#274 デュエルトーナメントタッグ戦決勝戦と祝勝会
暗黒召喚師のバトルがあるので、不快な思いをするかも知れません。苦手な方はご注意ください。
午後、みんなにドゥルジナスのことを伝えて、一応警戒してもらうことにした。流石にイベント中には何もないと思うけどね。早めに伝えてないと後が怖い。
鉄心さんと合流し、パーティーメンバーを紹介された。
「聖職者のワイフです」
あれ?この名前ってもしかして。
「ははは…ご想像の通りだけど、一応個人情報だから言わないでくれ」
マジか!?ということは俺と同じくらいのこの子達は…
「魔法使いの雫です」
「そこは魔法少女と名乗れと言っているのに…」
「黙れ。キモオタク」
「人前でそれを言うな! というかキモくないから! 俺は魔法少女アニメが好きなだけで…は!?」
色々知っちゃいけない情報を知ってしまったな。
「あぁ〜…騎士のカイっす。さっきのは無かったことにしてください」
「わかった。召喚師のタクトです。こっちは聖職者のミライです」
「…よろしくお願いします」
自己紹介を終えて、俺たちは一緒に観戦をする。すると鉄心さんは聞いてくる。
「タクト君は掲示板を見ていないんだよね? 君は誰が勝つと思う?」
「ちょっとわかりませんね。召喚師ならやはり竜化があるタクマとエンジェルと組んでいるアロマが勝ち残ると思いますが、タクマはトリスタンさん、アロマは暗黒召喚師と当たりますからどうなるかですね…」
こっそり土のドラゴニュートのマヤさんを応援していたが、残念ながら俺の知らない重戦士、弓術師ペアに一回戦で負けてしまった。やはり挑発で召喚獣を引き付けられるとどうしても詰んでしまうな。
マヤさん以外にもよく似た方法で召喚師は数を減らしてしまった。やはりこういう勝負だと応用性があるプレイヤーに軍配が上がるんだな。
「うむ。他のプレイヤーはどうかな?」
「知り合い以外だとあそこの重戦士と魔法使いコンビとが飛び抜けて強いですね、後はあそこの男女の騎士ペアですね」
するとミライと鉄心さんたちに感心された。
「その二組は掲示板でも挙げられていた」
「重戦士と魔法使いはライヒ帝国で君と同じようなプレイヤーだ。男女の騎士ペアは今まで無名だったがコンビネーションがいいことから、今回のイベントで頭角を表してきたプレイヤーだな」
あの重戦士と魔法使いは海斗が言っていた情報を秘匿した連中か…魔法使いが指示出ししているから、あいつが元凶だな。なんの運命の悪戯か…アーレイとレッカが戦うことになった。
結果はアーレイとレッカの敗北だ。魔法の打ち合いではレッカが勝っていたが、アーレイが重戦士にやられて勝負アリ。アーレイもなんとかしようとしていたが、相手とのレベル差が浮き彫りになってしまったな。
男女の騎士ペアは確かにコンビネーションがずば抜けている。攻めるタイミングも守るタイミングも合図なしに自然に動いているように見える。それ故に隙がない堅実な戦闘を繰り返している。そんな彼らはこのまま勝ち進むとメルたちと戦う事になる。
その前にメルたちはトリスタンかタクマと戦うことになるのだが、アクシデントは起きるものだ。
「あ、ごめんなさい。死神のカード…しかも正位置引いちゃったわ」
効果は敵味方の全滅。結果タクマは竜化を使わないまま、敗北。メルたちは不戦勝となった。どうしてルールにドローがあるのか気になっていたがこういうことだったんだ。
その後、メルたちと騎士コンビが戦い、激戦の末、騎士コンビが勝利した。完全にコンビネーション負けした結果だった。本来ならメルたちが有利なはずだが、リサの猪突猛進さが響いた結果だった。
「これはお説教が長引きそう…」
