ…ようやくボスだね」
「タクトの奴はしっかりボスを倒したからな。俺たちも倒さないとな」
「とはいえ時間も時間だ。ちょうどボスの扉の前に安全エリアがあることだし、21時に攻略を始めないかい?」
『賛成』
というわけで一旦ログアウトしてからボスに挑むことになった。




