#288 タクトVS暗黒召喚師兄弟
タイトル通りのタクトと暗黒召喚師との戦闘回です。グロい描写があるので、苦手な方はご注意ください。
ご飯を食べ終わり、ゲームにログインする。俺はコロッセオに入り、控え室で神経を集中させ、心に問いかける。
暗黒召喚師たちは俺に何をした?
俺からリリーたちを奪おうとした。
許せるか?
絶対に許せない。
ならばどうする?
リリーたちに手を出せばどうなるか忘れたならまた教えてやる!
そうだ!教えてやれ。何度でも!
俺の逆鱗に触れたらどうなるか教えてやれ!
時間が来て、俺はリリーと共に入場する。
「お前が幼女サモナーか?」
「兄貴、やっぱりこいつ大したこと無さそうだぜ」
兄貴?こいつら兄弟か?まぁ、どうでもいいや。俺とリリーが前に出る。
「交互に戦うんだったな。最初はどっちからだ?」
「俺が相手だ。へへへ」
最初はお決まりのように弟が相手か…あの顔や最初に立候補したところから考えてリリーを指名したのはこいつだな。この感じからやはりリリーが単純に欲しくて挑んできたみたいだな。
審判がルールの説明をする。その決闘のルールは暗黒召喚師の指定したルールではなく、前回と同じルールだ。
「な!? どういうことだ!? 俺たちが指示したルールと違うぞ!?」
「何を言っているのかわかりませんね。説明は以上です」
暗黒召喚師の言葉を審判がスルーする。やはりライヒ帝国と繋がっていたみたいだな。だが、これでガチバトルだ。
「このルールの通りなら俺がリリーを使う必要は無いな。悪いがリリーを代えさせて貰うぞ」
俺はリリーを代えてイクスを召喚する。
「な!? お前! 約束を破るのか!?」
「あぁ。お前らが守ろうとしない約束にこっちが付き合う必要がないだろ?」
「く…」
すると審判が暗黒召喚師に召喚を指示される。ルールではタッグバトルで相手がいなければ負けになる。
「じょ、上等だ! 実力でお前を殺せばいいんだろうが! こい! ハイオーク!」
ルークの情報通りだな。こいつがルークを倒したやつか。
「タクトさん…あいつはきっと僕のハイオークを使ってきます…もしそうなったら、手加減しないで倒して下さい」
試合前に俺はルークとアロマからお願いされている。
俺はスカーレットリングを取り出す。
「やるぞ。イクス」
「イエス。マスター」
「第一試合、開始!」
暴走状態のハイオークがこちらに突っ込んでくる。
イクスはスタンネットガンを撃ち、ハイオークは拘束される。暴走状態のためか電撃をくらいながら暴れてる。
その隙に暗黒召喚師がイクスを狙う。
そんなにイクスが欲しいか。だが今のイクスは甘くない。何せ俺とリンクしているからな。
「貰っ!?」
両手が塞がっていてチャンスと思ったのかも知れないがイクスのテイルレーザーガンが暗黒召喚師の顔を貫いた。股間は悪意のある行動に該当するし、何よりイクスに狙わせたくなかった。
「テレポート」
暗黒召喚師の背後から首を斬り落とす。終わりだ。胸を串刺し、スカーレットリングの灼熱が暗黒召喚師を焼き殺した。
審判から試合終了をコールされる。
すると暴走していたハイオークは暴走状態が解消され、その場に倒れると召喚石に戻り、観客席にいたルークの元に戻る。ルークは泣きながら喜んでいた。
更にあいつが奪った召喚石が次々観客席にいた召喚師やその場にいない召喚師の元に帰っていった。コロッセオ中から感謝の言葉が聞こえる。
それを不快に感じる者がいる。
「黙れ…黙れ!! 雑魚共!」
暗黒召喚師の兄は観客に怒鳴ったことで審判から注意を受ける。
「俺を注意するなら耳障りな観客を追い出せ! 邪魔だ! 裏切者!」
暗黒召喚師が審判を突き飛ばし、俺に怒りをぶつけてくる。
「てめぇ。楽に死ねると思うなよ」
「それはこっちのセリフだ」
俺を鼻で笑った暗黒召喚師の兄はインベントリから知らないガントレットを取り出す。やはり金属で手を覆わず、手が出るようになっている。
「お前だけが特別だと思ったら、大間違いだ」
「何当たり前のこと、言っているんだ? そんなことわざわざ教えてくれなくて結構だ。さっさと召喚して、かかってこい」
暗黒召喚師の顔に殺意が宿る。暗黒召喚師はガントレットを装備し、アロマのエンジェルを召喚する。
「こい! フォーレンエンジェル!」
「アァアアア!!」
召喚されたのは以前見たアロマのエンジェルとは思えないエンジェルだった。肌は褐色になり、天使の輪と翼は黒く染まってしまった。この姿にフォーレンエンジェルという名前からしてこの天使は…
「堕天使か」
「そうだ! 何度も何度も暴走させていたら、いつの間にか進化したのさ!」
