#511 ゴネスの情報と宝珠クエスト
翌日、みんなで朝食を食べ終え、ログインする。しかし俺はまだペナルティ中。ヘーパイストスを連れて、桜花に残した人たちを帰さないといけない。
というわけでヘーパイストスに話すと即答で行くと返事をする。
「刀の作り方を本職の人に教わることなんて、滅多にありませんよ! それに神様の金属を使えるなんて…早く行きましょう! タクトさん」
サフィに乗り、桜花に向かう。早速ヘーパイストスを紹介する。
「お前さんかい…あの刀を作ったのは…刀は好きかい?」
「好きになりたいと思っています。ボクは鍛治で作れるもの全て好きになりたいんです!」
「はは! 素直だな! よし、合格だ。ただ俺は優しくしねーから覚悟しろよ?」
「はい! よろしくお願いします!」
大丈夫みたいだな。因みに好きと言っていたら、ぶっ飛ばれていたらしい。じゃあ、俺は宿屋に向かうとみんなとフリーティアに帰る。
そしてギルドに向かうと桜花に行きたい人が殺到する。しかしここでサラ姫から呼び出しのメールが来た。
内容は極秘にジャンヌを連れて城に来て欲しいと言うものだ。遂にイベントが発生する予感がするな。
俺はオルレアンベーカリーで働いているジャンヌに声をかけ、お城に向かった。
騎士たちに案内され、お城に入った。
「何かピリピリしていませんでしたか?」
「正確には何かを警戒していてたな…とにかくサラ姫様を待とうか」
「はい」
俺たちが部屋でサラ姫様を待っているとサラ姫様と初老の騎士が入ってきた。あの騎士の鎧…ゴネスのだ。どういうことだ?
「ベルトランおじ様!?」
「ジャンヌ…無事で良かった」
知り合いみたいだ。ベルトラン…たぶんジャンヌダルクを手助けしたベルトラン・ド・プーランジかな?
「ジャンは無事ですか?」
「無事です。今はライヒ帝国に身を寄せています」
「そうですか…良かった」
ジャンはジャン・ド・メスで確定だな。二人は最初にジャンヌダルクの味方をした人物だ。あくまで物語で語られている範囲での話だけどね。
「あ! 紹介しますね。この人は召喚師のタクト様。私が粛正騎士に襲われていたところを助けてくれた人です」
「そうか…ジャンヌを助けていただき、感謝する。私はベルトラン。見ての通り騎士だが、昔からのゴネス騎士で今のゴネスでは準騎士という立場だ。ジャンヌの国外逃亡を手助けした人物と言えば安心して貰えるか?」
「ジャンヌの様子を見れば敵じゃないことぐらいわかりますよ。こんな姿ですみません」
ペナルティ中に出会うとは格好悪すぎる。
「そうか…ジャンヌは出会いに恵まれたようだな」
この人は本当にジャンヌが心配だったんだな。
「ところでジャンヌ、その服装はなんだね?」
「エプロンというそうです。私は今、パン屋で働いているんですよ?」
「ジャンヌが…働く? ははは! 中々面白い冗談だ」
「あぁ!? 信じていませんね! ジャンヌたんのパン、マジ美味しいと評判なんですから!」
それはプレイヤーの感想だな。一応フォローしておこう。
「ジャンヌは俺たちのギルドのお店でパンを焼いて働いていますよ。パンの美味しさは俺が保証します」
「本当なのか…しかしジャンヌが働くとは」
「城に隠し続けるとゴネスからのスパイに気付かれます。それなら彼の近くにいたほうが安全だと判断しました。これでも彼は先日のゾンビ襲撃でフリーティアを救った英雄です」
「そうか! 君か! 三人のドラゴニュートを召喚した召喚師というのは!」
俺は他国でそんな評価されているの?セチアたちが聞いたら、文句を言いそうだ。
「さて、挨拶はそこまでに…実はベルトラン殿からゴネスの情報をいただきました。やはり戦争の準備をしているようです」
「密偵からの報告では戦力は少ないとの事でしたが、私はこれを信用していません。通信で報告してきたのが証拠です。私はそんな指示をしていませんでしたから」
敵に利用されそうなところを命掛けで守ったのか。あっぱれな密偵だな。
「これに伴い、フリーティアでも本格的に戦争の準備をすることとなりました。つきましてはギルド『リープリング』に新米騎士たちの訓練と砦建設を依頼したいのです」
「…冒険者ギルドが国の騎士を訓練して大丈夫でしょうか?」
「ご指摘はわかります。本来なら私たちが育てるべきなのですが、手がどうしても足りないんです。フリーティアに力を貸してくれませんか?」
