#385 蘇生の山羊と毒婦の妖狐
現実に戻ってきた俺はリリーに飛びつかれる。鎧装備だから結構痛い。
「タクト~! 金羊の羊乳かチョコレート頂戴! 口の中が~ビリビリする~」
いつまで効果が持続するんだ…恐るべし、失敗した浄化の丸薬。
「どうしたんですか? リリーお姉様?」
それを作製した当人は破壊力を知らない恐ろしさ。俺は失敗した薬は飲まないことを誓った。とりあえずみんなにもご褒美の金羊の羊乳を舐めさせてあげる。
リリーもそれでなんとか復活して、進化した感じを確かめている。進化したリリーも気になるが先に進化を済ませよう。
まずはエアリーからにした。進化先は一つ。
ヘイズルーン
北欧神話のヤギだ。エインヘリャルがヘイズルーンの乳で作った酒を飲むことで有名だな。他に話は残念ながら俺は知らない。お酒飲めないんだが、大丈夫かな?とりあえず説明を見てみよう。
ヘイズルーン…戦うことを望まない豊穣の山羊。レーラズの木を育てることで有名でヘイズルーンの乳は死者に活力を与え、その者を蘇生させる効果があると言われている。戦闘では封印や結界などの守りに特化している。
遂に来ました蘇生アイテム!戦闘は苦手なのは最早気にしない!それでは進化いってみよう!エアリーが緑の光に包まれ、進化する。
進化したエアリーは大きさには変化なし、金の角も相変わずあるが毛並みが白くなり、首からはエメラルドのような宝石を付け、足にも緑のアンクレットを付けている。なんというかおしゃれだ。ではステータスを確認する。
名前 エアリー ズラトロクLv24→ヘイズルーンLv1
生命力 110→150
魔力 78→118
筋力 78→118
防御力 40→80
俊敏性 94→134
器用値 70→110
スキル
角擊Lv25 激突Lv1 登攀Lv4 危険察知Lv16 跳躍Lv10
疾風Lv18→疾走Lv18 木魔法Lv3 光魔法Lv18 植樹Lv1 採乳Lv14
守護Lv7 祝福Lv8 豊穣Lv1 蘇生Lv1 狂戦士化Lv2
封印魔術Lv10 列石結界Lv10 森林操作Lv1 天撃Lv1 星の加護Lv1
やはり相手を封じたり、味方を補助する役割みたいだな。こっそり天撃持ちなのが怖いところだ。
気になるのは初見の列石結界。通常の結界との違いを知りたいと思い、使って貰った。
すると地面から石柱が次々現れ、イギリスのストーンヘンジのようなストーンサークルを作る。次の瞬間、石から知らない光の文字があられると石柱から電撃が中央に放たれる。恐らくこれで動きを封じるのだろう。
自分でどんなものか体験してみた。
普通に動けず、攻撃スキルが封じられた。武技や魔法は使用出来るみたいだが、封印魔術で封じられたら、どうすればいいんだろう?
ネックなのは時間はかかることだな。強力な技だから仕方無い。
利点は広範囲であること。足止めには最適だろう。そして何より格好良い。
では、早速説明にある乳を貰おうかな。採乳を使用して貰った。手に入ったのがこちら。
ヘイズルーンの乳:レア度9 食材 品質A
効果:蘇生
死者を蘇らすほど、美味しい山羊乳。別名奇跡の乳。料理に使っても絶品で、特にチーズは奇跡のチーズとして知られている。市場には滅多に並ぶことがないため、高額で取引される。
そりゃ、死者が蘇るなら普通に奇跡だよな。量が少ないから味見はやめておく。だからみんなも我慢してくれ。
次は狐子。進化先はやはり一つ。では、見てみよう。
妲己
ほう…そう来ますか。妲己は確か古代中国で有名な悪女として登場している。日本では玉藻前伝説と結び付けられることがあり、恐らくこの妲己はそちらだろう。もしくは封神演義かも知れないな。どちらかわからないが説明を見ればわかるだろう。
妲己…千年の間、悪逆を尽くした妖狐。変化が得意で美女に化けて男を堕落させ、国をも滅ぼすとされる。魔素や邪気を操り、体を蝕み殺すことを得意としている。
これはごちゃごちゃかな?それよりも俺は狐子を見る。
「コーン!」
俺は進化させていいだろうか?凄く心配だ。しかししないわけには行かないよな。じゃあ、行ってみますか。狐子が紫色の炎に包まれ進化する。
進化した狐子は紫色の狐になった。顔には紋様があり、耳には紫の花飾りがある。首には鈴があり、尻尾は七尾だ。それじゃあ、ステータスを確認しよう。
名前 狐子 妖狐Lv24→妲己Lv1
生命力 54→94
魔力 120→160
筋力 80→120
防御力 38→78
俊敏性 84→124
器用値 70→110
スキル
噛みつきLv21→噛み砕くLv21 尾撃Lv1 気配察知Lv19 危険察知Lv14→危険予知Lv14 魔力操作Lv1
火魔法Lv23 闇魔法Lv7 邪気Lv1 妖気Lv1 暗視Lv19
邪炎Lv26→黒炎Lv26 妖術Lv2 幻術Lv10→幻影Lv10 憑依Lv3 誘惑Lv1
致死毒Lv1 火の牙Lv14→炎の牙Lv14 火爪Lv15→炎爪Lv15 火弾Lv18→火炎弾Lv18
病気ブレスLv1 狂戦士化Lv1 魔素解放Lv1
確認していると狐子が俺に声を掛けてきた。
「コーン!」
「…人に変化しなくていいぞ?」
「コン!」
変化しやがった。変化した狐子は黒いチャイナ服にガーター姿のつり目のキツそうな女子高生だ。髪型もウェーブロング。ただし紫色だ。装備されていたのも継承されている。
「どう? ご主人様?」
「え? 話せるのか!?」
「狐の姿は話せないけど、この姿だと話せるわ。話せないと男を誘惑するのは大変だから」
話せる理由が最悪だ。すると視線を感じる。リビナたちだ。
「またタイプが違う女性…むむむ」
「スタイルはあたしが一番ね」
「スタイルは目を騙すだけよ? 大事なのは品じゃないかしら? ね? ご主人様?」
尻尾を絡み付け、腕組みをしてくる。
「そ、それはダメです!」
恋火が飛びついて来た。
「狐子、あかんよ。ご主人様に甘えたい気持ちはわかるけど、順番は守らんと」
「そうね。恋火を敵に回したら、怖いからここまでにしておくわ…また味わいたかったら、いつでも言って、ご主人様」
「ダ、ダメです! 狐子!」
狐子が狐に戻る。耳元で小声で言ってくるとは…狐子、恐ろしいやつだ。
「テ、テクニックタイプ…ま、負けないもんね! 品ならボクが一番」
「それはないでしょ」
「なんで断言するんだよ!」
リビナ…必死だな。リビナにはリビナの魅力があると思うんだけどな。さて、先にノアにクエスト報告をしてからリリーの実力を確かめよう。