#370 魔王バエルのイベント発表
リープリングに戻るとセチアから追及を受ける。だが恥ずかしいから内容は秘密だ。
するとリープリングにメルたちがいた。
「あ! 兄ちゃんだ!」
「珍しいね。こんな時間に戻ってくるなんて」
「…何してたの? 兄様?」
「マングローブの森を攻略して、魔導書を作って来たところだ」
するとレッカが頭を抱える。
「なんで魔導師より先に魔導書を作っちゃうんだよ…」
「下準備の賜物だ」
「というか紙とかどうしたのさ。売られてないでしょ?」
「サトウキビからパルプを作って、紙製造機で作った」
説明したがレッカには意味不明のようだ。俺も詳しくは知らなかったからな。因みにレッカに売って欲しいと言われたが、結構使ったから却下した。
すると魔導書を見てみたいと言われて見せる。
「おぉ~! 浮いてる! …や!」
リサが飛び付いて来たので、上に動かして躱す。
「む! やぁ! たぁ! だー! 兄ちゃんの意地悪!」
リサをおちょくったら怒られた。するとリリーが来る。
「タクト! リリーも遊びたい!」
「遊びじゃないよ!?」
平和だ。すると話は先程のインフォの話になる。
「厄介なイベントみたいだよ。まだ見てないなら見てから話そうか」
というわけで内容を確認する。
運営イベント『島盗り合戦』:難易度A+
・このイベントはプレイヤー参加人数500人のイベントです。事前にメンバー申告可能。メンバー申請期間は日曜日までです。なかった場合はランダムでメンバーが決まります。
・プレイヤーは最初の島に配置され、魔王バエルが支配している五つの島を攻略するイベントです。
・ポイントは参加プレイヤー共通です。イベント中ログインしないプレイヤーにはポイントが入りませんので、ご注意ください。
・戦闘での経験値は戦闘したプレイヤーのみ適応されます。
・デスペナは8時間のログイン禁止のみです。ポイントのマイナスとアイテムの消失は発生しませんが、戦闘での経験値は貰えなくなるので、ご注意ください。
・ボスが出現するとモンスターが出現し、島の防衛とプレイヤーの島を攻略しに来ます。攻略した島をモンスターに乗っ取られるとボスが復活し、その島はモンスターのものとなります。ボスがいる島ではモンスターの数が時間が経つごとに増加します。
・スタート地点の島をモンスターに乗っ取られると敗北となります。
・イベント期間は9日間です。
・メンバーが100人集まるとイベントまでに最初の島に行くことが出来ます。
・アイテムの持ち込みは可能です。
・イベントに伴い、造船イベントが各地で発生します。
・特定の武器、防具で特効が発生します。
確かに厄介みたいだな。
「読んだ?」
「あぁ」
レッカが改めて説明してくれる。
「簡単に言うと国取りゲームだね。島をどんどん攻略して行って、最後の島にたどり着いて攻略すれば勝ちだ」
「普通の国取りゲームと違うのは、船を使うことだね。サフィちゃんがいるタクト君には有利かもね」
「だよな。また召喚師有利のイベントかぁ~」
ケーゴがそういうが本当にそうなるか?
