#508 人魚姫とアトランティスでの買い物
俺たちが宮殿に入ると三人の女性に出迎えられた。それぞれ姿が違う。まずはリアンと同じ耳が魚のヒレになっている大人しいお嬢様タイプの女性が話す。
「ポセイドン様のお客様ですね。私はエウロペと申します」
エウロペもオーケアニスだ。ギリシャ神話の主神ゼウスの妻だ。ゼウスが一目惚れして白い牡牛になって、拉致した話が有名だ。因みにこの牡牛がおうし座になったとされている。
更に下半身が蛇の妖艶な美人だ。
「海竜のドラゴニュートにネーレニウス。中々面白そうな子を連れてきたわね。あたしはカリロエー。よろしくね、可愛い坊や」
なんかゾワッとした!
カリロエーもオーケアニスだ。数々の魔獣を産んだエキドナの母だ。妖艶さに何故か納得した。
最後は蝙蝠の翼に額にはガーネットがあるドラゴニュートだ。女性の武人な雰囲気がある。
「…ヴイーヴル」
はい。主にフランスで有名なドラゴンだ。確か額にあるダイヤモンドを取ることが出来たら、世界一の権力者になれるという話だったはず。
なぜドラゴニュートの姿で額はガーネットなのかは知らないが恐らく聞いても無視されそうだ。
因みにヴイーヴルは胸が大きくイオンが自分の胸と比べて落ち込んでいる。
「では、宮殿の中にお入り下さい」
「はい。お邪魔いたします」
宮殿の中を進むと大きな扉にたどり着いた。
「ここが王の間です。どうぞ」
俺たちは中に入る。
「どうしてあなたはいつも勝手に出ていくんですか! 海神が人前にほいほい出ていかないで下さい!」
「はい…はい…どうもすみません」
正座で怒られているポセイドンがいた。
「ポセイドン様、アムピトリーテー様、お客様をお連れしました」
「「あ…」」
固まるお二人。
アムピトリーテーはポセイドンの妻だ。ポセイドンに求婚されるとオーケアニスの宮殿に隠れてしまった海の女神だ。またアムピトリーテーは多数の怪魚や海獣を飼っていた話もある。
「おっほん…よく来てくれた。早速で悪いが要件を話そう。娘をここに…」
ポセイドンがそういうとマーメイドたちが人魚の石像を持ってきた。これってまさか…
「これがワシらの子、ロデだ。ロデは桜花から帰って来ると真珠を無くしてしまってな…暫くするとこうして石になってしまったのだ」
「真珠を返すと元に戻るんですね?」
「恐らくな…頼めるか?」
「もちろんです。自分がここに来たのは人魚姫様にこれを返すためですから」
俺は人魚姫の真珠をポセイドンに渡すとポセイドンは人魚姫の真珠を貝のペンダントに入れ、人魚姫の石像にかける。
するとペンダントが光り、石像が下から治っていくと人魚姫ロデは復活した。
「ん~! よく寝た」
寝てたのか?思いっきり石になっていたが?
「うお~ん! ロデ~!」
ポセイドンがロデに抱き付こうとしたら、ロデはそれを躱す。
「ぐぬ!? なぜ逃げるのだ! ロデ」
「お父様…臭い」
「く…臭い…」
ポセイドンに致命的ダメージが発生したな。俺なら立ち直れない。
因みにここは水中だ。水中なのに臭いって色々な意味でやばい気がする。もちろんこれについては言わない。地雷だろうからね。
「ロデ…無事に戻ってよかったわ」
「お母様!」
なんというか子供は母親に懐くよな…いい絵なのだが、膝をついて落ち込んでいるポセイドンがいるせいで悲しくなってくる。
するとイオンとリアンが服を引っ張ってきたので、頭を撫でる。俺には母親のようなことを出来ないが、せめてこういうことぐらいはしてあげれる。
それから母親と娘の会話が済むとロデはこちらに来る。
「あなたが私の真珠を持ってきてくれたのね。ありがとう。お礼にチューしてあげる」
『ダメです!』
宮殿内にいる全員から止められた。もちろんイオンとリアンもガードしている。
「え~…じゃあ、何かお礼をあげてよ。あ! オリハルコンあげるね」
マジで!?滅茶欲しい!オリハルコンはアトランティスに存在した幻の金属だ。ゲームでは最強の金属の一つとされていることが多い。しかしそれをポセイドンが慌てて止める。
「ロデよ! それはいかん! オリハルコンはアトランティスの軍事力の一つだ。それをあげるわけにはいかんのだ」
「何よ…ケチね。そこら中に使っている癖に」
