#387 太陽の刀とノアの魔導船完成
翌日の朝、外は雨だが、スッキリした気分だ。睡眠は十分とったし、無事にリリーの試練をクリア出来たからだろう。
学校では海斗が魔導船を楽しみにしていた。まぁ、俺も楽しみだからな。因みにみんなはもう船を買ったそうだ。中々の船団となっているみたいだ。
「ガレオン船、二隻は圧巻だぜ」
「大砲40門あるらしいよ」
「そんなに大砲扱えるのか?」
「大砲を撃つのは同時に出来るらしいから大丈夫だって。照準を一つずつ合わせないといけないから大変とは言ってたよ」
なるほど。それは大変だろうな…出来れば一つの大砲に集中した方がいいんだろうが大砲が多いなら、照準役と発射役に分かれるといい感じになりそうだ。
それからニックさんたちはひたすら大砲の弾の作製で悲鳴をあげているそうだ。大変だな。そして海斗たちは和牛などの牛狩りをしているようだ。ただ和牛には手こずっているみたいだ。懐かしいな…俺も苦労した。
拠点もだいぶいい感じになっているそうだ。明日からイベントだから夜に作戦会議があるそうだ。昨日早めに寝たから知らなかった。
スーパーで買い物を済ます。家に帰り、ゲームにログインすると恋火が来る。来たか!
「あたしの刀が完成しましたよ! タクトお兄ちゃん!」
「あぁ、見に行こうか」
ヘーパイストスの所に向かうと真っ赤な鞘に収まった刀があった。
「あ、タクトさん! 恋火さんの刀が完成しましたよ! 太陽石に手間取って期間が伸びちゃいましたが、自信作です!」
凄い自信だな。恋火が刀を抜くと綺麗な刀身にオレンジ色に輝く光が纏っている。幻想的な刀だな。
「綺麗です…あ! タクトお兄ちゃん! 名前をつけてください!」
はいはい。決めてありますとも。
「太陽の陽に恋火の火で陽火。なんてどうだ?」
「陽火…いい名前だと思います!」
それは良かった。本来ひのえは丙と書くが今回は恋火の火を意識した。意味は同じで照り輝く太陽の火だ。恋火にぴったりだろう。
では鑑定してみよう。
陽火:レア度8 刀 品質B+
重さ:60 耐久値:150 攻撃力:120
効果:熱切断、紅炎
太陽の力を宿した斬れ味抜群の刀。どんな鋼鉄も焼き斬り、アーチ状の独特の炎は敵の逃げ場を無くし、確実に敵を焼き殺す力がある。
太陽石の効果が凄いな!熱切断はレーザー切断のようなものだろうか?紅炎はプロミネンスとも呼ばれる皆既日食の際に、月に隠された太陽の縁から立ち昇る赤い炎のように見えるのが紅炎だ。詳しい説明は残念ながら出来ない。意味不明な専門用語が出てくるからな。
恋火で陽火を手にする。
「これからよろしくお願いします。陽火!」
恋火がうっとりしているとヘーパイストスが来る。
「タクトさんの刀は後、二日ください。その後はどうしますか?」
「リアンとブランの槍を頼むことになると思う。フィニストの羽を使ってくれ。素材は買ってくるつもりだ。鋼鉱石でいいか?」
「大丈夫です。後はどうしますか?」
「ん~…とりあえずは大丈夫だ」
他の武器を作ろうとしても時間が足りないだろうからな。ヘーパイストスの注文も終わったので、ノアの所に向かうことにした。
ノアの家に向かうとノアが出迎えてくれた。
「完成したよ! ボクの夢の船が! ささ! こっちに来てくれ!」
ノアの案内に従い、地下に降りる階段を降りるとそこには巨大ドックがあり、白い立派な大型船があった。
「どうだい! これがボクの夢の船さ!」
自慢げにノアに言われるが地下ドックの凄さと魔導船のダブルパンチで絶句だ。
「あまりの凄さに声も出ないようだね!」
「あ、あぁ…。というかこんなドック持っていたんだな」
「当然でしょ? ドックがないと船なんて作れないよ」
いや、そうかも知れないが…予想外過ぎだ。
「というかなんで上はボロ家なんだよ」
「ボロ家の地下に秘密のドックがあったほうが秘密っぽいじゃん」
演出かよ!?こっちは頼んで大丈夫か心配になったんだぞ…
「じゃあ、約束通りこれはタクトにあげるね。名前を付けて大切に使ってあげておくれ」
あ、名前つけるんだな。ヨーロッパの船っぽいがここは俺が好きな名前をつけよう。
スクナビコナ:レア度9 魔導船 品質A
武装:エーテル魔導砲、エーテル魔導大砲10、エーテルシールド
耐久値:150000 性能:自己修復、船酔い無効
