#281 イクスの大改造
みんなは早速行動を開始した。闇落ち職にバレると作戦が台無しになる上に相手に逃げれられたり、逆転の手を打たれたりするから、かなり責任重大だ。しかしみんな協力してくれた。昨日途中からフリーティアに来たノストラさんもだ。
他にもサバ缶さんたち検証組や火影たちも協力してくれることになった。感謝したい…情報戦は俺は慣れてないからな。
そしてルークからメールで決闘は暗黒召喚師たちの都合で日曜日の夜となった。俺の敵はトーナメントに出場した暗黒召喚師の二人だ。二人同時に相手するのではなく、連戦を指定してきた。
リリーの竜化対策だと思うが、わざわざ時間をくれるなんて自分たちの勝利を疑って無い証拠だ。サバ缶さんからの情報で闇落ち職の掲示板でそういう書き込みが確認されたらしい。
サバ缶さんによると闇落ち職の検証と情報を得るために検証組の人が隠れて闇落ち職になっているそうだ。つまりスパイなわけだな。そのスパイからの情報だ。間違いないだろう。
勝利を確信している奴らに勝利に絶対は無いことを教えてやるとしよう。その前にバイオエタノールが完成したので、鑑定してみる。
バイオエタノール:レア度5 素材アイテム 品質D+
特定の野菜を発酵させることで作ることが出来る燃料。小型の船などのエンジンの燃料として使うことができる。
実は忘れていて、キキに教えられました…劣化とかしないみたいで助かった。
車は見たことないから船のエンジンに使われるんだな。などってことはいつかライヒ帝国とかヴェインリーフが戦車を作りそうな気がするな。
そのライヒ帝国と交渉しないといけないので、フリーティア城に向かう。
「ライヒ帝国と交渉がしたいとの話ですが、本気ですか?」
サラ姫様に聞かれ、俺は事情を話す。するとサラ姫様が納得する。
「なるほど…闇落ちした人間を利用するとはライヒ帝国が考えそうなことです。しかしどのような交渉をするつもりですか?」
「ライヒ帝国が本当に興味があるのはイクスでしょうからイクスで交渉しようと思います」
「まさかイクスさんをライヒ帝国に渡すつもりですか!?」
「そんなことをするはずないでしょ…イクスは俺の召喚獣なんですよ?」
俺がそんなことをする人間に思われていたとはショックだ。
「そ、そうですね…ではどのような?」
俺はサラ姫様に話す。
「なるほど…それならライヒ帝国は折れるしかありませんね」
「しかしこの交渉はやはりフリーティアにも話しておかないとダメだと思いました」
「正しい判断ですね…これは私の独断で決めかねるので、父に決断して貰いましょう」
「わかりました」
俺はグラン国王に全て話し、条件付きで交渉の許可を貰った。条件は当然ライヒ帝国と同じ情報をフリーティアにも渡すことだ。この条件は当たり前だろうな。イクスの情報はそれだけ危険なものだ。
俺も本来なら、情報をどの国にも渡したくはなかったのが、本音だからな。これからどんな流れになっていくのか気を付けないといけない。戦争だけは回避したいものだ。
ライヒ帝国との交渉は俺がお願いし、翌日のお昼に行われることになった。これは暗黒召喚師たちにギリギリまで信じ込ませたいからだ。早く行動を起こすと気づかれるかも知れないからな。ギリギリの時間を狙うのが、ベストだろう。
その後、俺はドワーフの里に向かう。理由はイクスの武器素材と召喚のための魔晶石の調達だ。大金があるからイクスを一気に強化しようと思う。
買い物が終わり、最初に召喚をするが、失敗。くそ…なかなかレッサーオーガの召喚が出来ないな。それだけ強いということなんだろうが…無念だ。
バトルシップに向かい、早速イクスの武器を作る。作るのは中距離索敵レーダー、ヘッドギア、ウイングユニット、スタンネットガン、エネルギーリング、テイルエネルギーレーザーだ。
中距離索敵レーダー:エクスマキナ専用武器
中距離にいる敵を索敵することができる耳の武装。
索敵スキルが追加される武装。
ヘッドギア:エクスマキナ専用武器 重さ5
暗視、鷹の目、射撃スキルが追加される武装。
ウイングユニット:エクスマキナ専用武器 重さ10
飛行スキルが追加される武装。
飛行の際には魔力を消費していく。
スタンネットガン:エクスマキナ専用武器 重さ10
電撃が流れるネットを撃ち出す武器。
電撃が流れるネットに捕まると麻痺と拘束の状態異常が発生する。
エネルギーリング:エクスマキナ専用武器 重さ5
空を自在に動き回る輪っか状の武器。
投擲操作スキルが追加される武装。
テイルエネルギーレーザー:エクスマキナ専用武器 重さ10
ワイヤーの尻尾にエネルギーレーザーがある武器。
連射スキルが追加される武装。
恐ろしいお金が飛んだ…これがエクスマキナを育てるということなんだろう。まぁ、いつかは使うお金だ。流石に解体や採掘だけであれだけの素材を集めるのはきついからな。
そしてイクスにスキルがたくさんついた!やはり中距離索敵レーダー、ヘッドギアとウイングユニットは必須だな。
スタンネットガンは和牛狩りに使えそうだから選んだ。エネルギーリングとテイルエネルギーレーザーは完全に趣味!
