#48 ひよりの可能性と森の強者
とりあえずそれぞれの召喚が終わったことだし、狩りに行こうとしたが二人はひよりが気になる様子だ。
「タクトさんが召喚したのはヒヨコですか…」
「あぁ、可愛いだろ?」
「確かに可愛いですけど…」
うん?歯切れが悪いな。理由を聞くと掲示板ではヒヨコは外れ扱いされているらしい。ステータスは弱いし、肝心の飛行は数センチ。確かに初期の召喚モンスターとしては絶望的かもしれない。ただし初期の召喚モンスターとしてはだ。
「俺はこの召喚モンスターは進化で化ける気がするんだよね」
「どういうことですか?」
「いや、勘なんだけどさ。ヒヨコの進化先といえば真っ先に浮かぶのは鶏だろ?」
「そうですね。それがどうかしたんですか?」
「いや、その鶏は通常のモンスターとして登場しているんだ。なのに進化先にいるのか疑問でさ」
そう暴れ鶏は通常モンスターなのは図書館で確認済みだ。もしヒヨコの進化先に鶏がいるなら被ることになる。そんなことをわざわざするのか疑問なのだ。
「つまりタクトさんはヒヨコが進化して強力な鳥のモンスターになると考えているんですか?」
「あぁ。ステータスが弱いのもそう考えると納得行くんだよな。大器晩成型というか」
「確かにその可能性はありますが、初期のモンスターでそれは」
チロルの発言の通り、初期でひよことなると…
「きついだろうね。暫くはパーティーを組んで進化まで育てるか、新しいモンスターにかけるしかないだろうな」
「掲示板ではヒヨコ被りの人とかヒヨコで召喚失敗して身動きが取れない人がいるそうです」
うん…その人たちにはご冥福を祈るとしよう。俺はひよりの可能性を信じて戦うだけさ。
若木の森に移動中にルークが話しかけている。
「そういえばタクトさんはさっき狙ってヒヨコを召喚したような言い方でしたが」
「うん?あぁ、リスト召喚を知らないのか」
「リスト召喚ですか?」
「あぁ。確か召喚魔術がLv5で覚えるんだったかな?今まで召喚したモンスターと識別スキルで識別したモンスターをリストから選んで召喚できるんだよ」
「「何それ!ずるい!」」
ずるくないです。ちゃんと召喚魔術をLv5まで上げた成果だからな。
「ち、因みにドラゴニュートは」
「残念ながら召喚不可能。だがさっき識別したゴブリンは召喚可能だったな。ゴブリナは選択できなかったから、ゴブリンの召喚で交互に出るかランダムかだな」
「僕のケースを見ると交互の可能性が高そうですね」
そこで俺はルークに提案してみよう。
「試してみたらどうだ?」
「やめてくださいよ…そういうのは検証の人たちに任せますよ」
ですよね。望んでゴブリン召喚師にはならないよな。それと気になっていたことある。ルーク達の態度だ。彼らには保護者がいないから同じくらいのはずなんだよな。
「それとそこまで緊張とかしなくていいぞ? たぶん年齢近いからな」
「「え!?そうなの!?」」
ちょっと傷ついた。俺っておっさんに見えるのかな?いやバイトばかりしていたから、そんな風に思われても仕方ないのかも知れない。
若木の森に到着して、メンバーを変更する。メンバーは俺、ルーク、チロル、リリー、虎徹、ゴン太だ。若木の森だと危険だからデスニアさんがいるところまでゴブリン達にはお留守番をお願いした。ひよりもだ。
リリーと虎徹がゴブリン、ウルフを蹴散らして進み。目的の場所に到着。ここでご飯タイム。初めてレギオン召喚を試す。すると俺の召喚獣達が大集合。ルークとチロルは驚いていた。では、今日の料理開始。と言っても今回は串焼きだ。だがただの串焼きでは芸がない。というわけでボア肉に蜂蜜を塗って焼いてみる。甘い臭いが周囲に漂う。
「「お、美味しそう…」」
ルークとチロルも待ち遠しいらしいがリリー達も楽しみにしている。そしてこれだけ甘い匂いをさせていたら当然効果がある。だが今回のモンスターは迫力がタイガークラスだった。
「「ク、クマ!?」」
そう森で出会ったら逃げ出すのが基本のクマさんだ。俺はクマの態度がそわそわして料理を見ている点で料理目当てなのがわかるが二人はパニック状態だ。
「落ち着け。こいつは襲ってこないから」
「「襲ってこない?」」
「あぁ。怖いなら少し離れていろ」
俺がそういうとルークとチロルは距離を置く。そして俺は出来上がったボア肉のハチミツ串焼きをクマに上げると嬉しそうに齧り付く(かぶりつく)。いい食べっぷりだ。食べ終わると毎度お馴染みのインフォです。
『ベアーの餌付けに成功しました。仲間にすることが出来ます』
さて、名前を付けますか。クマだからこうしました。
名前 チェス ベアーLv1
生命力 12
魔力 2
筋力 12
防御力 12
俊敏性 4
器用値 4
スキル
噛みつきLv1 素手Lv1 強襲Lv1
クマの名前で真っ先に浮かんだのが世界的に有名な黄色いクマさんの名前だったが、流石にダメだと思い、別の名前にしました。栗色の毛並みから栗の英語読みチェスナットから取りました。ゲームのチェスとは無関係だ。
さて、そんなチェスだが、見事に前衛の攻撃兼壁役みたいだね。壁がいないうちのパーティーでは頼もしい存在になりそうだ。
そして何が起きたのか分からない二人に事情を説明する。
「急に召喚モンスターが増えた訳はこれですか…」
「タクトさんがテイマーよりもテイマーに見えます」
確かに飼い慣らしている点を見るとテイマーかも知れないけど、チェスに抱きついてモフモフを味わっているチロルには言われたくないぞ。
そしてその日は俺、チェス、ルーク、チロル、ゴブリナ、ゴブリンでデスニアを周回。イオンを使えば早いんだが、チェスが仲間になったから予定変更。今回は初心に返って俺が相手をする。俺がデスニアを投げ飛ばし、全員でボコる。それを繰り返しルークとチロルは順調にレベルアップをしている様子。ゴブリンとゴブリナも進化しゴブリンファイター、ゴブリナアーチャーに進化したところで解散。チェスは残念ながら進化には届かなかった。明日はチロルのほうのレベルアップに付き合うか。
俺は最後に獣魔ギルドでチェスと契約を結び、ログアウトした。
名前 チェス ベアーLv1→Lv6
生命力 12→22
魔力 2
筋力 12→22
防御力 12→22
俊敏性 4→9
器用値 4→9
スキル
噛みつきLv1 素手Lv1→Lv2 強襲Lv1→Lv2
久々の餌付けでした。ベアーのチェスをよろしくです。