#533 ドォルジナスの魔毒の治療法
俺はまずセチアたちを召喚し、イオンの状況を見て貰う。その間に俺はランスロットさんと話す。
「話してくれて感謝する。おかげで段々思い出してきた。私はアーサー王からの任務で賊の討伐に向かったのだが、そこで卑劣な罠にかかり、捕まってしまったんだ。ある日、牢屋で拷問を受けた私の前に女性が現れ、そこから記憶がない」
「その女性はさっき現れたやつですか?」
「いや、別人だ」
だよな。ドォルジナスに洗脳の能力があるとは思えない。これでゴネスには最低二人の悪魔がいることが確定した。するとセチアたちが来る。
「どうだった? イオンの容態は?」
「…よくありません。浄化の丸薬の効果でなんとか抑えている状況です」
「ボクらもイオンを助けたいけど、普通の魔素じゃないみたいなんだよね…」
ドォルジナスは死の穢れを司る者とされているからな。普通の魔素じゃないと言うことは何かあるんだろう。
「多分なのじゃが…妾の血醒を使えばイオンを治せるかも知れないのじゃ」
「早まるな。セフォネ。それは最後の手段だ」
他にイオンを救う方法が何かあるはずだ。考えろ…エルフに助けを求める。それはセチアに却下された。セチアが知る限り、未知の魔素だ。未知の魔素に効く薬をエルフでも簡単に作れるはずがないとのこと。
しかしエルフの女王ならたぶん行けると思うがもしそれを頼むとエルフの戦争参加が取り消される可能性がある。それは痛い…それでもイオンの命には変えられないか。
「…イオン、薬ばかり飲むことになる?」
「っ!?」
ノワの言葉にイオンが超反応する。起きていたんだな。はいはい、病人は暴れない。しかし他に有効な治療法がないのは事実か…治療法?
「あ!」
ある!いや、それで治せるかわからないが一番可能性が高い。俺はイクスを召喚し、ナノマシンでイオンを治せるか聞いてみる。
「ナノエクスマキナではできませんがマザーシップのナノマシン治療なら可能です」
「本当か!」
「はい。エクスマキナに不可能はありません。ふ」
『む!』
はいはい。喧嘩している場合じゃないだよ。俺はみんなに事情を話し、マザーシップに向かった。
そしてマスター権限で限定的にイオンが医務室を使えるようにする。これをしないとマザーシップに召喚獣は召喚出来ないらしい。
イクスの指示に従い、医務室のベッドにイオンを寝かせる。
「拘束アーム、ロック」
「な、なんですか!? これ! 動けませんよ!?」
「安心してください。治療を開始します」
「どこに安心する要素があるんですか! な、なんですか? その針が付いているのは! ま、まさか…タクトさん! タクトさ~ん! 助け」
イオンが回復するためだ。ここは心を鬼にしないと。
「あ、あ、いやぁあああああ~~~」
イオンが受けた魔素の部分に緑色の霧が吹き掛けられると魔素が無くなり傷口も綺麗に無くなった。あ、あれ?注射とかじゃないんだ。しかも凄いあっさり治った。
「治療終わりました」
「あ、あれ? 痛くない?」
イオンもきょとんとしている。俺は回復したイオンを抱きしめる。
「タクトさん?」
「あまり…心配させるんじゃない」
「…ごめんなさい」
暫く抱きしめあった。するとイクスがキレる。
「医務室はいちゃつく場所ではありません。治療する場所です。今すぐやめないと針で刺します」
それは嫌だな。
「あ、あれ? すぐに離れるんですか?」
俺は頬をかく。
「いや、針は苦手でさ…」
「はう!? その仕草は反則です! じゃなくて私はいつまで捕まったままなんでしょうか? って、イクス! 針がこっちに来てますよ!? 止めてください! タ、タクトさん! 助け」
その後、何があったかはイオンにきつく口止めされたから言えない。
回復したイオンは心配しているみんなに会うと泣き付かれた。特にリリーは泣きながら喜んだ。
「よがっだよ~! イオンちゃ~ん!」
「はいはい…心配させちゃいましたね。リリー」
