#404 海の暴走鯨と夜空の告白
帰ってきた俺は涙目になっているイオンを慰めることになる。イオンの姿は既にスクール水着ではなく、リリーと同じ鎧姿だ。
ただリリーのように鎧に固めているわけではなく、比較的軽装の青い鎧だ。これはイオンがスピードタイプだからだろうな。
それとみんなは先に海賊島を捜索しているみたいだ。既に色々発見をしているようだが、おれは先に進化を済ませよう。
というわけでサフィを進化させる。進化先は一つだ。
イッカク
ユニコーンの角のような牙がある鯨だ。実際はシャチのほうが強いはずだが、説明を見てみよう。
イッカク…回転角がある鯨。目に付いたものや自分の縄張りに侵入した物にはとりあえず突進することで有名で船乗りの間ではシップキラーと呼ばれている。攻撃しても止まらず、角で突き刺すまでひたすら追いかけて来る非常に攻撃的な鯨。
あ、これはシャチを超えたのも納得した。リアルではイッカクは温厚な性格で、攻撃的なシャチのほうが強いと言われている。それが角を回転させて、襲いかかって来たら、バランス崩壊だろう。まぁ、シャチならそれでもなんとかしてしまいそうな気がするけどね。
そしてイッカクの角は牙ではなく、あくまで回転角扱いなんだな。違和感があるが、進化行ってみようか。サフィが青色の光を放ち、進化する。
進化したサフィは回転角がある鯨に進化した。でけー…プール、大丈夫かな?そう思っていたら、サフィが光り、サイズが縮んでいく。すると人の頭サイズまで小さくなった可愛い鯨が現れた。そして空を飛びながら、俺の頭に乗る。
「ホエ~」
なんだこのやる気がなくなる声は…そしてなぜ頭に乗る?だが、愛くるしい姿とこの声は女性の心を鷲掴みにしたようだ。
『か、可愛い…』
みんながサフィを取っていく。その間にステータスを見るか。
名前 サフィ オルカLv16→イッカクLv1
生命力 36→56
魔力 50→70
筋力 56→76
防御力 20→50
俊敏性 65→75
器用値 52→52
スキル
回転角Lv1 遊泳行動Lv22 飛行Lv1 跳躍Lv5 水化の牙Lv9
突進Lv15 強襲Lv11 物理破壊Lv1 堅牢Lv1 音響探知Lv16
妨害音波Lv6 水刃Lv9 疾走Lv15 乗馬Lv15 避雷針Lv1
波起こしLv2 潮吹きLv1 渦潮Lv1 体格変化Lv1
サイズが変わったのは体格変化だな。新しいのは潮吹きと渦潮。潮吹きは鯨だからなんとなく想像出来る。渦潮もそのままかな?結構強い気がする。
さて、俺は重要なことを聞かないといけない。
俺がサフィを見るとノワがサフィにサイズを指示して、いいサイズになるとサフィの上でノワが寝そべる。そしてサフィはノワを乗せながら動くとノワはご満悦だ。
「…おぉ~…完璧! これは楽」
ノワはサフィが気に入ったようだ。
「ノワ! リリーも!」
「…や」
「む! そんなこと言わずに~えい!」
リリーが飛び乗ろうとするとノワが尻尾で阻止する。いつもは面倒臭くなって、譲るノワが譲らないなんて!ってそれじゃない。
「サフィ、ちょっといいか?」
「…にぃも乗りたい?」
乗りたい!じゃない。
「サフィ、普通に空を飛んでいるがひょっとして今まで陸で行動出来たのか?」
「ホエ~」
サフィは左右に動いてから上下に動く。
「うん? 波起こしすれば出来たってことか?」
「ホエ~!」
上下に動く。どうやら正解のようだ。マジか…エーテルビーストの時とか無理すれば出来たんじゃん。そういえばアカエイとか空を飛んでいたよな…もっと早くに気付けば良かった。
