#323 烏魔天狗との再戦
時刻は深夜を過ぎているが俺たちがカラスの声がした方に向かうと奴…烏魔天狗が右手に錫杖を持って、木の上にいた。
「やはり来たか…そうでなくては面白くない」
「そっちが誘ったんだ。最初にリリーたちと戦ってもらうぞ」
「カカ! 良いだろう。ただし手加減はせんぞ?」
烏魔天狗が地上に降りるとリリーたちが前に出て、武器を構える。
「リリーたちも全力だよ!」
「あなたの強さは知っています。だからこそ全力で挑ませてもらいます!」
「あたしも武に生きる者として、お手合わせ願います!」
「真っ直ぐで闘志に燃えておるいい目じゃ。来るがいい! 若き英雄の召喚獣たちよ! この烏魔天狗に己の全てを見せてみよ!」
戦闘が始まった。まずはセチアとミールが仕掛ける。
「アローレイン!」
「寄生木!」
セチアが上からアローレインを降らし、ミールが真っ直ぐ寄生木を放つ。上手い攻撃だが、烏魔天狗は動じない。
「ふん!」
腰にあった団扇を左手に持つと団扇を扇ぐ。するとアローレインの矢と寄生木が全て吹き飛ばされる。あんな武器まであったんだな。
するとリリーとイオン、恋火が距離を詰めていた。それを見て、団扇を仕舞い、腰の刀に手を置く。
「光剣!」
「氷刃!」
リリーとイオンが斬りかかろうとした瞬間、攻撃をせずに左右に別れる。二人の影から恋火が居合い斬りの構えで現れ、セチアの魔法矢が飛んでくる。
「邪炎! 居合い斬り!」
「甘い」
烏魔天狗は後ろに下がり、居合い斬りの間合いから離れ、錫杖で矢を恋火に弾く。恋火は見切りで躱し、体勢を整える間に左右からリリーとイオンが襲い掛かる!
「やぁああ!」
「はぁああ!」
「いい連携じゃ…しかしまだぬるい」
リリーの攻撃を錫杖で受け、イオンの攻撃に対して刀を抜き、イオンがぶっ飛ばされる。
「くっ…なんて重い攻撃」
更に錫杖でリリーの攻撃を押し返し、リリーを蹴り飛ばし、斬りかかって来た恋火を錫杖でをぶっ飛ばす。
「きゃ!? むぅ~! 光波動!」
「蒼波動!」
「ブロッサムストーム!」
「邪炎!」
「花粉!」
リリー、イオン、セチア、恋火、ミールの攻撃が殺到する。しかし烏魔天狗は冷静だった。姿が消える。あれはテレポートか!
セチアの背後に現れる。
「発勁」
セチアに烏魔天狗の必殺の拳が命中し、セチアが召喚石に戻される。やはり遠距離攻撃を使う者は先に狙われたか。
「セチア様!? よくもセチア様を! 植物召喚! いでよ! 噛み付き草!」
ミールが噛み付き草を召喚する。噛み付き草は烏魔天狗を狙うが烏魔天狗が錫杖を地面で叩くとあっさり噛み付き草が枯れてしまう。初めてみるものだ。何をした?
「な…」
絶句しているミールに発勁が炸裂し、召喚石に戻る。
「敵を前に思考の停止は死を意味するぞ」
烏魔天狗がリリーたちに武器を構える。
「血醒! やぁああ!」
「氷刃!」
意を決して、恋火が血醒を使い、イオンと共に斬りかかる。
その間にリリーは上空に上がるとリリーの羽が大きくなり、息を吸い込む。
「ドラゴーーッ!?」
ドラゴンブレスを使おうとした瞬間、リリーが止めて、身体を回転させ、烏魔天狗の手刀を躱す。
「ほぅ…危険予知か…」
下を見るとイオンと恋火が烏魔天狗と戦っている。分身か?
「あ…危なかった…よし!」
リリーが両手で持っていた大剣を片手で持つ。
「ほぅ…面白い! 受けて立とう」
「やぁああ!」
リリーが突っ込むと片手で大剣を振るう。しかし両手で力負けしたんだ。片手で通用するはずがない。あっさり刀で弾かれるがそれは本命じゃない。
「光拳!」
「発勁!」
互いの拳がぶつかり、リリーががくりとするが最後の力を振り絞る。
「竜技! ドラゴンテイル!」
リリーの尻尾の一撃が迫る。しかし烏魔天狗に当たると切り株に変わる。
「あえてダメージを受けての一撃…見事じゃ。これは礼じゃ…竜穴!」
リリーの首に烏魔天狗の手刀が軽く当たるとリリーが召喚石に戻る。あんなのでリリーが倒された?ドラゴンブレスの時も手刀だったし、何かのスキルか?
