#413 魔王バエル戦の詳細
みんなでイベントクリアを祝っているとインフォが来る。
『イベント終了時間です。引き続きレイドボスイベントが発生しました』
すると通信が来る魔王バエルだ。
『まずはゲームクリアおめでとう。まさか全員を倒されるとは思ってなかったよ。さて、約束通り魔王であるボク自ら君たちの相手をして上げよう。時間は明日の13時! どうせ勝てないだろうけど、せいぜいボクを楽しませてくれ』
イベントの詳細が来た。内容を確認する。
レイドボスイベント『魔王バエル』難易度:SS
・プレイヤー全員参加可能。ボスフィールドには明日以降参加者のみ行くことが可能となります。
・アイテムなどの制限なし。船も使用可能。
・ボスに与えたダメージとボスなどの討伐がポイントになります。
・ポイントの扱いは別途になります。
・ボスに止めを刺したプレイヤーにはボーナスポイントがあります。
・死に戻るとイベント終了となります。死んだ時点で先の経験値、討伐ポイントは手に入りませんので、ご注意下さい。
・イベント後に壊れた武器、船は元の状態に戻ります。アイテムは元には戻りません。
・レイドボスイベントのフィールドは日曜日になると行けるようになります。
ふむ。この分だと生き残るだけでボスの討伐ポイントが貰えそうだな。スクナビコナがある俺は有利だ。
そして、武器や船は壊れること前提で書いてあるよな。
すると帝さんとシリウスさんが頭を抱える。
「やはり全プレイヤー参加なのか…」
「絶対揉めますね…特にあいつは敵意剥き出しになるでしょう…」
「どうかしたんですか?」
二人が視線を合わせ、頷く。なんだ?
「トラブル必至だから先に言うがライヒのトップギルドにタクトを目の敵にしているやつがいるんだ。決闘イベントで準優勝したやつなんだが」
それって魔法使いのやつか?
「向こうが勝手に被害妄想しているだけなんですけどね…ただ攻略命でガチ勢以外お断りなやつなのでかなり口が悪いんです」
「そいつなら有名だぞ? タクトの武器より強い武器を作れとか強要して、GMコールされたんだろ?」
「生産職が関わりたくないプレイヤー筆頭ね。ライヒに生産職がいないのは彼が原因と言われてるぐらいだから」
えぇ…嫌だな。そいつと関わりたくない。
「タクトさんだけじゃないですよ? 召喚師全般嫌いみたいです」
「暗黒召喚師の兄にしてやられたからな」
あぁ…なるほどな。それは嫌いになって、仕方ないかも知れない。俺なら暗黒召喚師にやられたんだから暗黒召喚師だけ恨むけどな。
「絶対生産職や召喚師たちは邪魔だとか言って追い出すと思います」
「連携が乱れるとレイドボス戦は不利だ。指揮能力には定評があるから、恐らく割れるぞ」
「そうなんだ?」
「タクトくんとは対極よ。彼の場合、純粋なゲームの王道の指揮をするわ」
ショック!?俺って純粋なゲームの指揮してないの!?
「集団戦ではそういう指揮のほうが分かりやすい。ゲームをしたことがある人は大体わかるからな」
「じゃあ、俺は指揮しないでスクナビコナでお留守番してますね」
『え…』
いや~。指揮をしなくていいなら、俺は喜んで譲る。下がれと言われるなら俺は喜んで下がる!
「何考えているの?」
「だって、戦わなくても討伐ポイントと経験値貰えるならお得じゃないですか。今までそういう人がいたんだろ? なら今回、俺がそっちになってもいいじゃん」
全員絶句。
「タクトくん…堂々と美味しいとこ取り宣言するのはどうかと思うわよ?」
「それは悪いことだからね? タクトくん」
「でも俺が関わったら、邪魔だと言われたら自然とそうなるよな?」
「それは…そうだね」
それにダメージポイントは無いんだ。美味しいとこ取りとは違う気がする。寧ろ美味しいところを取ろうとしてるのは向こうだろう。
「じゃあ、私たちもスクナビコナにお邪魔しましょうか。邪魔と言われたら、仕方無いわ」
「ずるいぞ! ルイン! 俺たちは逃げ場がねーじゃねーか」
「連携組んでないほうが悪いんでしょ?」
「ぐぬ…」
すると周りのプレイヤーも動き出す。
「ボクらは召喚師ですから…」
「スクナビコナでお留守番だね!」
「ずるいぞ! ルーク!」
「私たち、避難出来ないよ!」
タクマとアロマたちは連携組んでないからな。
「私たちも弱いから…」
「避難ね」
「あいつにはゾンビイベントで痛い目にあったからこれぐらいしないと割に合わない!」
以前海斗が言っていたゾンビイベントで問題起こした奴なんだな。結果、どうすることも出来ない人はスクナビコナの後ろに待機することになった。
連携を組みたくても書類が無いんじゃどうすることも出来ないが、スクナビコナの背後にいれば、多少安全だろう。
結局メルたち、満月さんたち、与一さんたちもスクナビコナで待機を選んだ。
