#395 第二の島、迎撃準備
敵の影が無くなったことでやっと緊張感から解放される。そして司令部に島から撤退出来たことを伝える。
『お疲れ様。みんなお礼を言っているわよ』
『嬉しいですが、事態は深刻ですよ』
『情報は貰っているわ。神聖属性でも倒せない敵だってね。でも必ず倒せるはずなのよ』
そう。必ず攻略法があるはずなんだ。ただそれが何か分からない。
『ボスはデイビィ・ジョーンズ。体をバラバラにしても生きていたらしいわ』
『デイビィ・ジョーンズって顔がイカっぽいやつですか?』
『それは映画ね。このゲームでは悪魔で魚の尾があるみたいよ』
魚の尾がある悪魔?リアンみたいな?気持ち悪くなってきたので、想像を放棄した。しかし魚で思い出した。
『あぁ…元々は船乗りの間で信じられている悪魔でしたっけ?』
『よく知っているわね。デイヴィ・ジョーンズの監獄が有名ね。沈没した船や水死した人はデイヴィ・ジョーンズの監獄に送られたとか言うそうよ』
『ということは怪しいのは海底ですか?』
『そうなるわね。海賊船は海底から出てきたらしいし、何かあるというのがこちらの結論よ。ただね…』
ルインさんが苦々しい様子を感じる。
『やはり被害は相当ですか…』
『えぇ…砲船は少なくとも4隻失ったわ。他の船も被害は甚大よ。死に戻りは凡そ150人…満月たちや与一たちも死に戻ったわ』
予想以上にダメージがでかい…いや、それだけの被害でとどまったのが良かったと思うべきか。全滅する恐れもあったんだ。
『無事だった砲船はこれからユグたちが修理をするわ。ただ木材が足りないからこっちで修理することになるわ』
俺は時間を計算する……よし。
『ちょっと案があるんですが、いいですか?』
『何かしら?』
『第二の島と第一の島…思い切って捨てて見ませんか?』
『えぇ!?』
流石のルインさんも驚いたようだ。
『…何を狙っているのかしら?』
『砲船が使えない以上、こちらが不利です。なら第二の島に罠を張って、攻略法を見つけるのが得策だと思います。そして最初の島には全員が集まっています』
『大胆な手ね…ちょっと話し合うわ』
『お願いします』
その間に俺はリリーたちから何か気付いたことはないか聞いてみる。するとリリーが重大なことを教えてくれた。
「小さな船がたくさんあったよ! タクト!」
恐らくは上陸用の船だろう。しかしなぜ上陸用の船を用意するんだ?船で近付けないならわかるが…いや、他にも小船で有効な使い道がある。敵の狙いはそこか。
第二の島の拠点である鍾乳洞は罠を張るには持ってこいだ。火影さんたちと協力すればそれなりのものが出来るだろう。
問題はカースパイレーツたちの不可解な不死身性だ。あれが第三の島限定に寄るものかそうじゃないかで取る手段が変わってくる。
俺の予想では第三の島限定な気がしてる。理由はまず奴等の名前だ。カースパイレーツ…呪いの海賊。なのに奴等は呪いの状態異常にしてこなかった。このことから奴等は呪いを与える海賊ではなく、何かに呪われている海賊である可能性が高い。これで不死身性に説明が付く。
問題は何に呪われているかだ。デイヴィ・ジョーンズな気がしているがあいつも不死身ならデイヴィ・ジョーンズも呪われていることになる。やはり怪しいのは海底、次点で拠点の中になるか。
暫くたつとやはりそれぞれ意見が割れた。ただこれは情報が少な過ぎるからだ。結果、第二の島で罠を張って、敵の情報を集めることは満場一致した。
『タクト君が最初に案を出したから指揮はタクト君がお願い。欲しい人材はいるかしら?』
『では、火影さんたちと忍者の人たち…それとニックさんたちに確認してもらいことがあります。それとチロルたちはこのままでいいですか?』
『問題ないわ。ニックたちに確認は何かしら?』
『錬金術師は壁って作れるか聞いてくれませんか?』
すると答えはサバ缶さんが答えてくれた。