「リリー!? く!」
「強い…こんなに強いなんて…」
俺も改めて格が違うことを認識してしまうな。しかしまだ二人の戦意は残っている。
恋火が斬りかかり、イオンが投擲操作でサポートする。それに対して烏魔天狗は再び錫杖で地面を叩く。すると恋火が浮き上がり、イオンの剣が止まると地面に叩きつけられる。
「あう!?」
「な…く!」
イオンが剣を失ったことで、羽が大きくなり、息を吸い込む。
「ドラゴンブレ」
「竜穴」
ドラゴンブレスを使おうとしたイオンの背後に烏魔天狗は一瞬で移動し、手刀が命中するとイオンが召喚石に戻る。一撃…あの技、ドラゴニュートに特攻の技みたいだな。
しかし恋火が刀を構えて立ち上がる。それをみて、烏魔天狗は刀のみ構える。
「やぁああ!!」
恋火と烏魔天狗の剣擊が続くが結局力の差は歴然だった。恋火が最後に刀を収め、居合い斬りの構えを取る。それを見て、烏魔天狗も構える。
「はぁ…はぁ…やぁああ!」
「「居合い斬り!」」
結局恋火は斬り裂かれ、召喚石に戻った。
烏魔天狗が言う。
「よい仲間に恵まれたの」
「当然だろ。リリーたちを侮辱したら、ぶっ殺すぞ」
「カカカ! それはそれで面白そうじゃが、戦った者に対しての礼節ぐらいは持っておる。では…準備はよいか」
俺はスカーレットリングを抜く。
「宝玉解放!」
スカーレットリングの真の力を解放し、構える。
「あぁ」
「行くぞ!」
「「アクセラレーション!」」
同時に加速し、攻防が繰り広げられる。時に蹴り、時に殴り、フェイントを混ぜつつ、戦闘をしているとアクセラレーションの効果が切れる。
距離を開けると烏魔天狗の姿が消える。それはもう知っている!
「「エクスプロージョン!」」
烏魔天狗は俺の少し前に現れた瞬間、連続詠唱のエクスプロージョンが炸裂する。しかし烏魔天狗にダメージは発生しなかった。ドーム型の光の壁が張られていた。
「ワシに防御結界を使わせるか…その若さでその武と知謀、見事なものじゃ」
「そりゃどうも」
やはりこの烏魔天狗は俺が縮地を防ぎに来ると読んで斬りかかる位置に現れたな。それを読んだ俺の読み勝ちだ。
烏魔天狗が防御結界と呼んだものを解除すると再び来る。今度は剣擊の応酬が続くが、徐々に押される。早く決めないと俺が不利なのバレバレだな。
俺は残した最後の手で勝負に出る。
「「アクセラレーション!」」
アクセラレーションで互いに加速し、打ち合うとアクセラレーションが切れる。すると烏魔天狗が分身し、斬りかかって来る。以前使った技だ。
斬りかかってきた瞬間、俺は魔法を使う。
「イリュージョン!」
「ぬ!」
闇魔法イリュージョンは幻術と同じ効果の魔法だ。これで俺の位置を誤認させた。三人同時攻撃を外させ、本体を狙い斬り裂く。
するとまた烏魔天狗が切り株になり、変わり身の影から烏魔天狗が現れる。ここで負けたら、あの時と同じだ。だが今は違うぞ!
