#34 釣り道具調達と魚釣り
まずはクロウさんを見つけた。
「ども」
「おう。どうした?まだ武器は出来上がってないぞ」
「いえ、依頼の追加です。多分簡単なものなので」
「どんなものだ?」
「釣りの重りと針です」
「それは確かに簡単そうだな。気分転換に作ってやるよ。素材は鉱石と蜂の針をくれ」
気分転換?
「わかりました。どうぞ」
俺が素材を渡すと確かにすぐに完成した。お金を支払い、受け取る。だが鑑定したがアイテム表示されない。どうやら全てセットで釣竿というアイテムらしい。
「スキルが上がるとすぐに出来上がるな」
「スキルが上がったんですね」
「おう。こいつのおかげでな」
クロウさんが指指したのはウルフマンの爪だ。だがまだ爪のままだ。
「難物なんですか?」
「あぁ、流石は中ボスのドロップ素材だ。試しに鎚で打ってみたら、鍛冶スキルがレベルアップしたときは面くらったぞ」
どうやらこいつは鍛冶スキルの経験値の塊みたいだ。
「おかげで他の鍛冶師の先を進めそうだ。だがどうやらスキル以外にもいろいろ足りてないみたいでな。悪いがかなり時間がかかりそうだ」
「大丈夫ですよ。いい出来の武器を期待してますね」
「…言うようになったな。いや、こっちが本性か」
「さて、どうでしょう?」
俺は誤魔化してその場を後にする。そしてユグさんの所に向かうとユグさんが人には聞かせられない男らしい声を発していた。
「ぬおぉぉおおおお!」
原因は大樹だ。必死に格闘しているユグさん。鋸で切断しようとしているが一向に進んでいない。大樹強すぎる。やがてスピードが落ちてきて、ユグさんは力尽きた。
「ぜぇ…ぜぇ…あ!?」
ユグさんと目が合った。
「ども」
「い、いらっしゃいませー、何かお求めかな?」
ユグさん、さっきの姿を誤魔化そうと必死だ。
「実は釣竿を作って貰いたくて、そこの大樹で」
それを聞いたユグさんが固まる。だろうね。
「一応聞いておくけど、さっきの見てて言ってるよね?」
「はい」
「鬼!」
ユグさんが叫んだ。だって、大樹の釣竿欲しいからね。
「木工スキルがどんどん上がっていくんだけど、全然手ごたえがないんだよ」
「クロウさんも同じ感じでしたよ」
「そうなんだ…でもこっちのほうが難物な気がするよ」
それはなんでだろう?
「リリーちゃんの闘気だったっけ?あれで強化している状態でやっと折れた木だからね。これ」
…あー、納得。待てよ?それなら--
「リリー、ユグさんのお手伝いしてくれないか?」
「?何をすればいいの?タクト」
「そうだな…木を切るのを手伝うとか?」
「あ!それならいけるかも!」
というわけでリリーとユグさんが共同で木を切ることなった。すると少しずつ切れていく。
「ギコギコ!ギコギコ!」
リリーが楽しそうにしているのが救いだな。そして遂に大樹が切れた。
「やっと、切れたー!っと、えぇ!?レベルアップ!?2も!?」
ただ切っただけでレベルアップしたらしい。すげー。
「さてと、依頼は釣竿だったよね?」
「はい」
「それなら任せておいて!ちゃっちゃと作っちゃうよ」
ユグさんがそういうとしばらくして釣竿が手に入った。お金を支払い、釣竿ゲット。本来ならかなり高いはずだが、リリーが手伝ったので割安になった。ラッキー。出来上がった釣竿本体に次は釣糸作成。
キャタピラーの糸をいくつか重ねて、その周りを蜘蛛の糸で巻き付けていく。これはキャタピラーの糸だけ重ねるだけではダメなのではと思い、蜘蛛の糸の粘着力に期待した結果こういう方法を選んだ。そして少し放置すると糸が乾燥して、硬くなる。その糸の片隅を釣竿の先端に結び合わせる。もう片方の先端の手前に重りを付け、最後に釣針を先端にセット。これでミャク釣り用の釣竿の完成である。
本来なら見印を付けたりするんだが、今回はなし、そもそもナイロン製の糸と、芋虫と蜘蛛の糸との決定的な差があるのだ。そもそもこの糸で釣れるのか疑問だからな。現実ではまず無理だろう。とはいえ鑑定してみる。
ミャク釣りの釣竿:レア度1 道具アイテム 品質F
重さ:10 耐久値:25
魚釣りに必要な道具。竿の素材が大樹なので品位が上がっているが
糸が弱いので、普通の出来栄えとなっている
あー…やはりダメだったか…出来栄えが平凡になってしまった。こればかりは素材がないので仕方ない。
とりあえず釣竿は完成したので、後は図書館で湖の場所を確認して行くだけだ!