ミライが夕飯での佳代姉のお説教する姿を予想してため息を付いていた。
そして荒れたのが暗黒召喚師とアロマとの戦闘だ。アロマは暗黒召喚師に召喚獣の技が効かないことを知っていた。故に最初に暴走している召喚獣をアークエンジェルの天撃で仕留めた。
これで一対二だが、暗黒召喚師は気にした様子はない。アロマがブリッツを使用すると暗黒召喚師はブリッツを躱す。あれは以前戦った暗黒召喚師が使っていた回避スキルだな。
「おっと。危ない危ない。今度は俺の番だな!」
暗黒召喚師が距離を詰める。当然アークエンジェルは盾を構え、守りに入る。それが暗黒召喚師の思う壺だった。
暗黒召喚師は挑発された盾に攻撃を加えるとあっさり武器を破壊して、そのまま格闘戦でアークエンジェルをボコボコにして、アークエンジェルが倒されてしまった。
アロマのファイヤブラストが暗黒召喚師を捉えてるが、ファイヤブラストを喰らいながら、前に来た暗黒召喚師に殴られ、アロマは敗北してしまった。
「俺と戦ったことは褒めてやる。お礼にお前の可愛いエンジェルちゃんは俺が大切に使ってやるよ」
暗黒召喚師の笑い声が響く。それを聞いた俺は拳を強く握り締めた。
荒れた試合もあったが、ベスト4が揃った…残ったのは重戦士魔法使いのペア、暗黒召喚師、与一さんと満月さん、男女の騎士コンビだ。
与一さんと満月さんは烈空さんとケーゴ、ユーコのペアと戦い、勝利してきている。どうなるか楽しみだ。
夕飯を食べ終え、準決勝が始まる。最初は暗黒召喚師と重戦士、魔法使いのペアの戦いだが、ここにきて暗黒召喚師が戦わずギブアップした。それを見て、魔法使いが慌てている。鉄心さんが聞いてくる。
「…どう見る?」
「わざと勝ちを譲ったように見えますね。言い訳してますが猿芝居にしか見えないですよ」
「どうせ勝てないなら、相手に最大限のダメージを与えるか…厄介な敵だな」
これで三位決定戦で暗黒召喚師が普通に戦えば、重戦士魔法使いのペアの疑惑は確定的だ。そして与一さんと満月さんの戦いだが、激戦の末、敗北した。
騎士コンビが真っ先に与一を疾風突きで襲いかかったが満月さんがガードする。その隙に与一さんがアローレインを撃つが、盾で防御される。その攻防がひたすら続き、結局騎士コンビのコンビネーションの高さが高く、満月さんが先に倒されてしまった。それでも最後まで与一さんを襲われないように騎士二人を相手に一歩も引かない満月さんはやはり凄いと思った。
鉄心さんが聞いてくる。
「重戦士の彼とは知り合いかい?」
「はい。イベントで一緒になって、今は連携を組んでいます。戦いたいみたいですね?」
「あんな戦いを見たんだ…当然だね」
三位決定戦はやはり暗黒召喚師は普通に戦ったが、満月さん、与一さんが圧倒した。やはり召喚師特化では普通の職種には弱いことが浮き彫りになったな。
そして、決勝戦。ここでは騎士コンビの切り札が炸裂した。男の騎士が重戦士に疾風突きで襲い掛かり、重戦士が盾で弾きにかかったところで女騎士が剣を投擲する。詠唱中だった魔法使いは予期せぬ攻撃を顔面に喰らい、お陀仏。
重戦士もなんとかしようとしたが相手は満月さんを倒しているほどの実力だ。結局じわじわ生命力を削られ、最後に賭けで大技を出すが、それを弾かれ、勝負ありだ。
昨日と同じように授賞式が行われて、イベントが終わった。
「結局コンビネーションのあるなしが勝敗の鍵になりましたね」
優勝した騎士たちは個の実力では他のプレイヤーに劣っているように見えた。しかしその劣っているところを見事なコンビネーションと作戦でカバーしていた。
「タッグ戦だから当然といえば当然だが、掲示板は荒れているだろうね」
