#544 ゴネス大戦、フリーティア近海戦
夜、フリーティアとヴァインリーフの間の海域。そこにゴネスの船団の姿があった。俺たちにインフォが来る。
『神興国ゴネスが自由の国フリーティアに宣戦布告しました』
それと同時にゴネスの船団は動く。
「フリーティアに宣戦布告が行われた! 全艦進軍かいーー」
ゴネスの船団に魔導砲が炸裂した。
「な、なんだ!? 今のは!?」
「て、敵襲!? フリーティアの船か? 結界だ! 結界を貼れ!」
ゴネスの船団を慌てて結界を貼る。それを眺めている艦隊がフリーティア側にあった。
「魔導砲、命中!」
「ざまーみろ! 見たか! スクナビコナの力! あぁ~…すっきりした!」
ノアは凄い笑顔をしている。一方で魔導砲をぶちかました与一さんは震えている。
「…どうでした? 与一さん」
「いや、長年の夢が叶ったというか…なんとも言えませんね。この感じ…」
『くぅ! 早く撃ちたい!』
スクナビコナの魔導砲は順番待ちということになっている。みんな待つしかない。
「提督! ゴネス艦隊! 結界を貼りました」
「予定通りです。では、ギルマスの命令です。リープリングの力を見せてやりましょう! 与一さん!」
「ですね! 全艦カタパルト発射!」
『いっきまーす!』
この掛け声は定着してしまったな。一方ゴネス艦隊もカタパルトから飛ばされたものを察知する。
「敵船から飛来物!」
「バカが! そんなもので我々の結界を破壊出来る筈がない!」
その言葉通り、飛来物は結界に当たると粉々になる。
「ははは! なんだこの脆い白い塊は! フリーティアではこんなものしかないのか? あぁ! フリーティアは資源に恵まれた国ではなかったな!」
『あははは!』
笑っている彼らだが、異変を感知する。
「ん? 船長、何か臭いません?」
「そういえば変な臭いが…」
「ほ、報告! 海から沸騰したような泡が発生しています!」
「泡? そんなもの気にするな。我々はこれよりフリーティアの艦隊を撃破する!」
そんな彼らに対して暗視双眼鏡で監視していたメンバーからの報告をサバ缶さんは冷静に聞く。
「メタンハイドレート! 命中! 敵がいる海にメタンガスの発生を確認!」
カタパルトでぶつけたのはニックさんたち錬金術師が錬金術の結合錬金で巨大な塊にしたメタンハイドレートだ。
でかくなっても脆いメタンハイドレート。壁に当たれば粉々になる。そして砕けたメタンハイドレートは海に落ち、大量のメタンガスを発生された。
そして結界では空気を遮断してはいない。メタンは空気の中に存在しているから結界を擦り抜けてしまう。そしてゴネスの騎士たちはメタンハイドレートの恐ろしさを味わうことになる。
ゴネスの船が動けず、急に沈み出す。
「な、なんだ!? なぜ進まない!?」
「艦長! 船が沈んで行きます!」
「奴ら…一体何をした!?」
大量のメタンの気泡が水面に浮かび、海水の密度が下がったのだ。結果、本来の浮力を失い船は沈没することになる。これが原因で多くの船が沈没したと言われている。
魔の海域と言われるバミューダトライアングルで有名な仮説だ。そしてこれは船の話。バミューダトライアングルではもう一つメタンハイドレートが原因の飛行機墜落説がある。
「全艦大砲準備完了!」
「では…ゴネスの艦隊を全滅させるとしましょう。放て」
「全艦放て!」
大砲が一斉に放たれる。それをゴネス艦隊が察知する。
「フリーティア艦隊から砲撃!」
「学習能力がないのか? 大砲など我々には通用しない!」
ゴネス艦隊の結界に大砲がぶち当たる。次の瞬間、ゴネス艦隊は海ごと吹き飛ばす大爆発で全滅する。
これが俺が考えたゴネス艦隊潰しの作戦。気化したメタンガスが充満した所に大砲なんて撃ったら、大爆発して当然だ。飛行機ではエンジンがメタンガスで爆発して墜落した説が言われている。
結界で大砲を防いでも、発火したメタンガスからは逃れる術はない。
「敵艦隊、全滅!」
「ここまでは作戦通り。タクトさんの予想通りなら」
「どうやらビンゴみたいよ。水中と空から悪魔が来るわ! かなり大物もいるみたいよ!」
ノストラさんが察知する。それを聞いてサバ缶さんも指示を出す。
「了解。与一さんたちは対空戦の用意を! チロルさん、シャローさん、敵が来ます。作戦通りに」
「了解! 全員持ち場に! 照明弾の準備も!」
『おう!』
『了解! みんな作戦通り行くよ!』
そしてノストラさんの未来通り、海に沈んだゴネスの騎士たちが数人悪魔の姿になり、艦隊の指揮官は巨大な悪魔になる。
ダエーワ?
