#55 アーサーVSリリー、イオン
アーサーがまずリリーと対戦する。アーサーの武器は片手剣と盾だ。完全撃破モードで戦闘が始まる。リリーがヘビースラッシュを放つとアーサーは剣でそれを受け止め、弾く。
そして武技を弾かれたり、強制解除された場合は数秒の硬直状態になる。すなわちリリーはモロに攻撃を喰らうことになる。本来なら…だがアーサーはリリーに攻撃しなかった…こいつ。
そしてリリーのスラッシュ、ヘビースラッシュなどの大ぶり攻撃を繰り返すが全て盾で弾かれる。それなのに攻撃を一切しない。間違いない…こいつ、リリーで遊んでやがる。
「ふふ、どうしたのかな? お嬢ちゃん。そんな悪の攻撃では僕には届かないよ」
「やー!」
リリーもイオンももう分かっているはずだ…遊ばれていることに。
「リリー、そこまでだ。もうやめろ」
「っ!? でもタクト」
「残念だけどそれは許可出来ないね」
俺がリリーに試合をやめるように言うとアーサーがいきなり、リリーに斬りかかる。ちょっと待って、試合を止めているところを斬りかかるだと!?
リリーは不意打ちの攻撃に防御するが剣が弾き飛ばされ、無防備になる。
「これがPSの差だよ。お嬢ちゃん。ヘビースラッシュ」
アーサーのヘビースラッシュがリリーに直撃し、俺たちの所にリリーが落ちてくる。
「リリー!」
「リリー! しっかりしてください!」
俺達がリリーに駆け寄るとリリーは涙を流して、言った。
「ご…めん…タ…クト…」
そしてリリーが俺たちの前で召喚石に戻る…。
その光景を見て、俺の中に眠っていたものが目覚めようとしていた。
「よ、よくもリリーを!」
イオンがアーサーに斬りかかる。だが、アーサーはそれを盾で止める。
「青い君はスピードタイプだね。だけど残念PSがないね!」
アーサーの力押しで押し飛ばれる。
「くっ…許さない…リリーの戦いを…思いを踏みにじったあなただけは絶対に許さない!」
イオンが左右から高速攻撃を仕掛けるが、リリーと同じで弾かれるだけだ。
「くっ!」
「ふふ、残念だけど。無能な主を恨むんだね」
アーサーがそういうとイオンの片方の短剣を弾き、無防備な所にヘビースラッシュが直撃する。
「イオン!?」
イオンが俺の前に転がってくる。
「ごめん…なさい…タクト…さん…」
そしてイオンまで召喚石に戻ってしまった…。
「あははは! 見たまえ! 諸君! あの無様な召喚師の姿を!」
アーサーがそういうとアーサーたちの中からこの前倒したテイマーたちが現れた。
「そうだ! ざまー見やがれ!」
「天罰だ!」
「よくやったぞ! アーサー!」
やっぱりこいつらが今回のことを仕組んだのか。そしてわざわざリリーやイオンがやられる姿を見物しに来たと…。
「そうだろう。そうだろう。正義は必ず勝つものさ!」
「でも、アーサー。流石にこれはやりすぎよ。あの子たち、泣いてたわよ? それになんか話が変」
「そんなことは知らないね! 悪の涙に僕は屈したりしないのさ!」
リリーたちの戦いが知らないだと?あいつらは俺なんかの誇りを守るために戦ったんだ。負けると分かっている戦いに挑んだんだ。それを…そんなことだと!!
俺の脳裏にリリーとイオンの涙を浮かべる姿が浮かぶ。あの純粋な涙が悪と言ったのか!こいつは!そしてそれを聞いて笑っている奴らの声が俺の心の封印を解き放つ。
「さて、ではフィナーレだ。極悪人を殺そうじゃないか! せめてもの情けだ。立つことを許してあげるよ。僕って優しい~」
俺は目を閉じながら、立ち上がる。
その時、過去の光景を思い出した。それはとある老人との別れの日の記憶。
「わしの目に狂いはなかった。誠吾よ。お主は才に愛されておる。わしの技術をあっという間に吸収してしもうた。今日で約束通り、弟子入りは終了じゃ」
「はい。ありがとうございました」
「最後に言っておかねばならんことがある。お主が得た力は現実では使ってはならぬぞ」
老人は警告する。
「わかっています」
「ならばよい。じゃがその力、いずれ解き放つ時が来るじゃろう」
「そんな日が来ますかね?」
この時、俺はそんな日はこないと本気で思っていた。だが老人が断言する。
「必ずくる。お主が力を強く欲する日がな」
そして老人は重要な教えを俺に伝えた。
「その時、己の心に問いかけよ。力の善悪は人が決めるものではない。己の心が決めるものじゃ。そしてお主の心が善だと判断したのならお主の力を解放せよ」
俺は己の心に問いかける。
あいつらを皆殺しにしていいのか?
皆殺し?そんなものは生ぬるい。
では地獄を見せていいのか?
見せるべきだ。そして教えてやれ。
貴様らという存在は俺の逆鱗に触れたことを!
俺が立ち上がるとアーサーが武技を使う。
「疾風突き!」
アーサーの剣が武技の発動で光を放ち俺に迫った。