「ぐず…お姉ちゃんをじんばいざぜだ(心配させた)らダメなんだよ! イオンちゃん! イクスちゃんもイオンちゃんをだずげでぐれで(助けてくれて)ありがどう~!」
「マスターの命令です。なので抱きつかなくても大丈夫です」
イクスが鼻水を流しているリリーの抱きつきを拒否した。
その光景をギルドのみんなも見ていた。俺も微笑ましく見ていたが、俺の脳裏にはイオンを殺そうとしたドォルジナスの姿がはっきり残っていた。
ドォルジナス…お前は俺の逆鱗に触れた。もう手加減も油断もしない。圧倒的な力でドォルジナスとお前に味方する奴等を殺し尽くしてやる。
俺がフリーティアに帰るまでみんなから敵の艦隊について会議をする。
「このまま戦うとしたら、勝機はないですね。どれほどの船があるのか銀たちに調べて貰いますが、あのシールドを攻略しないといけません。魔導砲なら突破出来るかも知れませんが、それだけでは負けますね」
「攻略の為に改めてチロルたち、話してくれるか?」
実際に戦ったチロルたちが話す。
「結果から言うと色々な事を試しましたが全てダメでした。シーサーペントやヒュドラのブレス攻撃、ユニコーンやイッカクの激突、マーメイドの槍、他にも魔法やスキル、機雷も試しましたけど全てダメでした」
「船の下からの攻撃もか?」
「はい。空からも攻撃して、同時攻撃や一点攻撃も試したんですが全然効きませんでしたよ」
本当にエーテルシールド並のシールドみたいだな。しかし必ず攻略法があるはずだ。その為にノアに質問する。
「ノア、エーテルシールドの場合、空気はどうなっているんだ?」
「有害なものはカットして、普通の空気は通すようになっているよ。そうじゃないとみんな死んじゃうからね」
だよな。なら攻め手はいくらでもある。俺は思い付いたことを話す。
「なるほど…普通の空気を通してしまうなら行けそうですね。検証は必要でしょうけど、それは私たちがしますね」
「ボクも協力するよ。あいつらにはスクナビコナを侮辱した罪の重さを教えないと気が済まないからね」
フリーティアに着くとランスロットはひとまずフリーティア城に話を通し、ひとまず預けることになった。どうやらサラ姫様と知り合いらしく、パラディンロードに連絡を取るとのこと。
その後、俺たちはゴネスで起きたことを報告した。するとやはりシールドを有する艦隊の存在とドォルジナスの存在に衝撃が走った。
「こいつはわざわざ戦闘のために作ったんだな…ゴネスは結界が大きな力の国だ。常時船に貼られていたら、手出しが出来ねーぞ」
「恐らく陸に注意を向けさせて、本命はブルーメンの港町でしょうね」
「こちらの問題はその艦隊をどう撃退するかですね」
「それについては既に策を考えました。その策が有効か分かりませんが恐らく行けると思います」
俺がそういうと流石という空気になる。次はドォルジナスについてだ。俺は敢えて、イオンのことは伏せて伝える。
「これでフリーティアがゴネスと戦う理由が出来ましたね」
「ランスロットさんの話では操ったのはドォルジナスとは別の悪魔という話でした。これでゴネスにはドォルジナスとランスロットさんを洗脳するほどの悪魔がいることはほぼ決まりです」
「ランスロットさんはパラディンロード屈指の実力者です。ドォルジナスと同級かそれ以上の魔王がいると想定する必要がありますね」
サラ姫様の言う通りだが、俺たちの推測が正しければドォルジナスと同じ魔王なはずだ。
「今はとにかくドォルジナスだ。どうやってこいつを倒す?」
「…皆さんに報告したいことがあります。これはここだけの話とさせてください」
俺はマザーシップの存在について話すことにした。そして恐るべき生産能力を実演して見せた。
「…おいおい。これはとんでもなくないか?」
「ですから信頼出来る皆さんにのみ話しました。この生産力を使うか使わないかで戦況が大きく変化することになるでしょう…ただそれに伴いリスクも存在しています」