? ? ?
巨大な悪魔は名前があった。ダエーワはイランやゾロアスター教の神話に登場する悪神だ。アンラ・マンユに仕えている悪魔達の総称でもある。
このゲームでは魔将のような立ち位置の悪魔のようだ。
「お前たちはブルーメンの港町に迎え」
「お前だけ楽しむな。俺も船を潰す」
「俺もやる。さっきのは流石に効いたからな!」
「なら俺たちは先にブルーメンの港町を潰しに向かうぞ!」
ダエーワたちは半分以上がサバ缶さんたちに向かい、残りがブルーメンの港町に向かった。
まずはダエーワたちにチロルたちが襲い掛かる。最初にダエーワに激突したのはチロルだ
「ぬぅ!? フリーティアの召喚師か!」
「悪いけど、簡単には船には行かせないよ!」
「はは! 守れるものなら守ってみろ!」
水中で戦闘が続く。チロルたちはマーメイドの歌でバフを行い、ダエーワを押していく。
「行くよ! ペンちゃん! ダブルジェットツイストアタック!」
チロルが量産して渡した一角竜の槍と乗っているイッカクで連携し、進化したジェンツーペンギンと共に水の竜巻となり、ダエーワを二方向から貫いた。技名はチロルが勝手に名付けたものだ。
他のダエーワたちも水中戦力が押している。シャークの進化先であるホオジロザメに群がられ、倒れるダエーワ。シーサーペントに巻き付かれ、ジェリーフィッシュの進化先のカツオノエボシで麻痺となり、絞め殺されるダエーワなどがいる。
しかし他にも悪魔がおり、チロルたちが抜けられるがヒュドラたちの一斉ブレスの前にほとんどがいなくなる。それでも生き残っているダエーワがおり、船の防衛をしていたフェルトたちとぶつかる。
『射程範囲に誘導成功!』
「照明弾! 撃て!」
放たれた照明弾は水面を明るく照らし、ダエーワをシャローさんが補足した。
「捕鯨砲、撃て!」
『パーフェクトフィッシング!』
艦隊から巨大な純銀性の銛が放たれる。捕鯨砲は名前の通り、鯨を捕獲するために作られた巨大なハープーンガンだ。捕獲が目的だから本来ならロープがついているが俺たちの捕獲砲は少し違う。
パーフェクトフィッシングの効果で防御無視、必中となった巨大な銛がダエーワたちに突き刺さる。
「グゥゥ! 小癪な! 純銀製の銛か! しかしこの程度で」
『放電!』
『グワァァァ!?』
俺たちの捕鯨砲にはギルメンがクエストで見つけたマジックロープという魔力が流れるロープを使っている。これと俺が見つけたマナクリスタルを組み合わせて、電撃が流れる捕鯨砲を開発したのだ。
その銛には捕縛の効果があるので、刺さると抜けない効果もある。弱点は船専用であること。捕鯨砲だからだろう。みんなでケチと思ったのは言うまでもない。
「畳み掛けるよ! みんな!」
『よっしゃ~! ボコボコタイムだ~!』
『シャ~!』
「ま、待て! ぎゃあああああ!?」
一方空の敵も地獄を味わっていた。
「照明弾、撃て!」
艦隊から照明弾が放たれ、悪魔たちを補足する。
「榴散弾! 撃て!」
『純銀の弾丸の雨を食らいやがれ~!』
榴散弾は砲弾の中に散弾をたくさん詰めることで砲弾が爆発と同時に散弾が飛び散る弾だ。広範囲に散弾が飛び散るため、対空兵器として活躍した。
今回の散弾はもちろん純銀製の純銀散弾。悪魔たちに当たる前に砲弾が爆発し、悪魔たちに純銀の弾丸の雨でダエーワを除く悪魔たちが全滅する。
「小癪な兵器を! ん?」
空にいるダエーワたちはフリーティア艦隊から一斉に光る光景を目にする。榴散弾を撃った与一さんたちは既に魔導銃を構えていた。