「…兄様は召喚師が有利とは考えてないみたい」
「船を推奨しているのが気になっているのかな?」
「よくわかるな…むしろ召喚師や猛獣使いの役割は船の護衛のような気がする。俺が知る限りだが、水中戦に対応出来るのが召喚師と猛獣使いだからな」
実際に俺はシャローさんたちの護衛をしている。そして船は壊せるからそれを敵は狙ってくるだろう。船を失ったら、移動手段が失われる。ユグさん、大活躍だろうな。そういえばルインさんたちがいないな。
「ルインさんにもリアルの都合があるんだから、いつもいるわけないよ」
それもそうだな。
「ただ今回人数多いな」
「今頃ルインさんのところにメールが殺到しているだろうね。メンバー選びも結構重要になると思うよ」
「船での戦闘ならやっぱり魔法使い、弓術師が有利かしら?」
「だと思うよ。ただボス戦が島での戦闘みたいだから私たちが活躍出来ないわけじゃないよ」
だな。後のポイントは最初の島に行けるところと造船イベントだな。わざわざ書いてあるってことは何かしら有利に働くんだろう。
「アイテムの持ち込み可能も今回初だよ?」
それもあるか…回復アイテムの持ち込みが可能?だけなわけないよな。
「イベント有利アイテムがあるからだと思うけど…それじゃないよね…たぶん」
「インベントリには限りがあるからね。誰が何をどれだけ持っていくのか重要になると思う」
メンバーだけじゃなく持ち込むアイテムまで考えないといけないのか…大変だ。
「兄ちゃんは大まかなメンバーはどう考えているの?」
「基本は戦闘職400、生産職100だと思うが、ひょっとしたら半々に別れる可能性もあると思う」
「それは流石にきついだろ…」
確かに言い過ぎかも知れないがそれだけ今回のイベントは生産職が重要だと考えている。
「僕はタクトの意見に賛成かな…これが本格的な国取りゲームなら補給線の確保が重要になってくるはずだよ。ましてやこのゲームには満腹度がある」
「補給線を断たれたら、満腹度がなくなりモンスターにやられるだけってことね…」
「でも、それなら尚更護衛する戦闘職が重要になってこないか?」
ケーゴが言うとおりか…拠点の防衛もあるし、大変だ。こりゃ。結局メルたちとの話し合いでは今回のイベントは役割をそれぞれ決めるのが重要ということで決まった。まだどんなのかわからないからな。
さて、俺は地下の訓練所で魔導書のテストをする。メルたちも見学に来ている。
魔導書を浮かせ、魔法の指示を出す。ん~とりあえずブリッツで。
『ブリッツ』
魔導書に魔方陣が描かれ、ブリッツが放たれる。本当に声なしで発動するんだな。更に同時詠唱試す。魔方陣が二つ現れる。
『ブリッツ』
『ソニックブーム』
おぉ!本当に二つ同時に出た!ならこれは出来るか?
『『ブリッツ』』
『『ソニックブーム』』
連続詠唱も問題なし。遅延魔法も出来た。
スカーレットリングを取り出し、戦闘をイメージする。スカーレットリングを振り、最後に魔導書がブリッツを放ち、終わる。ビビった…スカーレットリングの詠唱破棄も有効なんだ。うーん…バレバレな気がするな…よし!
スカーレットリングを振っては魔導書による攻撃をしてみるが俺は納得行かなかった。やはり難しいな…どうしても魔導書で攻撃する際に視線が動いている気がする。これじゃあ、魔導書から攻撃来ますよと教えているようなものだ。なんとかしたいな。
「タクトの奴…あれで首傾げているぞ」
「…兄様は理想が高くて意外に凝り性だから」
「だからバイトにのめり込んじゃったんだよね」
メルたちから変な評価をされている気がする…仕方無い。時間を見つけてこっそり訓練しよう。
その後、水樹を植えようと考えたが、ミールに止められた。
「水樹を植えるなら新しい土地を買って、池や湖にしないとダメです。ある程度、水の管理は出来ますけど、限度がありますから」
「うむ…湖を作ったとして、そこから水路を作って畑に流すことは可能かな?」
「それは素晴らしい考えだと思います! 水樹の水なら野菜たちや木々も大喜びですよ」
水やりの手間も省けるみたいだし、これはやってみるしかないな。
「なんか農地改革の話をしていないか? タクトの奴」
「絶対荒れると思うんだけど…」
「とりあえずタクト君にルインさんやユウナさんに相談するように言ってくるね…このままだと一人で暴走しちゃいそうだから」
「タクトはとっくに暴走していると思うのは僕だけかな?」
レッカの言葉に全員が沈黙したのが、答えだった。