これは予想外だな。
『大丈夫です、マスター。ご命令を』
頼もしい限りだ。
『全力であの堕天使を無力化してくれ。最悪、仕留めていい』
『イエス、マスター』
アロマには悪いが手加減出来る相手じゃ無さそうだ。
審判が試合開始を言い、戦いが始まった。
「アァアアア!!」
堕天使が叫びながら、漆黒の槍を作り出すと俺に投げ付けてくる。俺は余裕でかわすが後ろから爆発音がする。どうやら壁に刺さり、爆発したようだ。音からしてかなりの威力だな。
「アァアアア!!」
再び槍を作り出すが投げる前にイクスが仕掛けた。エネルギーガンを撃つと堕天使が空に上がりかわす。
イクスはエネルギーガンを撃ちながら、堕天使を追う。堕天使はエネルギーガンをかわしながら、槍を投げるがイクスはかわす。
「エネルギーリング、展開」
イクスがエネルギーリングを展開すると堕天使も漆黒の輪を投げる。互いにぶつかり合うが暴走しているせいかエネルギーリングが弾かれる。イクスは飛来する漆黒の輪をかわすと同時にエネルギーリングを操作する。
なんども追跡してくるエネルギーリングを堕天使は槍で捌くがイクスはエネルギーガンも撃ちこみ。堕天使を追い込んでいく。
堕天使は意を決して接近戦を挑む。エネルギーガンを受けながら距離を詰めてくる。イクスはエネルギーソードを構え、迎え撃つ。
エネルギーソードと漆黒の槍がぶつかり合うがイクスにアクシデントが発生する。
「エネルギー危険域。出力低下」
エネルギーが無くなり、パワーダウンしたイクスの隙を堕天使は見逃さなかった。
エネルギーソードを弾き飛ばし、堕天使はイクスを蹴落とす。そして巨大な漆黒の槍を作り出す。
「アァアアア!!」
堕天使が巨大な漆黒の槍を落下中のイクスに投げ付ける。
「エネルギーバッテリー、接続。魔力回復。リフレクター、展開」
エネルギーバッテリーで魔力を回復させ、手の甲にあるリフレクターを展開する。
巨大な漆黒の槍と透明な魔力の盾がぶつかり、リフレクターが巨大な漆黒の槍を堕天使に弾き返す。
完全に仕留めたと思った攻撃が弾き返され、堕天使はかわせず、槍が直撃。大爆発する。
イクスはスラスターを吹かし、高度をあげる。ボロボロになった堕天使を追い抜き、弾き飛ばされたエネルギーソードをキャッチし、構える。
「エネルギーソード、最大出力!」
エネルギーソードに巨大なエネルギーの刃が発生する。
「終わりです」
堕天使はエネルギーソードの最大出力の刃に切り裂かれ、召喚石に戻る。
「任務完了しました。マスター」
イクスと堕天使の戦闘はイクスの勝利で終わった。
俺たちは互いに動かなかった。流石に大爆発する槍とビームが飛び交う中、戦闘することはできない。もし当たって死んだら、それで終わりだからな。
「どうやら俺の勝ちみたいだな」
「ふん。役にたたねー雑魚だな!」
暗黒召喚師が召喚石を捨て、踏みつける。
これが許されて股間攻撃が許されないのは納得いかないな。後で運営に抗議してやる。
「まぁいい。俺がお前に勝てばいいだけの話だからな!」
暗黒召喚師の姿が消える。俺はスカーレットリングを上に構え、暗黒召喚師の攻撃を防御する。
そのまま押し返し、斬りかかる。だがガントレットで防御され、再び殴りかかってくる。
俺はバク転し、暗黒召喚師のパンチを蹴りあげ、スカーレットリングで再び斬りかかる。
暗黒召喚師が首を守ろうとするが、それに反し腹を斬り裂く。
「っ!? うぜーんだよ!」
暗黒召喚師は燃えながら、再び殴りかかってくる。俺は受け流して止めを狙うが、受け流そうした瞬間ガントレットから煙が飛び出し、目に激痛を感じる。
「おら!」
俺は蹴り飛ばされる。これが特攻ダメージか…流石に効いた。だがダメージよりも目を開けることが出来ない。あのガントレット…暗器か。まずった。
「ははは! おいおい! どうした? 目を開けてみたら、どうだ? ん? なんとか言ってみろよ!」
俺は深呼吸して立ち上がる。忘れていたな…この感覚。
「目潰しして、勝ったつもりか? 随分甘い考えだな。お前ら、闇落ち職に向いてねーよ」
「ぷ。ははははは! だっせ! もう少しまともなことが言えねーのかよ!」
暗黒召喚師が殴りかかってくる。俺は受け流し、腹を斬り裂く。音が気配が俺にこいつの場所、攻撃を教えてくれる。
「なっ!? こいつ! ぐはっ!?」
暗黒召喚師が縮地で俺の背後から殴りかかってこようとしたがそれを読んだ俺の肘打ちが炸裂する。縮地は歩行術だ。瞬間移動しているように見えるが、実際は高速で移動しているだけだ。なら移動するコースを読めば、カウンターは可能だ。
ましてやこいつの単純思考なら予想しやすい。