『錬金術スキルに壁錬成がありますから大抵の錬金術師は可能だと思いますよ。みんな好きな技ですから』
『では、ニックさんたちにも来ていただけるように連絡お願いします』
『わかったわ。二人とも第一の島にいるから今から連絡するわね』
というわけで俺はチロルたちと火影さん、ニックたちに協力することになった。そして何気に作戦司令官にされてしまった。
「責任重大だな…」
「タクトさんなら大丈夫ですよ。タクトさんも自信を持ってください」
俺が以前に自信を持てと言ったことを返されてしまった。なら自信を持って指示を出そう。
「チロルたちは魔女の隠れ蓑は交換したか?」
全員頷く。よし、じゃあチロルたちには重大なことを頼むこととしよう。
「リリーたちに聞いたがカースパイレーツの船には小船があったらしい。恐らく敵はこれを使ってくる。そこでチロルたちはカースパイレーツの小船を監視して規模を教えてくれ」
「責任重大ですね。それだけですか?」
「もちろんそれだけじゃない。カースパイレーツの小船の監視が済んだら、敵の船を調べてくれ。それと今から敵の動きを知りたいからだれか二組で偵察に出てくれ。残りの人たちは相談して、偵察のローテーションを決めてくれ」
『わかりました!』
無事な船は第一拠点に集まることになった。よって、スクナビコナはこのままメルたちに預けることにした。偵察や逃げるならサフィのほうがいいからな。
俺たちが第二の島に着いたのは昼前だった。途中でルインさんから火影さんたちとニックさんたちももうすぐ到着する連絡を受けた。俺は連絡を入れて、偵察を引き受けてくれた人以外ログアウトしてから罠について決めることにした。
昼飯を食べてからログインする。すると早速情報が伝えられた。
「敵に動きがありました。30の海賊船がこちらに向かってます」
「何時に動いたかわかるか?」
「13時だったみたいです」
だとするとここに到着するのは最短で15時、第一の島には17時、最初の島には19時になるか。ここで罠を張るから実際はもっと時間がかかるだろうな。だとすると敵の狙いは大体絞れてきた。俺は偵察しているコゼットとフェルトに連絡する。
『タクトだ。魔法の霧はどうなっている?』
『海賊船は魔法の霧を抜けて進行中です』
『魔法の霧は第三の島、周辺で固定されてるみたいです』
「…そうか。ご苦労様。ログアウトしたいだろう? 代わりを行かせるから帰還してくれ」
二人の変わりはチロルとアロマが担当した。
さて、こちらも集まったメンバーで罠の準備に入ろう。
まずは鍾乳洞の地形をみんなの情報を元に紙に書く。不確定な情報は実際に行って確認した。これでこの地図はほぼ正しいだろう。そしてかなり広い鍾乳洞であることがわかった。非常に助かる。
「紙に書くと分かりやすいでござるな~」
「罠を仕掛けるならこことここがいいですね」
「こことここも行けるでござるな」
みんなで罠の案を出し、俺は決めていた作戦を説明する。
「流石はタクト殿…容赦ないでござるな」
「壁錬成をそう使うんですね…これはえげつない」
「ですが…楽しそうと感じてしまいますね」
「錬金術師はあまり日が当たらない職種だったからな~」
どうやらみんな賛同してくれたみたいだ。早速火影さんたちとセチア、アラネア、伊雪、ミールは罠設置に向かった。時間が無いからな。
暫くしてチロルたちと偵察役を変わったララと女召喚師の人から情報が来る。敵は停泊して、小船を出したようだ。
『敵の船が目視から消えました!』
『恐らく小型の工作船ではないかと』
やはりな…あの小船は上陸用であると同時に奇襲や夜襲に使われるものなのだろう。
『ご苦労様。監視役は俺が代わる。二人は持ち場についてくれ』
『『了解!』』
俺は全員に告げる。
『勝負を決めるのはタイミングと俺たちの連携だ。海賊どもに俺たちの恐ろしさを教えてやろう!』
『『『『おぉ~!!』』』』
こうして第二の島、防衛戦が始まった。
ステータスは明日まとめます。