「そうなんですか?」
「あぁ。優勝した彼らは名前は上がっていたけど、どちらかと言うと負けるように言われていたからね」
ありゃま。でも彼らの戦闘を見たら、誰も文句は言えないだろう。それほど、素晴らしい戦いだった。
その後、俺は鉄心さんたちとフレンドになり、ホームに案内した。今日中はワープ自由だ。なので鉄心さんと満月さん、与一さんたちの祝いの席を用意した。
「えー…ではイベント終了を祝して乾杯!」
『かんぱーい!』
みんなで乾杯をして、イオンたちが作ってくれた料理を食べる。何気に初めて料理場のフル稼働を見た。因みにキキさんも料理を作ってくれた。
「うま!? これがアスタロト戦とゾンビイベントで勝利の鍵を握った料理か!」
「…念願の亜人種の手料理が食べれて良かったね」
「ここでそれをばらすのか!?」
アーレイがカイの肩を叩く。
「わかるぜ」
「ありがとう」
アーレイとカイが意気投合していた。あれに関わるのはやめておこう。俺がある意味元凶ではあるが、あれに関わってしまったら、終わりな気がする。
すると鉄心さんが来た。
「いや~、なんか悪いね…今日知り合ったばかりなのに全員がご馳走になってしまって」
「助けて頂いたお礼でもありますから、気にしないで食べて下さい」
すると占い師のお姉さんが絡んできた。トリスタンさんと組んでいた人だ。
「そーよ! ここではもう無礼講よ!」
「お酒ないのにテンションが異常ね」
「いいじゃないのよ。このゲームでこんなに美味しい料理を食べたのは初めてなのよ? こんなにゲームしているのに!」
なんというか…ご愁傷様としか言えない。
「タクト君…紹介するわね。彼女は」
「占い師のノストラちゃんです☆」
会場に冷たい空気が流れた。だって、いい年した人が決めポーズまで取っているのだ。どうしようもない。
「よーし。黙った人たちはちょっとこっち来なさい。占って悪い結果出して上げるから」
なんという八つ当たりだ。しかし女性陣はやる気満々だ。リリーたちも興味津津ですることになった。
結果は以下の通り。
愚者がイクス。
魔導師がミュウさんとセチア。
女教皇がミライとイオン、シフォン。
女帝がメルとルインさん、和狐、ルーナ、ワイフさん。
教皇がユグさん、ハルさん
恋人がチロル、リアン、雫ちゃん。
戦車がリサとリリー。
力がミランダ、ユーコ。
隠者がノワ。
運命の輪が伊雪。
正義がトリスタン。
節制がユウナさんとブラン、ミール、キキ。
悪魔がリビナ。
星がレギン。
月がセフォネとヘリヤ。
太陽が恋火。
となった。これは恐ろしい結果になったな。みんな微妙に納得出来るところが怖い。因みに男性陣は全員拒否。誰もが死神や吊られた男は当てたくないだろう。
「タクトは引いてくれるよね?」
リリーたちがした手前、引かないとは言えないので、引く。面白がってノストラさんが全員に聞く。
「何が当たると思う?」
メルたちが答える。
「やっぱり皇帝かな?」
「兄ちゃんなら愚者かも知れない」
「…亜人種をたくさん当てているから運命の輪に一票」
『それだ!』
ミライの意見にみんなが賛同する。確かに幸福ではあると思うが、どんなのが来るかな。俺がカードを引くと見事に予想が外れた。
「世界だな…」
「わぉ! あたしが今まで当ててないカード引いちゃったわね。意味は正位置だと完成や完璧とかだね。逆位置だと衰退や堕落、調和の崩壊ね」
『なるほど…』
何故か全員が納得してしまう。メルが説明する。
「今までゲームの攻略に深く絡んでいるし、タクト君はもう有名なバランスブレイカーだから」
『うんうん』
なんだ!?その評価は!?確かにチート技持っているけどその評価は納得いかないぞ!
