#33 休み明けの学校と魚屋さん
月曜日の朝、俺は欠伸をしながら学校に向かう。昨日の夜はデスニア狩りに熱中して寝不足である。
仕方ないんだ。ゲームのログアウト時間を計算すると夜もプレイしないと損をするのだ。そう考えるとやらずにはいられない性分なのだ。
俺は教室に入ると海斗の奴が話しかけてきた。
「今日も随分眠そうだな。バイトはやめたんだろ?」
「あぁ、お前が言ってたゲームを休みの間、ずっとしててな。寝不足だ」
「へー…ん?」
海斗の奴が固まった。他にも何人かいる。なんだ?
「今、なんて言った?」
「だからお前が薦めたゲームをしてて」
「それってエリュシオン・オンラインか?」
「それ以外に勧めてないだろ?」
すると突然海斗が叫んだ。うるさい奴だな。なんだよ。
「なんでお前がやってるの!?薦めた俺がまだしてないのに!」
知らんがな。
「というかなんで初回限定版をお前が持ってるんだよ!」
バイト先の人から貰ったと教えるのはまずいな…ここは
「秘密☆」
「なぜそこでうざい誤魔化し方をする!?いいから聞かせろよ!」
聞きたいのか?仕方ないな。
「召喚師になって、可愛い女の子二人と冒険している」
「ゲームの話じゃ…待て、今、聞き捨てならない言葉が聞こえたぞ」
「おやすみー」
「寝るなー!詳しく聞かせろ!こんちくしょうー!」
朝から元気だね。こいつ。
学校が終わり、自宅に帰る。海斗の奴はチャイムと同時にダッシュしていった。一刻も早くゲームをしたいらしい。先週の金曜日までは意味がわからなかったが、今はわかるというのは不思議なもんだ。
しかし俺は寄り道をしなければならない。食べものがないのだ。スーパーで買い物を済ませ、早速ゲームにログインする。
宿屋で目を覚ます。さて、今日の予定は夜には佳代姉と理恋、未希の三人との約束がある。それ以外はフリーだ。海斗のやつがリリーとイオンを紹介しろとかレベル上げに付き合えとか言ってたが気のせいだ。
とりあえず今日もお肉を焼くところからスタート。そこでモッチに気になることを聞いてみる。
「お魚って手に入りますか?」
「あー…魚は高級なんだよ。手に入れるには釣りスキルか水泳スキルがいるからね。しかも釣りスキルなら釣竿や釣り餌、釣篭を用意しないといけないし、水泳なら銛や網を作らないといけない。それぞれ強いものじゃないと使い物にならないし、ここら辺で釣りが出来るのは若木の森の小さな湖だけって話だよ」
「大変ですね」
でも、やってみる価値はある。恐らく釣竿本体はユグさんが昨日手に入れた大樹が使える。糸はキャタピラーの糸で餌はどうするかな。俺が考えているとモッチさんが笑う。
「言葉と顔が一致してないよ」
「ちょっとチャレンジしてみようかと思いまして」
「だろうね。魚のことなら魚屋に聞くといいよ。湖の場所なら図書館で分かると思うよ」
モッチさんが親切に教えてくれる。
「ありがとうございます」
「お礼はいいよ。タクト君のお魚料理には私も気になるからね」
「では、上手くいったら、お礼にご馳走しますよ」
「やったね!これでこの店に安い絶品の魚料理が出回るかも知れないね」
モッチさんがそういうと店にいた客が反応する。わざと聞こえるように言ったな。モッチさん、策士すぎる…
というわけでお魚屋さんに来てました。イオンがお魚をじっと見ている。お魚を鑑定し、値段を見てみる。
アブラハヤ:レア度1 食材アイテム 品質F-
淡い黄褐色や灰褐色の体に、はっきりとした黒い線が入っている魚。ヤマメ釣りの外道として嫌われる。
値段500G
うん。高いね。現実で一匹500円もしないだろ。そもそも普通は食べない魚だったと記憶している。確か内臓を取って、天ぷらや唐揚げにするとほろ苦い味がすると教わった気がする。
油ねー!
とりあえずお魚や釣り餌について、聞いてみるか。アブラハヤがいるってことはヤマメが狙える可能性が高いからな。
「すみませーん」
「らっしゃい。活きのいいお魚売ってるよ」
「どんなお魚売ってますか?」
「アブラハヤやウグイを売ってるよ」
もうウグイもいるのか…いいね!だけど狙いはあくまでヤマメだ。
「ヤマメはいないんですか?」
「極稀に店に並ぶことはあるぞ?ただヤマメはミャク釣りで釣れるんだが、いかんせん釣るには頑丈な釣竿がいるから滅多に釣れないのさ」
「そうですよね…仕掛けが単純な分、釣るの大変ですよね」
「お!お客さん、ミャク釣り知ってるのかい?」
「一応は…軽い重りだけで釣る方法ですよね?浮きがないから手の感覚だけで釣るとか」
「博識だね。兄ちゃん。その通りさ。高級な釣竿がいらないからここら辺では主流の釣り方さ」
お魚屋さんに興味をもたれた。そろそろしかけるか。
「実は釣りに興味があって、釣りスキルと餌について教えていただけませんか?」
「なるほどな。釣りスキルは魚を釣ると取得出来るぞ。餌についてはうちで売ってるよ」
「商売上手ですね」
「釣りの話をして、俺に興味を持たせた兄ちゃんには負けるよ」
まぁ、バレバレだよね。
「じゃあ、餌を見せてもらっていいですか?」
「はいよ。とはいえ餌はミミズしか扱ってないんだけどよ」
ミミズは箱に入っていた。一パック、150G。魚に比べたら流石に安いな。
「じゃあ、それを二パック下さい」
「毎度あり!」
お金を支払い、受け取るとお魚屋さんに声をかけられる。
「お魚が大量だったら、うちで買取してるからよろしく頼むぜ。ヤマメを期待してる」
「ちゃっかりしてますね。その機会があれば是非」
「おうよ」
お魚屋のおっちゃん。でもねきっと残らないと思うんだ…だって、さっきからじっと魚を見ているイオンがいるから…
さて、次はクロウさんとユグさんに会いに行こう。目指せ釣り道具だ!
遂に魚料理を目指すタクト。
次回は当然道具集めと釣りに挑戦します。お楽しみにです。