#476 塩害対策会議と食糧問題
夕飯を食べてから、俺はゲームにログインするとフリーティア城でアクアスの救援に成功したことと魔塩の対処法を発見したことを告げるとすぐに会議が開かれることになり、以前の会議のメンバーが集まった。
そこで改めて報告し、実際に消石灰が魔塩に効果がある事を実演して見せた。
「見事な物だな…確かに砕けている」
「これはどうやって作られているんですか?」
聞かれたので答えよう。
「純石灰岩というものを粉末化して、高熱で温めた後、水を加えると作れます」
「純石灰岩? 聞いたことないな」
「自分の場合はアンモナイトというモンスターから手に入れることが出来ました」
「聞いたことないモンスターですね…」
ありゃ…知らないんだ。するとカインさんが答える。
「人の手が届かない遠い海に生息しているモンスターだからシルフィ姫様でも知っていなくて当然だよ。タクト君は短期間に結構集めているけど、もっと集めることは可能かな?」
「俺のギルドメンバー全員可能ですよ。依頼を出せば他のギルドや冒険者たちも動けると思います」
みんなが俺の答えにぎょっとする。俺だけ国単位の純石灰岩を集めるなんてごめんだ。
「ならばこれはわしから正式に依頼を出そう。事態は急を要する。急ぎ手配しろ」
「は!」
するとインフォが来る。
『依頼クエスト『純石灰岩を集めよ』が発生しました』
依頼クエスト『純石灰岩を集めよ』:難易度D
報酬:お金(集めた量で変化する)
対象:フリーティアにいるプレイヤー
純石灰岩を集めよ。
はや。するとサバ缶が話しかけてきた。
「タクトさんの残りの純石灰岩、少し分けてくれませんか?」
「いいですが…どうしてですか?」
「消石灰は水に溶けるので、水に混ぜて噴射機で振りかけたほうが恐らく素材の節約になります。それに石灰ですが、本来は塩害を治すものではなく、塩害にならないようにするものです。ならば塩害を防止することが可能ではないかと思うんです」
それが事実なら非常にありがたいな。じゃあ、素材を少し預けて、残りは島の洞窟だな。大量生産には島!これが常識になってきた。
「後の心配は…食糧ですね」
「ヴェルドーレ村やブルーメンの港町がやられて、被害は甚大だ。他の国から買おうにもどこも同じ状況ではどうしようもない…」
あれ?食糧に困ってるの?
「食糧ならありますよ?」
フリーティアの人たちが一斉にこちらを向く。
「ど、どういうことですか?」
「リープリッヒやオルレアンベーカリーなどで使われている素材はここではない所で作っていますから被害は受けていないんですよ」
「あれは別の所で作られていたんですね!」
「どうなっているんだ? お前らのギルドマスターは?」
ガルーさんの問いにギルドメンバーは苦笑いだ。
「タクト君は…普通じゃないから…」
「悪魔の生産拠点を持っているんです…」
メルとユウナさんに言われた。悪魔とは失礼な!ダイナマイトやリンを大量生産しているだけだ!あれ?口にするとヤバい気がする。しかし強いモンスターを倒すためだ。仕方無いんだよ。
その後、ルインさんが話し合い、小麦粉と米、野菜、魚を国に売ることになった。
「他国にはフリーティアから売ることになったわ。これでフリーティアはもうお金がない国では無くなるはずよ。お金が増えれば国力が上がる。他のプレイヤーにも近い内に良いことがあると思うわ」
因みにお金はもう凄い金額だ。フリーティアは定額の倍額で買ってくれたそうだ。食糧危機ならその倍額以上でも他国は買うから問題ないらしい。
その後俺はメルたちからブルーメンの戦闘について、話を聞く。
「モンスターはヒュドラとディープワンズっていう半魚人だったよ」
「ディープワンズ?」
「調べたところ、深きものどもと呼ばれるモンスターらしいです。クトゥルフ神話に登場し、ある海の神様の眷属らしいです。その海の神様の名はダゴンです」
うーわー。凄い神様が出てきたな。そしてこれはバアル戦の続きであることがほぼ確定したな。なぜならダゴンはバアルの父親だからだ。
しかし怒るタイミングが変だ。ブチギレるなら息子が倒されたと知った瞬間のはず。なのになぜ少しズレてクエストが発生したんだ?神様ならすぐに気づくだろうに…うーん。わからん。
「たぶん今回のクエストのボスでしょうね。ただ神様と戦うにしては難易度が低くないですか?」
「そこはみんな思っています。あくまで予想ですが、戦うイベントでは無いのかも知れません。イベント内容が怒りを鎮めよとなっていますから」
なるほど、戦って怒りを鎮めると解釈していたが、怒る理由が何かしらあり、それを解消すればクエストクリアになるということか。
しかし敵の情報はないと防衛に支障が出る。メルたちから詳しく聞こう。
「ディープワンズは触れると爆発する槍を持っていてね。しかも魔塩もすり抜けるみたいで、建物の被害が結構出て、被害者もたくさん出しちゃった」
「助けられた命もたくさんあったんだろう?」
「…うん。ありがとう。それ以外は大したこと無かった感じかな。動きも遅かったけど、それは陸のせいだろうね」
なるほどね。
「建物の被害はどのくらいだ?」
「高潮対策の城壁はボロボロ。今は石工師さんとゴーレム持ちの召喚師たちがブルーメンで復興をしているよ」
俺も参加したいが、優先度はやはり魔塩対策だろう。町の復興はルークたちに任せて、島に行きアコヤガイを集める。石灰について調べた時に牡蠣などの貝も石灰になるみたいなのだ。アコヤガイは書かれてなかったが貝だ。ワンチャンあるので試してみよう。
ナオさんが真珠を集めて、残った貝殻を火で熱してからハンマーで叩く。
「リリー出番だぞ!」
「任せてタクト! よいしょ!」
貝殻が一撃で粉々、流石リリーだ。鑑定してみる。
貝石灰:レア度6 素材 品質B
貝から作られた石灰。塩害を直接治すことは出来ないが土に優しく塩害を防ぐことができる。
これはサバ缶さんが言っていた物だな。リリーが頑張り、たくさん作ったものをサバ缶さんたちに渡す。
「貝から作るんですね…では今から作製に入ります」
「お願いします」
その後島に戻り、みんなで生産をする。リリーは頑張ったからご褒美のチョコレートを上げてお休み。
純石灰岩も洞窟に設置した。これで純石灰岩の生産体制は整った。
やることはやったからログアウトしよう。
これは余談だが、食糧がないフリーティアの国民がうちのお店にたくさん集まり、かなりの売上を上げた。