#321 ゴネスの動きと船大工
夕飯を食べてからログインする。ルインさんたちがいたので、少し話を聞いてみた。
どうやら宝探しのほうは危険が無いぶん、ポイントは少なかったようだ。今のところ見つかっているものを合わせると合計ポイントは30000pt。森の中の宝は高ポイントだが、モンスターに襲われるリスクがあるので、結構厳しいという話だ。
それでも宝箱が見つかり次第、取りに行くそうだ。あの森にはフロッグドラゴンにバーバヤーガがいるんだけどね…一応情報を伝えて、無事を祈った。
それでも宝箱からはポイント以外のアイテムが発見されている。それがフィニストの羽根、凪ぎのオーブ、合図の笛というアイテムだそうだ。
凪ぎのオーブは海の状態を凪ぎにするらしい。合図の笛は濃霧の中、味方に場所を教える笛らしい。ルインさんたちも次のイベントは船を使った海でのイベントでほぼ間違いないという考えのようだ。
因みにミュウさんは不満爆発。水着という商売ネタを潰されて怒っていた。イベント専用装備だからイベント以外ではプレイヤーが作った水着のほうが性能がいいとしてもだ。
「デザイン選び放題、追加のものまではやりすぎ!」
と怒っていた。誰かが得をすると損をする人が出るもんだな。後、今回のイベントではほとんどの人が武器、防具を選んでいるそうだ。理由はやはりイベント自体そういうイベントである点ともう一つ。
「タクト君の武器ほどじゃないけど、タクト君に並べるかも知れない武器だから、みんな欲しいのよ」
まぁ、確かに強くはあるもんな。しかし、こうなると俺の危惧が当たりそうな気がしてくる。
「イベントアイテムがなくて大丈夫ですかね? バーバヤーガから役に立つとか言われてましたが」
「実際にイベントをしてみないとわからないわ…武器でも強くはなってるからなんとかなると思いたいところね」
俺にはアイテム不足で大変な目に合う未来が見えますよ。ルインさん…
まぁ、他の人たちを気にしてても仕方無い。今はやれることをやるしかない。とりあえず俺はリリーたちを連れてフリーティア城に向かう。
早速サラ様たちから話を聞く。
「先日、ゴネスの枢機卿から正式な抗議が来ました」
「内容はなんですか?」
「簡単に言うと私たちのしたことは重大な神への反逆行為だ。今すぐジャンヌの身柄の引き渡しと粛正騎士を解放せよ。こんな感じです」
まぁ、ありきたりな内容だな。しかし気になるところがある。
「粛正騎士の解放まで要求してきたんですね」
「俺らもそこが引っ掛かった。ロベールたちの記憶を取り戻されるのを恐れているのが、俺たちの予想だ」
まぁ、そんなところだろうな。どんな方法か知らないが自殺に失敗したことを知って、取り返そうとしてる感じか。
「それでフリーティアはどう回答したんですか?」
「そのような人物や粛正騎士は我が国にはいないと回答しました」
これもよくある回答だな。
「ジャンヌさんは偽名で正式にフリーティアの国民の手続きが済みました。粛正騎士はまだフリーティアに在籍している騎士です。よってこんな回答になりました」
「戦争とかにはなりませんか?」
「それはあり得ません。もし戦争をすればどうなるか向こうも知っているはずですから。しかし小競り合いはあるかも知れません。だからタクト様にも注意をしようと思いました」
まぁ、当事者でもあるからな。なら俺も確認したいことがある。
「もし襲われたら、どうすればいいですか?」
「応戦していただいて結構です。出来れば無力化していただけるとありがたいです」
「わかりました」
許可を貰えて助かった。あいつらは弱かったからなんとかなったが次も大丈夫とは限らないからな。
「それとライヒ帝国に先を越されましたがイクスさんの武器を参考に作った武器が完成しましたよ」
お!マジで!みたいみたい。
サラ姫様が出したのはメカニックな剣だ。鑑定してみる。
魔導剣:レア度6 片手剣 品質C
重さ:35 耐久値:70 攻撃力:20
効果:流した魔力により、効果が異なる。
流した魔力により、属性と効果が変化する剣。
魔導剣となっていた。そして青嵐の剣とほぼ同程度の武器…シフォンに言うのが辛い…
「この武器は魔力を流すとそれに応じて属性が変化する利便性が最大の利点です。ゾンビがくれば銀の武器を集める必要はありません」
よくもまぁ、こんなものを作ったものだ。しかし欠点はある。
「問題は素材ですね…作るのにコストがかかりすぎます。量産には向かない武器です」
これがあるんだよな。俺もイクスの武器作製には苦労している。
「ライヒ帝国は金に物を言わせて作りまくっているけどな」
やはりライヒ帝国は半端ないな。まぁ、それをするだけの価値があるってことだろうな。特にライヒ帝国はゾンビに対処できなかったからこの武器の量産は急務だったのかも知れない。
俺はフリーティア城を後にした。完全に襲われることを予告された感じだが、襲ってくるなら容赦はしない。
俺は一応ルインさんたちにメールで知らせる。小競り合いが起きることは確定したからな。その場合は戦闘許可が出たことも知らせる。
すると返信でユグさんがブルーメンの船大工さんに会いに行きたいそうなので、ルインさんたちと一緒に同行することになった。理由は次のイベントが海なら船を作る必要があるかも知れないからだ。
俺もどうするか真剣に考えたほうが良いのかも知れない。以前大工のおばあちゃんに教えて貰った場所を頼りに探すと発見した。
「すみません」
「ん? 珍しいな。お客さんかい?」
「あ、はい。フリーティアの大工のおばあちゃんの紹介で来た者なのですが」
「おぉ! フリーティアの婆ちゃんの紹介かい! おっと。どうぞ中に入ってくれ」
ナイスガイな人だな。ルインさんたちもこそこそ話している。
『お邪魔します』
中に入ると巨大な作りかけの船があった。スゲー!流石に造船所は見たことない。テンション急上昇だ。
「はは。フリーティアの婆ちゃんが紹介するはずだ。どうやら船が好きみたいだね」
「はい。見ているだけで気持ちが高まりますね」
「話せるね。それで今日は船の依頼かい?」
おっと。本題を忘れるところだった。
「はい。実はマングローブの森で船が必要になりまして、素材はこれで大丈夫ですか?」
俺が檜を出す。
「結構持ってるね。でもマングローブの森なら小型船がいいよ」
ありゃま。なんでだろ?
「川の幅が狭いし、所々岩もある。迷路にもなっている森だから小回りが利く小型船じゃないととてもじゃないが進めないよ」
初耳だ。イベントも気になるが、そういうことなら小型船一択だな。
「わかりました。では小型船の作製をお願いします」
「任せてくれ」
そこでユグさんが話す。
「あ、あの! 彼の船作製を手伝わせてくれませんか?」
「ん? 別に構わないけど、船好きなのかい?」
「はい! 大好きです!」
「そんなこと聞いたことないわよ…」
ルインさんが小声でツッコミを入れていた。
「わかった! じゃあ、一緒に作ろうか。構わないかい?」
「はい。大丈夫です」
ユグさんなら任せて大丈夫だろ。ルインさんたちとはそこで別れた。