#317 セフォネの進化と最強のヴァンパイア
月曜日はまだ運営イベントが続いていたため、ゲームをすることができた。海斗によると今回のクエストは多くのパーティーがクリアできたらしい。
その中にはメルたちもいる。満月さんたちが必殺技でアガレスクロコダイルの攻撃を防ぎきって、クリアしたらしい。流石だね。ただ、攻撃を防いだ後の攻撃で町に被害が出てしまったらしい。
他のパーティーも呪いの解除から挑発をしたみたいだ。完全無傷は今のところいないようで海斗が上機嫌だった。
そしてシフォンたちとイベント報酬を確認する前にイベントのインフォが来る。
『称号『梅雨の村の解放者』を獲得しました』
『職業召喚師のレベルが上がりました。ステータスポイント2ptを獲得しました』
『職業召喚師のレベルが上がりました。スキルポイント1ptを獲得しました』
『杖スキルのレベルが25に到達しました。杖【マジックジャベリン】【レジスト】を取得しました』
『土魔法のレベルが30に到達しました。土魔法【レジストストーン】【アースクェイク】を取得しました』
『土魔法のレベルが30に到達しました。地魔法が取得可能になりました』
『イオンの竜技のレベルが10に到達しました。竜技【ドラゴンテイル】を取得しました』
『セフォネのレベルが30に到達しました。進化を実行します』
『アステルのレベルが20に到達しました。進化が可能です』
称号貰えるんだ。これは後で確認しよう。
全体的に三体の悪魔を倒した割には経験値が少なすぎるな。たぶん参加したNPCが原因だと思うが、いなかったら勝てないし、これはどうしようもないな。とりあえず俺の残りスキルポイントは68ptになった。ステータスポイントはいつも通り魔力にした。
スキルではなんとか土魔法は30になったか。闇は流石に無理だったな。イオンの竜技はリリーと同じか…別のものが来ると思った。この分だとノワも変わらないような気がするな。
そんなことを考えていると突如周囲が暗くなる。これはセフォネの試練だな。いきなりだと流石に怖いな。
「ふふ。心にもないことを考えるものだな。まこと人は面白い生き物じゃ」
大人の女性の声がした。しかし暗くてどこにいるかわからない。声や気配からこっちだとは思うが…
「あぁ。見えておらんのか。ほれ」
指を鳴らす音がすると周りが明るくなる。どうやら俺がいる場所はお城の中だったようだ。
そして玉座には漆黒のドレスを着た大人の女性の姿があった。
「見えるようになったな? まずは名乗るとしよう。私はオリジンヴァンパイア。この世に誕生した最初のヴァンパイアにして、最強のヴァンパイアだ」
つまりカインさんが全力を出しても勝てないヴァンパイアさんがこの人ってことか。
「まぁ、殺すのは不可能な存在であることは確かだな。この世から闇が無くなれば、あるいは死ぬことが出来るかも知れぬが世界が無くなろうとも闇は必ず残るものだからな」
あぁ。そういう意味で殺すのが不可能な存在なのか…それは無理だな。納得した。
「さて、本題に移ろうか…まずヴァンパイアの進化について説明しよう。とはいっても簡単に言うとヴァンパイアの進化は私に近付くことを意味する」
「つまりセフォネは進化するにつれて、より完璧な不死に近付くということですか?」
「その通りだ。人間であるお主ならそれがどれだけ重いことか理解しているな?」
不死は人類の夢であり、色んな人がその夢を追い求めた。死にたくない。永遠に生きたいと…俺も両親を亡くし、死というものを考えた。
だからこそ理解している。死は救済装置だ。嫌なことがあれば死にたくなる。死んだら、どうなるか諸説あるが俺は意識を失った状態が限りなく死に近いと思っている。
真っ暗になり、それで終わりだ。意識なんてあるはずがなく、嫌なこと、辛いことなどから解放される。それが死なんだと思う。
逆に完全な不老不死はその救済装置を放棄した存在なんだと思う。どれだけ嫌なこと、辛いこと、痛いこと、悲しいことがあっても死ぬことが出来ない存在。それが不死だ。
「その通りだ。今はまだ良いがいずれその壁にぶつかることになる。私がそうだったし、ヴァンパイアたちは皆、その壁にぶつかり苦悩した。お前も召喚師ならその壁に当たることになるだろう。覚悟しておくことだ。では、進化をさせるか」
…あれ?