とりあえず進化も終わったし、メルたちと合流することにした。メルたちと合流すると早速情報を教えてもらった。
それによると現在みんなは海賊の島を探索中だ。無事な船はスクナビコナのみで残りは修理することになった。
スクナビコナは第二の島にいるシャローさんたちに預けることになった。夜通しでスクナビコナを移動させて、物資を運ぶ予定だ。まともに動けるのはスクナビコナぐらいだから仕方ない。
『ログインとか大丈夫ですか?』
『ちゃんとログアウトしているメンバーと代わりますから大丈夫ですよ。それにスクナビコナの最高速を堪能できる機会ですからね。楽しませて貰います』
シャローさんたちが全力で楽しむ姿が脳内に再生される…ちょっと羨ましい。まだ最高速を楽しんでないんだよね。
因みに悲鳴を上げたのはユグさんたちだけじゃない。クロウさんたちやミュウさんたちもだ。武器や防具もかなりやられたことが判明したからだ。
ただこれについては直ぐに解決することになった。海賊たちの拠点で武器庫を発見し、そこに武器や海賊服、大砲の弾がたくさん発見された。木材の板もあったのがユグさんたちの救いだろう。ただし数は圧倒的に足りないが。
「やたら強いわけだよ…大砲の弾を使い果たしても大丈夫な設定にしているってことだよ…これ」
合流したメルが呆れて言っている。まぁ、相手が船だしな。大砲使いまくりでもおかしくは無いだろう。因みに武器庫には鍵があり、解錠の木鍵を使って鍵を開けれたようだ。
さて、俺はやることをやらないとな。
「タクト様、ちょっといいですか?」
「ん? どうかしたのか? セチア」
「精霊魔法と精霊結界は精霊と契約しないといけないので、タクト様に選んで頂こうと思いまして」
あぁ、精霊契約はそういう意味なんだ。セチアによると契約出来る精霊は風、火、土、水、光、闇の六種類らしい。それを聞いた瞬間、俺はある光景を思い出し、決めた。
「じゃあ、土の精霊で頼めるか?」
「わかりました。精霊契約!」
セチアが精霊契約を使うと世界が変わり、光の粒子が漂う世界に俺は立っていた。
「ここは精霊界か?」
「はい…ノーム様、私の声にお答えください」
すると大地が揺れ、緑の光の粒子が大地から吹き出し、巨人の姿になる。そして現れたのは岩の巨人、いや、山の巨人と言ったほうがいいかも知れない。
『友の契約がため馳せ参じた。我が名はノーム。この星の大地を守りし、大精霊なり』
「ノーム様、どうか私と契約をして下さい」
『…』
ノームが俺を見る。
『久しいな…友と契約を結びし召喚師よ。汝は何故、我が力を欲する?』
「俺はセチアが本当に自然を愛しているのを知っているからです」
ガーベラグロウが倒されたとき、セチアは涙を流した。そして火の精霊と相性が最初は悪かったことを考えるとやはりセチアは力より、守る側な気がするんだよな。
「セチアが自然を守りたいと願うなら俺はその力を欲します。そしてそれはあなたが一番持っていると判断しました」
『ふむ…汝の偽りなき言葉と意志、しかと聞き届けた。ならば契約に従い、我が力を友に託そう』
セチアが緑の光に包まれる。そして光がセチアの中へと消えた。インフォが来る。
『セチアが土の大精霊ノームと契約を結びました。精霊結界が使用可能となりました』
『精霊魔法【アースフォース】を取得しました』
『セチアが列石結界を取得しました』
これでいいのかな?
