#41 料理コンテストバトル開始
現在俺は料理コンテストバトルの会場である高級料理店のイベントホールに向かっているわけだが。リリー達がやたら甘えてくる。どうやらさっきの出来事が原因らしい。
「えへへ~。さっきのタクト、かっこよかったよ」
「はい。とても素敵でした」
「さすがタクト様です」
そう言いながら三人が抱きついて来るので、歩くのが大変だ。後、周囲の視線が痛い気がする。
「でもタクト、大丈夫なの?」
「大丈夫さ」
俺の中で今までバイトで料理を教えてくれた料理人達が言ってる気がする。ボコボコにぶっ倒せと。
「タクトさんの料理の腕前は信じてますけど」
「何か勝算がお有りなんですか?」
「ないけど?でも既に勝利は確信しているね」
俺がそういうと疑問符を浮かべる三人。
「勝算がないのに勝利を確信しているんですか?」
「あぁ。まぁ、安心して見ててくれ」
俺がそう言うと会場に着いた。
お店に入り、イベントホームに向かう。会場に入ると審査員役のシェフ十人がいた。俺はそれぞれに挨拶を交わし、許可を貰って、会場にある食材達を見る。現実にある野菜、お肉、お魚、調味料が揃っていた。調味料といってもカレールーや粉末のだし、つゆ、ドレッシング、コンソメの素などはない。これらを使いたいなら自前で作れってことだろう。どうやらこの料理バトルは現実の食材を使ったガチバトルみたいだ。これだけたくさんあると腕の振るい甲斐があるね。
更には調理器具まで全て揃っている。凄いな…竈とか飯盒まであるぞ…炊飯器があるのに…本格的なガス式の鉄板やクレープ焼き器、たこ焼き器もある。なんでもありだな。すげーここまで揃えているのはテレビでも見たことないな。
俺が一通り、確認が終わると金髪イケメンが会場に入ってきた。そこで先頭の男の審査員が自己紹介する。
「改めて、私は美食の町ドノスの五つ星シェフ、グラスです。審査員を代表して、今回の料理コンテストバトルのルールを説明いたします」
美食の町ドノスか…多分現実のスペインのサン・セバスチャンから取ったな。この地名を現地の人はドノスティアって言うとイタリアン料理店でバイトしていた時にお世話になったイタリア人のお兄さんが語っていた。
それにしてもファストの町以外の町の名前は何気に初めてだな。料理人としてはちょっと気になる町だな。俺がそんなことを考えているとブラスシェフの説明は続く。
「まず料理の審査ですがそれぞれの審査員の持ち点は十点。審査基準は料理の見た目、味、独創性で採点を行います。お二方共、料理人として恥ずかしくない料理を期待します」
「はい」
「お任せを」
俺達が返事をするとそのままルールの説明が続く。
「作る料理の種類はサラダ、スープ、肉、魚、デザートの5種類。それぞれ一品ずつ交互に出し合って貰います。タクトさんは初めてなので、後から出すことでいいですか?」
「助かります」
「ふん。格の違いを教えてやりますよ」
「…ではお互い問題ないということで後攻がタクトさんとなります」
今、少し間があったな…しかも周りのシェフが一瞬雰囲気を変えた。やはりチェックするべきところはしっかりチェックしているってことだな。
「扱う食材はこの中から好きなものを使っていただきます。制限時間はなし。今回は特例で自在に時間を経過させることが出来るアイテムを用意いたしました。ご自由にお使いください」
へー、これは面白いアイテムが登場した。というか欲しいぞ。それを使えばすぐに魚醤が出来るってことだよね?便利すぎる。
「説明は以上です。何か質問ありますか?」
俺は手を挙げる。
「一点よろしいでしょうか?」
「どうぞ」
「料理の種類について、明確な基準を教えていただけますか?」
例えばカレーライス。これをスープ料理と定義するならその基準を知りたいのだ。
「なるほど。基本はメインがその料理に合っていることが条件です。例えばサラダならば魚の切り身を少量入れてもメインがちゃんとサラダになっていれば、その料理はサラダとなります。逆に魚がメインで飾り付けに野菜を使ったなら、それは魚料理となります」
「野菜スープの場合はどうなりますか?」
「確かに野菜を多く使われていますが、あくまでスープなのでその場合はスープ料理となりますね。作る料理がどの区分になるか聞いて頂ければその都度、こちらで判断いたしますよ。ですから安心して腕を振るってください」
「なるほど。助かります」
「他に質問はありませんか?」
「大丈夫です」
「ない」
「ではこれより料理コンテストバトルを開催いたします」
こうして料理コンテストバトルが始まった。