空中を飛ぶ武器にロマンを感じる。テイルエネルギーレーザーは手持ち武器以外の攻撃手段として選んだ。
早速素材を入れ、武器を作り、イクスが装備を更新する。
「おぉ~! カッコいいな!」
「マスター。それは女性に対する反応では誉め言葉ではありません。やり直しを要求します」
確かにそうだな。しかしメカメカしい翼、ヘッドギア、肩にはリング、両手には剣と銃を持つイクスは間違いなくカッコいい。
大金を使ったことに後悔はない!
しかしやり直しを要求されたからやり直そう。
「可愛くなったな。イクス」
特に尻尾がめちゃくちゃ似合ってた。
「やはりマスターは尻尾好きなのですね…リリーたちに報告します」
おい、こら待て。やはりってなんだ!やはりって!はっ!?しまった。リンクスキルを使ったままだ。
しかし考えてみると恋火や和狐の尻尾を念入りにブラッシングしている気が…いや、あれは恋火たちの要望によるものだ。だから多分…違うはず…
絶対と言えない時点で俺はもうダメかも知れない。
装備を更新したので、外で試運転する。すると早速中距離索敵レーダーの効果が発揮される。
「中距離索敵レーダーに反応あり。右上空に始祖鳥がいます。マスター」
「敵の正体が分かるようになったのか?」
「索敵レーダーですから」
ごもっとも。距離が伸びるだけだと思っていたがこれは嬉しい誤算だ。
「始祖鳥ならいい敵だな。飛べるか? イクス」
「問題ありません。マスター」
ならイクス初の空中戦と行こう。
俺はヒクスに乗り、念のためにリリー、イオン、ブランを召喚する。ではみんなで観戦する。イクスはヘッドギアを着け、敵目指し、飛行する。
「悔しいですが私たちより速いですね」
「あぁ。だが飛行に魔力を使うから長時間の飛行は厳しいみたいだな」
イクスのステータスを確認すると徐々に魔力が減っている。大丈夫かな…するとイクスが戦闘体制に移行する。
「敵、射程範囲。エネルギーリング、展開します」
イクスの肩からエネルギーリングが外れ、イクスの指示で始祖鳥に飛んでいく。
「私の天輪に本当に似ていますね」
「あぁ」
だが、その違いが明確な結果で証明される。始祖鳥が迫るエネルギーリングをあっさり上にかわす。しかしイクスが手で合図するとかわされたエネルギーリングが止まり、上に逃げた始祖鳥に飛来する。
完全に予想外の攻撃に始祖鳥は逃げられず、エネルギーリングに切断され、墜落した。
結局エネルギーリングしか使ってないがそれだけエネルギーリングが強いということだろう。
するとイクスがこちらに来て、俺の後ろに乗る。
「任務完了です。マスター」
「空を飛べるのになぜタクトさんの後ろに乗るんですか!」
「そうだよ! イクスちゃん! ずるい!」
「ずるくありません。皆様と違ってわたしは飛行にエネルギーを消費してしまうので、節約処置です」
なるほどな…まぁ、それなら仕方ない。
「エネルギーの節約に抱きつく必要はないでしょ!」
「いい装備を作って頂いたマスターに感謝の気持ちを行動で表しただけです」
「なんですか! それは! それなら私だって!」
「リリーも!」
待て待て!今は無理だ!落ちる!落ちるから!
