#417 バアルVS金蒼の魔竜騎士
プレイヤーも天使たちも全滅した空でバアルは目下を見下ろしていた。
「あはははは! ボクの完全勝」
「『ヘビースラッシュ!』」
「ぶはぁあああ!?」
俺たちはバカ笑いしている神様を地面に叩き落とした。
バアルは地面に手を突き、空を見る。
そこには金と蒼の鎧に背にはドラゴンの翼に尻尾、関節や胸に七色の宝石がある竜騎士がいた。
右手にはエストオラシオン、左手にはツイングレイシャーがある。俺たちの周囲にはスカーレットリング、クランリープ、ファミーユ、致死毒の槍、リープリングの銀剣、リープリングの銀刀、オークの杖、バオバブの杖、松の杖、イチイの杖、楓の杖、ヒュドラの毒矢があるイチイの弓が規則正しき浮かんでいる。
「バカな…ボクのイル・ナハルをくらって生きてるはずが」
「みんなから託されたんだ…やられたみんなの分は返させて貰うぞ!」
俺の姿が消えるとエストオラシオンの一撃をバアルはアィヤムルで受ける。
「舐める」
「ジョルト!」
『星拳!』
エストオラシオンをあっさり手放した俺は全身全霊の腹を狙ったジョルトを放つとバアルはガードしようとした。しかし星拳でスピードとコースが変わり、バアルの顔面に炸裂する。
「これは恋火の分だ!」
俺は手放したエストオラシオンをキャッチするとツイングレイシャーと共にあさっての方に投げ、バアルを星拳でぼこぼこに殴る。
「イクス! ノワ! リビナ! リアン! 和狐! ブラン! セフォネ! ファリーダの分」
「ガ! グッ! 調子に乗るな!」
ファリーダの分の攻撃が止められるが両手を止めたからって止まると思うな!
『星波動!』
『蒼海波動!』
「何!? く…」
エストオラシオンとツイングレイシャーがバアルの左右の背後から狙い撃つ。イオンが投擲操作で操ったものだ。しかしバアルは俺の手を離し、後ろに回避する。まだ俺たちの間合いだぜ!
『『竜技! ドラゴンテイル!』』
「だ!」
「ぐはっ!?」
強烈な尻尾の一撃をバアルはくらい、地面に再び落下する。今度は加減なしだ!
「やるぞ! セチア!」
『準備出来ています! 列石封印!』
石柱が飛び出し、文字が浮かぶ。それを感じたバアルは地面の激突を阻止する。
「思い通りに」
「するさ!」
『してみせます! 水圧結界!』
俺が蹴り落とし、イオンの水圧結界で確実に列石封印に落とし、列石封印が発動する。
『今ですね! 精霊結界! 森林操作!』
更にセチアの精霊結界と木の根がバアルを拘束する。
「な!? 次から次へと! この! む」
バアルが俺たちを見ると空と海から光が俺たちに集まり、力がエストオラシオンとツイングレイシャーに集束する。
「何!? 星と海の集束させているのか!? 待て! やめ」
『『グレイたちの分!』』
「消し飛べ!」
エストオラシオンとツイングレイシャーから星波動、蒼海波動を集束された波動をぶっぱなし、大爆発をする。
「そしてこれが!」
『倒された皆さんの分です!』
俺たちの周囲に待機していた武器たちがバアルを狙う!全属性全魔法の乱れ撃ち攻撃をくらえ!
次々魔方陣が現れ、多種多様な魔法が撃ち込まれた。最後にチェーンエクスプロージョンを20発連発撃ち込むがバアルは生きていた。
「やれやれ…気は済んだかい?」
『『『「全然」』』』
「即答…魔力が尽きそうなほど、好き放題したくせに…だがここまでだ!」
「それはどうかな? 俺たちの強さが戦闘だけだと思ったら大間違いだ!」
一流の戦士は補給を忘れないものだ!というわけでチョコレートをたくさん食べ、ココナッツシェイクを飲む。完全回復!バフも発動!
「どこまでもずるいな! 正々堂々戦う気がないのか!」
「あるわけねーだろ!」
こちとらリリー、イオン、セチアの力を借りているんだ。最初から正々堂々の勝負じゃねーんだよ!
『タクトさん、開き直り過ぎです…』
『チョコレート…』
『…この神様を倒したら、絶対チョコレートとココナッツシェイクを飲ませてくださいね? でないと恨みます』
どうやら味を感じたのは俺だけらしい。まぁ、こいつを倒したら、頑張ったみんなにはたくさんご褒美をあげよう。
『タクト! 今の本当!?』
『今更無しとは言わせませんからね!』
『俄然やる気が出ました。私たちのご褒美のためにあなたには死んで貰います!』
いや、頼むから最初からやる気だしてくれよ…
「全くこれだから人間は嫌いなんだよ! 神威解放!」
バアルから膨大な光が放たれ、天候が悪化する。
「今こそ神に刃向かう愚か者に天罰を下そう」
「やれるもんならやってみろ!」
『『『「宝玉解放!」』』』
スカーレットリング、エストオラシオン、ツイングレイシャー、クランリープの真の姿となり、再びぶつかりあった。
互いに魔法とスキルの撃ち合いが続く。こちらの攻撃はヤグルシュと呼ばれた棍棒で無力化されるがこれはどうやら棍棒を構えた方向のみ攻撃を無力化する壁のような物を展開するようだ。
ならば違う方向から攻めればいい。イオンが俺が投げた背後の武器たちを操り、リリーがスキル、セチアが魔法、俺が接近戦を担当し、多方向、多距離から攻撃をするが決まらない。
星雨、雹を魔力操作で操り追尾攻撃も全て対処される。こちらもバアルの雷には魔力切断で対処出来ているが、セチアが知らせる。
『タクト様! 宝玉解放の時間が迫っています! 早く決めないと!』
わかっているが…神威解放というのはめちゃくちゃな効果だとはっきりわかる。焦って攻めたら、それが命取りになる。
しかし時間がない以上、やるしかない。幸い切り札はある。これで決める!
