#545 ホークバレー戦、開戦
フリーティアの海域で戦闘が始まった同時刻。ホークバレーには大軍のゴネス騎士が進軍してきていた。
その大軍の前に俺はリープリングの旗を掲げて立っていた。
「ゴネスの騎士どもに最終警告する! ここより先はフリーティアの領土だ! それでも進軍してくると言うなら容赦はしない!」
「ふん! 若造が何を」
「リリース」
俺はテレポーテーションで転移する。ゴネスの騎士の誰かが何か言おうとしていたが俺がそれを聞いてやる道理はない。
「…全軍進軍! 奴らをぶち殺せ!」
『おぉ!』
ゴネスの騎士たちがホークリバーに突入する。最初の侵入経路は広い一本道だ。俺たちはここを第一防衛ラインとした。
「ジャンヌ」
「はい! 聖軍旗よ! 今こそ共に戦う騎士たちに祝福を!」
全員にバフが発動する。では、初手だ。俺は合図の照明弾を投げる。
するとゴネスの騎士たちの後方で爆発が発生し、渓谷の崩れ、岩盤が道を塞ぐ。更に前方でも同じことがことが起きる。
崖で道を塞ぐのは谷での戦闘の基本だ。
「隊長! 道が塞がれました!」
「見ればわかる!」
「上空より召喚師の一団を確認!」
「撃ち落とせ!」
しかしアルさんたちがいる高度では弓矢はまず届かない。魔法などは届くが距離がある魔法が当たるほど、召喚獣たちは弱くはない。
「樽投下!」
『はい! 樽投下!』
アルさんの指示で樽が次々落とされ、ゴネスの騎士たちは落下した樽で油まみれになる。
「この臭いは…まさか」
「油だ!?」
ゴネスの騎士たちは慌てるがもう遅い。
『樽投下完了。レッカさん、後は頼みます』
『流石ですね。アルさん、後は任せて下さい』
レッカが部隊に指示を出す。
『開戦の狼煙だ! 派手に行こうか! 全軍遅延魔法解放!』
『リリース!』
一斉に火魔法、炎魔法、爆魔法が放たれ、閉じ込めた渓谷内は地獄と化す。これで人は全滅だろう。
「おのれ!」
「人間風情が!」
ゴネスの騎士たちが悪魔の姿に代わる。ほぅ…あれが今回のイベント悪魔のダエーワか。かなりでかいな。崩した岩盤を力付くでぶっ壊そうとしている。
しかしサイズはオーガサイズ…許容範囲だ。ぶっちゃけ上級ドラゴンサイズは来ると思っていたからな。では、死んで貰うとしよう。
『今です! トリスタンさん』
「了解よ! 全軍! アーバレスト! 発射!」
岩盤を突破したダエーワたちに高速で飛来する巨体な純銀性の矢が放たれる。
「何!?」
「なんだ!? あの矢!? 防御をーーぐは!?」
ダエーワたちは障壁を貼るが高速で飛来する純銀性の巨大な矢は障壁の貫通し、ダエーワたちに容赦なく突き刺さり、ダエーワたちは倒された。
アーバレスト…これが俺たちが開発した対ボス悪魔用決戦兵器だ。バリスタのほうが知らせれているかも知れない。ではなぜアーバレストと呼んでいるか?名前が格好いいからだ。
因みに俺たちの間では大型がアーバレスト。小型なのをバリスタと区別している。
アーバレストは簡単に言うと弩砲だ。カタパルト同様に城攻めに使用された歴史がある。
矢が大きいから当然矢を打ち出す装置もでかくなる。持ち運びに向かない点や矢が大きいからアポーズで回収できない点、照準に時間がかかるなど難点が多数あるが威力はご覧の通りだ。
弓矢の一種だから狩人や弓術師が適性の兵器でトリスタンさんを隊長にしたのはこれが理由だったりする。
「ダエーワ様たちがやられたぞ!?」
「か、構うな! 攻め込め!」
ホークバレーを進む悪魔たちの前にメルたちが立ち塞がる。
「残りは雑魚! 一瞬で決めるよ! みんな! レギンさん!」
「はい! クラウソラス!」
レギンがクラウソラスを掲げるとメルたちの部隊全員にバフが発生し、鎧が輝くと悪魔たちは弱体化する。
「まぶし!?」
「なんじゃこりゃ!?」
「全軍突撃!」
『おぉ!!』
悪魔たちとメルたちがぶつかる。その中には俺が訓練した騎士たちもいた。
「フリーティアの騎士!」
「引き裂いて」