「大変ですね。我が主」
そう思うなら助けてくれよ。ブラン。
とにかくこれでイクスの装備は更新出来た。その後、トレーニングルームでみんなとスカーレットリングではなく、銀刀で久々の全力戦闘をした。
「やはり軽いから力の入れ方が違うな」
「はい。馴れるのが大変です」
恋火とそんな会話をしているとリリーたちが抗議する。
「タクト! スカーレットリングと全然違ったよ!?」
「流石にスカーレットリングのほうが強いですが迫力というか容赦なかったです」
刀を持って、つい本気になってしまったようだ。しかしだ。
「リリー…開幕ヘビースラッシュの癖が戻っているぞ?」
「う…」
リリーは開幕ヘビースラッシュをしてきたので、問答無用で一閃を叩き込んだ。
「イオンも俺にビビって周りが見えなくなったら、ダメだろ」
「う…」
イオンは居合いの構えで近づく俺を警戒して壁に追い込まれて終わり。恋火とイクスは接戦となり、ブランも盾と槍の使い方が様になってきた。リアンも三又槍で初の訓練だが、動きが全然良くなっていた。というか槍との戦闘経験はこのゲームでしかないからわりと苦戦していたりする。
「イクスはまだやり辛そうだな」
「いえ。そんなことはありません」
「隠しても無駄だ。筋力と機動力に不安があるだろ。武器を二つ持てないところや距離を空ける時に間があったぞ」
「マスターは戦闘だけはよく見ていますね」
だけ?結構デスペナ中はみんなをよく見ていたつもりなのだが…あれ?リリーたちも頷いている。
「ドワーフの里で素材を集めてくるか。どうせシールドも用意するつもりだったし」
「お願いします」
というわけで装甲Dとスラスター、リフレクターの素材を買いに行く。早速作成し、イクスが装備する。
装甲D:エクスマキナ専用武器
筋力と防御力が上がる武装。
スラスター:エクスマキナ専用武器 重さ5
俊敏値と器用値が上がる武装。
リフレクター:エクスマキナ専用武器
反射スキルが追加される武装。
透明のシールドで攻撃を防御し、遠距離攻撃を弾き返すことが出来る。
※シールドには限界が存在する。
装甲はイクスごと、ベルトコンベアに乗り、改造されたようだ。何をさせられるのか警戒していたが無駄だったようだ。
そしてステータスに変化が起きた。
名前 イクス エクスマキナLv39
生命力 71
魔力 71
筋力 56→71
防御力 56→71
俊敏性 56→71
器用値 56→71
スキル
飛行Lv1→Lv3 機人兵装Lv15 暗視Lv1 鷹の目Lv1→Lv2 射撃Lv1
解析Lv5 探知Lv14→索敵Lv15 投擲操作Lv1→Lv2 連射Lv1 反射Lv1
換装Lv4→Lv5 リンクLv7 魔力充電Lv5
ふむ。これならしばらくは装備の更新はしなくていいだろう。
そしてイクスと戦闘すると普通に負けた。完全武装したイクスの強さを再認識した。エネルギーリングは飛んでくるはエネルギーガンとテイルエネルギーガンで連射されたらどうしようもない。その前の戦闘では距離を詰めて終わりだったが、スラスターを装備されてはスピードで敵うはずがなかった。
「マスターに初勝利です」
「く…もう一戦だ!」
「受けて立ちます」
一度戦えば対策は立てられる。次は俺がイクスの攻撃を逃げ切り、エネルギーが無くなったところを決めて終わり。
「マスターは化け物です」
失礼な。これでも必死だった。イクスが俺を正確に狙ってくれていなかったら、普通に打つ手なしだった。
「なるほど。学習しました。マスター、もう一度勝負を」
「…次からはスカーレットリングだな」
「銀刀でお願いします」
結果ボロ負け。しかしまだ跳弾とかしてこないからまだワンチャン…しまった!?
「なるほど。壁に反射させる技術もあるんですね。勉強になります」
「く…リンクスキルは禁止だ」
「これは訓練なのですから、マスターが考えていることを学習することも訓練なので、拒否します」
確かにそうかも知れないがこのままではまずい…仕方ない。イクスの強さを認め、俺も本気になるしかないか。
「マスターとは十分戦いましたので、皆さんどうぞ」
勝ち逃げだと!?イクスの学習能力、半端ない。お昼まではトレーニングをし、戦闘の勘を取り戻した。そしてイクスの魔力を回復させる。これでいつでも決闘で戦えるだろう。
名前 イクス エクスマキナLv39
生命力 71
魔力 71
筋力 71
防御力 71
俊敏性 71
器用値 71
スキル
飛行Lv3 機人兵装Lv15 暗視Lv1 鷹の目Lv2 射撃Lv1→Lv2
解析Lv5 索敵Lv15 投擲操作Lv2 連射Lv1→Lv2 反射Lv1→Lv2 換装Lv5
リンクLv7→Lv8 魔力充電Lv5→Lv6