「試練とかないのですか?」
「龍王たちと同じにするな。私は弄ぶ趣味はない。そもそも私に近付くこと自体が試練なのだ。用意する必要がない」
なるほど…って、ちょっと待って。俺、龍王たちに弄ばれてるの?納得行かないぞ!
「その意見は龍王たちに言ってやれ。尤もどうなっても私は知らなんがな」
酷い!教えといて責任から逃げるなんて!
「長く生きるためのスキルだ」
どや顔で言うな!そんなスキル、絶対存在してないね!
「まぁ、あやつらにはあやつらなりの理由がある…とだけ言っておくか」
「え?」
「セフォネの進化を終わらせたぞ。ではな」
「ちょ、待って」
何か重要なことを言った気がするんだけど!その理由を教えてくれ!
暗闇に落とされて気がつくと自室…ひでぇ。
すると俺のベッドにセフォネが落ちてきた。
「ぬぉ!? なんじゃあ!? 力が沸き上がってきたと思ったら、真っ暗じゃ!」
そりゃ布団に顔を押し付けていたら、真っ暗だろうよ。
「落ち着け。セフォネ。顔を布団に押し付けているだけだ」
「…何」
セフォネが布団から顔を出す。びっくりするほど、変化が無いな…まぁ、服装はちょっと変化しているぐらいか…しかし見た目に騙されたらいけないとインフォが知らせる。
『セフォネの進化が完了しました。影召喚の効果が上昇しました』
『鎌スキルを獲得しました。鎌武技【スライス】を取得しました』
『譲渡スキルを獲得しました』
『蘇生スキルを獲得しました』
『闇波動スキルを獲得しました』
名前 セフォネ ヴァンパイアLv30→ヴァンパイアプリンセスLv1
生命力 54→74
魔力 66→91
筋力 45→65
防御力 30→45
俊敏性 40→60
器用値 64→84
スキル
鎌Lv1 吸血Lv10 夜目Lv14→Lv16 影潜伏Lv14 影操作Lv6 影召喚Lv10
隠密Lv12 暗黒魔法Lv6→Lv7 譲渡Lv1 蘇生Lv1 夜不死Lv13→Lv14
呪滅封印Lv3→Lv4 闇波動Lv1
効果上昇なんてあるんだ。あの蝙蝠擬きがどうなるんだろう?地下の訓練場でセフォネの力を確認する。
まずは進化した影召喚。
「おぉ! たくさん召喚出来るようになったのじゃ!」
蝙蝠擬きが10匹いる。こいつらが寄ってたかって襲ってくるわけだ。ウザいだろうな。
しかしウザさは止まらない。その蝙蝠擬き、倒しても蘇生するようになった。更に蝙蝠擬きが吸血するとセフォネの生命力、魔力が回復した。譲渡の力みたいだな。
もちろん自分から他の者に譲渡することも出来、蘇生もセフォネに適応するため、昼でも一回は死ねるようになった。
結論から言うとウザさに拍車がかかったな。敵には回したくないタイプだ。火力技の闇波動も覚えたし、強くなったな。
「ふっふっふ。これでまた一歩魔王に近付いたのじゃ!」
セフォネは喜んでいるようだ。オリジンヴァンパイアが言っていたような未来が本当に来るんだろうか?俺は真剣にそう思った。
せっかく訓練場に来たので、アステルの進化もすることにした。
名前 アステル フェアリーLv20→ニュンペーLv1
生命力 35→55
魔力 71→91
筋力 22→32
防御力 22→27
俊敏性 66→81
器用値 42→62
スキル
飛行Lv8 竪琴Lv1 舞踊Lv3 魅了鱗粉Lv2 風魔法Lv13
木魔法Lv10 幻術Lv5
進化したアステルはルーナと同じ姿になった。しかし顔つきが少し違う気がするな。するとアステルがくるりと回転し、話してくる。
「どうですか? タクトパパ。可愛くなりましたか?」
名前とパパを組み合わせて来たか!おっとそうじゃないな。
「あぁ。可愛くなったな」
「ありがとうございます!」
アステルが抱きついてくる。
しかしこれでユニコーンの条件が整ったことになる。それはアステルとリキュールとの別れを意味していた。
するとアステルから衝撃の一言が出る。
「タクトパパ…あたしとリキュールさんはもう覚悟は出来ています。でも、今日だけでいいので、この姿で甘えさせてください」
「あぁ…わかった」
他の召喚獣でもそうだったがアステルもリキュールも全てわかっていたんだな。俺に出来ることはアステルのほんの小さな願いを叶えてあげることだけだった。