#307 地獄の宰相とイベント説明
翌朝、海斗の奴が朝早くに来て、叩き起こされた。
「そんなに夕飯を蛙肉にしてほしいのか? お前は!」
「悪かった! だから裸締め解いてくれ! 極まってる! 本気で極まってるから! 後、蛙肉もやめてくれ!」
ったく。朝から無駄な体力を使わせる。
「しかし本当に一軒家で一人暮らしをしてたんだな」
「まぁ、普通はこんなことにはならないだろうな。部屋は2階に空き部屋があるからそこでいいか? 布団ぐらいなら出せるぞ」
「マジで!? 助かる。正直ソファーか地べたで寝るつもりでいた」
流石にそんなことはさせられない。
「あ、これ。お袋からだ。こっちはコンビニで買ってきた菓子とジュースな」
「…お前、こんなこと出来るやつだったんだな」
「お前の中で俺はどんだけ評価低いんだよ!」
だって、海斗だし。今日と明日は雨だな。
ゲームにログインするとアーレイが現れる。
早速昨日のことを話すと凄い羨ましそうにされた。アーレイ曰くゲームでジャンヌは可愛いキャラなのは決まっていることらしい。決まってはいないだろう。
それからジャンヌについて意見を交わしたのち、NPCの話になる。
「タクトはどれだけ有名NPCに出会ってるんだ?」
「ヘーパイストス、レギンレイヴ、ヘリヤ、ヒポクラテス、オリヴィエ、ダルタニャン、ジャンヌになるかな?ドォルジナスとも多分一度会ってるよ」
「やっぱりダントツに多いな」
ダントツに多いということは他にも登場しているみたいだな。
「ライヒで確認されたのはローラン、エウペモスだ。ローランは騎士団長でエウペモスは港町にいたみたいだな」
ローランはデュランダルで有名な英雄だ。オリヴィエとは戦友のはずだが、このゲームでは違うみたいだな。
エウペモスはアルゴナウタイの一人でエウロペとポセイドンの子だったはず。逸話については知らない。
「ワントワークだと大富豪でクベーラっていうのが確認されている」
インド神話で北方の守護神だ。神々がナーガから奪い返した財宝を守護している神様だな。大富豪なのは当然だろう。
「ヴェインリーフには確認されていないらしいな」
「元々はヘーパイストスの出身地だからな」
「そういえばそうだったな。他にも仲間になるNPCはちらほら出てきているらしいぞ」
なるほどね。しかし誰も来ないな。そういえば今回持ち物制限がないから料理を作っておこうかな。
もし誰か来たら、アーレイに説明をお願いした。
料理や爆弾を作っていると続々、みんなが集まり出す。ルインさんからアイテムを買い、みんな装備を確認している。
ミュウさんはギリギリまで生産していたらしい。俺も和狐から耐水の蛇靴を新たに2足貰い、和狐とセフォネに渡した。
その後、お昼前にログアウトし、海斗のお袋さんからいただいた物を食べようとしたら、手紙が入っていた。
俺宛かと思い、見るとどうやら違うみたいだ。海斗に手紙を見せる。
『ゲームばかりして、友達に迷惑をかけるんじゃないよ』
どうやらバレバレだったらしい。いや、いつもゲームしていたら、バレて当然かも知れない。
因みにいただいた物は肉じゃがだった。美味でした。
そしていよいよ時間となり、イベントが始まった。
強制転移された場所は村だった。ここが梅雨の村ということになるんだろうな。
するとアーレイたちも次々現れる。まずは村で情報集めをしようとしたとき、俺たちの背後から突如歪な笑い声が聞こえた。
笑い声をしたほうを見ると奇妙に曲がった3つの角がある仮面を被ったピエロがいた。もう嫌な予感しかしない。俺の予想が正しければこいつはラスボス戦前の中ボスで出てくるような敵だ。
「悪魔か?」
「はい。私の名はルキフゲ・ロフォカレと申します。長いので、ルキフグスとお呼び下さい」
ルキフゲ・ロフォカレは大奥義書に登場する悪魔だ。地獄の支配者であるルシファー、ベルゼビュート、アスタロトの次に力がある悪魔だ。何せ地獄の宰相、首相の悪魔だ。
更に言うと大奥義書はルキフゲ・ロフォカレの召喚方法が書かれており、ルキフゲ・ロフォカレの召喚がこの魔法書の真骨頂と言われているそうだ。
そんな悪魔が話し出す。
「まず、この度は魔王バエル様が用意したお遊びにご参加下さりありがとうございます」
魔王バエルにお遊びだと?
