#349 災厄の合成獣王
ラスボスの部屋に入ると暗黒召喚師ともう二人、敵がいた。
暗黒研究者アミソーダロス?
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暗黒錬金術師カシム?
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アミソーダロス…なんだっけ?名前からしてギリシャ神話だと思うが出てこない。
カシムは恐らく『アリババと40人の盗賊』に出てくるアリババの兄だ。なぜ錬金術師なのか謎だな。
「はは! バカめ! ノコノコ本当に来やがった!」
リリーたちが武器を構える。するとエストオラシオンの輝きが幸か不孝か奴等の後ろにいる化け物を照らす。
ディザスター・キマイラ?
? ? ?
ディザスターは災厄。キマイラはギリシャ神話に出てくるテューポーンとエキドナの娘。キメラの語源になった怪物だ。
その姿は俺の知るキマイラとは異なる。まず二足歩行で両手が巨大ドリルになっている。胸には怪しい宝石があり、顔は山羊で蛇の尻尾、翼まである。
勝てるわけがない。
「ようこそ。私の研究室へ。フリーティアの犬」
「君は運がいい。我々の偉大な研究成果の最初の目撃者となるのだからね」
はっきり言おう。なりたくない。リリーたちが一斉に攻撃をする。しかし攻撃が見えない壁で防がれる。
「くく…無駄だぜ。俺たちはこのキマイラちゃんに守られている」
「このキマイラの力は絶対だ。ニュートンやアインシュタインどもが作るアイテムとは比較にならない」
そのアインシュタインさんが作ったアイテムであっさり奴隷の首輪を開錠されたんだが?そもそも怪物とアイテムを比較して、どうする。
「我々は我々を否定した奴等に復讐をする! さぁ! キマイラよ! 魔法の指輪と魔法のランプの力を吸収し、復活せよ!」
何やら装置に入れられた魔法の指輪と魔法のランプからエネルギーが発生し、それがキマイラに流れていく。攻撃したが、やはりダメだった。
あれはアラジンの物語に出てくる魔法の指輪か?だとするとヤバい予感しかしない。すると声が聞こえた。
『…助けて』
あの指輪からか?
というかこれって完全に私怨だよな。俺たちは完全に巻き込まれた形だ。まぁ、和狐のことや奴隷にされた亜人種たちのこともあるから見逃すつもりはないけどね。
キマイラの目が赤い光が宿り、キマイラが目覚めた。
「グォオオオオオ!!」
そしてインフォが来る。
『ワールドイベント『災厄の合成獣王』が発生しました』
ワールドイベント『災厄の合成獣王』:難易度A
条件:全プレイヤー参加可能、助っ人NPC参加可能制限なし。
報酬:結果により、報酬に変化あり。
ディザスター・キマイラを討伐せよ。
やはりそう来るよな。嫌な予感は本当に当たるものだ。
ディザスター・キマイラが目覚めた姿にアミソーダロスとカシムが興奮する。
「はは! 実験は成功だ!」
「やはり成長の可能性がある人間の脳を選んだことは間違いではなかった!」
成長の可能性がある人間の脳?子供たちのことか!
