#496 桜花の港と都への道
和の国桜花に到着したわけだが、スクナビコナは船に囲まれた。
「…宗次郎?」
「み、みないきなり現れた大型船に驚き、警戒しているだけです! しばしお待ちを」
宗次郎が船に語りかける。
「私は桜花の侍、宗次郎!」
「む!? 宗次郎! 無事だったか!」
「はい! この船に桜花まで送っていただいた! 更に食糧の救援を頼み申した。すぐに道を開けよ! 美味しい米がたらふく食べられるぞ!」
『な、何ぃ!?』
船が一斉に道を開けた…普通怪しい俺たちがここまで歓迎されることはないだろう。予想以上にヤバい状況かも知れないな。
港に停泊する。スクナビコナをノアに任せて、俺たちは上陸する。
『米は?』
第一声がそれかい。
「みな客人に失礼だぞ! まずはご党首様に話を通させてくれ」
するとぶーぶー言われる。腹ペコなら当然だろう。すると女の子が息を切らして走ってきた。
「はぁ…はぁ…宗ちゃん!」
「え? 春ちゃん!?」
おや?仲良さげだ。沖田総司に女性の話はあまり知らないな。
確か医者の娘と恋に落ちたが近藤勇に反対されて、結局結ばれることは無かった話は知っているが…確か名前は知られていないはずだ。後は女性をふったら、自殺されそうになった話ぐらいしか知らないな。
「なぜここに…都にいないとダメじゃないか」
「宗ちゃんが海に行ったのに私だけ都で待つことなんて出来ません!」
「…春ちゃん」
「…宗ちゃん」
あーあー…どうするの?これ?俺が空気をぶち壊さないといけないのか?すると可愛らしいお腹の虫の音がした。
「…春ちゃん?」
「すみません…もう四日も何も口にしていなくて」
「大変じゃないか!? タ、タクト殿!」
「別に構わないが…いいのか?」
村人たちが怖いよ?
「う…皆も同じくらい食べていないはずですから仕方ないと思います。私が責任を取りますからお願い出来ますか?」
おやおや。天才剣士様も女性には弱いんだね。というわけでご飯と刺身をご馳走する。
「美味い!」
「四日ぶりの飯がこんなに美味い飯なんて…」
「この醤油というのは最高だな」
「刺身も見事なものだ…こやつ、ただ者でないとみた」
凄い評価のされ方だな。一方宗次郎は二人っきりの世界だ。リリーたちがいなくてよかった。
宴のようになってしまったがお腹が膨れた村人たちからは感謝と謝罪をされた。
いい人たちみたいでホッとした。それから情報を得られた。
現在桜花は深刻な食糧不足になっているそうだ。魔塩は無くなっているが土壌がやられて作物が育たなくなったらしい。
そして溜め込んでいた蔵は食糧が腐ったり、無事だった食糧はモンスターに襲われたりしたようだ。更には一部の身分の高い人間に没収されたりしたらしい。
村人がぶーぶー言ってた原因がこれだ。都に食糧を届けても自分たちに届くのか危惧したわけだな。現実でも被災したら、食糧問題はどうしても起きる。ここでは溜め込んでいたものを取られたんだからその不安は計り知れないだろう。
さて、そうなると先にここの土壌をなんとかしよう。畑に案内してもらい、一応魔塩除去剤と塩害防止剤を使う。それから村人が野菜を植える。
「枯れない…枯れないぞ!」
「これで作物を育てることができるぞ!」
村人たちが喜んでいる。それから改めて感謝された。
「あんたらは命の恩人だ…この恩は決して忘れない!」
「あぁ! 困ったことがあったら、なんでも言ってくれ! 桜花の人間は義に厚いんだ!」
すると銀が現れ、叫ぶ。
「ギルマスは桜花の人たちの餌付けに成功した!」
「インフォを入れるな…宗次郎は?」
「あれは無理だよん…あたしにはレベルが足りない。というわけでギルマスお願い」
はぁ~…仕方無い。
「これ以上続けるなら都に着いたら、宗次郎は恋人に夢中で村人には何もしませんでしたと報告するぞ」
「私が悪かったです! お願いですから報告しないで下さい! 切腹することになる!」
村人たちからしろよという冷たい視線。事実だもんね。
俺たちは馬を出す。俺はダーレーに乗る。
「ギルマス。こっちに合わせてね」
「分かってるよ」
というわけで出発するがモンスターにたくさん襲われた。まずはこいつら。
鉄鼠Lv7
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
鉄の鼠がたくさん来た。ダーレーでぶっ飛ばした。
「解体すると鉄鉱石が得られますよ」
いらん!するとでかいのが現れた。
窮鼠Lv20
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
でかい二足歩行の鼠。うぜぇ!ダーレーと連携し、蒼炎が無銘に宿り、両断した。
「窮鼠からは肉が」
誰が鼠肉なんて食べるか!病気になるわ!
次に出会ったのは石に足を組んで座っているサングラスに三味線を持っている狐。
ムジナLv15
通常モンスター 討伐対象 アクティブ
面白いが聞いている暇はない!するとムジナは三味線を弾く。
「全校生徒500人の学校を歌にしました。聞いてくれ。『廃校問題』」
俺は思わず、止まってしまう。だって、気になる!その学校で何が起きたんだ!?
しかし三味線を弾くだけで歌わない。ふざけているのか?こいつ。
「俺の今の状況を歌にしました。聞いてくれ。『絶体絶命』」
よくわかっているな。ダーレーの体当たりでぶっ飛ばした。
解体するとサングラスも三味線も落とさなかった。なぜ出てきたんだ!こいつ!
「凄い強いお方ですね…宗ちゃん」
「馬に乗るとまた雰囲気が違うみたいだ。タクト殿! もうすぐ都です!」
「わかった! む?」
目の前に雷が落ちた。そしてモンスターが現れる。
雷獣Lv27
召喚モンスター 討伐対象 アクティブ
ゲイルの進化前だ。こいつは苦労しそうだ。
「雷獣!? こんな都の近くで!? タクト殿!?」
「大丈夫だ。ちょっと派手な戦闘になるから離れていたほうがいい。雷にやられるぞ」
俺は無銘を抜く。雷化の弱点は知っている。本気で来いよ。
「ガァアア!」
俺の挑発に雷獣は乗る。雷化して俺の周囲を回ると襲い掛かって来る。左!
無銘が雷を斬り裂く。雷獣は真っ二つだ。
「雷を…斬った…」
「凄い…」
さて、解体しよう。
雷性石:レア度5 素材 品質D
雷属性を宿した石。武器の素材や魔石に使われる。
雷獣の皮:レア度6 素材 品質C
雷獣の皮。耐電性がある皮で麻痺の状態異常にならなくなる素材。軽く丈夫なため、色々な冒険者に好まれる。
うむ!流石にゲイルの進化前だ。期待を裏切らないね。
そして都が見えた。城下町に立派なお城がある。流石に雰囲気が寂れているがとりあえず落ち着けるかな。