「ぐぬ…それは守りなどを考慮してだな」
「もういいわ…そんな話、聞きたくないから。それじゃあ…私をあげるわ!」
宮殿内がどよめく。パワフルな人魚姫だな。
「それもいかん! そもそもヘリオスとの婚約はどうするのだ!」
「しまった…そもそも婚約なんてしたくないから石になったんだった」
人魚姫様、暴露し過ぎだろ。
「じゃあ、私の真珠をお礼にあげるね」
『こらこらこら!』
返した物をお礼に渡されるってどんだけだ。
「だって、このままじゃヘリオスに見つかっちゃうじゃない」
「なぜそこまで婚約が嫌なのだ?」
「お父様とお母様を見ているからに決まっているでしょ」
二度目の致命傷…娘の容赦ない一言に流石のポセイドンとアムピトリーテーは絶句だ。これは言い返せない。
「とにかく隠れないと! じゃあね、可愛い冒険者さん。お礼は誰かから貰っておいてね~」
そういうと部屋から出ていった。嵐のような人魚姫だったな。
「ふふ、相変わらずでしたね。ロデ様は」
「はぁ~…久々に振り回されたな…」
「まぁ、あの性格はそう変わらんだろう…」
皆さんは慣れている感じだな。
「お礼については後日決めよう。せっかくアトランティスに来たのだ。町をゆっくり見るといい。オリハルコンが使われていない商品なら買うことを許可する。宿も宮殿に用意しよう」
「ありがとうございます」
というわけで宿は宮殿の一室となり、俺たちは観光することになった。その前にギルドメンバーに連絡を入れる。
『今アトランティスにいる。帰りは夜になりそう』
これでよし。それじゃあ、イオンとリアンを連れて町探索をしよう。
肝心のアトランティスでの買い物はほとんど出来なかった。理由はオリハルコンだ。ほとんど商品に使われてて買えないのだ。おのれ、ポセイドン。
買えるのはイオンやリアン用の服だ。後はオリハルコンが使われていないアクセサリー。しかしイオンとリアンは遠慮した。二人は自分たちだけ買って貰うのは気にするタイプだからな。
仕方無いので、食事のためにお店に入るとそこにはメイド服姿の可愛いマーメイドがたくさんいた。
「痛!?」
イオンとリアンにつねられた。俺が選んだお店じゃないのに…酷くないか。
その後、魚料理を堪能した。いや、実に旨かった。お店はハズレを引く率が高いのだが、今回は当たりだ。そして気になったものが見つけた。
「マーメイドたちの近くを浮いている水晶みたいなものはなんだ?」
「あれ? お客さんは人魚水晶を知らないの?」
「人魚水晶?」
「人魚水晶はマーメイドしか使えない専用武器よ。この町のマーメイドたちは人魚水晶とこの人魚の真珠を大体持っているほどの必須のアイテムよ」
なるほどね…俺はリアンを見るとリアンは視線を反らす。やはり知っていて、何も言わなかったな。
「リアンには足つぼの刑だな…」
「えぇええ!? ちょ、ちょっと待って下さい! ごめんなさい! 謝りますから許して下さい!」
というわけで人魚水晶のお店に来た。一応説明を聞いた。
「人魚水晶は魔法を一つ選んで、それを解放することで魔法が瞬時に使用できるようになるのものさ」
魔導書の劣化版かな?いや、遅延魔法に近いのか?しかし決定的な違いが存在した。
「人魚水晶に封じられた魔法は魔力を消費しない。更には自分が使えない魔法を使うことが出来る。大体この町のマーメイドたちはオーケアニス様の魔法をストックしているね」
はい。ぶっ壊れ武器だね。
普通のマーメイドで上級魔法を魔力消費無しで使えるって可笑しいだろう。上級魔法を使いたい放題ってことじゃん。
ただ弱点は魔法の上書きは出来ないため、その度に人魚水晶を買わないといけないらしい。更には属性毎に人魚水晶を買わないといけないみたいだ。商売上手だな。
「とりあえず全種類一つずつください」
「まいど! 後、外の人ならクリスタルとかオススメだよ」
ステュクスが言っていた奴か…見てみよう。そこには色々な水晶があった。
通信クリスタル:便利アイテム
効果:通信
魔法なしで持っている者同士の通信を可能にするアイテム。効果が切れることがない永遠のアイテム。登録次第で多数の人との通信も可能で遠距離通信も行える。
転移クリスタル:便利アイテム