「はは! 超興奮する! 苦労して召喚獣やモンスターの素材を集めた甲斐があったぜ!」
そしてこいつがキマイラの素材を集めたわけか。
「さぁ! キマイラちゃん! あいつらをぶっころーーえ?」
暗黒召喚師の体をキマイラの心臓付近にある禍々しい宝石から伸びた触手が貫いていた…そして暗黒召喚師が干からびていく。これは…そういうことか。
「みんな…目をつむれ。見ないほうがいい」
リリーたちが目を瞑る。いい子だ。
「おいおい! なんだよ! これ! こんなの…聞いて…ない。た、助け」
暗黒召喚師はミイラとなり、やがて砂となり、死んだ。散々亜人種や召喚獣を弄んだ奴の最後がこれか。
「バカなやつだ。さぁ、キマイラ。パパの願いを叶えて」
アミソーダロスの首が触手の攻撃受けて飛ぶ。そして触手が体と首を貫き、やがて砂となった。
「ヒ!? ヒィイイイ!? た、助けて! ママ!」
カシムが必死に逃げ出そうとするが壁が邪魔して逃げられない。あの壁は奴等を守っていた訳じゃなかったんだな…獲物を逃がさないために使われていたようだ。
「匕、ヒィイイ! な、何故だ! 何故言うことを聞かない!」
「…当然だろ」
「な、何?」
「お前たちは召喚獣やモンスターたちを弄び過ぎたんだよ。こいつはお前らがしたこと全てを知っている存在だ。逆鱗に触れるのは当然だと思わないか?」
一体どれほど苦しめたか…俺には想像出来ない。ただ言えることはディザスター・キマイラはこいつらを許すことはないだろうということだ。カシムが絶句していると触手に捕まる。
「ヒィイイ! た、助け」
「悪いがそんな余裕はないな。テレポート!」
俺はテレポートで移動するとスカーレットリングで装置を壊し、魔法の指輪と魔法のランプを回収する。きっとこれは役に立つから回収しないといけない。またテレポートを使い、リリーたちの元に戻る。
「もうここには用がない。逃げるぞ。みんな」
『うん!』
「ま、待ってくれ! た、助け! ギャアアアアア!」
カシムはキマイラに食われて死んだ。これが闇落ちした者の末路なのかも知れないな。悪意は悪意を呼び、己に返ってくる。
俺たちが通路を走り、キマイラから逃げる。スピカを選ばなかったのはミスったな。逃げていると瓦礫が落ちてくる。それはイクスが撃ち落としてくれるから大助かりだ。
「タ、タクトお兄ちゃん! 後ろからにゅるにゅるが来ます!」
「あ、イオンちゃんが狙われる!」
「おぞましいこと、言わないで下さい! リリー!」
このままじゃ、逃げ切れない。切り札を使うか?触手が迫る。やむを得ない!
すると天井を突き破り、巨大な腕が触手を潰す。これは!
「あはは! 助けに来たよ! これで助けて貰ったことはチャラだね!」
アラジンとジンだ!
「うるせーぞ! アラジン! おい! ボーッとしていないで早く飛べ! 結界をぶっ壊したから召喚も出来るはずだ!」
「ッ! レギオン召喚!」
俺はスピカを召喚し、恋火を乗せ、ジンが空けてくれた穴から外に出た。
「助かっ…てないか…来るぞ!」
アジトから次々触手が出てきた。
「あの触手に触れるな! 砂にされるぞ! 離れろ!」
全員が触手から距離を取る。
「なにそれ!? 超怖いんだけど! ジン、このまま逃げよう」
すぐに逃げ出すんかい。いや、凄く助かったんだけどな。しかしジンの回答はアラジンの予想外の物だった。
「残念ながらそれは出来ないな。アラジン」
「なんでさ!」
「魔法のランプは今、こいつが持っているからだ」
あ、やっぱりそういう流れになるんだ。取っておいて良かった。
「えぇ!? か、返してよ! ボクのランプ」
「いいぞ」
「あれ? あっさり」
「だが、借りが増えたな。アラジン。どうするつもりだ?」
ジンの言葉にショックを浮かべるアラジン。
「あぁ! もう! 戦うよ! それでいいんでしょ! でもジンが戦ってね!」
「任せろ! と言いたいがこいつは俺にも手に負えんな」
「えぇ!? ジンにも!?」
「俺の力と指輪の奴の力が合わさっているな…その力の影響を受けて、モンスターどもの力が強化されているようだ。そこらの神より強いぞ。こいつ」
神様より強い敵と来たか!知りたくない情報をありがとう!とにかく安全なところまで引くか…
そう考えているとディザスター・キマイラがアジトをぶっ壊し、現れる。そしてディザスター・キマイラは俺を見て、目が光る。
「俺から離れろ! スピカ!」
赤い閃光が俺に放たれるがスピカの幻影で回避する。死ぬかと思った…
「モテモテだな」
「…冗談を言うとは余裕だな」
「冗談じゃないぞ? まぁ、正確には狙っているのはお前が持っている指輪だろうがな」
バレバレか…さて、どうするかな。するとキマイラが移動を開始した。何処に向かっている?
