#301 梅雨イベントメンバー決定
夜、ゲームにログインして、みんなとイベントについて話し合う。
やはり召喚師はソロや二人が多いみたいだ。
普通のプレイヤーはメルたち、満月さんたち、与一さんたち、火影さんたち、トリスタンさんを含めたフリーティアの有志が組むことになった。
「タクト君はどうするつもりかしら?」
「ソロでやろうかと思ってます」
「攻略しちゃえると思えてしまうのが、タクト君よね」
全員が頷く。俺だって絶対攻略出来る訳じゃない…アスタロトにはやられているからな。
「タクト、枠があるなら入れてくれないか?」
アーレイが相談をしてきた。
「別に構わないが、どうしたんだ?」
「いや、情けないがこのギルドで俺って弱いだろ? 流石にこれ以上、レベル差があると肩身が狭くてな…イベント報酬から何か好きなの渡すから組んでくれないか?」
お!海斗にしては気が利くな。それはかなりの好条件な気がする。しかしそれだけヤバい状況なんだな。
「俺は別にいいぞ?」
「よっしゃ! 決まりだな!」
海斗がガッツポーズを取るとシフォンたちも同じ悩みを抱えているようだ。海斗と同じ条件でパーティーを組むことになった。クラスメイトパーティーだな。
俺はルインさんに聞く。
「ルインさんたちはどうするつもりですか?」
「私たちは今回役に立たないわ。製作イベントって、はっきり言って生産職にとっては喜ばれるイベントではないのよ。出来ることと言えばイベントに役立つアイテムや装備を売ることだけね」
「HPポーションもMPポーションもよく売れているんですよ」
「あたしも稼ぎ時だね。防水の靴の注文がもう既に来ているからね」
ほう。そんなものがあるのか…気になる。その装備のことは後で聞くことにして、俺にはある懸念を話す。
「今回のイベントって、大規模イベント前の大規模イベントに有利になる装備が配られるイベントですよね?」
「その認識でいいと思うけど、どうかしたのかしら?」
「いや、報酬の中に大規模イベント用の生産職が有利になるものがありそうな気がしまして…」
「それは…今までの事を考えるとあり得そうではあるけど…たぶん隠し要素があると書いてあったから生産職や初心者用のクエがあると睨んでるわ」
あぁ。あれはそういう意味か…俺はてっきり隠しボスが出てくるとか何かあると思った。
「だから今回は別行動ね。もちろん、全員でサポートするわ」
『お願いします』
「早速だけど、今のうちにナール湿地に行ったほうがいいわ」
「ナール湿地にですか?」
なんでだろう?するとミュウさんが教えてくれた。
「ナール湿地にいるアナコンダやカイマンから防水効果がある素材がゲット出来るんだよ。さっき言った防水の靴はオススメだよ。ナール湿地で大活躍する装備だからね。きっと今回のイベントでも活躍するはずだよ」
どういうことだろう?
「ナール湿地では靴に水が入って、重くなったりしたそうだよ。他にも泥沼にはまって動けなくなったとか報告されているから、装備を整えたほうがいいよ」
フィールドの変化以外の要素はこれか…確かにこれは対策を取ったほうが良さそうだ。ただこれは湿地の時に発生したもので雨の時に発生するかは不明ということだ。しかし同様の可能性がある可能性は高いだろうな。
「どうする買う? 早くしないと売り切れになるよ」
うーん…それなら和狐もいるし、素材集めをするかな。流石に全員分は無理だが、俺たちにとってそこまで重要な装備じゃない。何せ靴を装備出来るのは亜人種でしかも亜人種のほとんどは空を飛べるからな。それを告げるとミュウさんも了解した。
ミュウさんからしたら、他の人に売ったほうが儲けになるからな。アーレイたちに聞くと防水の靴は獲得済みでボスも攻略済みという話だ。詳しい話は学校で聞けばいいな。
ミュウさんからの情報で防水の靴はアナコンダの皮がいいらしい。素材も大きいらしく、コスト面でもいい素材みたいだ。カイマンの皮でも作ることは出来るようだが、どちらかというと防具よりの素材という話だ。
それからルインさんから牛玉について、続報だ。
「牛玉の件は引き受けてくれるそうよ。ただ物が物だけに時間と費用は掛かるらしいわ。イベントには間に合わないそうよ」
「初めての素材ですし、そうなりますよね。お金と時間については大丈夫ですと伝えてください」
「わかったわ」
あ、それと新素材があるんだった。みんなにまず砂漠蠍の殻を見せる。
「これは俺たちなら誰でも欲しがる素材だぞ」
「うん…完全に鎧の素材だよ。これ。これはサンドウォール砂漠を狙ったほうがいいかな?」
満月さんが欲しがり、メルが話す。俺は疑問を口にする。
「グランドキャニオンのような新エリアはダメだったのか?」
「ホークバレーのことですね…現状厳しいです。ワイバーンやガーゴイルの大群に襲われまして。空中に拉致されて、落とされたりするんです」
「仲間を救出しても地面に叩きつけられて、また捕まりの繰り返しさ。恐竜映画の体験が出来るよ」
ホークバレーって言うんだ…与一さんとレッカが挑んだんだな。話からしてプテラノドンに襲われている感じになるのか。それは辛い。今度は砂漠蠍の毒針だ。
「これは大きさから弓ではなさそうですね」
与一さんがそういうとトリスタンさんが話す。
「これは長弓かクロスボウの素材だと思うわ。私の猟師のスキルにあるのよ」
おぉ…猟師っぽい。長弓は通常の弓より大きいのが特徴だ。大きい分、射程と火力が通常の弓より遥かに高い。その分、長弓を引く力がないと扱えず、また連射性能では劣る。まぁ、連射スキルや武技があるからあまり関係ないのかも知れない。
クロスボウは日本では弩やボウガンと呼んだほうが知れられているかも知れない。矢を板ばねの力で弦により発射する武器だ。スイスで有名な伝説の英雄ウィリアム・テルが使った武器として有名だな。
「…上位の弓の素材か銃士だと使えないし、本当に悩みますね」
「私は銃も選べるから、多分銃士の進化先も同じだと思うわ」
「…そうなんですね。それなら私たちは予定通り銃士の先を狙いますね」
与一さんたちの元ネタは弓使いだけどね!そしてケーゴもやはり興味を持った。槍の素材でも使えると思ったんだな。まぁ、全員で現状ではやばい武器の素材という認識で終わった。致死毒だもんな。
ただ問題はサンドウォール砂漠に入る条件なんだよな。マタタビがどこかにあるはずなんだが、エルフに聞きにいくことはできないし、探すしかないな。可能性として高そうなのはイエローオッサの森だろう。その推理を元にみんな探しているという話だ。みんなの信頼が辛い。
とりあえず、セチアとヘーパイストスに槍を頼んでおく。最も優先はリリーの武器だから出来上がるのは当分先だろうな。
これで会議は終わり。というわけで今回のクエストのメンバーは俺のメンバーが俺も合わせて38人。アーレイたち3人の計41人で挑むことが決まった。