「遅い!」
「隙だらけだ!」
みんな悪魔を倒している。彼らはレベルも遥かに上で俺に剣術、リリーたちから戦闘を学んだ。悪魔たちにビビることもなく、敵の攻撃も彼らにはさぞ隙だらけに見えるだろう。
それはレギンも同じだ。クラウソラスでどんどん倒していく。ただレギンはメルたちの部隊の要だ。しっかりメルが選んだギルドメンバーがサポートしてくれている。
しかし悪魔は当然空を飛んでくる。するとトリスタンさんたちが武器の火縄銃を空に構える。
「純銀散弾! 撃て!」
空に撃たれた弾丸は途中で破裂すると無数の純銀性の弾が悪魔たちを襲う。榴散弾の銃バージョンの弾だ。これをトリスタンたちは撃ちまくる。
マザーシップで量産された弾丸だ。節約なんて考えず撃ちまくれる。一定距離に悪魔が過ぎると召喚師たちと相手が変わる。
榴散弾や純銀散弾は味方にもダメージを与えてしまうから、混戦では使えない弱点がある。よって、こういう戦闘になる。既にボコボコ状態の悪魔はタクマやアロマたちの敵じゃない。
全滅させると黒い瘴気が集まり、キングダエーワになる。あれがボスか。
「貴様ら、ボコボコに」
『これが男の! 生きる道!』
大筒が一斉に放たれる。使ったのは俺たちとは関係ないパーティー。彼らは掲示板で大筒をうちのギルドが手に入れた情報を聞くとわざわざライヒから来た。
「大筒を使わせてくれ! この通りだ!」
「俺たちは肩にキャノン砲を背負って撃つことを夢見る銃師パーティーなんだ! 筋力もちゃんと振ってある! 使えるはずだ!」
「お願いだ!」
『俺たちに男のロマンを実現させてくれ!』
断れる?断れる訳ないよね。どうせ誰も使えないし、こういうバカは俺は好きだし、応援することにしたのだ。因みに彼らの存在は与一さんたちを驚かせた。それはそうだろう。基本的に筋力は必要ない職種だからな。
「ぐっ! こんなものが通用するか!」
キングダエーワがそういうが怯ますことに成功した。既にメルたちが間合いを詰めている。
「羽を潰すわよ!」
「えぇ!」
ミランダとユーコが羽を潰すために跳躍し、大剣を振りかぶる。
「「大切断!」」
二人は見事にキングダエーワの羽を両断する。更にアーレイと鉄心さんのパーティのカイ、メルをはじめとする前衛が手足を狙う。
『擬似聖剣化!』
みんなの剣が一時的に聖剣となり、剣に纏った光の刃でキングダエーワを次々斬り裂いていく。
更に後方にいた満月さん率いる重装部隊と雷電さん率いる騎馬部隊が槍投げの構えを取る。
『ファランクスレイン!』
『スローペネトレイター!』
満月さんたちが投げた槍は無数の槍の雨となり、雷電さんたちが投げた槍は高速回転し、一直線にキングダエーワを貫いた。
『まだまだ! 倒すのは俺(私、僕)だ~』
メルたちが一心不乱にキングダエーワをボコボコにしていく。
『武器回収! 倒すのは俺たちだ!』
武器回収で投げた槍を手元に戻した満月さんたちの第二投が炸裂し、最後は俺たちのギルメンの攻略組の人が倒した。
「おっしゃあああ! キングダエーワ! この俺が撃ち取った!」
『ちっ』
「全員から舌打ち!?」
仕方無い。みんな倒したんだからさ。それでもみんな旗を掲げて初戦の勝利を喜んだ。
これで訓練したフリーティアの騎士たちにも自信がついただろう。問題は明日だな。今までこのゲームではこちらの戦力を見て、作戦を変えることがあった。
今回の戦いで敵もこちらのことをある程度、予測して攻めてくるだろう。すると俺の元にオプスたちが来た。
「…見付かったか?」
「くまなく探したがダメだった…恐らく特殊な結界かアイテムを使っているんだろう。どうする? もう少し探すか?」
「…いや。疲れているだろう? 相手が隠れているとわかっただけで収穫だ。恐らく明日も攻めてくるだろう。みんなには暴れてもらうぞ」
「ふっ…そういうことなら休ませてもらおう」
するとサバ缶さんから連絡が来た。ルインさんはまだだが、どうなったかな?