「エリクサーラピスって国を滅ぼしに向かうようだな…」
「何故わかる?」
「あいつからあいつを作った奴等の聞く価値がない怨嗟の声が聞こえるからな。お前も聞いてみるか? ついでに奴に食われたガキどもの声も聞けるぞ」
「断る。大体想像付くからな」
間違いなく気分が悪くなる内容だ。悪いがそれを聞く気分にはなれないな。これでエリクサーラピスに向かうことが確定したか…よし。
『メル。俺だ』
『あ! やっと通信来た! 生きてるの?』
『なんとかな…ルインさんに連絡してくれ。ラスボスの名前はディザスター・キマイラ。強さはそこらの神様より強いレベル。敵の目標はエリクサーラピスだ』
『ちょっと待って……今、伝えたよ。それでカインさんから私たちに依頼が来たよ…時間を稼いで欲しいって』
そう来ますか…こいつの足止めねぇ…やるしか無いよな。
『メルたちは』
『もしかして帰れとか言わないよね?』
『いや、どうやって戦うつもりだよ』
『召喚獣に乗れば戦えるよね? みんなしたことあるみたいだし』
みんなじゃないな…はぁ。こうなったら、メルはテコでも動かないことを知っている。
『わかった…一旦、そっちと合流するよ』
『うん!』
全員集まって相談する。
まず、人が乗ってキマイラに攻撃出来るのが俺はヒクス、ストラ、スピカだ。ダーレーではきついだろう。
後はアルさんがレッサーグリフォン、ワイアームがおり、後は全滅。ホースを持っている人やナンマンゾウを持っている人がいたがキマイラの攻撃にはきついだろう。恐らく攻撃は全て即死だろうからな。
「すぐに攻撃をする組と罠と待ち伏せで攻撃する組に別れるのがいいだろうな」
「それがいいわね」
そこでジンが話す。
「奴を倒すつもりならまず奴の障壁を突破しないとダメージを与えられないぞ」
あの壁か…リリーたちの攻撃でびくともしなかったんだよな。しかし突破できる可能性がある人がいる。
「…鉄心さん。斬れませんか?」
俺の問いにジンが答える。
「無理だ。スキルで斬れる柔な障壁じゃない。俺と魔法の指輪の奴の力も加わっているからな」
「じゃあ、ジンが破ればいいじゃん」
アラジンの言う通りだな。
「僅かだが、俺の力を吸収した奴に俺の攻撃が通用する筈がないだろう。幸い魔神は力の塊だ。守る概念がない」
「認めた! ボクがいつも死ぬのはやっぱりジンのせいじゃないか!」
「…お前は少し黙っていろ。障壁は強化されているがそれほど強くはない。あいつに吸収されていない俺クラスの強力な技なら突破出来るはずだ」
全員が俺を見る。俺はタクマやアロマを見る。二人は激しく首を振る。もう俺がやる流れだな。確かに切り札はある。
「わかった。最初は俺たちが挑むよ。使える切り札を全投入するから、なんとか弱点か何かを見付けてくれ」
「わかったよ」
話し合いの結果、スピカにはメルとトリスタンさん。ヒクスにはシフォンとリサ。ストラには与一さんたち。
アルさんのレッサーグリフォンにはアルさんと鉄心さん、アルさんのワイアームにはレッカ、タクマ、アロマ、カイ、雫と名前を知らない魔法使いさんだ。レッカの推薦だから任せよう。
後のメンバーは罠と待ち伏せの担当になった。指揮は満月さんたちがいれば大丈夫だろう。
「…兄様、これ」
ミライが渡してきたのはMPポーションだった。
「…私はもう使わないし、きっと兄様が使うのが、一番いい」
するとみんなから次々渡される。これ全部一気に飲むの?無理じゃね?まぁ、ありがたく使わせて貰おう。じゃあ、行きますか。
アミソーダロスはギリシャ神話に登場するカーリアの王でキマイラを育てたと言われている人物です。
次回からこの章のラスボス戦となります。