リープリングの大型の魔導船。竜木から作れており、船の安定感が抜群で傷ついても自己修復する能力がある。エーテル結晶の魔導エンジンを搭載しており、攻守、速さ最高峰の船。
スクナビコナは日本の神様の名前。国造りの神様で海から来訪した神様として知られている。一寸法師のような神様で悪童的な性格だったとされる。
俺も悪巧み大好き人間だし、船の名前にはぴったりだろう。神様の名前だから危険性はあるが正確な名前は使っていないから大丈夫なはずだ。
さて、スクナビコナに乗り、ノアからスクナビコナの説明を受ける。
「まずここが操舵室。船の操縦を行う場所だよ。この舵輪で操縦して、ここのパイプはそれぞれエーテル魔導砲操作室、機関室に繋がっている。それぞれ指示を出しながら操縦する感じだね」
まぁ、簡単な操縦ではないよな…それしてもわざわざパイプを使うのか?コミュニケーションがあるのに…
「まずは目玉のエーテル魔導砲から説明しようか! エーテル魔導砲は船首に設置してある。めちゃくちゃな火力だから当然欠点がある。まずチャージ時間が長い。それからエネルギーを全部魔導砲に回しちゃうから、エーテルシールドも無くなって完全に無防備になっちゃうから気を付けて使って欲しい。それと一度使うと五日間使えない」
まぁ、欠点はあるよな…チャージ中は俺たちがスクナビコナを守る必要があるわけだな。やってやるさ。ノアが船首付近の床にある扉を開けて中に入る。
「ここがエーテル魔導砲の操作室。このスイッチを押すと船首が開いて、エーテル魔導砲の照準画面に映像が出る」
おぉ!ロボアニメみたいだ!サバ缶さんたち、大好きだろうなぁ。
「この円が攻撃範囲。このレバーで固定アンカーを発射して、こっちのレバーで照準をロックする。この引き金で発射だよ」
え…攻撃範囲広くね?スターライトドラゴンのブレスよりでかそうだぞ…その後、ノアは船内に入り、機関室に向かう。
「次は守備の要。エーテルシールドだよ。これの操作はこの機関室で行う。まぁ、エーテルシールドはボタン一つで出来るから簡単だよ。ポチ」
ノアがボタンを押し、デッキを出ると船の全方位に虹の膜が覆われている。これがエーテルシールドか。
「このエーテルシールドを張っている間は大抵の攻撃は通用しないはずだよ。流石に禁呪は無理だけどね。侵入もできない。だけど内からは出ることが出来るし、攻撃もすり抜けるように作られている。自慢のシールドさ」
ほぼ防げて、攻撃可能。めちゃくちゃだな。機関室に戻る。
「後、機関室は船のスピードとエーテル魔導砲、エーテルシールドにエネルギーを流す重要な役割がある。このレバーでスピード管理、こっちのレバーを前に倒すとエーテル魔導砲にエネルギーが流れて、戻すと元通りになる。元通りになるまで時間がかかるから気をつけてね」
元に戻る時間がかかるのも当然だな。
「後はエーテル魔導大砲の説明がまだだったね。エーテル魔導大砲は船のエネルギーを使うから弾の必要ない。後は大砲と同じだよ」
エーテル魔導大砲はデッキに置かれている。固定されていないから大変だろうけど、その分自由度は高い。敵がどこから来るかわからないからこちらのほうが良いだろう。
「最後に部屋の説明。部屋は何もないから自由に使って欲しい。倉庫が六つあって、一つで100入るよ。こんなところかな。質問はあるかな?」
運搬船の役割もこなせるのか…凄いな。おっと質問は…
「ないな」
「そっか。じゃあ、スクナビコナをよろしくね」
ノアが寂しそうな顔をして船を降りる。俺もスクナビコナをインベントリにしまう。よくしまえるよな。これ。
「何、休んでいるんだ? 外に行くぞ」
「え?」
「えじゃないだろ。お前の夢の船なんだ。操縦したいんじゃないのか?」
あんな寂しい顔されたら、乗せない訳にはいかないだろうが。
「い、いいのかい?」
「あぁ。機関室は俺がしてやるから最初の操縦譲ってやるよ」
「あ、ありがとう! は、早く行こう!」
やれやれだ。ノアには他にも聞きたいことがあるんだが、今はイベントを優先しよう。
ノアの操縦に付き合った俺はついでにリリーたちにも色々操縦等を馴れて貰った。セチアとミールに乗ってもらったが船酔い無効のお陰で大丈夫みたいだ。
後、黒鉄や月輝夜のような大型の召喚獣は残念ながら一体が限界みたいだ。その一体でも結構揺れたので、召喚するなら一瞬になら問題がないという感じだ。
その後、ノアと別れて、みんなに魔導船を受け取ったことをメールで伝えてログアウトした。