「他国の動きだな?」
「はい。既にリープリングの生産能力の異常性は他の国にバレていますが流石に本気を出すと他国を刺激し過ぎると思います。なので使うにしても皆さんと協議したいと思います」
全員と協議した後、俺はシルフィ姫様に止められた。
「…何かありましたか?」
「…ドォルジナスから奇襲を受けたときにイオンが俺を庇って、ドォルジナスの魔素を受けました」
「そんな…イオンちゃんは無事なのですか?」
「先程話したマザーシップの力で無事助かりました。すみません…マザーシップの力はシルフィ姫様には使えません」
マザーシップの医務室は俺とイクス、リリーたちでも許可が必要なものだ。つまりシルフィ姫様に使えないから俺は伏せていた。するとシルフィ姫様はホッとする。
「私は大丈夫ですよ。それよりもイオンちゃんが無事で良かったです」
本当にシルフィ姫様は強いなと思った瞬間だった。
その後、ギルドでも会議する。まずはジャンヌの旗と剣の効果だ。
聖軍旗:専用武器
重さ:120 攻撃力:400
効果:鼓舞、魔法耐性付与、神聖属性付与、祝福
ジャンヌダルクの専用装備。旗を掲げると味方全てを鼓舞し、祝福を与える効果がある。また槍としても使うことが出来る。
実際に確認するとその能力が判明した。まず鼓舞は味方既に全ステータスに30アップのバフが発生した。これは進化並のバフで通常のバフとは別枠。これだけで十分ぶっ壊れだ。全員のクラスを一つ上げるようなものだからな。
更に鼓舞している間は味方全てに魔法耐性、神聖属性、祝福が常時発生するみたいだ。常時祝福は状態異常無効を意味している。
ただし、これは旗を掲げてないと発生しない。結果、ジャンヌは旗を振っていれば十分な案が浮上をするが、案の定ジャンヌは一緒に戦う気満々でみんなが説得するが見事に撃沈した。すると旗を見たユグさんが提案する。
「ギルドの旗も作りたい!」
「そんな余裕あるんですか?」
「簡単な作りだから大丈夫!」
「ならユグさんたちに追加の注文です」
俺は遠慮なく注文する。
「…完璧なタイミングね」
「わ、私はその道のプロ! 全部作ってやる~!!」
みんなが盛り上がる。カタパルトはずっと作ってきたからな。ただし船に搭載するカタパルトは初だ。船のカタパルトは三國志の赤壁の戦いでも使用されている。実現可能なはずだ。
「サバ缶さんたちはドォルジナス用兵器開発と海戦の検証をお願いします」
「任せてください」
後はジャンヌの訓練をどうするかだが、これはみんなに頼んだ。俺にはレギンたちのクエストがあるからだ。
会議が終わると俺はユグさん作の桜花檜の温泉を堪能する。ゴネスは既にイベントの宣言をしている。ペナルティで明日を無駄にするとレギンたちのクエストがクリア出来なくなるかも知れない。だからこそ回復させないといけない。
頑張って温泉に入り続け、なんとか明日の朝にペナルティが治るまでになった。普通の温泉より効果が高くなかったら、ヤバかった。のぼせそうな俺が温泉から出るとイオンを除く、リリーたちが真剣な顔をしていた。
「どうかしたのか?」
「タクト…イオンちゃんのこと」
俺だけが引きずっているわけじゃないか。俺はみんなを集めてきちんと話す。
「もう知っていると思うがイオンがドォルジナスに殺されそうになった。これについては俺にも責任がある。俺があいつの奇襲に対応出来なかったのは俺の弱さだ」
ここは認めないといけない。俺がもっと強ければイオンがあんな風になることは無かった。
「だけどな…あいつがイオンを殺そうとしたことも事実。俺は絶対にドォルジナスもそれに味方しているゴネスの奴らも許すつもりはない。ドォルジナスだけは俺たちの手で必ず倒す! みんなの力、俺に貸してくれ」
『おぉ!』
リリーたちも返事をする。俺もイオンも幸せものだな。せっかくみんなやる気になったが今日はログアウトすることにした。