そしてこのカウンターは通常よりもダメージが入り、暗黒召喚師は倒れこむ。高速移動で肘打ちが入ったんだ。当然だろう。
「追い討ちはやめてやるよ。どうした? グロッキーか?」
「っ!? てめぇぇぇ!!」
暗黒召喚師はガントレットから毒が塗られた鍵爪を出し、斬り裂こうとするが俺は受けては弾き、流しては逆に斬り裂く。暗器とわかっているし音で大体わかる。
暗黒召喚師は距離を取り、ガントレットから麻痺針が撃ち出される。俺はその麻痺針を全て弾き返し、暗黒召喚師に一本の麻痺針が命中する。
距離を取ってから飛び道具。これも単純。音で打ち出すタイミングはわかる。問題はスピードだが、普通の矢と同じで助かった。
「ぐ!? どんなイカサマしてやがる!? このチーター野郎!」
当然イカサマなんてしていない。
俺にとって、目が見えない戦闘は日常だった。目が見えない状態は最も気配を感知できる状態だ。故に良く訓練させられた。
しかし俺はこの訓練が好きだった。相手の気配、音から相手の姿、動きを全て脳内でイメージする。相手の思考を読み、脳内のイメージに反映し、相手を追い詰める。
今にして思えば、ゲーム感覚で訓練していたのかも知れないな。あのじいさんに呆れられたからな。
「誠吾よ…目が見えていないほうが強いぞ…わしが言うのもなんじゃがどうなっているんじゃ」
そんなこと言われても俺が知るわけない。
さて、終わりにしよう。スカーレットリングを構える。
「やめ!?」
「やめて欲しいのか? お前に助けを願った召喚師にお前は何をした? 自分だけ助かるのは道理に合ってないな…一閃!」
麻痺した暗黒召喚師の首が飛び、胸を貫き、暗黒召喚師は消え、召喚石が残る。
「試合終了! 勝者、召喚師のタクト、イクスペア!」
歓声が響いた。そして召喚石が召喚師たちに返っていく。そして久々のインフォが来る。
『職業召喚師のレベルが上がりました。ステータスポイント2ptを獲得しました』
『職業召喚師のレベルが上がりました。スキルポイント1ptを獲得しました』
『格闘スキルのレベルが10に到達しました。武技【ボディブロー】を取得しました』
こいつら倒して、レベルアップか…微妙だ。ステータスポイントは全て魔力にした。俺の残りスキルポイントは65ptになった。
そしてもう一回、インフォが来る。
『暗黒召喚師のプレイヤーに勝利しました。称号『召喚獣の解放者』を獲得しました』
称号『召喚獣の解放者』
効果:暗黒召喚師に特攻、召喚獣からの好感度上昇。
職業召喚師で暗黒召喚師に勝利した者に贈られる称号。
そういえば俺は称号で『PKK』と『無傷の覇者』を持っていたんだったな。これで更に暗黒召喚師にダメージが入るようになったわけだな。
イクスが降りてくる気配がする。
「流石です。マスター」
「イクスか? 悪いな。目が見えなくて」
不思議とインフォの文字は見えるんだよな。するとイクスが俺の手を取り、自分の頭に乗せる。
「どうぞ」
「あぁ…よくやったな。イクス」
「はい。マスターもお疲れ様でした。後は仕上げですね」
「そうだな。後は皆に任せよう」
俺はイクスに手を引かれて控え室に戻った。
名前 タクト 情愛の召喚師Lv5→Lv6
生命力 70→72
魔力 139→144
筋力 60
防御力 40
俊敏性 60
器用値 102→104
スキル
格闘Lv9→Lv10 蹴り技Lv16 杖Lv22 片手剣Lv23→Lv24 槍Lv17 刀Lv7→Lv8
投擲Lv7 高速詠唱Lv29 召喚魔術Lv31 封印魔術Lv15 騎手Lv28
錬金Lv20 採掘Lv20 伐採Lv33 解体Lv37 鑑定Lv24
識別Lv30 風魔法Lv28 炎魔法Lv1 土魔法Lv25 海魔法Lv1
闇魔法Lv26 神聖魔法Lv9 雷魔法Lv29 爆魔法Lv26 木魔法Lv25
氷魔法Lv26 時空魔法Lv39 水中行動Lv8 読書Lv13 料理Lv35
餌付けLv8 釣りLv18 シンクロLv15 連携Lv4
名前 イクス エクスマキナLv40→Lv41
生命力 72→73
魔力 72→73
筋力 72→73
防御力 72→73
俊敏性 72→73
器用値 72→73
スキル
飛行Lv6→Lv8 機人兵装Lv18→Lv20 暗視Lv4 鷹の目Lv5→Lv6 射撃Lv5→Lv8
解析Lv5 索敵Lv17 投擲操作Lv2→Lv5 連射Lv4→Lv6 反射Lv2→Lv3 換装Lv5
リンクLv8→Lv10 魔力充電Lv6→Lv7
次回はその後の後始末の回となっております。それが終わると掲示板回を挟み、6章が終わりということになります。