「リリース!」
「甘い!」
烏魔天狗の斬擊が俺の首を刎ねーー俺の姿が歪む。俺が遅延魔法で選択したのはイリュージョンだった。
「はぁああ!」
「ちぃ!」
俺の斬擊を烏魔天狗は身体をひねり、躱そうとするが回避が間に合わず、スカーレットリングの刃が僅かに烏魔天狗に届き、灼熱が発動する。烏魔天狗に初めてダメージを与えた瞬間だった。
「参ったわい…まさかそんな初歩的な魔法を隠しておるとはな。しかも先に見せ、ワシにアクセラレーションが来ると思わせるとは…流石に騙されたわい…ふ!」
烏魔天狗が息を吹き掛けると灼熱が解除される。あれだけで解除とかおかしいだろう…スカーレットリングの宝玉解放も終わってしまった。ここまでだな。
「楽しい時間というものは瞬く間に終わってしまうものじゃな…ワシに斬り傷を与えた褒美じゃ。ワシの本気を見せてやろう」
そういうと烏魔天狗は空に上がり、怪しく紫のオーラを放つ刀を天に掲げる。すると月の光が烏魔天狗に集まる。
「烏魔流奥義! 天魔滅却!」
烏魔天狗が刀を振るうと膨大な紫のオーラが放たれる。
「テレポート!」
一縷の望みをかけてテレポートを発動させるが魔法が発動しなかった。ダメか…テレポートやリターンで逃がしてくれるほど、甘い技じゃないよな…俺はオーラに飲み込まれ、死に戻った。
死に戻った俺たちは温泉を堪能していた。
『あぁ~』
全員が同じリアクションで思わず笑ってしまった。死に戻った後、インフォが来た。
『片手剣スキルのレベルが30に到達しました。片手剣武技【エアリアルセイバー】を取得しました』
『リリーの大剣スキルがレベルが30に到達しました。大剣武技【断刀】を取得しました』
リリーの新しい武技について、サバ缶に聞いてみたところ、斬ることに特化している武技らしい。主にでかい敵に効果を発揮するそうで、盾や硬い敵にも有効な武技らしい。リリーにとっては頼りになる武技かもしれないな。
「負けたな~」
「むぅ…タクト、全然悔しそうじゃない」
そんなことはない。お金は無くなるし、デスペナで作り貯めていた爆弾が無くなり散々だ。それでもスカーレットリングの刃があの烏魔天狗に届いたことは意味がある。
「リリーたちの連携も凄かったぞ。正直驚いた」
「えへへ~みんなで考えたんですよ」
「本当はタクトさんに勝つためのものだったんですけどね」
え?あれを?というか…
「流石に全員の相手はもう無理だぞ?」
『本当に~?』
疑うなよ…流石にあの烏魔天狗のような真似は出来ないぞ。
「はぁ…やはり私は最初に狙われますね…私もタクト様のように剣を覚えるべきでしょうか?」
「気持ちは分かるがやめておけ。向いてない武器を使うとボロが出るぞ? 俺の場合は剣の心得があるからこうなっているだけだ。槍で戦うとリリーたちにも全く歯が立たない自信がある」
「…ではどうすればいいんでしょうか?」
難しい質問だな。そもそも今回の敵にセチアとミールを選んだのが間違いだったんだ。二人がやる気になっていたから採用しただけだからな。本来ならイクスと…ブランを選ぶことになるかな。
ノワの影が烏魔天狗に通用するとは思えないし、リビナとの相性の悪さは前回ではっきりした。リアンと和狐には荷が重過ぎるし、セフォネは…あっさりと不死を無効にされそうだ。となるとブランということになる。
今回の戦闘で烏魔天狗のステータス、スキルの差が明確になったが、それよりも戦闘の経験値が圧倒的に高く感じた。
リリーたちの倒し方を見てもやりなれている感じさえ感じたレベルだ。あの竜穴という技から見ても間違いないだろう。
「基本的にはみんなが守ってくれるのを信じるしかないかな? 闇魔法のイリュージョンを使えば攻撃を一度は躱すことは出来るだろうが」
「次の攻撃に対処出来なければ意味がないですか…」
「そういうことだな。アクセラレーションやテレポート、シフトチェンジとかで逃げの一手があるが、それだと根本的な解決にはならないからな」
するとイオンが抗議してくる。
「そもそもタクトさんが一緒に戦っていれば勝てたんじゃないですか?」
「そこを言われると辛いな…まぁ、俺が参加しても結局は変わらなかったさ…それなら俺にとってもみんなにとってもいい経験をして貰いたかった」
「私にとっては悪夢でしたよ…」
ミールは戦闘タイプじゃないからな。切り札もあっさり対処されたら、それは悪夢に感じるだろう。
「今回俺たちが味わったものはいつか当たるものだ。ミノタウロスにアイスドラゴン、フロッグドラゴンと俺たちが全力を出してやっと勝てるかどうかの敵が出てきた。これからの旅は厳しいものになるだろう」
全員が俺を見る。
「俺は迷いが晴れたよ…俺たちは強くなろう。冒険を続けるために」
リリーたちの試練がどれだけ凄かろうが来るならクリアしてやるだけだ。それがリリーたちの召喚師である俺の決意だ。
『うん(はい)!』
俺たちは決意を新たにして、ログアウトした。また負けたが、俺たちはいつかお前に勝って見せるぜ。烏魔天狗!