『みんなは大技の準備をしてくれ!』
『『『わかった(わかりました)!』』』
一方でバアルもタクトたちに苛立っていた。
「(なんだって言うんだ…この人間と召喚獣は! 荒々しく攻撃してきては軽い攻撃で攻め気を削いでくる。こちらが攻撃をどれだけ読んでも読み返してくる! 星読みや未来予知の領域じゃないぞ!)」
俺たちはシンクロで思考が繋がり、全員が星読みの効果を見て、互いに必要なことをフォローし合って、攻めている。これはエンゲージバーストが起こせる奇跡だった。
しかし俺たちの戦闘能力に苛立ってはいるが、バアルは冷静だ。
「(あの宝玉解放は時間限定強化のはず。魔力も限りがある。ならばこのまま行けばボクの勝利だ!)」
冷静ではあったがその油断は時として命取りになる。ましてや切り札を用意している敵が相手では致命的だった。
「(力のルーン! 速さのルーン!)」
俺は作製したありったけのルーンを使用して、最後の勝負に出た。
「はぁああ!!」
「な!? く! この!」
急にパワーとスピードが上がったエストオラシオンとツイングレイシャーの怒濤の連続攻撃にバアルは防御を固める。貰った!
「星剣!」
『海錬刃!』
水圧に寄る加圧された水流が宿った二本の剣が棍棒に当たる瞬間、コースが変わり、バアルの手首を斬り落とした。これで棍棒二本は使えないだろう!更に連続で斬りまくり、ドラゴンテイルでぶっ飛ばす。
エストオラシオンとツイングレイシャーを構える。落下中のバアルを狙う!
『ガンマレイバースト!』
『極光!』
エストオラシオンからはガンマ線、ツイングレイシャーからはオーロラの光が放たれ、バアルに直撃し、バアルは地面に落下し、大爆発する。そしてバアルは極光の効果で凍る。
「セチア!」
『お任せを!』
セチアに弓矢の狙撃を任せる。
『ペネトレイトアロー!』
ヒュドラの毒矢がバアルの心臓に命中する。
「ぐ…これはヒュドラの毒!? 忌々しい!」
『氷牢!』
バアルが抜こうとするがイオンが氷牢で閉じ込める。これで決める!
『ノーム様…どうかお力を! 精霊魔法! アースフォース!』
『竜魔法! シューティングスターライト!』
『竜魔法! クワトロシースパウト!』
他にも全攻撃スキルを集束させていく。
『『ドラゴンブレス!! タクト(さん)!』』
「集束!」
俺たちの頭上に力が集まった七色の巨大な光球が現れる。
『ブランちゃんの仲間!』
『消し飛ばされた海!』
『消し飛ばされた自然!』
「お前が傷付けた全ての者の分だ!!」
俺が両手の武器を振り下ろすと巨大な光球がバアルに落ちる。それを動けないバアルは見る。
「全く…これだから…ボクらは人間は嫌いなんだよ」
島が超爆発する。
宝玉解放とエンゲージバーストが解除され、俺は倒れる。ダメだ…もう動ける気がしない。どうだ?
するとインフォが来る。
『おめでとうございます! 神バアルが討伐されました! 運営イベント『魔王バエル』をクリアしました!』
た、助かった…そして!
「勝ったぞ~~~!!」
「「「やったぁあああ!!」」」
リリーたちが抱きついてきた。
「勝った! 勝ったよ! タクト!」
「神に勝ちましたよ! タクトさん!」
「凄いことなんですよ! この世界の最強の存在に勝ったんですよ! タクト様!」
俺は最後の力を振り絞り、三人を撫でる。
「みんなや三人のお陰さ…ありがとう」
「「「えへへ~」」」
こうして俺たちの激闘のイベントは終わった。それにしても生き残りが俺たちしかいないとは酷いイベントだ。そんなことを思いながら俺は強制ログアウトした。
暗黒大陸にて、ピエロの悪魔がアスタロトの城を訪れていた。
「バエルが倒されましたよ」
「いきがっていたのに負けちゃったのね。倒したのはあの子たちかしら?」
「はい。覚醒した竜と妖精と力を束ねてバアルを討伐しました。あれはもう弱者とは言えませんね~」
「そう…さて、面倒だけど迎えにいかないとね。じゃないと彼らと戦争になっちゃうから…あなたもルシファーにそう言われたんでしょう?」
それを聞き、ピエロの悪魔…ルキフグスが笑う。
「ふふ…妻は大変ですね」
「あなたほどじゃないわ…バエルの領土はどうするつもりかしら? 先に言っておくけど、いらないわ」
魔王たちは基本的に領地を欲しがらない。理由が統治するのが面倒だからだ。今ある領地を統治しているのは魔王になるために必要だからであって、魔王の格は強さで決まる。
バエルは人間を苦しめるのが好きだったから、たくさん領地を持っていたがそういうものに興味がないなら、統治の面倒さだけが残る。
「おやおや…では放置ですね」
「あっさり部下の領地を捨てるあなたも大した物ね…用事はもう終わりかしら?」
「一応魂の回収を手伝うように言われています。そのためのアイテムも預かっています」
「そう…なら怒り出す前に行きましょうか」
二人の悪魔は空へ飛び出していった。
これで次回は掲示板回でこの章は終わりとなります。
経験値は章のまとめに書きます。