#344 ジンからの情報と救援要請
火曜日…長かった。深夜だが、ログインするとリープリングだった。
そして冒険者ギルドから玉鋼が届いた報告が来た。後、ヘーパイストスからブランの盾が完成した知らせを受けた。今回は名付けは無しだ。鑑定する。
星霜の盾:レア度9 盾 品質A
重さ:40 耐久値:300 防御力125
追加効果:星光、星の加護、守護、衝撃吸収
星の力を内包した盾。あらゆる状態異常を防ぎ、使い手の守りたい願いに答え、奇跡を起こすと言われている盾。強力な盾なので、使い手を選ぶ。
あの反動は魔法大剣のせいじゃなくて、星晶石のせいだったみたいだな。どれだけやばい素材なんだよ。早速ブランが手にして、使い心地を確かめる。
「素晴らしいです…これならどんな攻撃も防いで見せます!」
「頑張った甲斐がありました。でもリリーさんのような無茶はしないでくださいね? 耐久値が残り僅かのエストオラシオンを見た時は血の気が引きました」
あぁ、あれを見たんだ…いや、修復して貰わないとダメだからいずれは見せるんだけどね。
「因みにリリーさんはセチアさんにずっと正座で怒られてました」
…俺はセーフだよな?ちゃんと止めたし!するとリリーとセチアが来る。リリーの目が虚ろになっているのは気のせいか?
「タクト様? エストオラシオンの件でお話をいいですか?」
「悪い…今は緊急事態なんだ。話は後でちゃんとするから、今は待ってくれ」
「何かあったのですか?」
「砂漠の町のネフェルがモンスターの襲撃を受けた…恐らく意図的な襲撃だ」
これにセチアとブラン、ヘーパイストスが驚いた。
「それは本当なのですか?」
「本当だ。今から確認に向かう。リリー、行くぞ」
「う、うん! 行く!」
するとセチアとブランが立候補した。
「事実かどうか確かめないといけませんので、連れていってください」
信用ないな。だが、許可しよう。
「主よ。わたしも」
「ブランはダメだ。新しい武器を使いたい気持ちは理解できるが、エンジェルの状態で行かせるわけには行かない」
最悪戦闘からスタートの可能性もあるからな。
「…わかりました」
いい子だ。ヘーパイストスにはイオンの氷の剣の製作を依頼した。初めての素材でしかも魔法剣なので、セチアと協議の結果、五日かかるそうだ。
メンバーはリリー、セチア、恋火、ノワ、シンスだ。みんな気になっている筈だからな。
ネフェルに到着すると既に敵の姿はなく、ボロボロの町の姿があった。やり直しはなしか…くそ!
「タクト…」
「…大丈夫だ。過ぎたことは仕方無い。今はやれることをしよう」
俺は町中を見て回ると声を掛けられた。カロさんだ。
「タクト殿! 良かった…ご無事で」
「カロさんもご無事で良かったです」
「はい…でも娘が…奴等に…連れていかれました」
やはりこういう流れになるのか。強制ログアウトさえ無ければ…いや、今は頭を切り替えないと。するとカロさんがお願いをしてくる。
「タクト殿! あなたの強さを見込んでお願いがあります! どうか娘を助けてください! 報酬はなんでもお出しします」
『依頼クエスト『キャラバンの娘を救出せよ』が発生しました』
依頼クエスト『キャラバンの娘を救出せよ』:難易度B-
報酬:キャラバンが保有しているもの。
カロの娘のナジュムを賊から救出せよ。
内容が被っているな…どうやら俺が進めているクエストは色々なルートが存在しているようだ。ただしこれは俺個人の依頼だからギルドの依頼にあった条件は存在していない。とにかくクエストを受けて、情報を聞かないとな。
「頭を上げてください。俺もこのままにするつもりはありません。何か奴等の情報を知りませんか?」
「わかりません…奴等は突然現れ、娘や子供たちを次々攫っていきました。私たちも抵抗しようとしましたが、妙な煙を放つ玉を投げられ、体が動かなくなりました」
