#313 アガレス作戦会議
赤い花の女の子に介抱されているフィニスト王子を加えて、アガレスについて話す。
「アガレスにはアガレス本人と使い魔の鷹とワニがいる。村を襲うなら必ずそいつらを使ってくるはずさね」
やはりそう来るよな。まだワニは出て来ていないようだが、これでワニの参加が決定したな。するとフィニスト王子が話す。
「アガレスホークの相手は僕がしよう。婚約者の仇だ。必ず仕留めて見せる」
「ならあたしらはアガレス本体の相手をしようかね。あの老いぼれ悪魔に魔女の恐ろしさを教えてやろうじゃないか」
おぉ~!すごい助かる。ん?ということは俺たちの相手はワニか。
「坊やたちはワニの相手を頼むよ」
「はい」
「ワニ相手なら楽勝だな」
アーレイがそう言うとバーバヤーガが笑う。
「ふぇふぇ。それは心強いねぇ。ある意味一番厄介なのがあのワニなのにね…」
『え……』
ワニが一番厄介なの?
「あの…大きさとかわかりますか?」
「残念ながらわからないねぇ。ただ村を簡単に潰せる力は間違いなくあるよ」
それって、もうめちゃくちゃでかいワニじゃん。そして間違いなく強いだろうな。どうするかな。
「ふぇふぇ。安心しな坊やたち。アガレスを倒すにはあたしらの切り札を使うしかない。ただ切り札の発動には時間がかかるんだよ」
「つまり俺たちの役目はその時間までワニを足止めすればいいんですね?」
「そういうことさね。それと切り札とは別でサポートもしてあげるよ。どうだい? 出来そうかい?」
時間稼ぎとサポート有りまで難易度を落としてくれたんだ。なんとかしないとな。ただサポートが気になる。
「サポートとはなんでしょうか?」
「まずはこの天気だね。一時的だけど晴れにしてあげるよ。これであいつらは幾分か弱くなるはずさ」
天気を晴れにしてくれるのか。それなら恋火たちも参加可能だな。
「それと弱体化もしてあげるよ。それ以上は無理かねぇ」
いや、十分だろう。ここまでお膳立てされたら、やるしかない。
「わかりました。やってみます」
「タクト!? おい! 出来るのか?」
「このままじゃきついだろうな。アガレスが現れる場所とかわかりますか?」
「ふぇふぇ。なるほどねぇ…ちょっと待ちな」
バーバヤーガが水晶を取り出す。未来視の水晶かな?
「うむ…アガレスホークは直接村を狙うみたいだね」
空を飛ぶモンスターなら真っ先に来るよな。フィニスト王子はやる気満々だ。
「アガレスとワニはこことは反対側から来るみたいだよ」
マジか…危なかった。ここに罠設置していたぞ。
「ありがとうございます。早速準備してきます」
「いい心掛けさね。頼んだよ。あたしらも準備するとしようかね。その前にフィニスト王子とその女の子は村に送ってやるといい」
「すまないが頼む」
俺たちはフィニスト王子と赤い花の女の子と共に村に帰った。
「俺たちはこのあとどうする?」
「俺は迎撃準備をするよ。三人はポイント稼ぎをしたら、どうだ?」
「いいの?」
「元々そういう話だったからな。俺にも得があるし、大丈夫さ」
俺たちはログアウトし、昼飯を食べる。そこでレベルのことを海斗に聞くと無事にレベルアップしているようだ。このままだとボス戦でひょっとしたら、上級職になれるかも知れないとの話だ。改めて感謝された。
というわけでお昼はシフォンたちはポイント稼ぎとレベル上げ。俺はミール、アラネアに頼み、罠を設置する。バーバヤーガが正確な場所を教えてくれたから助かった。
目的が時間稼ぎなら罠が多いほど、有利だが、今回はサイズがでかい敵なので、落とし穴の精度を高めることにした。いつもより広く、深い落とし穴を作っていく。
セチアと共にエントラストを使用し、更にMPポーションも使い、なんとか罠設置は完了した。後はみんなを召喚し、シフォンたちと作戦会議をする。
「まず最初はアラネアとミールが設置した罠で時間稼ぎをする」
「落とし穴だね」
「あぁ。ただ今回は相手のサイズがでかいらしいから、特大の落とし穴のみだ。これでなんとか時間を稼がないといけない」
そして使えそうなアイテムを出すとその内の一つにアーレイが興味を持つ。
「…そんなことが出来るのか?」
「出来るはずだ。今回はボスに与えたダメージがそのままポイントになるはずだし、使えると思う。ただ、タクトのだから使うかどうか決めてくれ」
「確かに貴重なものだけど生産は出来るからアーレイに任せるよ」
「悪いな。これを見たら、どうしても作ってみたくてな」
アーレイに素材を渡す。これでポイントがたくさん貰えるなら安いものだ。
というわけでアーレイ考案の新兵器も合わせて、俺が考えた作戦を説明すると三人は引く。
「えげつない…」
「タクトは本当に容赦ないわよね…」
「ごめんね。ワニさん…」
シフォンはワニに謝る始末だ。仕方ないだろ…どれだけ強いかわからないんだから手加減なんて出来るはずがない。
「それじゃあ、爆弾を」
「それなら持ってるから大丈夫だぞ」
「あたしたちも買ってあるわ」
ありゃ。作り損か…いや、いつか使うときが来るだろう。話によると錬金術師や生産職の間で爆弾競争が発生しているそうだ。
今回は作ったがそういうことなら専門家から買ったほうが良さそうだな。
ミランダが話す。
「タクトの作戦なら大事なのはタイミングね」
「あぁ。中々難しいし、危険だと思うが頼めるか?」
「召喚獣に乗せて貰えるんだろ? 任せとけ。見せてやるぜ。俺の魔球」
「わ、私も頑張る!」
流石に俺はリリーたちの指示出しで手一杯だ。これはシフォンたちにしか頼めない。
「もし落とし穴を突破されたら、どうするの?」
「村に被害が出ないように闘うしかないな。一応保険も用意するが、その場合はガチバトルになる。いいな? みんな」
リリーたちが返事をする…俺の頭の中にどうしても成長した時のリリーとイオンの姿が過る。出来ればドラゴンブレスを使わずに終わらせないと…しかしどうしても使わないといけないときは使わないとな。
するとセチアが言ってくる。
「タクト様、今回は時間稼ぎをすればいいんですよね?」
「そうだが、どうかしたのか?」
「森での時間稼ぎなら私に任せてくれませんか?」
「…出来るのか?」
俺の質問にセチアは頷く。
「はい。クランリープの真の力を使えば必ず」
その手があったか。どんな力かは知らないがセチアがそういうなら信じてみよう。
「わかった。もしもの時は頼らせてもらうぞ」
「はい! ご期待に応えてみせます!」
「シフォンたちも可能ならサポートしてくれ」
「任せて」
これで作戦会議は終わり。後は料理作って、戦闘に備えるだけだ。