そしてやってきました。湖です。いつも狩りしてる方向とは別の方向に進んだせいか道中ヒヨコ、暴れ鶏が大量に出た。リリーの目がお肉に変わり、嬉々として鶏を狩った。おかげで5つもも肉を落としたがささみは無理かな。
さて、まずは釣餌のミミズを出すとリリーとイオンが引く。まぁ、入れ物いっぱいのミミズは見ていい気はしないだろうな。俺は別になんとも思わない人間なのでミミズを取り、針にセット。
レッツ、フィッシング!
しかしやはりと言うか、なかなか釣れない。しかしじっと待つ。釣りの基本は待つこと。忍耐こそ勝負の鍵だとバイトでお世話になった鮮魚店のおっちゃんが言ってた!
だが待てない奴もいる。リリーだ。
「タクト~。暇~」
「だいぶかかりそうだし、虎徹と一緒に昼寝してていいぞ。気持ち良さそうだ」
虎徹はさっきから少し離れたところで寝ている。イオンとグレイが俺の隣でじっと釣糸を見ている。コノハもグレイの背中に乗り、じっと見ている。
「確かに気持ち良さそう…ふわ~…お昼寝してくる~」
そしてリリーが虎徹を枕にお昼寝をする。スカートが捲れたまま寝るんじゃありません!と思ったがイオンがそれに気づき、リリーのスカートを直す。本当にどちらが姉がわからないな。
「まったく世話がかかります…ふわ~…あ」
「はは、気にしなくていいよ。あれを見たら眠くなるのは仕方ないだろ」
「…ですね。あ、あのタクトさん」
「ん?どうかしたか?」
イオンがもじもじしている…トイレかな?いやイオンたちがトイレ行ってる姿を見たことないわけだが。
「タクトさんの隣で寝ていいですか?」
くそ!なんだ!?この可愛い生命体は!答えは決まってます。
「いいよ」
「じゃ、じゃあ…失礼します」
イオンはそういうと俺の膝を枕にして寝息を立て始める。隣じゃなくて、膝枕っすか…イオンさん。
それからのどかな時間が過ぎていく…こういう時間もいいもんだ。そして遂に俺の忍耐の勝利の瞬間が訪れる!
釣竿にわずかな振動。
「来た!」
だがここで問題…膝には可愛い寝顔のイオン。下手に動くと起こしてしまう…どうする俺!?
俺が迷っているとイオンが起きる…あぁ…起こしてしまったか…天国の時間が終わり、ここからは戦闘の時間だ!
俺が釣竿を引いて、釣り上げると先端に魚がいた。やったぜ!
だが釣れたのはアブラハヤだ。簡単にヤマメは釣れないか。しかし釣り上げたので、インフォが来る。
『魚を釣り上げる事に成功しました。釣りスキルが解放されました』
よし、釣りスキルが解放された。使うポイントが…3pt。料理と同じだね。では早速取得してみよう。
名前 タクト 召喚師Lv15
生命力 24
魔力 54
筋力 17
防御力 10
俊敏性 15
器用値 32
スキル
素手Lv5 蹴り技Lv6 杖Lv6 召喚魔術Lv10 錬金Lv4 採掘Lv6 解体Lv7 鑑定Lv7 識別Lv4
風魔法Lv5 火魔法Lv6 土魔法Lv5 水魔法Lv5 闇魔法Lv5 光魔法Lv5 雷魔法Lv2 爆魔法Lv2
木魔法Lv2 氷魔法Lv2 時空魔法Lv2 読書Lv4 料理Lv7 餌付けLv3 釣りLv1
『釣りスキルを取得しました』
これで残りスキルポイントは8pt。
よし、今日の目的達成だな。さて、初の魚料理を作りますか。
天国の時間はきっといつかまた来るだろう。
釣人憧れのシチュエーションを書いてみた。
普段は甘えないイオンの甘え、安心した姿が伝わればいいなと思います。
次回は料理回です。魚を捌くところから書くので少しグロイかもです。
リリー達が初めての魚料理を食べるので、お楽しみに。