それからみんなで話している中、俺は鉄心さんの話を聞かせて貰えた。鉄心さんは若木の森のイベントにはリアルの都合で不参加となり、こつこつレベルを上げていたらしい。するとフィールドで流離いの侍と出会い、弟子入りすることで侍の職種とスキルが解放されたそうだ。
「この刀は弟子の卒業記念にそのNPCから貰ったものでね。残念ながら作り方は知らないんだよ」
「そうなんですね。俺は作り方は分かっているんですが、素材の玉鋼…せめて鋼がないと作れなくて探している最中です」
「ということは刀は持っているかい?」
「はい。これです」
鉄心さんが銀刀を持つ。
「確かに軽いね…でも装備では刀になっているからゾンビたちには有効だね。これはタクト君に刀を注文することになりそうかな」
「作っているのはヘーパイストスなので、彼に依頼してください」
そんな話をしていると強制ログアウト時間が来る。最後に俺はノストラとフレンドになり、祝勝会はお開きになった。
「決めた! フリーティアに来て、あたしもここに住むわ!」
そういって消えてしまったがどうなるんだろう。あの人の性格だとたぶん来るんだろうな。俺もそろそろ強制ログアウトだ。最後にイオンたちに言わないとな。
「ご馳走様。美味しい料理をありがとな」
『えへへ~』
俺は嬉しそうに微笑むイオンたちを見ながら、強制ログアウトした。
名前 イオン ドラゴニュート・エンベロープLv13
生命力 63
魔力 106
筋力 60
防御力 33
俊敏性 138
器用値 109
スキル
二刀流Lv27 槍Lv4 投擲操作Lv8 飛行Lv9 遊泳行動Lv12
氷刃Lv14 連撃Lv5 水魔法Lv16 蒼波動Lv3 竜技Lv8
竜化Lv7 海竜の加護Lv5 料理Lv15→Lv18
名前 セチア ハイエルフLv12
生命力 53
魔力 143
筋力 47
防御力 36
俊敏性 39
器用値 143
スキル
杖Lv14 魔法弓Lv19 鷹の目Lv9 射撃Lv11 木工Lv17
採取Lv28 調薬Lv12 刻印Lv5 宝石魔術Lv2 宝石細工Lv2
風魔法Lv7 火魔法Lv17 水魔法Lv24 土魔法Lv13 闇魔法Lv1
神聖魔法Lv6 雷魔法Lv3 爆魔法Lv2 木魔法Lv16 氷魔法Lv5
樹魔法Lv9 ハイエルフの知識Lv22 精霊召喚Lv7 料理Lv15→Lv18
名前 恋火 シュラインビーストLv10
生命力 77
魔力 95
筋力 95
防御力 48
俊敏性 109
器用値 75
スキル
刀Lv18 二刀流Lv1 風刃Lv4 炎魔法Lv11 邪炎Lv12 忌火Lv21
気配察知Lv21 危険予知Lv20 霊力Lv2 幻術Lv2 神道魔術Lv5
見切りLv6 俊足Lv7 妖術Lv2 血醒Lv6 料理Lv15→Lv18 神降ろしLv1
獣化Lv2
名前 和狐 シュラインビーストLv7
生命力 78
魔力 108
筋力 48
防御力 40
俊敏性 100
器用値 102
スキル
扇Lv10 舞踊Lv10 投擲操作Lv10 邪炎Lv10 忌火Lv13 気配察知Lv13
危険察知Lv13 封印魔術Lv12 幻術Lv10 炎魔法Lv6 神道魔術Lv16
妖術Lv10 裁縫Lv14 革細工Lv12 料理Lv19→Lv21 血醒Lv5 神降ろしLv1 獣化Lv2
本来なら次回は掲示板回を書くのですが、今回はあえて書かないことにします。