#3 召喚師とドラゴニュート
インフォによると召喚獣の召喚には魔石というアイテムが必要らしい。今回は初回特典で無料で魔石を貰えた。早速指示通りに地面に魔石を置き、召喚魔術Lv1の魔術、魔石召喚を行う。
「魔石召喚!」
俺が呪文を唱えると魔石を中心に紫色の魔方陣が自動で形成される。魔石が浮かび上がり、魔方陣に吸い込まれていく。魔石を吸い込んだ魔方陣から眩い黄色い閃光が放たれる。眩しくて目をつむってしまうほどの閃光だったが、すぐに光は収まった。
俺が目を開けると魔方陣の中央に金髪ロングヘアで蒼眼の可愛い少女が立っていた。インフォが流れる。
《ドラゴニュートの召喚に成功しました。名前をつけてください》
ドラゴニュートって確か竜人族の名前だよな? つまりこの子は亜人種の召喚獣ってことか。それにしてもいきなりドラゴンって……。
俺が固まっているとドラゴニュートの少女が俺に話かけてきた。
「あなたが……私を召喚したの?」
「あ、あぁ。俺が君を召喚した」
やばい、話しかけられるとは思わなかった……。
「そうなんだ。名前を教えて」
「せ……じゃない。タクト。それが俺の名前だよ」
危うく本名を言うところだった。こういうのはタブーなんだそうだから気を付けないといけない。
「タクト。いい名前だね!」
素直で明るく笑う少女。VR技術恐るべし、本物の女の子にしか見えないぞ。少女の言葉にお礼を言うと少女が聞いてくる。
「タクト、私に名前を付けて」
名前をお願いされる。しかしまさか女の子の名前を付けるとは思ってなかった。俺は少女を見る。明るく素直そうな感じを受ける。そんな少女を見て、名前を決めた。
「リリー、なんてどうかな?」
名前の由来はユリの花だ。ユリの花はたくさんあるが、俺は普通のユリの花の花言葉から名前を付けることにした。花屋のアルバイトをしているときにお姉さんからユリの花言葉は純潔、純粋、無垢、無邪気などの意味があると教えてもらい、それがこの子には合っている気がしたからだ。
流石に愛らしさ、純愛、愛の告白、待ち切れない思いは初対面ではかなり重たいので、除外をしたい。他にも意味があるがそれらはちょっとこの子のイメージと合わないから除外したいな。
海外ではこの名前はやはり純潔、純粋という意味で使われることが多いみたいなので、問題はないだろう。
「リリー……。それが私の名前……」
後はこの子が名前を気に入るかどうかだな。
「気に入らなかったら、言ってくれ。一生懸命考えるからさ」
俺がそう言うと少女が抱きついてきた。
「ううん。大丈夫! 可愛い名前をありがとう! タクト」
「そっか。これからよろしくな。リリー」
「うん。よろしく! タクト!」
やばい、可愛いぞ……。義理の妹達がいるから耐性はあるが、無かったらやばかったぞ。
俺が名付け終わるとインフォが流れる。
《これで召喚師のチュートリアルは終わりとなります。これより最初の町に強制転移を行います》
俺達が光に包まれる。おぉ! これが転移か。いよいよ俺達はゲームの世界に転移した。
目を開けるとそこは町の広場だった。
「おお。町だ」
「町だー」
俺がどうでもいい感想を言うと隣でリリーが俺の真似をする。何がいいのかニコニコしているので、非難するのはやめておこう。
改めて周りを見ると次々にプレイヤーが転移してきている。このままここに留まると邪魔になりそうなので、リリーを連れ、路地裏に退避する。そしてチュートリアルで教わった方法でステータスを確認する。
名前 タクト 召喚師Lv1
生命力 10
魔力 15
筋力 12
防御力 4
俊敏性 10
器用値 14
スキル
素手Lv1 杖Lv1 召喚魔術Lv1
名前 リリー ドラゴニュートLv1
生命力 10
魔力 8
筋力 20
防御力 6
俊敏性 8
器用値 6
スキル
素手Lv1 片手剣Lv1
比較対象がないのでよくわからないがリリーの筋力が無駄に高いのは理解できた。流石は竜人族だ。そして俺のステータスも全体的に高い気がする。だって防御力が4で他は10を超えてしまっている。理由はよくわからないが高いに越したことはないだろ。
次に俺はアイテムボックスを見ると初心者の杖、初級ポーション×5、携帯食×5、お金5000Gが入っていた。リリーの片手剣は入っていなかったので、買うしかなさそうだ。初心者の杖を取り出し、準備完了。次はリリーの片手剣を探しに行かないとな。だがその前に……。
「俺達に何か用ですか?」
「ほえ?」
俺が声を出すとリリーが情けない声を出す。リリーはどうやら気づいていなかったみたいだな。
「気づいていたのね」
一人の女性プレイヤーが俺達の前に現れる。俺よりも大分大人……OLっぽい人だ。
「ストーキングされる心当たりはないんですが?」
「そう噛み付かないで……ストーキングしたことは謝るわ」
ふむ……最初に謝るなら警戒しなくてもいいか……。
「それで改めて、俺達に何か用ですか?」
「まずは自己紹介しましょうか。私はルイン。ベータテスターで職業は商人よ」
名乗られたなら名乗らないとな。
「俺はタクト。こっちはリリー。初心者の召喚師です」
「……その子、やっぱり召喚獣なのね……」
ん? リリーが目当てだったのか?
「リリーがどうかしましたか?」
「どうもしてないわ……ただベータテストでも女の子の召喚獣は見たことなかったから驚いているだけ」
つまりリリーの存在はかなりレアで気になって話しかけてきたわけか。
「流石に種族やステータスは聞けないわね」
それはそうだろうと俺は思っていたがリリーが元気に答える。
「リリーはドラゴニュートだよ!」
「「……」」
お互いに何ともいえない空気になる。
「なんというか……ごめんなさいね? 余計なこと聞いてしまって」
「いえ、答えたのはリリー自身ですから……落ち度はこっちにありますよ」
「そうだとしてもこのままじゃあね。確か初心者だったわね? 何か困っていることはないかしら?」
それはたくさんあるがとりあえずは……。
「武器屋って知っていますか?」
「もちろんよ。私の知り合いを紹介してあげるわ」
俺達はルインさんの案内で武器屋に向かった。