『我が力、存分に使うがいい』
ノームがそう告げると俺たちは元の場所に戻ってきた。
「セチア?」
「成功したみたいです。ノーム様の力を感じます。これでもう大丈夫です。イオンお姉様のところに行ってあげてください。ずっと髪を弄って待っていますよ?」
バレバレなわけね…俺はイオンに声を掛け夜の森を歩く。イオンも察しているからさっきから無言だが、落ち着きがない。
森を抜けると崖に出た。ここでいいか。
「海賊がいた島で危ない場所だが、勘弁してくれ」
「仕方無いですよ。でも綺麗な星空です」
「そうだな…それじゃあ、改めて」
俺はイオンの指輪を取り出す。
「イオン、俺はイオンが好きだ。これからもダメなこととかあると思うが、俺を支えてくれるか?」
「もちろんです! 一生タクトさんを支えますから覚悟して下さいね?」
お互いに笑い、イオンの左手にエンゲージリングを付ける。そしてインフォが来る。
『イオンとエンゲージを結びました。エンゲージバーストが使用可能となりました』
イオンが噛みしめ、抱きついてくる。
「大好きです! タクトさん!」
こうして、イオンとのエンゲージが発動可能になった。その後、イオンは腕を組んでくる。
「こ、これぐらいするのは、ふ、普通です!」
普通の割には緊張全開だ。顔が真っ赤なのが伝わってくる。
拠点に戻り、俺は切り札になるかも知れないものを作る。材料はココナッツジュース、ココナッツの果肉、金羊の羊乳、アクアスの氷だ。これをシェイクする。ここにはミキサーがないから手動で…うおお!
ぜぇ…ぜぇ…完成…したのが、こちら。
ココナッツシェイク:レア度8 料理 品質A-
効果:満腹度20%回復、魔力150回復、魔力1時間自動回復(中)、全ステータス1時間アップ(小)
ココナッツの味と金羊の羊乳が混ざり合った絶品の飲み物。アクアスの氷も使われており、冷たく飲むことが出来る。暑い地域では大人気の飲み物。
俺の苦労は報われた…ただ手動だから量が少ない…バトルシップで作っておけば良かったと凄い後悔している。
すると火影さんたちが隠し扉を発見して、大騒ぎをしていた。見つかったものは大砲だった。ただし、拠点に設置できる物だった。
更に別の忍者も隠し扉を発見するとその通路には罠があり、更には迷路になっていた。更には出口は島のあちこちに繋がっていた。完全に防衛戦を意識しているな。
「どう思う?」
「この島は中間地点だ。だからきっと防衛戦を意識しているんだと思う」
「作りが拠点というより、天然要塞みたいだもんな」
「それを生かすも殺すもプレイヤー次第ってことだね」
全員が武器や大砲を見る。
「幸い時間はあります。この拠点を使うことは必ず来るはずです。しっかり拠点化させたほうがいいと思います」
「そうだよね…指令部と話そうか。拠点化するなら石工師の力がいるからね」
で、話し合った結果。ひとまず第四の島は放置して、全員で拠点化することになった。
『島の詳細がわかるように地図の作製をお願い。紙とペンとかはタクト君が持ってるわ』
…紙を提供することになりました。多くないのに…やはり地図とかの需要はでかいな。イベントをクリアするためだ。提供しよう。
因みにメールが来た。明日ナオさんが来て、最後の依頼の指輪を貰う予定だ。俺は拠点でログアウトした。
名前 セチア ホーリーエルフLv1
生命力 140
魔力 280
筋力 120
防御力 93
俊敏性 116
器用値 260
スキル
杖Lv18 魔法弓Lv31 鷹の目Lv21 射撃Lv22 木工Lv22
採取Lv33 調薬Lv19 刻印Lv11 宝石魔術Lv5 宝石細工Lv5
封印魔術Lv10 連続詠唱Lv1 同時詠唱Lv1 魔力操作Lv1 風魔法Lv8
火魔法Lv21 水魔法Lv24 土魔法Lv15 闇魔法Lv8 神聖魔法Lv7
雷魔法Lv9 爆魔法Lv10 木魔法Lv17 氷魔法Lv8 樹魔法Lv15
罠設置Lv2 森林操作Lv1 ホーリーエルフの知識Lv26 精霊召喚Lv8
精霊結界Lv1 精霊魔法Lv1 列石結界Lv1 使役Lv8 料理Lv20