#40 その勝負、受けて立つ
事前に報告した通り、本日は2話更新です。
さて、次の日の学校は平和で終わった。海斗の奴が何か言ってた気がするが眠くて記憶にない。というわけで今日も急いでゲームにログインする。いや、別に急ぐ理由はないわけだが…特にやりたい事もないからな。強いて言えば、セチアのレベル上げとセチアが持っている採取、調薬スキルがあるので、若木の森でポーションの素材を集めて作成してみるのもいいかもな…後はそろそろリスト召喚をするのもいいかも知れない。普通の魔石はたくさん作れるからな。
そう思いながら宿屋で目が覚める。現在、ベッドにはリリー、イオン、セチアがいる。リリーとイオンには慣れていたがセチアの服装はへそ出しミニスカートだ…色々危ない。ま、このゲームの鉄壁のセキュリティで何も見えないだけどね!
俺が目を覚ましたので、三人も起きる。そして、いつも通り下に降りると人がたくさんいた。というか行列が出来ている。何事かと思ったら、お客さんがみんなつくねを注文している。そういえば昨日大量に作ったね。
「あ!タクト君、悪いんだけど急いでつくねを作ってくれないかな?材料はたくさんあるから」
「あ、はい。わかりました」
俺は厨房に向かい、つくねの量産に取り掛かった。三人娘は指定のカウンターへ。最近場所が決まってきているんだよな。
三人にも料理を作りながら、つくねを作っているとお客さんが入ってくる。
「ちょっと!困ります!順番は守ってください!」
ん?モッチさんの声だ。なんだ?迷惑なお客さんでも来たのかな?
「私に触るな!薄汚い庶民が!」
なんだ?空気が不穏だぞ。俺が厨房からお店を見るとシェフの格好をした金髪のイケメンがいた。ただしいいところのボンボン臭がする。モッチさんを薄汚い庶民と言ったあたり、あながち的外れじゃないと思う。モッチさんも言い返してないしね。
そしてこの金髪のイケメンはカウンターでつくねを食べようとしているリリーに近づき、つくねを奪い取り、そして食べると「ぺっ」と吐き出し、食べかけのつくねを床に捨てた。
「あー!?リリーのつくねがー!?」
リリーの泣き声が聞こえる。
俺の中で何かがキレた。恐らく料理人なら誰でもこいつが行った行為は許せるものじゃないだろう。
「喚くな。亜人種如きが。まずい料理を捨てただけだ」
その言葉にリリーとイオン、セチアがイケメンを睨む。するとその態度が気に入らなかったらしい。
「なんだ!その目は!」
イケメンがリリー達に手をあげる。それを事前に察知した俺は男の手を掴んでそれを止める。
「タクト…」
「悪いけど、この子達は俺の召喚獣なんだ…殴りたいならボア相手にしてくれませんかね?」
俺がそういうとイケメンは不機嫌になる。
「貴様…そんな洗ってもいない手でよくも触ったな…」
「すみませんね。人の料理を奪い取り、大切に作った料理を床に捨てる奴に礼儀は無用と思ったので」
俺がそういうとイケメンは鼻で笑う。
「ふん、貴様があのくそまずい料理を作った者か?」
「そうですが、何か?」
「よくもあのような料理を出せるものだと感心したのだ」
「そんな格好だけで料理を大切にしていない人に感心されても全然嬉しくないですね」
俺がそういうとイケメンに青筋が浮かぶ。おーおー。ひょっとして怒ってます?
「格好だけだと?」
「何か間違ったこと言いました?」
「貴様!」
男が俺の胸ぐらを掴もうとしてくる。正当防衛成立かな?俺は胸ぐらを掴もうとしている手を弾き、逆に首を掴み、持ち上げる。
「な!?ぐ…」
「なってないな…あんた」
「は、離せ…私を誰だと…」
「あんたのことなんてこれっぽちも知らねーよ」
俺はそう言い、首を離すとイケメンは床に落ちる。
「貴様…こんなことをしてただで済むと思ってるのか!この店、潰してやるぞ」
「やれるもんならやってみろよ」
俺はこの宿に泊まっているが経営しているわけじゃない!
「ちょっと待った~!?私のお店だよ!?」
モッチさんが心の底から叫んでいる。まぁ、叫びたくなるわな。
「よかろう。貴様に本物の料理を教えてやる」
イケメンがそう言うとインフォが流れる。
『特殊クエスト『料理コンテストバトル』が発生しました。お受けしますか?』
特殊クエスト『料理コンテストバトル』:難易度B
凄腕シェフにコンテスト形式の料理バトルに勝利せよ。
コンテストの点数により、報酬に変化あり
へー、面白いクエストだな。難易度が高いが、俺はこいつに負ける気がしない。
「いいぜ。その勝負、受けてやるよ!礼儀も何もなってないボンボンに教えてやるよ。料理人の心意気をな!」
お店の客が俺の言葉に沸き立つ。
「いいぞー!礼儀を教えてやれ!坊主!」
「そんな奴こてんぱんに負かせてやれ!」
「庶民の底力教えてやれー!」
イケメンはそんな様子の客を鼻で笑い、その場を後にしようとするが、俺が声をかける。大切な事、忘れているからね。
「つくね代、払ってないぞ」
「そんなものに支払う金などない!」
「へー。そうやって俺との勝負から逃げるのか?あんたがやったことは強盗、無銭飲食だ。あんたが捕まったら、勝負は俺の勝ちでいいよな?」
「っ~!!」
イケメンは顔を真っ赤にして、近くの机にお金を叩きつけ、店を後にする。
「毎度あり~」
モッチさんがそう言っているが明らかに笑っている。
そして完全に男がいなくなるとお店のお客さんが一斉に笑いだした。
「だ~っ!はっはっはっ!見たかよ!あいつの面!」
「いや~いいもん見たぜ!兄ちゃん、よく言った!最高だったぜ!」
「俺達はあんたを応援するぜ!なぁ?皆!」
『おぉー!』
「今日は宴だ!店長さん、酒とつくねを追加してくれ~!」
「こっちもだ~!」
「はいはい~。タクト君も悪いけど、つくねを作ってくれる?あ、リリーちゃんの分、追加してくれていいからね?」
「はい」
どうやら今日の予定は変更になったな。あのイケメンのプライド、地獄の底まで突き落としてやる。