#42 料理コンテストバトル・サラダ編
金髪イケメンが最初の種目サラダの料理を作っていく。あんなんでも一応はシェフ。選ぶ食材、包丁捌きは流石だと思う。金髪イケメンがサラダに選んだのはレタスをメインにベビーリーフ、紫玉葱とトマトを使ったサラダだ。ドレッシングはフレンチドレッシングだな。オリーブオイル、バルサミコ酢、水、マヨネーズ、塩で作っている。
「完成しました。フレンチサラダです」
料理名はそのままかよ。それに意外とシンプルにまとめてきたな。
審査員の人たちがまずサラダを見てから食事をする。1口食べて、とても美味しいとか見た目も美しいと評価してくる。へー、この程度のサラダでいいんだ。
結果金髪イケメンはオール10を叩き出した。
さて、次は俺の番だな。リリー達が心配そうにしている。大丈夫だって。
「それでは料理を開始してください」
俺は選んだ食材は食パン、レタス、とうもろこし、きゅうり、プチトマト、生ハム、パプリカだ。
そしてプラスチックのカップを十個用意する。これで準備は完了。その様子は現実を知らない料理人たちからしたら、さぞ不思議な光景に見えるだろうな。審査員全員が興味津々な様子だ。
まずはとうもろこしから熱湯で5分程、茹でる。とうもろこしを取り出し、4等分に切る。切ったものを更に縦に半分に切る。それから親指で器用にコーンを取っていく。
次に食パンは細かく角切りにし、アルミホイルの上に乗せ、オリーブオイルをかけ、トースターで焦げ目がつくまでやく。これはクルトンというもので、シーザーサラダでよく使われているものだ。
次にレタスを1口大にちぎる。その次はパプリカを縦に4等分して、包丁で星型に切り抜いていく。本来ならクッキーの型抜きを使うんだが流石になかった。
きゅうりは斜めに切り、プチトマトも半分に切る。これで後は飾るだけ、カップの中にレタスとコーン、クルトンを交互に入れていく。
カップがいっぱいになる前にやめ、パプリカ、プチトマト、きゅうり、コーンを飾っていく。最後に生ハムを二つに折って、ひねりながらくるくるとバラの形にする。
それをカップの中央に盛れば完成。生ハムのカップサラダだ。
最後にドレッシングを作り、マヨネーズ、粉チーズ、レモン汁、牛乳、塩、黒胡椒をまぜ、シーザードレッシングを作る。
他にも酢、砂糖、醤油、ごま油、すりごま、唐辛子で中華。オリーブオイル、酢、塩、胡椒でイタリアン。ヨーグルト、マヨネーズ、砂糖、塩でヨーグルトドレッシングを作り、審査員の所に持っていく。
「お待たせいたしました。生ハムのカップサラダです。四種類のドレッシングを用意いたしましたので、それぞれの味をお楽しみください」
「ほぅ、ドレッシングも四種類を作成しましたか…手間暇をかけましたね」
「それぞれ味が違うのですか?」
女性の若いシェフが聞いてくる。
「はい。こちらのシーザードレッシングは先ほどのフレンチドレッシングよりも酸味が控えめでコクがあり、クリーミーなのが特徴です」
「ほう…それはチーズを入れたからかな?」
「その通りです。こちらの中華ドレッシングはピリ辛、こちらのイタリアンドレッシングは酸味が強く、ヨーグルトドレッシングは甘く作っています」
「それは素晴らしいね」
「見た目も可愛らしいですね。カップを皿の代わりにする発想は思いつきませんでした」
現実でもまだ浸透しているとは言えないものだからね。
「飾りつけも大変凝っている。パプリカを星状に切り、生ハムをバラのように見せる技術は素晴らしい」
「ありがとうございます」
まぁ、ぶっちゃけ現実のお店で出されているものを作っただけなんだけどね。
「では食べさせて貰いましょうか」
「はい。お召し上がり下さい」
そして審査員たちはそれぞれの味のドレッシングを使い、サラダを1口ずつ食べていく。そして採点されるがここでルールの説明をした審査員のグラスシェフが口を開く。
「誠に勝手ながら採点の点数上限を引き上げたいと思うのですが、皆さんどうでしょうか?」
「同意じゃな」
「そうするしかないですね」
ん?点数上限を引き上げって…まさか…
審査員達、全員が20点を出した。俺の勝ちだ。だが当然納得のいかない奴がいるよね。
「ちょっと待ってください!話が違う!」
代表して、女性の審査員が話す。
「10点評価をするとなるとあなたの料理に我々は1点を付けることになりますがよろしいですか?」
「なんだと…?」
「彼の料理は見た目もパプリカや生ハムを工夫し、カップも上から見て良し、表面から見てもレタスとコーンが交互になっていてとても美しく楽しい工夫がされています。それに対し、あなたはサラダを盛っただけの料理です。この差がわかりませんか?」
ここまでサラダのことを話すとなるとこの人、サラダ専門のシェフだな。
「ぐ…だが味では私のほうが上のはずだ」
「確かに味については互角と言っていいでしょう。ですが四種類の味の違うドレッシングを用意し、私達全員の好みに合わせようとした点は評価しなければなりません。これが出来るのと出来ないのとでは雲泥の差がありますよ」
「く…卑怯な手を…」
卑怯?お客様の好きなドレッシングを提供するのは料理人として当然のことだろ?むしろ四種類では少ないほどだ。俺はそう思ったが俺が語る必要はないようだ。
「もっと言う必要があるようですね。彼が作っていた食パンを見てましたか?」
「見ていた。あんなのがどうしたと」
「あの食パンがカリカリしていて、サラダの味を引き立てているのですよ。先程はあえて互角と言いましたがあなたはドレッシングに関係なくサラダの味の時点で彼に負けています」
「な!?」
流石一流のシェフだな。これだけ見られているんだな。これは気を引き締めないとな。
「独創性は一目瞭然ですね。カップの中にサラダを詰めるという発想。お見事でした。参考にしたく思います。私からは以上です」
「的確なコメントありがとうございます。では次の種目に移ります」
これ以上の戯言は受付ないとばかりの反応だな。ま、こんな奴を見たら、当然といえば当然か…とりあえず初戦は俺の圧勝で料理コンテストバトルは始まった。