そしてインフォが来る。
『依頼クエスト『新米騎士を訓練せよ』が発生しました』
『依頼クエスト『砦を建設せよ』が発生しました』
依頼クエスト『新米騎士を訓練せよ』:難易度なし
報酬:戦争イベントで味方として、参加する。
対象:ギルド
フリーティアの新米騎士を訓練して、戦争に備えよ。
依頼クエスト『砦を建設せよ』:難易度なし
報酬:お金(貢献度により、変化あり)
対象:全プレイヤー
砦を建設して、戦争に備えよ。
そう言われると断れないんだよな…しかもこれって説明を見ると戦争で部隊を率いる感じになりそうだ。
「わかりました…数はどのぐらいですか?」
「タクト殿のギルドは規模が大きいので騎士200、騎兵200、弓兵100、魔術師100をお願いします」
お、多いな…これはギルドの依頼だから俺だけで決めるわけにはいかないな。
「ギルドのメンバーと話し合いをさせて頂いてもいいですか?」
「もちろんです。決まったら、私に受け持ってくれる兵の数を教えてください」
「わかりました。後砦について、お聞きしてもいいですか?」
「それについては俺が説明しよう」
ガルーさんが砦について説明してくれた。
「砦は守りの要所でな…一番の利点は砦専用のアイテムを使って、敵の進撃を妨害することが出来る点だ。これにより敵は先に進むには砦をぶっ壊す必要があるんだ。他にも安心して休めたり、ワープ登録が出来たりする」
おおよそ予想通りだな。だが、気になるところがあった。
「キャンプセットなどでも安心して休めませんか?」
「あれはモンスターには有効だが、今回の敵は人だ。襲撃される危険がある。それでも進撃するときには便利な物だから大体の騎士は使用して、見張りを配置したりするな」
つまり俺たちが敵のキャンプを襲撃してもいいわけだ。更に満足に休めないと騎士たちは弱体化するらしい。いいことを聞いた。
「もしゴネスが攻めてくるならどの方向から来るかわかりますか?」
「ゴネスはヴェインリーフ、ワントワークを通らないとフリーティアには来れないです。もし攻めてくるならホークバレー、トレントの森ということになるでしょう」
「つまり砦を作るのはホークバレー、イジ鉱山、トレントの森ということですね?」
「そういうことになるな」
なるほど…ホークバレーについて俺はまだ知らないから見に行かないといけないな。
「わかりました。これからギルドのみんなと話して来ます。ジャンヌはどうする?」
「私はベルトランおじ様とお話しさせて下さい」
だよな…というわけでみんなを呼び、集まる前に獣魔ギルドに向かう。神狼の宝珠について聞くためだ。早速ネフィさんに聞く。
「クエストを受けていないのに神狼の宝珠を手に入れたんですね。おっしゃる通りこれは第五進化に必要な素材です。通常の召喚獣はこの宝珠がないと進化させることが出来ないんですよ」
クエスト?そういえばギルドクエストは目を通しているが獣魔ギルドのクエストはあまり見てないな。
「最上級のギルドのクエストですから目にする機会は中々ないでしょうね」
ネフィさんが持ってきてくれたクエストがこちら。
ギルドクエスト『神となった狼の試練』:難易度S
報酬:神狼の宝珠
神となった狼に勝利せよ。
ギルドクエスト『女神アテナの試練』:難易度S
報酬:アテナの宝珠
女神アテナからの試練をクリアせよ。
ギルドクエスト『妖刀の試練』:難易度S
報酬:神刀の宝珠
伝説の妖刀に勝利せよ。
ギルドクエスト『大熊の試練』:難易度S
報酬:大熊の宝珠
森にいる暴走している大熊を解放せよ。
ギルドクエスト『星獅子の試練』:難易度S
報酬:星獅子の宝珠
星となった獅子の試練をクリアせよ。
ギルドクエスト『白虎の王の試練』:難易度S
報酬:白虎王の宝珠
四神の王から指示された試練をクリアせよ。
ギルドクエスト『月の狼の試練』:難易度S
報酬:月狼の宝珠
魔女の森にある月狼の宝珠を獲得せよ。
うん。全部Sで進化先の奴と戦えってことを言っているよね?これ。アテナの試練や妖刀、大熊はどうなるか分からないがそれでも難易度同じなら似たり寄ったりだろう。たぶん今回と同じで裏道もあるんだろうな。
イベントの交換にも登場しそうだ。という訳でスルーしよう。少なくとも現時点で次の進化の召喚獣と戦って勝てる気がしない。
するとギルドのみんなが集まったみたいなので、向かうとしよう。