「どういうことだ?」
「はい。ご説明いたしますとこの度皆様をこの村に招待したのは魔王バエル様でございます。この時期は魔王バエル様が最も力を増す時期なので、人間と遊ぶことにしたとのことです」
軽いな…魔王バエル。
「今回は魔王バエル様の配下のモンスターや悪魔がいます。皆さまには彼らと遊んでいただきます。もし彼らを討伐出来たなら、この村を魔王バエル様の支配から解放するとのことです」
ん?ということはこの村はまさか…
「まさかここは暗黒大陸なのか?」
俺の問いにルキフグスが笑む。
「ふふ。流石は魔王アスタロト様が注目している人間ですね。ご推察の通り、ここは暗黒大陸でございます。この意味はもうお分かりですね?」
つまりこの村を解放出来れば、暗黒大陸に入ることが出来る。これはでかいな。
「あぁ。一応聞くがあんたはこの遊びには参加しないのか?」
「ご安心ください。参加いたしません。というより忙しくて出来ないが正しいですね。こう見えてこの大陸の財政を管理しているもので魔王たちと違って遊ぶ時間などないのですよ」
「そのわりにはわざわざ説明するんだな」
「これも仕事なのでね。皆様の奮闘に期待いたします。あぁ、そうそう。戦う気がない人のために、この村と森に宝箱を用意いたしました。森に入ると当然狙われますから気をつけてください。では、どの遊びをするのかお好きな方を選んでからお楽しみください」
そういうとルキフグスは消えた。思わぬ大物が出てきたがとりあえず参加はしないなら助かった。そしてルインさんの読みは的中だな。宝探しが生産職などのために用意された要素というわけか。インフォが来る。
『戦闘、宝探し。どちらをするか選択して下さい』
シフォンたちに一応確認するが当然戦闘を選択する。するとさっきのやり取りについて、シフォンが聞いてくる。
「えーっと、今のタクト君はどう考えているのかな?」
「わかったことはこの場所を解放出来たら、海を渡って暗黒大陸に行くリスクが無くなるってことだな。更に今回は魔王バエルは出てこず、次回のイベントで登場する可能性が高いということだな」
今回のが、お遊びというなら次回が本命とみて、いいだろう。
「ま、あの口振りならそういうことになるわね。後、あんたがアスタロトに目をつけられているということはアスタロトは生きているということも間違いなさそうね」
そういうことだな。さてと…
「じゃあ、改めて村の情報集めをするか」
3人が意外な顔をする。
「ちょっと待て。もう情報貰ったし、さっさと狩りにいった方がいいんじゃないか?」
「それもそうだが、さっきの話で結局村の話は魔王バエルに支配されている情報しか貰っていない。そこが引っ掛かってな」
「確かに変ね…どうする? シフォン」
「え、えと…じゃあ、私たちも情報集めをしようか」
というわけで全員で別れて情報収集をする。
わかったことは村名はドーシチ村。ここは魔王バエルに支配されており、年中雨が降り続ける村なんだそうだ。それと宿屋を見つけたぐらいだな。
全員で集まるとやはり同じ情報だ。これは読みが外れたかな?しかし気になることがある。
「なんでお前は泥だらけなんだよ」
「…赤い花を持った女の子にぶつかって、転んだ」
「変態」
「言うと思ったよ! 言っとくが押し倒していないからな! それどころか完全スルーされたんだからな!」
謝りもされなかったのか…哀れな。とりあえず情報収集はこのぐらいにして、とりあえずポイント稼ぎに行きますか。