理由がどうせ参加しても、こちらに攻撃の指示をくれないからだそうだ。
「無視して攻撃しても恨まれるだけですからね…」
「ポイント稼ぎが出来ず、ボスの攻撃の的にされるのは割に合わん」
「ダメージポイント稼ぎはスクナビコナがあれば後からでも出来るからね…というわけでお邪魔します」
さっき否定したくせに…まぁ、いいや。
他のみんなは戦闘参加となった。やはりダメージポイントは欲しいからな。ただ鉄心さんはワイフさんだけ船に残すことにした。
「ボスの攻撃を受けたら、ひとたまりもないだろうからね…悪いが守ってくれると助かる」
「スクナビコナの後方に置く感じでいいですか?」
「あぁ…十分だ。感謝する。タクト君」
こういうお願いは断れないんだよね。これで鉄心さんも思いっきり戦えるだろう。スクナビコナから応援するとしよう。
その後、それぞれ準備をする。するとファリーダが来る。
「タクト、バエルと戦うなら少しくらいなら情報持っているわよ」
全員が反応する。
「それは知りたいが、バエルと知り合いなのか?」
「あんな気持ち悪い筆頭の魔王と知り合いなわけないでしょう? ただバエルは魔王の中でも古株で悪い意味で有名よ」
「…気持ち悪い筆頭で悪い意味で有名なのか?」
「カエル、蜘蛛の魔王よ。いいイメージするかしら?」
全員が絶句する。確かにヌルヌル、ネバネバのイメージがあるな。
「わかったみたいね…バエルは女性が嫌な顔をするところを見るのが大好きの魔王なのよ。ちょうど子供が好きな子に悪戯する感じね」
なるほど、だから子供キャラなわけだな。謎が解けた。
そして女性陣のテンションは最悪に転落した。一方メルたちは安心している。
「危なかった…スクナビコナなら安心」
「…兄様に感謝」
「タクト君、様々ね」
「スクナビコナは確かに凄いけど、魔王の攻撃に耐えきれると考えないほうがいいわよ? 長く魔王でいるから実力は本物よ」
これで女性全員がテンションがた落ちした。まぁ、だからこそファリーダの情報は大事と言える。詳しく聞こう。
「バエルは四つの顔を持つ魔王と呼ばれていたわ。さっき話したカエルと蜘蛛に加えて猫とこの三つの顔と少年の姿が合わさったのが本来の姿ね」
そこは現実にある設定と同じだな。現実では本来の姿しか語られていないけどね。後、少年でもいないな。そこでメルが質問する。
「ひょっとしてその四つの顔、それぞれ倒さないといけないのかな?」
「そうなるわね。それぞれ特徴が異なっているそうよ。基本的な特徴はモンスターと変わらないわ。カエルは物理攻撃が効かなくて、猫はすばしっこい。蜘蛛は糸を使って来るそうよ。本当の姿のバエルなら魔王壁という障壁を貼れるはずよ。それ以上のことは知らないわ」
「そっか、ありがとな。一応みんなで作戦会議しておきます?」
『賛成!』
というわけで作戦会議をする。話を聞く限りでは魔法がかなり有効そうな気がする。だが、そんな簡単に勝たせてくれないだろうという意見は一致だ。
「今考えたら、スクナビコナのシールドは魔法使いが安全に魔法を使用するためにあるのかも知れないね」
確かに詠唱時間がネックな魔法使いにとって、シールドは重要だろうな。するとサバ缶さんが驚きの知らせをする。
「…どうやらイベントをクリアしたのは、我々だけみたいですね」
「あいつはダメだったのか?」
「魔導船が手に入らなかった時点で諦めたみたいです。第四の敵を第三の島で迎撃して、ポイントと経験値を稼いだみたいですね。他のところも同じ方法をしたみたいです」
「それって攻略を私たちに押し付けたって事ですよね?」
メルの発言はその通りだろう。色々な戦略があるだろうが、俺はその作戦は嫌いだな…更にサバ缶が付け加える。
「付け加えると我々がアイテムを消費しているので、レイドバトルでは有利になると考えているかも知れませんね」
ははは…俺は今回、完全に傍観者サイドになると決めたぞ!するとファリーダが言う。
「認識が甘過ぎるわ…バエルはあなたたちが戦ってきた敵の中では間違いなく最強の敵よ。そんなの考えている時点で全滅するわ」
「キマイラより強いのか?」
「間違いなく強いわ。普通の魔王よりあのキマイラは強かったけど、バエルはずっと魔王の座についている魔王。普通の魔王なわけないわ」
ゴエティアと大奥義書双方に登場する悪魔だからな。運営も隠し玉とか好きだから何か仕掛けてくるだろう。油断せずに挑もう。
会議を終えて、レイドイベントの準備に入る。ココナッツシェイクとチョコレート、チーズ料理を作る。
『じゅるり…あ、味見…』
リリーたちにおねだりされるけど、我慢してくれ。すぐに食べれるから!そんなやり取りをしつつ、俺たちは最後の戦いのための準備と戦うことになった際の陣形、作戦を詰めてその日はログアウトした。
次回からいよいよレイドバトル、魔王バエル戦です。




