#397 拠点防衛戦作戦会議
一周年と一年一話更新を無事に達成しました!
ここまでご愛読してくださった読者の皆さん、誤字脱字を指摘してくださっている皆さんに改めてお礼申し上げます。本当にありがとうございます。
これからどうなるかわかりませんが、ひとまず一日一話更新を続けて行きます。引き続きタクトとリリーたちの冒険をお楽しみください。
撤退した俺は先に撤退させたチロルたちと合流した。
「やりましたね! タクトさん!」
「経験値が入ったので、倒せたんですよね?」
「思った以上にギリギリだったけどな…それでも欲しい情報は手に入った。みんなのお陰だ。ありがとう。今から情報を共有しよう」
俺は司令部とみんなに船での情報を伝えた。
『アイテムがキーなのね…しかも船にアイテムがとは予想外ね』
『なんで大砲で壊せなかったんでしょう?』
『船長室の位置が問題じゃないかと…中央と後方の中間地点の下にありました。しかも窓枠がありませんでしたから…』
『大砲が当たってもそこには中々届かないわけね…酷い設定だわ』
俺もそう思う。だがこれで謎の一つがわかった。それはサバ缶も気付いたみたいだ。
『つまり魔女の隠れ蓑の使い道は海賊船に侵入するためだったわけですね…』
『俺もそう思います。実際にノワは侵入出来ましたから。ただチロルたちの情報で簡単には入れないみたいです』
『ロープとか梯子とか無くて侵入出来なかったんです。小船は滑車みたいなので、上げてました』
空からはバレバレだろうからな。そこでサバ缶さんが聞いてくる。
『確かタクトさんはロープを作っていましたよね?』
『はい。現状では厳しいですがクロウさんたちに協力して貰えれば鉤縄を作れると思います』
『ですね』
『おぉ!!』
これに反応するのは火影さんたち忍者だ。鉤縄は忍者の武器のイメージがあるからな。しかし鉤縄を使うにしても問題はある。
『となると昼間は厳しいですから侵入するなら夜ですね…』
『問題はどこで仕掛けるかね』
議論が始まるが結局決戦は最初の島になった。決め手は時間だった。第一の島を防衛して時間を稼ぐと被害が出過ぎる。それなら防衛態勢が整っている最初の島で一気に叩いたほうがいいという結論になった。
『タクト君はこの展開を読んでいたのかしら?』
『運営はわざわざ拠点を作ることを推奨してきましたから…どこかで防衛戦をすることになるとは思ってました。その場合、敵が雑魚の第一、第二は捨てることになると思ってました』
『中堅の人たちでも取り返すことが出来るからかしら?』
『そこまで考えてませんでした』
ルインさんに呆れられる。簡単に取り戻せるなぐらいに考えてたからな。
その後、みんなが夜の決戦に向けて動き出した。俺はスクナビコナに乗り、決戦に向けてログアウトした。
休憩をして夕飯を食べていると佳代姉からメールが来る。無事にスクナビコナは最初の島に到着させてくれたらしい。すると今度は理恋からビデオチャットが来る。このタイミングでだから何となく要件がわかるな。
『私も侵入して暴れたい!』
ほらね…分かりやすいな。
『侵入は暴れるのが目的じゃないぞ。暴れたいなら不死身の海賊を相手にしててくれ』
『兄ちゃん、全然分かってない! それじゃあ、つまらないよ!』
はいはい。自分がつまらないだけで作戦を潰さないでくれ。すると佳代姉が現れた。
『でも危険があるなら私たちも一緒にいったほうがいいんじゃないかな?』
『リリーたちがいるから大丈夫だ』
二人が不満げな顔をする。結局は暴れたいだけなんだよな。だが佳代姉たちは武器にポイントを使ったからほとんどがイベントアイテムを持っていない。それをなんとかして欲しいと言われてもな~。
あ、そういればほとんど使ったことがない便利な魔法があったな。あれがあれば行けるかも。
『『今、何か思い付いた!』』
なぜわかる…やはりエスパーか。追及されたので、俺は話すとやはりやる気満々になる。頼むから作戦が台無しになることだけは無いように祈るばかりだ。
『あ、それと夏休みはどうするつもりかな?』
『お盆はそっちに帰省するよ』
『えー…兄ちゃん、帰って来ないの?』
『俺はこっちで暮らしているんだから仕方無いだろ? ずっと家を放置するわけにはいかないから理解してくれ』
すると未希の声が聞こえた。
『…私たちが行けば何も問題ない』
『『だね!』』
やめてくれ。義父さんと義母さんが泣いちゃうから。とそういえばイベントが終われば期末テストが来るな。面倒臭い…
ご飯を食べ終え、風呂で疲れを取ってからログインすると敵の情報が伝えられた。敵が来るのはおよそ一時間後、海賊船が来るのは二時間後らしい。
その後、作戦の詳細を詰める。メルたちが俺の案を話すと当然、みんながやりたがる。そして俺はルインさんに睨まれる。俺は何も知りませんよ?ひゅ~るる~。
結局、防衛にも戦力がいるし、俺の策が出来る人はレベルが高い闇魔法を使える人だからこの案は防衛が不向きな人が参加することになった。
『兄ちゃん、よろしくね!』
「…」
リサは参加でメルは居残りになった。仕方無いよね。こればっかりは…メルは指揮を取れるからやはり防衛向きだ。するとリサと同じ武道家の子が一緒に来ることを立候補した。その子はチャイナ服を着ていた。武道大会に出ていた子だ。
「私も参加していいですか?」
「もちろんいいよ! リーちゃん!」
あれ?知り合いなのか?
「武道家は少ないですし、その中で女性プレイヤーはもっと少ないんですよ」
「その中でもトッププレイヤーは私たちぐらいなんだよ! ドヤァ」
「そうか…俺は構わないよ。ただ危険なことは覚悟してくれ」
「はい! 足手まといにはなりません!」
気合い十分だな。因みに彼女はソロプレイヤーらしいです。
作戦会議が終わって暫くするとクロウさんたちが鉤縄を持ってきてくれた。鑑定する。
鉤縄:レア度6 ロープ 品質C+
効果:登攀
コンヤーヤーンに鉄の鉤爪をつけた武器。山や建物などに登る際に使用される武器。
完璧だね。これで侵入する手筈は整った。更にナオさんからイオンの指輪を貰った。ダイヤモンドに海竜が巻き付き、大切そうに守っている指輪だ。相変わらず見事な出来栄えだ。
イオンの指輪も完成したし、気合を入れますか。
しばらくすると防衛隊から敵の出現の連絡が来た。そして防衛戦が始まった。