名前 タクト 情愛の召喚師Lv9
生命力 76
魔力 162
筋力 60
防御力 40
俊敏性 60
器用値 120
スキル
格闘Lv10→Lv12 蹴り技Lv16→Lv18 杖Lv27 片手剣Lv28→Lv30 槍Lv18 刀Lv12→Lv14
投擲Lv8 高速詠唱Lv35 召喚魔術Lv34 封印魔術Lv18 騎手Lv30
錬金Lv20 採掘Lv24 伐採Lv33 解体Lv39 鑑定Lv29 識別Lv33
疾魔法Lv1 炎魔法Lv3 地魔法Lv2 海魔法Lv2 闇魔法Lv28→Lv29
神聖魔法Lv9 雷魔法Lv30 爆魔法Lv28 木魔法Lv25 氷魔法Lv29
時空魔法Lv40 獣魔魔法Lv2 遅延魔法Lv1→Lv2 連続詠唱Lv1→Lv2
水中行動Lv8 読書Lv13 料理Lv37 餌付けLv8 釣りLv18 シンクロLv16
連携Lv5
名前 リリー ドラゴニュート・クーラLv22
生命力 92
魔力 96
筋力 193
防御力 65
俊敏性 78
器用値 72
スキル
光拳Lv9→Lv10 飛行Lv24→Lv25 片手剣Lv34→Lv35 大剣Lv29→Lv30 危険予知Lv1→Lv2
鎚Lv13 連撃Lv13 錬気Lv30 光魔法Lv6 光波動Lv8 竜技Lv12
竜化Lv6 ドラゴンブレスLv3 聖竜の加護Lv5
名前 イオン ドラゴニュート・エンベロープLv21
生命力 83
魔力 145
筋力 79
防御力 48
俊敏性 184
器用値 124
スキル
二刀流Lv33→Lv34 槍Lv4 投擲操作Lv12→Lv13 飛行Lv13→Lv14 遊泳行動Lv17
氷刃Lv21→Lv23 放電Lv5 連撃Lv13 水魔法Lv17 蒼波動Lv6→Lv7 竜技Lv11
竜化Lv7 ドラゴンブレスLv3 海竜の加護Lv5 料理Lv18
名前 セチア ハイエルフLv19
生命力 57
魔力 170
筋力 52
防御力 36
俊敏性 44
器用値 170
スキル
杖Lv16 魔法弓Lv23→Lv24 鷹の目Lv14→Lv15 射撃Lv15→Lv16 木工Lv17
採取Lv31 調薬Lv12 刻印Lv8 宝石魔術Lv3 宝石細工Lv3
風魔法Lv8 火魔法Lv19 水魔法Lv24 土魔法Lv15 闇魔法Lv5
神聖魔法Lv7 雷魔法Lv5 爆魔法Lv7 木魔法Lv17 氷魔法Lv8
樹魔法Lv13→Lv14 ハイエルフの知識Lv24 精霊召喚Lv7 料理Lv18
名前 恋火 シュラインビーストLv17
生命力 81
魔力 110
筋力 110
防御力 50
俊敏性 129
器用値 80
スキル
刀Lv22→Lv24 二刀流Lv1 風刃Lv10 炎魔法Lv12 邪炎Lv14→Lv15 忌火Lv23
気配察知Lv23 危険予知Lv24→Lv25 霊力Lv5 幻術Lv2 神道魔術Lv5
見切りLv8→Lv9 俊足Lv9→Lv10 妖術Lv2 血醒Lv8→Lv9 料理Lv18 神降ろしLv1
獣化Lv3
名前 ミール ドライアドLv16
生命力 84
魔力 91
筋力 40
防御力 36
俊敏性 75
器用値 80
スキル
土潜伏Lv20 蔓Lv14 俊足Lv8 風魔法Lv5
土魔法Lv10 木魔法Lv7 水魔法Lv7 光合成Lv8
譲渡Lv3 花蜜Lv5 花粉Lv4→Lv5 採取Lv29 植栽Lv15
寄生木Lv11→Lv12 罠設置Lv15 植物召喚Lv2→Lv3