麻痺効果がある煙玉か?いや、それよりも…
「ひょっとしてカロさんは犯人を見ましたか?」
「はい。黒ずくめの集団でした…嘘か本当か透明になって逃げたと聞きました。後、襲ってきた化け物を操る人間が複数いたようです」
透明マントに麻痺の煙玉…徹底しているな。更にキメラたちを操る敵がいることが確定した。
「教えてくださり、ありがとうございます。奴等の行方はわかりませんよね?」
「はい…私も娘の行方を知ろうと色々聞いたのですが…」
「俺も情報を集めて見ます」
「お願いします…私も粘ってみます」
俺はカロさんと別れ、ある存在を探す。情報を持っているならあいつしかいない。
そして見つけた…ランプの魔神ジンは初めて会った場所に佇んでいた。まるで俺を待っているようだ。
「な、なんですか…あの人」
セチアはドン引き。リリーたちも警戒をする。やはりあの危険な感じは察知するよな。
「大丈夫だ…二人で話をさせてくれ」
俺は一人でジンに近付く。
「…来たか」
「やはり俺を待っていたんだな」
「あぁ…アラジンの奴が連れていかれたからな。こうするしかない」
やはりアラジンも連れていかれたのか…
「…俺を責めないのか?」
「悪いがそんな無駄なことはしない」
無駄か…確かにそうだな。
「俺はアラジンの場所がわかるんだが、今はわからん。厄介な結界の中にいるんだろうな」
「アジトの場所もわからないのか?」
「生憎わからん。わかることはアラジンが生きてることと俺のランプが敵に渡っているってことだ」
魔法のランプが?ランプの魔神であるジンがここにいるのになぜランプを狙うんだ?しかしアラジンが攫われた理由はわかったな。
「アラジンを狙ったのはまさかそのランプが狙いか?」
「わざわざ奪っているくらいだからな。忌々しい限りだ」
まさか子供をさらっているのはアラジンを探していたからか?いや、それにしても変だな。奴隷の首輪を使う理由になっていない。
さて、どうするか…
「…アラジンや誘拐された子供たち、亜人たちがどうなるか…お前次第だ」
え…俺次第?プレッシャーじゃない…俺ならなんとか出来る?だが、俺には人探しなんて…あ。
「あぁ!」
そうじゃん!俺には人探しが出来るアイテムを持っている。隠されたフェニストを見つけ出したアイテム…追跡の風見鶏だ。
「ふん。気が付いたか…敵の戦力は見たな?」
「あぁ…ダメ元で聞くが戦いには参加してくれないか?」
「それは無理だ…俺が戦うのはアラジンが関係した時だけだ。これでも魔神なんでな」
無理か…しかしいくらアラジンのためとはいえ、ヒントをくれる魔神なんて、俺は知らないな。
「…なんだよ。何か言いたげだな」
「別に~」
「アラジンのようなにやけ面をするな!」
怒られた…しかしおかげで気分が晴れた…これで気持ちよく寝れそうだ。
「いいか? アラジンたちは明日までなら無事の筈だ。それまでに決めろ」
クエストに時間制限が追加された。上等だ。
「あぁ。望み通り決めてやるよ」
「ふん」
俺が戻るとリリーたちに俺を見てくる。
「タクト…さっきと雰囲気が違う」
「…あの人のような人が好みなんですか?」
「ち、違いますよね? タクトお兄ちゃん」
「…怪しい」
何を言っているんだ…この子たちは。するとシンスが頭をポンポン叩いてくる。
「有りだと思うわ」
ないわ!
「バカなことを言っていないで帰るぞ」
「いいの? タクト」
「あぁ。敵のアジトについて、目処がついたからな。今日の夜に仕掛けるぞ」
それを聞いてリリーたち、全員が頷いた。そしてギルドのメンバーにメールを送り、ログアウトした。
『今日の夜にサンドウォール砂漠に入れる人へ。厄介なクエストを手伝って欲しい』
ギルドのクエスト条件にわざわざプレイヤー制限がないなら遠慮なくみんなを頼らせてもらおう。難易度から見てもきっと俺たちだけでは手に負えないだろうからな。