効果:転移
魔法が使えなくても、転移を可能にするアイテム。効果が切れることがない永遠のアイテム。
マナクリスタル:レア度9 素材 品質A
魔力を自然に蓄積する水晶。魔導アイテムの素材として重宝されている。
クリスタルピラー:便利アイテム
効果:マナクリスタルの蓄積時間短縮(極)
マナクリスタルの近くに設置することでマナクリスタルの蓄積時間を短縮することが出来るアイテム。
こ、これは欲しい!消費しないアイテムというだけでも素晴らしいのに、魔法妨害の影響無しで通信や転移が出来るなんて素晴らしいアイテムだ。これはギルドの人数分買ってもいいだろう。通信クリスタルは多めに買っておこう。
これから使う機会はきっと多いだろうからな。最悪他のプレイヤーに売ればいい。
マナクリスタルは家の明かりになどに使われていて、クリスタルピラーは家のアンテナのように設置している。俺が最初に気になったのがクリスタルピラーだったわけだ。
これもたくさん買った。イクスの武器素材だし、この町のエネルギーを支えているアイテムらしいからたくさんあって、良いだろう。
後はアクセサリー。買ったのがこちら。
人魚のペンダント:レア度8 専用アクセサリー 品質A-
効果:マーメイドを強化(究)
マーメイド専用の貝殻のペンダント。中の真珠を入れ替えることで効果が変化する。
人魚の雫石:レア度8 アクセサリー 品質A-
効果:人魚の加護
誰でも人魚のように泳げるようになるアクセサリー。水中適正がない人でも水中戦闘が出来ることで人気のアクセサリー。
人魚の雫石はみんなのお土産。これがあればメルたちも水中戦が出来るようになるだろう。真珠は島にあるからそれを使ってみよう。リアンとギルドのマーメイドたちの分を買った。
これでよし。イオンの装備もあれば良かったんだけどな。
帰り道を歩いていると今まで見たことがない店を発見した。
「…地図屋?」
「皆さんが作ってるものに似てますね」
「ちょっと見ていくか…」
俺たちが中に入るとそこには確かに地図がたくさんあった。俺はそれを見ると地図がどれもバラバラだった。
「いらっしゃいませ~…僕が沈んだ人間の船から見つけてきた物に興味あるのかな?」
店長は若い男の魚人だ。どうやらこれらの地図は人間の沈没船から集めた物みたいだな。俺たちも人のこと言えないから黙っていよう。
「これはいくらなんだ?」
「一枚100Gだよ。どこの誰が書いたものかわからないものだからね」
つまりどれが当たりでどれが外れかわからないわけか…俺たちが作ってる海図と一致していたら、信憑性は高そうだが…そこでふと気になった。
ここって何処にあるんだろう?
「この町周辺の地図とか無いか?」
「そんなの無いよ。こんなの作るなんて人間ぐらいしかいないって」
確かにそうかも知れないな…では質問を変えよう。
「この町はどの辺りにあるんだ?」
「知らないの? ここはウィザードオーブから西にある海の海底にある町だよ」
な、なんだと!?桜花の近海じゃなくて、ノアが言った危険なモンスターがたくさんいる海域。そしてここにはあれがあるはずだ。
「教えてくれてありがとう! お礼に地図を全部買おう」
「「「えぇええ!?」」」
それぐらいの価値がさっきの情報にはある。俺たちは宮殿に戻ると話をする。
「エクスマキナの巨大な船じゃと?」
「はい。この辺りにあるはずなのですが知りませんか?」
「そういえば大昔にバハムートが全く未知の攻撃を受けて倒されたことがあったわね…」
「おぉ! 思い出したぞ! 侵略者だと思って撃墜したんじゃったな!」
エクスマキナの母船が海に落ちたのはあんたらのせいか!
「その船の場所を知りませんか? 出来ればそこまで案内してもらいたいのですが」
「うーむ。大体の場所はわかるがちょいと探さないとわからんな。ロデを元に戻してくれた礼はエクスマキナの船の捜索で良いのだな?」
「はい!」
というわけで夜はエクスマキナの船探しに決まった。さて、用意された部屋に入る。
水晶の電球にマナクリスタルに触るだけで魔力が回復した。やるな!水晶文化!さて、さっきからうるさいメールの対処をしてからログアウトしよう。