『フォーカスキャノン!』
艦隊から離れた神聖属性の集束砲がダエーワたちに直撃し、ダエーワたちも倒された。
そしてサバ缶さんは報告を受けた。
『こちら水中部隊! 敵、全滅させました!』
「空の敵も全滅させました」
「ご苦労様です。全艦隊警戒を厳に! さて、タクトさんの読みが当たるかどうか。いずれにしてもブルーメンに向かった悪魔たちには同情してしまいますね」
一方でブルーメンの港町に向かった悪魔たちはブルーメンの港町に襲いかかろうとしていた。
「いくぞ!」
『おぉ!!』
ダエーワと悪魔たちが海上に飛び出すと大砲と無数の矢が飛んできた。
「何!?」
「待ち伏せ!?」
ブルーメンの港町を守るように水上に立っていた騎士姿のサラ姫様が話す。
「ようこそフリーティアへ。ゴネスの悪魔たちよ。私はフリーティア騎士団団長サラ・フリーティア。歓迎しますよ」
悪魔たちは見る。ブルーメンの港町の堤防一面に展開しているフリーティア騎士団と空にはグリフォン部隊がいた。
「誘い込まれた!?」
「に、逃げ」
「逃げ場など与えると思いますか? 既にあなたたちの後方、水中にはリザードマンと獣魔ギルドの精鋭召喚師たちが展開済み。海上にはフリーティア騎士団の艦隊が配置出来ていますよ?」
『な…』
ダエーワたちは絶句する。前には大砲を配置した巨大な堤防とフリーティア騎士団、後ろには海中にはネフィさんが指揮する召喚師たち。海上にはフリーティア騎士団艦隊。空にはフリーティアが誇る飛行部隊。逃げ場などあるはずがなかった。
「な、なぜ我々が来ることがわかったのだ!?」
「この町を襲うのが目的ならあなたたちは戦力を分け、船を無視してここに来るはずだそうですよ? あなたたちの敗因はとある召喚師を怒らせたことですね」
サラ姫様が攻撃の合図を出すとダエーワと悪魔たちはブルーメンの港町に一切傷を付けることなく、倒されるのだった。
すると倒されたダエーワたちは黒い瘴気となって、サバ缶さんがいる海域に集まる。そして巨大なダエーワとなる。
キングダエーワ?
? ? ?
それをサバ缶さんたちは慌てることなく見ていた。
「よくもやってくれたな! 貴様ら! 貴様らも! あの町も全部俺が潰して」
「それを私が許すと思うか?」
「ッ!? お前は!?」
スクナビコナの船首に愛馬と共にランスロットがいた。
「随分いいように使ってくれたな…この借りは返させて貰うぞ! 聖剣技! ラウンドテーブルレイク!」
ランスロットがアロンダイトを振り下ろすと光の斬擊が一瞬でキングダエーワを障壁ごと斬り裂くとキングダエーワの周囲の海が円状に青く輝き、天に青い光の柱を作り出す。
「グギャアアアアア!?」
キングダエーワは青い光の柱の中で消滅した。
「お疲れ様です。ランスロット様」
「あぁ…皆さんも見事な戦闘でした」
『いや~』
流石にランスロットに褒められると照れるサバ缶さんたちだ。
「それにしてもタクト殿は恐ろしいお方だ…ほぼ予想した敵の動きと同じとは」
「私たちのところにキングダエーワが現れるところまで同じでしたからね…違いがあるのは敵の規模ぐらいでしたからね」
しかもタクトはもっと多いと予想していたのだ。やれやれと思っていたサバ缶さんに与一さんが声をかける。
「提督」
「あ、そうでしたね。では…この戦闘! 我々の勝利です!」
『よっしゃー!!』
皆が喜び合う中、サバ缶さんはタクトたちに連絡を入れた。




